続きでも、続きじゃなくても。
@azisaitsumuri
絵を描くリッパーに、言い訳するように、傭兵が言う。
「仮面のおまえの顔を見て、そこからおまえの感情が全部分かるとは言ってないだろ?」
「言ってたらヤバいです。」
仮面の下だって、感情が分かるような顔の造りはしていないのに。
リッパーは画板から顔を逸らさない。
「……そうだな、じゃあ。単なる癖かも知れないだろ?おまえ以外の相手からなら、表情から感情が分かることが通常は多いのだから。」
「癖……。」
リッパーは、あまりぴんときてはいないようだったが、それ以上何か言うこともなかった。
「通常多いのは、この仮面の顔よりも、左手への視線です。」
話になぞって、傭兵もリッパーの左手に目を遣る。
そこには大きな爪がある。
「左手を見て、何か分かる情報が?」
おどけたように傭兵が訊ねる。
「せいぜい自分が死ぬ瞬間じゃないですか?」
リッパーが淡々と答え、淡々と続ける。
「危険から目が離せないのは、そうすることで少しでも生き延びる道を探そうとしているからですが。」
「言ってることが逆じゃねえか。」
「当然でしょう?逃さないのだから。」
リッパーが何処か呆れたように言うので、傭兵は笑った。
「でも、おまえがわたしの顔と行き来するようにして見ているのも、この爪ですよ。」
リッパーの言葉に、傭兵はまたそこを見遣った。
「癖かも知れないだろ?」
リッパーは傭兵の返答に、釈然としない様子で肩を竦めた。
本格的に会話を終わらせて描画に腰を入れようとしたところで、傭兵がなんでもないように言う。
「まあ、すきだから見てるだけだがな。」
リッパーの筆が止まった。