実際に掌の中に湛えているわけではないが、そんな感じ。
@azisaitsumuri
今からすることを伝えたら、なぜそんなことを、と訊ねられた。
「おまえの体を貫きたくて。」
「はあ……」
まあ風穴は空くな、小さいけどな。言ってミストグリーンは用意した道具を見遣る。こちらが用意してやったのだ、あとは実行するだけ。
「……やる前にやって良いか訊けよ?」
「なぜ?一々訊きませんが?」
相手は怒っているのではなく、困っている。こちらを理不尽だと思いながらも、従ってしまうことが紛れも無い本人の意思だからだ。そんな決定を下す、自分自身に困っている。無駄な思考だ。
「……。せめて心の準備とかさせろよ。」
相手を待つ理由も無いし、氷が溶ける前に、右手で氷嚢を男の耳に押し当てる。突然冷たい刺激に触れさせられたからか、先よりはきちんと怒った顔をして見せた。それも、どちらかと言えば、反射で顔を顰めているだけだが。
「準備ならもう揃っていますが?」
目の前に、今は整然と並べられた道具達を左の掌で湛える、さっき迄自分で見ていただろうに。
「おれ泣くぞ?」
「おまえ泣くんですか?」
「前そうだった。」
「空けたことあったんですか?」
「もう塞がったけどな。」
「……それがどれくらい幼い頃か存じませんが、今は空けても泣かないかもしれませんね。」
話の区切りの拍子で道具の並びに氷嚢を戻すと、燐寸を擦って点けた蝋燭の火に爪を炙って、穴を、空ける。
「……。おまえ、ほんと、事前連絡をなにも言わない。」
「不要なので。」
ファーストピアスを取り付けながら雑談に付き合う。
「止血しろよ……。」
言う声は、諦めたものだ。
赤を滲ませる穴を見遣る。完成したら、小さい物を使うつもりだったが、ポストが長くて太くても、思ったより武骨さが良い演出をするかも知れない。
「……さっそく自分が空けた穴に夢中か。」
赤から緑に視線を移す。流れてはいないが、潤んだそこは火の揺れを大きく波打たせている。てっきり口では経験を語ったものの、けろっとしているものだと思っていた。揺蕩う瞳は、夜伽に似ている。
「うわ。よせ。」
並んだ道具ごと男の体を崩してのし掛かれば、少し派手な音がして興奮した。そうして飛び散ったのは透明ではなく赤だった。