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秘密

全体公開 未完 67 1663文字
2024-12-03 22:15:58

オメガバース β🎈×Ω🌟(?) 冒頭だけ


 ここ数日、どうにも体調が良くなかった。
 忙しかったせいだろうか? 何かあっては困るし、大したことはないだろうが早めに検査をしておこう。そんな、軽い気持ちで病院へ行ったのに。
「妊娠していますね」
「は?」
 予想もしていなかった宣告に、思わず間抜けな声が出てしまった。

 □■□

 夕暮れに染まる住宅街は、家路を急ぐ小学生や買い物帰りの親子連れで賑やかだ。
 いつも帰宅するのはもっと遅い時間だから、こんなに賑やかだとは知らなかった。帽子を目深に被って、不自然にならない程度に顔を隠しながら足早に自宅への道を進んでいく。途中、赤ん坊を抱いた男性とすれ違って、思わずびくりと肩を跳ねさせてしまった。
 ――妊娠。病院で聞いた言葉がぐるぐると頭を巡る。
 性別だけで考えれば不可能なことではない。世界一のスターとなるべく、数多の舞台にドラマに映画に出演し役者として成長を続けているこのオレ、天馬司の性別は男、そして第二の性はオメガだ。体質のせいで子どもを授かりにくいとは言われていたが、できないとは言われていない。
 だが、オレが妊娠などあり得ない。できるわけがない。
 我がワンダーランズ×ショウタイムの演出家であり、高校時代からの親友であり、オレの唯一無二のパートナーである神代類は――ベータなのだ。
 世の中のエリート、天才と呼ばれる人間の大半はアルファだ。当然類もアルファなのだろうと考えていたし、ベータだと聞いた時も最初は信じられなかった。けれど類は『間違いなくベータだよ、僕には司くんのフェロモンの匂いが全くわからないし』と困ったように笑っていた。
 オレはヒートが軽く、フェロモンの量も通常より少ないらしいが、それでもアルファならばすぐにわかるはず。全くわからないと言うのなら、やはり類はベータなのだろう。
 ベータ男性とオメガ男性の場合、子どもを授かる可能性はほぼゼロに等しい、と聞いている。類と正式なパートナーになろうと話し合った時も、子どもは望めないけれど本当にいいのかいと何度も念押しされた。
 オレと咲希を愛し慈しんで育ててくれた両親を見ていて、子どもを産み育てることは幸せなのだろうなと思っていたが、オレにとっては類と一緒に生きていくことの方が魅力的に映った。類が隣にいる未来以外考えられないと、類の手を取った。
 ……奇跡のような確率で、ベータの類とオメガのオレの間に子どもが出来たのだろうか。
 いや、しかし類は必ず行為の時に避妊具を使っている。避妊のためというより、オレの身体を気遣ってのことだ。
 ベータとオメガ、子どもが出来にくい体質、避妊具の使用。どう考えてもうっかり授かった、とは考えにくい。
 だとすると――
……疑われて、しまうかもしれん)
 とぼとぼと一人で歩きながら、ぺたんとした下腹部を撫でる。
 類としか触れ合ったことがないのだから、類の子で間違いない。そう思うのに、類の子であることを否定する理由ばかりが頭に浮かんでしまう。
 浮気をした、と疑われるのは嫌だ。付き合う前も、パートナーになる前も、類は自身がベータであることをずっと気にしていた。オメガには、いつか運命の番が現れるかもしれない。いずれオレが離れていくかもしれないと恐れていた。あいつが不安そうにするたび、オレには類だけだ、他の誰かを選んだりしない、そう言い続けて安心させてきた。
 ……この状況でも、信じてくれるだろうか。
 いや、信じてくれなかったら流石にオレも怒りたいが。浮気など絶対にしない、オレが愛しているのは類だけだ。だが。
 立ち止まり、もう一度腹をさする。
 実感はない。けれど、間違いなく存在するらしい。できるはずのない、子ども。
 どうすればいいんだ。類に、どうやって説明すれば。
 ぞわりと寒気がして、自分の身体を抱くように腕を交差させる。甲高い笑い声を上げながら横を駆け抜けた子どもたちが、一瞬不思議そうに立ち尽くすオレを振り返ったが、すぐに興味を失ったように走り去っていった。


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