両片思い期のΔドラヒナのお話です。何十番煎じかと思いますが、サクランボの茎を結べる人は…のネタです。
どの世界線のドラルクさんも、上手なんじゃないかなぁ…と。
両思いになってから、自分も練習して隊長に挑むヒナイチくんのシーンを追加しました。
2024/06/15 に上げました。
@kw42431393
「こんばんは…すっかり、エアコンが入っているな。」
「急に、真夏になってしまったからね。そこにかけて、ゆっくりしておくれ。」
つい最近まで、肌寒い日もあったのにな。
ゴールデンウィークや様々な行事で、騒いでいた5月は終わり、いつの間にやら6月に入っていた。
急に暑くなったからだろう…寒がりの隊長でさえ、すっかり、白いコートを脱いで半袖になっていた。
「さぁ、どうぞ。親戚から、サクランボを頂いたのだ。皆でおあがり。」
そう言って、今回出されたのは紅茶ではなかった。
赤いサクランボと白いアイスのコントラストが綺麗な、クリームソーダだ。
なんだか、ここが署ではなく、喫茶店な気がしてきた。
スプーンでアイスをつついて、口に含む。
キンッと冷たくて、汗ばんだ体に心地よい。
「あちいよなぁ。一応夏仕様だけど、このマントも脱ぎたいぐらいだぜ。」
「ヌフフ。」
パタパタと団扇で扇いでいる、ロナルドとジョンに笑いかける。
彼には畏怖欲があるから、脱ぎたくても脱がないのかもしれないな。
とはいえ、私達は職業柄、夜勤が多い。まだ、マシな方だとは思う。
「たくさん貰ったからね。今日のおやつは、サクランボ尽くしだよ。」
隊長の言葉に、顔を上げる。
私だけでなく、ロナルド達の顔もサクランボみたいに、輝いて…
「待ってました。」
「うん、頂くぞ!」
「ヌヌヌキヌーヌ!」
最初に隊長が置いてくれた、本日のお菓子は、サクランボゼリー。
ゼリーに包まれたサクランボが、涼し気で…何よりシンプルに可愛らしい。
「うん、美味しい。初物だから、格別だ。」
2人と1匹で競う様に食べていると、さらに並べられる、甘酸っぱいチェリーパイ。切り分けられると、鮮やかなフィリングが見えてくる。
そこに、ホイップクリームが添えられて…
「美味しい。サクランボの甘酸っぱさと、クリームの甘さが、たまらないよな!」
これもあれもと、次から次へと、口に運ぶ。
「う~ん。やっぱり、ここが一番の癒しだな!」
「そんな…大袈裟な。」
そう言って、貴方は笑うけれども、本当の事だから仕方がない。
憧れの人に会える…というのもあるけど、振る舞われる美味しいお菓子と、3人と1匹の時間。
この隊長室で過ごす時間が、一番幸せだ。
「うん、うめえ。それにしても…お前も忙しいのに、マメだよなぁ。」
「ヌヌ!」
ロナルドが、ジョンに小突かれている。そうなのだ、隊長はお忙しい方だ。
なのに、報告書の提出の度に、こうやって手料理を振る舞ってくれる。
いいのかな…って、思ってしまう。
でも…
グー…
また、お腹が鳴ってしまった。
仕方ないだろう…やっとなれた、憧れの退治人。私の夢。
だけど、実際は、かなり激務なのだ。退治人は地域アイドルも兼ねているから、昼間は昼間でやる事もあるしな。
今日?今日は、ちょっと夏に向けてのイベント企画が、あってだな。
結構忙しくって、お昼ご飯をちゃんと食べられなかったんだ。
「いいんだよ。君達の食べている姿を見るのは、私も楽しい。まだまだあるよ、もっとお食べ。」
「君達ってか、ヒナイチ…モガッ!?」
「ヌー…。」
さらに、何かを言おうとしたロナルドの口を、一人と一匹が押さえている。
どうしたんだろう…
「どうした?ロナルド…。」
「な、何でもないよ。そ…そうだ!ヒナイチくん。これ見て!これ!」
何故か、慌てた様子の隊長を見上げる。彼の手には、さっき食べたサクランボの茎が、摘ままれていた。
「見たことない?こういう一発芸。」
「サクランボでか?」
うーん、知らないな。種は、食べちゃダメって、言われたような…。
そう思っている私の前で、隊長はそれを口に含む。モグモグと口が動いていて…
「うん?茎は食べても、美味しくないと思うぞ?」
「…ンフフ、違うよ?」
ペロリと出された舌…夜の者の血を引く貴方の舌は、赤くて長い。
肌や唇の血色は悪いのに、そこだけとてもサクランボの様に鮮やかで、艶やかで…。
「…きれい。」
目を奪われる。
滅多に見る事は、出来ない場所だから。
「うん、我ながら上手く出来たもの。」
上手く…?ティッシュで取り出してる、それ…。
「アハハ、器用でしょ?ちょっと、お行儀悪いけどね。」
サクランボの茎は、綺麗に結ばれていた。何だか、とても恥ずかしくなる。
隊長は私を笑わせようとしてたのに、私はそこを見ていなかったんだ!
「そ…そうか!な、なあ…それって、どうやるんだ?」
「…お、教えるのは、ちょっと。恥ずかしいから…うん。」
バカか、私は!もっと、上手な誤魔化し方は、思いつかなかったのか!
「あ、ああ!そうだよな!な、なな…なんでもない!」
「なあ、ヒナイチ。なんつーか、お前もさあ…」
「ヌーン?」
「な、何でもないったら!」
そう言って、私はまだ残っているチェリーパイを口に頬張る。必死になって…だから、そこから先の味は、よく覚えていない。
…言えるもんか。だって…
「面白いな。今度の一発芸で使いたいから、教えてくれ。」
そういう名目で、その綺麗な舌をもう一度、目に焼き付けておきたいと…そういう下心で言ったんだから。
「むぐむぐ…よし!出来たぞ!」
舌を出して、鏡を確認する。
私の舌の上に乗っている、サクランボの茎は…なんとか結ばれていた。
「隊長ほど、上手じゃないけど…でも、大丈夫だよな。たぶん。」
あれから、しばらく経って…まぁ、その、あれだ。
今の私は、憧れの人と交際している。そして、この前、ファーストキスも済ませたんだ!
『ヒナちゃん、知ってるか?サクランボの茎を結べる人って、キスが上手らしいぜ。』
それより前に、マリアさんからそれを聞いてから、少し隊長の口元をドキドキして見つめる様になった。
隊長も、キスが上手なのかなって。そうされた時、私はどうなっちゃうのかなって。
サクランボの様に、赤くて、美味しそうなあの舌でって…わっ!?
こ、これは、イヤらしい意味じゃなくて…見た目の話だからな!念の為!!
『で、今回どうだったアル?ファーストキスは、サクランボの様に甘酸っぱかったアルか?』
それなんだが…味も何も、頭がクラクラして、舌に絡めとられて、腰が抜けないように必死で、しがみつくだけで…いっぱいいっぱいだったんだ。
『あぁ。そういえば、言っていたね。そういう意味だったの…いいよ。教えてあげるよ。舌ぐらい、いつでも見せてあげようじゃないか。』
そう言って、舌を出して見せたあの人の、照れ臭そうな笑顔を覚えている。
”で、どうでしたか?上手でした?”
興味津々なコユキさんには悪いが、比べ様がないんだ。
だって、初めてだし。その後も、他の人とする気なんてないし。
『でも、私が感じたのと同じ…あの感覚を…隊長にも、あげたいな。』
だから、こっそり練習してた。そして、今日とうとう成功した訳だ。
だから…
「た、隊長。入っていいか?」
今日は、貴方が非番の日。
気を利かせたジョンが、ロナルドを連れ出してくれたから、練習の成果を見せる日だ。
「どうぞ、お嬢さん。ごめんね。折角来てくれたのに、書類が散らかっていて。」
トントンと音を立てて、書類を片付ける貴方に近づいて…
「大丈夫だぞ、気にしないでくれ。」
「お茶を淹れるよ、ちょっとそこに…んっふ?」
隙あり!貴方が座っているチェアの後ろから、不意打ちで…
「はっ…ふ、ん…ひな…。」
チュッ、チュッ…と、貴方がいつもやる様にリップ音を立てながら、その唇を啄んで…
「フフッ…かわいい…。」
次は、もう一歩進んで、舌を入れる。
金色のその瞳が、トロンと霞んでいくのが愛おしくて…
「は…ぁっ…くっ…。」
貴方の真似をして、舌でその牙をなぞって…
「まっ…ちょっ…あぶな…くっ…ふぅ…。」
切なげな声に、隊長も感じていると実感する。そう考えると、ゾクゾクとしたものが、背筋を走って…だけど。
「たい…きゃっ!?」
「ぷはっ…はぁ、はぁ。クスクス、甘いよ。」
いつの間か、攻守が逆転していた。立ち上がった貴方が私を、腕の中に閉じ込めたのだ。
あぁ。やっぱり、貴方には勝てないな。今度こそって、思ったのにな。
「驚いたよ。いつから、そんな悪いお嬢さんになったのやら。」
「フフ、誰のせいだろうな?何も知らない私に、悪い事を教えた…犯人は?」
両手をそのこけた頬に当てて、捕食者になった貴方を見上げる。
いつもの穏やかで、眠そうな金の瞳も素敵だけど…
「私だよ。じゃあ、その責任はちゃんと取らないと、ね?」
上品な口元が、私の目の前で歪に裂けていく。いつもとは違う、野生的な気配を纏って…
「はっ…く。んんっ…ーー!!」
あぁ、やっぱりそうだ。
獰猛な狼の様に輝く金の瞳には、サクランボの様に艶やかで、鮮やかな長い舌が…よく似合う。