@azisaitsumuri
雪なんか降らずともしんしんと寒い気候だ。ぽかぽかの反対。ずきずきと痛い。吐いた息が白い。吐いた息消える。これは溜め息。
その白い息は消えるのに、どうして心はそう成ら無いのだろうかと文句が湧く。
冬の白い息は、ペインティングナイフで削ったように霧消する。
はあとまた溜め息。ついた途端ににゅと横から差し出される掌。少し視線を動かせば、その腕には肘当てが見える。
「おまえ、息白い割にあんまあったかくねえなあ。」
「ひとの溜め息で暖を取らないでくれます?」
「溜め息?」
余計なことを言った。手を引っ込めてこすり合わせながら、なんかあったんか、とぶっきらぼうに訊かれる。余計なお世話。
「別に。吐き出した白い息が消えるなら、吐き出した気持ちも消えてしまえば良いのにと思っただけです。」
「消えてるんじゃないか?」
思わず顔を上げた。消えてない。だから困ってる。
なのに小男は寒空の下、雪を落とすように静かにこちらを見て居る。
「おまえの中でどんどん新しく生まれてるだけ。」
と、見た。見解を述べる男の、握った拳が軽く胸を突いた。一粒の雪かと思うくらい、優しい衝撃。凍りついたように体が固まった。なのに頭が熱い。頭が沸いてる。
「あったかくしとけよ。」
同時に持って来て居たらしいブランケットを頭からすっぽり被せられたせいで、多分何もバレて無い。そうでなくては困る。顔が熱くてあったかいどころでは無いと文句が湧いた。