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熱に溶ける

全体公開 TF 26 3356文字
2024-12-07 18:36:53

リクエストありがとうございました! 「スタースクリーム(⭐️)とメガトロンが初めてキスする状況」です!

「メガトロン様ー、生きてます?」

ノックも無しに無遠慮に入ってきた航空参謀に、しかしメガトロンは何も言うことができずにただ不快な視線を投げつけることしかできなかった。

リチャージスラブにぐったりと横たわり、気だるげな視線を寄越して来るメガトロンにスタースクリームは肩を竦めた。
熱暴走を起こし排熱の間に合っていない機体のため、ブレインのオーバーヒートを防ぐために頭には氷嚢を乗せられている。それでも熱は冷めないのか、排気は熱く、煌々と輝くオプティックに照らされた頬が赤く色づいていた。

サイバトロン星に一定の周期で流行る宇宙風邪。ある程度抗体ができた機体であればそこまで悪化することは無いのだが、抗体を持たない機体にとっては厄介極まりないウイルスだ。
通常、生まれてすぐに抗体を投与されるものなのだが。どうやらコグ無しであった彼は抗体を一切持たないらしく、生まれて初めて感染したメガトロンは最悪の発症を迎えていた。

「って、薬も飲んでねぇのかよ、アンタ」
……ぃら゛ない゛」

発声回路にも異常が出ているのか。絞り出すような掠れた声でそっぽを向く。傍らに用意されたそれをみれば、薬どころかエネルゴンにも手を付けていない。リチャージスラブからの充電だけではエネルギーの補給が間に合わないだろうに。

ごろりと機体を横に倒し、子供のように拒絶する姿にスタースクリームは頬を引きつらせる。
わざわざメガトロンの機体に合わせて一から調合してやった薬も、手間暇かけて精製してやったエネルゴンもいらないとは何事か。

何度か深呼吸を繰り返し、怒るのは後にまわす。
相手は子供だ。初めてウイルスに感染したことによる戸惑いもあるのだろう。
──落ち着け。大人の対応を心掛けろ。
自分に言い聞かせながら、断わりを入れてから傍らに膝をつく。

…………とりあえず、色々取り換えますよ」

部屋の空調は最大限稼働して、室温はかなり低く設定しているはずだが彼の機熱のせいかあまり寒さは感じられない。
横を向いた際に落ちた氷嚢を拾い上げれば、すっかり温くなっている。

「失礼しますよー。……あっつ!?」

どれほど熱を溜めているのか、そっと頬に手を添えればその熱さに驚いて手を放す。慌てて持ってきた新しい氷嚢を押し付けて、共に持ち込んで来たタンクを引き寄せた。

「こりゃひでぇな。冷却水ダメになってそうなんで、取り換えますね」
「ん……

慣れた様子で背中のハッチを開けて、リッドを取り外すと排出用のホースを差し込んだ。慣れない感覚に肩が跳ね上がる。
トポトポと音を立てて抜かれていく冷却水は酷く濁っていた。これでは機体の熱を冷ますことなど殆どできずにいただろう。

「ぅあ……
「気持ち悪いでしょーが、我慢してください」

機体から体液を抜かれている感覚に、震える背中を宥めるように撫でてやる。一通り抜き終わったら今度は逆。新しい冷却水を入れてやるために別のホースを差し込んだ。

「ふっ、……んぅ、ぁっ」
…………

ポンプを使って流し込んでやる度に、機体を跳ねさせて声を上げる物だから、妙な気分になって来る。
確かに、日毎に子供らしいあどけなさを消しボスとして威厳を増していく彼に劣情を煽られ、そういう目で見てしまうことはあったが。

──落ち着け。相手は病人だ。暴走した機体が過敏に感覚を拾ってるだけだ。

今は駄目だ。いくら弱った姿が珍しく、妙にスパークをかき乱されたとしても、手を出すのは無いだろう。彼の部下としても、彼の倍は生きている大人としても。

押し殺したような声を無心で聞き流しながら、手早く作業を終わらせる。
さっさと終わらせて再びハッチを閉じてやれば、安堵したような熱い排気が零される。背を丸めて耐えるように硬直していた機体から力が抜けていく。くたりとスラブに沈み込んだ姿に、スパークが脈打った。

誤魔化すように手付かずのエネルゴンに手を伸ばす。さっさと治してもらわないと、こちらの理性が保てそうにない。

「あー、その、とりあえず、一つでいいんで食べてください。んで、薬も飲んで──」
「いらない。おわったならでていけ」
…………

少しは楽になったのか、先ほどよりも明瞭になった声で拒絶された。

「いい加減にしろよ、クソガキが」
「──っ!?」

一体誰のためにこんな召使じみた真似をしていると思っているのか。
こちらに背を向ける肩を掴んで無理やりこちらを振り向かせて。驚愕に開かれた口にすかさず指を突っ込んだ。同時に傍らのエネルゴンを一欠けら手にして有無を言わせず放り込む。

「んぐっ!?」

そのまま口元を抑え込んで、エネルゴンを呑み込むまで離さない、と抑えつけた。たまらず暴れてくるが、弱り切った機体では痛くも痒くもない。
確かに嚥下したのを確認し、解放してやった途端勢いよく噎せ返り折角呑み込んだエネルゴンも吐き出してしまった。

「げほっ、ごほ……っ! こふっ……!!」
「ああ、気管逆流して飲み込めねぇのか。ったく、悪化してんなら先に言えよ」
……きさま、」

最初に聞いた声で察してやるべきだったのかもしれない。発声回路の異常が補給口全体に広がっているのだろう。
こうなってはエネルゴンの補給は諦めるしかないが、薬はどうにか飲ませなければ。

零れたエネルゴンを拭いながら、何とか上体を起こしてきたメガトロンの、ふらつく身体を支えてやる。
手の平から伝わる熱が熱い。口元のエネルゴンを丁寧に拭ってやると、薬の入ったグラスを手に取った。

「文句は治ってから聞きます。先に薬だけでも飲んでください」
「なに、を……

メガトロンの前で一口、薬を口に含めば彼は怪訝な顔を見せる。
すかさず唇を重ね、閉ざされたそれを舌先で割り開いた。

顎を掬い上を向かせると、咥内オイルと共に薬を少量ずつ彼の咥内へと流し込む。気管を塞ぎ、薬が気道を通るのを見届けるまで、抵抗する身体を唇で押さえ込む。押しのけてこようとする舌は絡めとって動きを封じた。

メガトロンの咥内は熱く、触れ合わせた舌が火傷してしまいそうだ。排気を奪えばスタースクリームの発声回路を焦がしていく。

「むぐっ! ん゛ーっ!! はっ、すた、ぁむっ」
「ん……

確かに全て呑み込んだのを確認したら、一度口を放す。再び薬を口に含むと同じように無理やり飲ませることで文句を言いかけた口はすぐに塞いだ。

行為を重ねる度に排気ができずに機熱は上がる。メガトロンが弱々しくも抵抗するものの、その動きは次第に鈍くなるばかり。ついにスタースクリームを押しのけようとしていた手が力を失くして落ちていく。最早入り込む舌を押し返す力さえ失われていた。

何度も行為を繰り返していれば、いつの間にかスタースクリームの舌も同じ熱を持っていた。
溶けた熱を混ぜるように舌を擦り合わせて、ゆっくりと離す。混ざり合ったオイルが名残惜し気に二人を繋ぎ止め、ぷつりと切れた。

「ふっ、ぅあ……

上がった機熱はウイルスのせいか、それとも──。
濡れた唇から零れる熱に、蕩けた赤いオプティックは薄明りに揺らめき、白い頬を赤く染める。どこか朧な意識のまま、スタースクリームを見つめてくる。
子供のようなあどけなさに、大人の色気が混じり合う。薄明かりに照らされた熱を帯びた機体は、どこか神々しく、同時に触れれば壊れそうなほど脆く見えた。その姿が、妙に不安定で、目を奪われる程に美しい。

下心が無かったと言えば嘘にはなるが。
口移しで薬を飲ませたのは、単純に治療のためのはずだった。言うことを気がない子供にしびれを切らした故の強硬手段。それ以上の意味など本来あるはずも無かった。
それなのに──。

求めるように薄く開かれた唇に、空になった薬の容器を置いてスタースクリームは手を伸ばす。

「スター、スクリーム……
「──メガトロン様」

熱い吐息と共に呼ばれた名前は掠れていたが、酷く甘い響きを帯びていた。
求められるままに唇を重ねて触れ合えば、彼は抵抗せずに受け入れる。

初めてのキスは溶けてしまう程に熱く、苦い薬の味がした。


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