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きっと誰しもが

全体公開 トワスト 2 2 2087文字
2024-12-07 19:02:17

第17回トワスト、テーマ「スーパーヒーロー」作品です。制作時間は約50分です。

 その日、黒木嵐――その正体は半永久的な生命を持つ異種族『魔族』であるランフォードは、街を歩いていた。傍らには、遥か昔から行動を共にしている同族、ジェフの姿が。

「どうしたんだね、ジェフ?」

 珍しくジェフが街中で足を止めていたから、ランフォードはゆったりと横に立つ。

 ジェフの視線の向かう方向を見れば、映画の宣伝が。あれは子ども向けの最新映画だっただろうか。

「下らない。何がスーパーヒーローだ」

 ……どうやらジェフは、映画のタイトルが気に入らなかったようだ。

「良いじゃないか、ジェフ。君にもそんなヒーローを求めた時代はあっただろうに」

「生憎だが無いな、ラン。ヒーローなんてものは存在しないと、俺様昔から思っていたからな?」

 ……以前から感じていたが、どうもジェフは過去に大きな絶望を味わっているようだ。それこそ、ヒーロー――英雄なんて、いないと思うほどの。

 この話をここで続けても恐らく平行線になりそうなので、ランフォードはこの場を離れることにした。

 少し行ったところにカフェがあったので、そこに落ち着くことにする。運ばれてきた紅茶を口にして、やっと人心地ついた。

「お前はどこに行っても紅茶だな、ラン」

 この店は恐らくコーヒーを売りにしているぞ、とジェフはカップを手にした。そのカップの中身は勿論、ブラックのコーヒーだ。

「そうなのかね、ジェフ? どこからそう判断したんだね」

「簡単だ。店の中にはコーヒーの香りが染み付いている。カウンターの中の器具も、コーヒーについてのものが充実している上に、どうやら独自の豆も販売しているようだ。ここから推測されることは、この店はコーヒーを売りにしているカフェではないかということだ……というだけだぜ」

 なるほど、確かに見れば挽きたてのコーヒー豆が売られている。よくそんなところまで短時間で見ているものだ。ランフォードはというと、共にいる友人の姿と、メニュー表くらいしか見ていなかったというのに。

「相変わらず、君の観察力は凄いね、ジェフ。私にとっては、そんな君はある一面で英雄なんだがねえ」

――何を言う、ラン」

 柔和な顔を更にほころばせて、ランフォードは紅茶を口にした。喉を潤してから、更に続ける。

「だからね。大きなことをした人だけが英雄――ヒーローというわけでは無いと私は考えているということだよ。私にとっては、慎重に構えて物事をよく観察し、行動をしている君も十分にヒーローだよ。それは私には無いものだからね」

……

 ジェフから言葉は返ってこない。ただ黙して、コーヒーを口に運んでいる。

「きっと誰しもが、誰かのヒーローなんだよ。君も然り。もしかしたら私も、誰かにとってはそうなのかも知れないね」

 そう――自分のことはよくわからないが、ジェフに関しては確実にそうだと断言出来る。かつて出会った、ジェフの部族、ティファレトの絵描きの青年は、心からジェフを尊敬しているようだった。あの青年にとっては、きっとジェフはヒーローも同然だろう。他にもそんな部の民は多いに違いない。集めた情報を総合してみると、ティファレトの民とジェフは、案外上手くいっているようだから。

――俺様がヒーロー、か。また似つかわしくない称号だな。お前の方が向いているだろう、ラン?」

 ゲームの勇者は大体剣使いだぞ、とジェフは笑う。ちなみにランフォードの一番得意な武器は剣である。ジェフは錫杖を使うが、それの用途は主に魔法発動のための媒体だ。

「君、ゲームをしないのにゲームのことなんて知っているんだね」

「馬鹿。商店街でゲームの話題が出るから仕方なくだ」

「たまにはやってみればいいのに。ゲームも面白いよ?」

「断る。ゲームよりも骨董の方が面白いと思うぜ?」

 それは無いよ、とランフォードは笑う。ランフォードに釣られてジェフも、笑っていた。

「ねえ、ジェフ。――さっきの映画も、確かスーパーヒーローは意外な登場人物なんだよ。確かいわゆる英雄譚とは、一味違う。――今からあれを、一緒に見に行かないかね?」

「子ども向け映画を、俺様とお前で見るのか?」

「いいじゃないか。実はあの作品は、大人にも人気だという話だよ? 私の同僚でも見に行った人は結構いてね」

――お前、同僚と話題が欲しくて行きたいんだろう」

「ばれたかね? ねえ、行こうよジェフ」

 ランフォードはジェフの瞳をじっと見つめる。その鋭い、一見冷たそうにも見えるシトリンの瞳を。

――今回だけだぞ」

 普段から映画はあまり見ないんだぞ、と漏らしながらもジェフは頷く。――それもよく知っている。それでも付き合ってくれるジェフは、全然冷たくないのだ。

 ランフォードとジェフは席を立つ。今から行けば映画の次の回に入れるだろう。

 ――ささやかなヒーローの存在くらい、君も信じられるようになったらいいんだけどね、ジェフ……

 口には出さずに、ランフォードはそんなことを考えていた。


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@Marumeroke
んおお〜〜…!
ドラゴンボールは見た事なかったんですけど、私もヒーローもの大好き人間なので、色々と熱い物を感じるお話でとっても好きです!

それにしても、朝恵ちゃんはジェフさんの事をずっと自分だけのヒーローみたいに思っているけど、ジェフさん本人の認識はそれとは随分違っているのだなと…。
ジェフさんのお気持ちも、分かると言ってはあれですが共感できる部分もあるように思います。私も、ヒーローものを見るまではそう思ってたタイプの人間で←

そして、ランさんの言葉が本当にその通りすぎるんですよねえ…!
人の出来る事はそれぞれ違っていて、貴賤を問わず誰もがその姿で、少しずつ誰かの心を照らしたり勇気づけたりしているのだと思います。もちろん、私にとっての月雲さんやランさんやジェフさん達もそうです。

なので、ヒーローという概念の繊細さをそんな風に感じ取れるランさんも素敵だし、英雄という物とは違ってもジェフさんも間違いなくヒーローなのだと…
何かこう私の中の熱い部分が勝手に吠えておりました←
映画、二人で楽しんでくれるといいなあ…。
2024-12-07 23:14:18
@xxxyueyunxxx
≫Marumeroke ドラゴンボール、面白いですよー!
特に映画の「スーパーヒーロー」は大好きな作品です。私の最推しキャラも大活躍だし(そこ?)

そう、朝恵ちゃんにとってジェフはヒーローなのですが、ジェフ本人は自分をヒーローだとか英雄だとは一度も思ったことが無いんです(おそらくこれも過去が影響しています)
ランフォードはナチュラルですよね。そういう奴だからきっとジェフもずっと付き合いを続けているのでしょう。

映画を楽しめたか、密かに続きが書きたくなっています。いや、ほんとスーパーヒーローって作品が意外な感じの作品なので。
2024-12-14 00:08:21

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