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人間🎸×人外🤖

全体公開 1919文字
2024-12-08 23:13:41

 昔々、ある山に一匹の蛇がいた。蛇がいつの頃からそこにいたのかは不明だが、気付いた時には彼女は一人で、その山にいた。

 ある日、蛇がいつものように一人、山の中で歌っていると、そこに幼い子どもが現れた。ガサガサと草の根を掻き分けてやってきた子どもと、蛇の目が合う。蛇は自分の姿を見たら子どもはそのまま逃げ出すだろうと考えていた。しかし蛇の姿を目にした瞬間、子どもの瞳には水の膜が張り、そこから水がぽろぽろと溢れてゆく。
 思ってもみなかった反応に蛇が固まっていると、子どもは嗚咽を漏らしながら自分の置かれた状況を説明した。
 なんてことはない。今朝遊びで山へと入ったところ、道に迷ってしまったとのことだった。気づけば明るかった空には夕闇が迫り、途方に暮れていたその時、綺麗な歌声が聞こえてきたため、人がいると思いここまで必死の思いで駆けてきたという。
 人に出会えて良かった、と言う子どもに蛇は内心首を傾げる。そうして子どもの手が蛇に伸びると、蛇の手に触れた。
 どうゆうことか、蛇には子どもと同じような人の手があった。
 蛇がまた驚いていると、子どもはどちらに行けば麓の村に帰れるか、と聞いてくる。村の位置には心当たりがあったので、蛇は驚きで声が出ないまま、村の方角を指差した。すると子どもはやっと涙を拭うと、ありがとう、と言って去っていった。
 蛇はその日の晩、自分がただの蛇ではなく、蛇の妖怪であったことを思い出した。

 次の日、蛇が歌を歌っていると、昨日の子どもがまた現れた。
 また迷ったのか、と蛇はまた麓の村の方角を指差した。しかし、子どもはふるふると首を振る。
「今日は、神様に昨日のお礼を持ってきました」
 そう言って、真っ赤なりんごを差し出した子どもに、蛇は思わず笑ってしまいそうになった。
 どうやら子どもが両親に昨晩あったことを話したところ、その人は山の神様に違いない、ということになったらしい。自分はただ、長く時を生きていた一匹の蛇で、人間のようなこの姿も、ただ歌を歌うために化けているだけにすぎないというのに。
 そう真実を明かせば、きっとこの子どもは自分への興味を失うだろう。
 そう思い、口を開こうとして、けれど蛇はその真実を子どもに教えるのが、何故だが惜しい気がした。
 結局蛇はその後も何も言えないまま、子どもが持ってきたりんごは果物が食べられない蛇に代わって、子どもが食べ切った。

 そうしてその後、子どもは蛇のもとを定期的に訪れるようになった。一緒に歌を歌ったり、山で遊んだりと、一人と一匹は楽しく日々を過ごしていた。
 しかし子どもが十を迎えて少しした頃の事。ある日を境に子どもは蛇の姿を目で見ることができなくなっていた。
 子どもは来る日も来る日も山に入り、自分の神様の姿を探した。しかし、残念ながら、その目が再び蛇を捉えることはなかった。
 初めて出会った頃のように涙を流す子どもに蛇は手を伸ばすが、その手は子どもの涙を拭うことはなく、ただ空を切るのみだった。
 そんなある日、蛇は山に立ち寄った親子がこんな話をしている声を耳にする。
 なんでも、蛇が修行をすることで龍の神になるのだという。
 もう二度とあの子と話すことが叶わないなのなら、あの子の望む神とやらになってやろう、と蛇は決意し、長く住み続けた山を降りた。
 その後、龍神がいるという海に行き、蛇はそこで神になる修行に励んだ。
 修行には長い年月がかかった。人間の一生分よりも遥かに長い時間。
 もうあの子は生きていないだろう、と思いながら神が集う天界を訪れた、かつての蛇の瞳に、見覚えのある黒髪の少女の姿が映った。すると、少女の方もこちらに気づいたようで、ゆっくりと目が合う。
 途端、少女が顔を歪め、その頬を雫が伝う。神となった蛇が手を伸ばすと、その手は少女の頬に触れた。少女が微笑むと、また新しい雫がぽろぽろと溢れた。

 神となったことで、蛇は寧々と新たな名を付けられた。
 寧々が少女にどうして人間のあなたが天界にいるのかと訪ねると、少女は光栄なことに自身の歌声の評判が天界まで届いたことで、人間のまま天界に迎え入れられていたことを話した。
 天界に行けば神様である寧々にまた会えると思っていた少女は、今日までずっと、寧々を探していたという。
「神様。これからは、ずっと一緒にいましょう」
「それじゃあ、これからは神様じゃなくて、寧々って、名前で呼んでくれたら嬉しいな」
「えっ!? えっとそれは、まだちょっと、心の準備が
 まだ少し赤い目のまま、頬を赤めてしてどろもどろになる少女の姿に、寧々は穏やかに笑った。


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