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また、信じてもいいんだよ?

全体公開 本編ドラヒナ(両片思い期) 6 3784文字
2024-12-11 09:21:58

ピクスク様の『クリスマス UNIVERSE 同人誌 オールジャンル』に参加の1作目です。
両片思い期のドラヒナ前提で、みっぴきがクリスマスケーキを食べるお話。
『サンタさんは、いつまで信じてた?』がテーマになります。
悪の権化、カズサ兄が目立ってますね。
他の本編ドラヒナ(両片思い期)のお話は、こちらから読めます→https://privatter.net/category/50955

Posted by @kw42431393

 『おい、ヒナイチ。サンタさんに頼むもの、決めたか?』
 『え~っとね、ケーキ!まるくて、おっきなケーキがいい!』
 『ケーキだと?前日、家族で食べるだろ?』
 『だから、もうひとつ!おきてから、たべるんだ。』
  
 何歳の時だったかな10歳頃だった気がする。
 クリスマス前の、よくある子供の会話。
 毎年、父も母も仕事で忙しかったから、兄がいつもプレゼントを用意してくれていたんだと思う。
 『いちごがのってて、クリームもたっぷりのケーキがいい!』
 『分かった。靴下に入れると弱ってしまうから、冷蔵庫に入れてくれる様に頼んでおこう。』
 そう言って、兄は、ぐしゃぐしゃと私の頭をかき回してくれたっけ。
 イブの夜は、ワクワクして布団に入ったんだ朝起きて、一番に台所に飛び出したものだ。

 『やった~、わたしだけのケーキだぞ!いただきます!』



 「子供の頃から、そうだったのかね。君らしい。」
 「ヌンヌン。」
 「まったく、一人でホールケーキ食うか?普通。」
 
 呆れた顔で笑う、ドラルクの手元を見る。
 そこには、彼が焼いてくれた、最高に美味しいホールケーキが見える。
 ナイフで、ちゃんと3等分してくれて
 「これこれ。そんなに見つめなくても、ケーキは逃げないよ。それに。」
 そこで、彼はクスッと笑う。
 「ちゃんと3等分してあげるから、安心して、待ってなさい。」
 図星なので、つい横を向く。
 分かっている。数字や物を数える事に執着する吸血鬼は、こういう事にはキッチリしている。
 下手に定規や量りを使うよりも、正確な事も知っている。
 でも、仕方ないだろう弱肉強食のヒマラヤでは、僅かな違いが命取りなんだ。
 「そこまで言うかよ。仮にも、兄貴だろ。」
 「ヌー。」
 「分かってないな、ロナルドは。あの時だって。」



 『あ~!!にいさん、たいへんだ!ケーキが、半分しかない!』
 開けたら、ホールケーキの半分は、なかったんだ。正確には、180度どころか190度分ぐらいなかった。
 折角、サンタさんが、私にくれたケーキだったのに。

 『ん?サンタさんが、めちゃくちゃ頑張っている、エリートのお兄ちゃんに半分あげよう、って言ってくれたんでな。だから、半分は俺が食った。美味かったぞ。』
 『はんぶんじゃない!すくないじゃないか!うえ~ん!!』
 楽しみで、1年間いい子にしていたんだ。鍛錬だって、手を抜かなかったし、お皿洗いや廊下の掃除だってだから、辛かったな。
 『そう泣くな、妹よ。お前も俺の様にエリートになって、大勢の市民を守ったら、大人になってもサンタさんからプレゼントが貰えるんだ。明日からも、鍛錬に励めよ。』
 『本当か?本当だな!!』
 『本当だとも。この兄が、嘘を言った事があるか?』

 はっきり言って、これまでも嘘しか言ってなかった気がするが純粋だった幼い私は、まるっと信じた。
 その翌年も、一年間、私は鍛錬も家の手伝いも励んだ。
 そして、クリスマス前のある晩に
 『なあ、兄さん。今年は、クッキーがいい。』
 『クッキーがいいのか?分かった。伝えておく。』
 11歳ともなれば、少しは知恵もつく。
 クッキーなら、靴下に入れられる。だから、サンタさんに言うつもりだったんだ。
 兄には、別にあげてくれ。これは、私のだって。
 とはいえ、高学年ともなると、クラスでもサンタを信じない者が出始める。
 あれは、両親が置いてくれるんだぞと、信じている者は、笑われる。
 私か?まだ、信じてたぞ?その時までは

 『来たな!!クッキードロボーもとい、兄さん!』
 『おっと!!ハハハ!惜しかったな、ヒナイ痛った!!』

 サンタクロース靴下にクッキーを入れに来た兄の脛を、思いっきり蹴飛ばしたのだ。
 正直、サンタさんが入れてくれたケーキを、夜中に兄が盗み食いしたのだと思っていたのだ。
 だから、その年はクッキーにした。
 クッキーなら、常温でも問題ない。靴下に入れられる。
 『ぬぉぉ成長したな。兄を罠にかけるとは。』
 『ふん!天罰覿面。さてと。』
 靴下から、クッキーの袋を取り出して、中身を確認する。
 どこかの有名店で買ったらしいクッキーは、もう既に、半分以上食べられていた。



 「それから、サンタは信じてない。だから、食べられる前に、隠し場所を把握していたものだ。」
 「いや、まぁお前の兄貴もどうかと思うけどよ。そこそこ?う~ん、まぁ、面倒見てくれたんじゃないか。」
 「そこは、感謝してるぞ。でも、それとこれとは、別だ。」
 「ヌー。」

 そういえば、ロナルドの所はどうだったのだろう。
 彼は両親を早くに亡くし、学校に通いながら伝説的な退治人となった、兄に育てられたのだと聞く。おそらく、兄がプレゼントを置いてくれていたのだろう。
 「何、言ってんだ?サンタは、ちゃんといるぜ。ガキの頃に会った事がって、何だ、その顔は!冗談だよ、冗談。さすがに、もう兄貴だって知ってるよ。」
 咳払いをしながら、そっぽを向く彼に苦笑する。
 切り分けたケーキを渡そうとしたドラルクも、ケーキを食べようとしていたジョンも、一瞬、ポカンとした顔をしていた。私もそうだが彼ならばと、一瞬思ったのだろう。
 「高校までだよ。半田と、サンタはどんな顔か言い合いになってな。おれは、銀髪で青い目の、優しい若い男だと言ったら、向こうは、深淵から白い歯だけが不気味に光る中年の男だって言うんだ。『ここで、見た事は決して、誰にも言ってはいけないよ』って、脅されたんだと。」
 あぁ、それは言わなくても分かるな。半田の場合は、強面の親御さんだったのだろう。
 「その場で、カメ谷に言われて、サンタの正体を知った訳だ。夢は壊れたけど、兄貴への憧憬はもっと深まっちまってさ。」
 そう言って、ロナルドは、照れ臭そうに頬を掻く。
 だからかもしれない昼間、新横浜ハイボールで行われたクリスマスイベントで、子供達にもみくちゃにされながら、お菓子を配る彼の顔は、とても優しいものだった。
 巨大化したりビームを打てるという、彼の兄がそうだったように彼も、いつか誰かと結ばれて父親となったなら優しいサンタになるのだろう。
 兄にも、見習って欲しかったな



 「これこれ、吸い込まないの。ここは、ヒマラヤではないよ?」
 トンッと、柔らかくおでこを突かれて、我に返る。
 目の前に並べられたケーキは、もう半分なかった。本能的に、吸い込んでしまったらしい。
 「あ、すまん。つい。」
 改めて、フォークに刺したケーキを口に運ぼうとすると、マニキュアに彩られた手が伸びて来た。
 ボンヤリと、その手を目で追うと
 「そうだ、ヒナイチくん。今年から、またサンタを信じてもいいよ。お兄さんが言った様に、君は多くの市民を守っている、(元)エリート。だから、一生懸命頑張っている君は、大人になってからもプレゼントを貰っていいんだよ?」
 そっと、口元のクリームを拭われる。
 今ではすっかり見慣れた、気障な仕草でそのまま、掬われた髪にキスが落ちる。
 「ドラルク?」
 「フフ。今晩は床下の出入り口に、靴下を置いておくれ。来年もその来年もずっと、ずっとその先も、私が。」
 「ちん、ドラルク?それってそれって!!」

 つまり、その言葉が意味する内容は
 「これからクリスマスも、お前のクッキーが食べられるという事だな!?」
 あの頃のワクワクした想いが、胸に湧いてくる。嬉しくて、髪を弄っている彼の手を握る。
 手を取られた彼は、諦めた様にため息をついていた。
 「本当だな?約束だぞ?」
 「うん、勿論だとも。お嬢さん。」

 彼と指切りすると、私は改めて、目の前のケーキを口に運ぶ。
 ゆっくりと味わって、ここの一員になれた幸せを噛みしめる。
 『監視に励めよ』と、目を瞑ってくれた悪の権化に感謝しながら今夜も、美味しいケーキと、この幸せを飲み込んだ。
  


 
 オマケ

 「美味しかった。ごちそうさま。」
 『おいおい、ドラ公。何も、伝わってなくね?』
 『ヌヌヌヌヌヌ。』
 『いいんだよ。今は、まだ。このままで。』

 だから、気づかなかったんだ。彼が、何故そう言ってくれたのか。
 その意味に、私が気づくまでそれからも、結構かかっていたと思う。
 「どうしたんだ?私が、何か?」
 「あ~、だからよ。」
 「シャラップ!!いいの、いいの。さ、昼の子は寝る時間だよ。靴下を忘れないでね。」
 その時のドラルクを見る、ロナルドとジョンの目が、妙に同情している様に見えた理由にも
 ドラルクが、どこか寂しそうな顔をしている理由にも
 「ああ、楽しみにしてるぞ!!」
 そう。その時の私は、何一つ気づかずに床下で『二本角のサンタさん』が来るのを信じて
 「じゃあ、また今夜な!おやすみなさい!!」

 私は、その日も幸せな眠りについたんだ。
 


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