「SIGNAL 」①
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の続きです。
ほとんどダンテとネロの会話。
ネロが苦しんでいた理由とは……?
@178yuuru
「っ……!クソッ!」
最近、自分が自分でもおかしいことに気付いている。ムシャクシャする。その感情をぶつけるように、俺は依頼先の森で悪魔達を蹴散らしていた。
そんなに強くない悪魔達を相手にしているが、俺は昂る感情を抑えきれず、愛用のブルーローズに最大限魔力を溜めて銃弾を撃ち込んでいた。悪魔達の断末魔が、森に響き渡る。
そんな戦闘を数分続け、森に湧いていた複数の悪魔達の姿が視界から消え去った頃、俺は辺りを見渡した。
(これで全部か?)
そう思った矢先、俺の足元に虫の息になっている一体の悪魔が目に入った。
「まだ生きていたのか……」
俺はソイツを片足で踏みつけたあと、再びブルーローズに最大限の魔力を溜めた。
「この死にぞこないめ……」
存分に苦しませて、あの世に送ってやるか。
「死ね!クソが!」
俺がそう言い、死にかけている悪魔に銃口を向けたその時だった。
「おい」
俺の肩を、後ろから誰かが掴んだ。
「……っ!邪魔すんな……!」
そう言いながら振り返り、声の主をぶん殴ろうと拳を突き出したが、その拳は簡単に受け止められてしまった。
「……」
「何やってんだ、お前」
そう。声の主はダンテだった。なぜ俺の依頼場所にいるのかは分からないが、そんなことより悪魔を始末するところを邪魔されたことに対して腹が立った。
「離せよ!あとコイツで最後なんだ!」
「もう死んでいるだろ!無駄な殺戮はやめろ!」
「っ……!クソッ!」
俺はダンテの手を振り払うと、力強く地面を殴った。
「……そうやって八つ当たりするのもやめろ。少し冷静になれ」
「っ……!」
そんなこと分かっている。分かっているけど、ムシャクシャするこの感情をぶつける先がなく、俺は再び地面を殴った。
そんな俺の様子に呆れたのか、ダンテは小さくため息をつくと膝をついて座り込み、俺の肩に手を置いた。
「一体、何を苦しんでいるんだ……ネロ」
「……」
「話してみろ」
「……」
「何か、あったんだろ」
「……」
「このまま話さないと、お前は完全に悪魔の血に侵されてしまう。もう、あの嬢ちゃんとも一緒にいられなくなる」
「……!」
「それが嫌なら、話すんだな」
キリエのことを話題に出されると、俺は昔から過剰に反応してしまう。
ダンテのことだ。これ以上黙っていても、俺が話すまでこの場を動かないどころか、一生俺の側にまとわりついて来るだろう。
後々面倒なことを避けたい気持ちと、やはりダンテには事の経緯を話しておきたい気持ちもあり、俺は荒れ狂った心を一旦落ち着かせるため深呼吸をした。
少し気持ちが落ち着いたところで、俺はダンテの顔をまっすぐ見つめたあと、静かに俯きながら重い口を開いた。
「……前に、悪魔退治の依頼があった時に、人の姿に化ける悪魔に出くわしたんだ」
「……」
「そいつが、クレドに化けやがって……」
「あぁ……。人の記憶を覗き込み、その人の辛い記憶を具現化するタイプの悪魔だな」
「そのあと、クレドとキリエの両親の姿に……」
「……」
「最後は、キリエの姿に……」
「……」
「悪魔と分かっていても、身体が動かなくて……。だけど、なんとか気を保って、その悪魔がまた姿を変える瞬間を狙ってなんとか仕留めて……」
「……」
「だけど、その悪魔の断末魔が、今まで化けた人たちの叫び声で……」
「……」
「ははっ……。まるで、俺が大切な人達を殺してしまった感覚になっちまってな……」
俺はそう言うと、ダンテの顔を再びまっすぐ見つめた。
ダンテは相変わらず、黙ったままだった。
「なぁ、ダンテ。俺って何なんだろうな」
「……」
「どうして俺って、こんな奴なんだろうな」
「……」
「実の親には捨てられ、教団に属していた時は周りと上手くやっていけずに、単独行動ばかり。クレドにたくさん迷惑をかけて、挙句の果てに死なせてしまって……」
「……」
「ここ最近、キリエのことだってたくさん傷付けている。本当、最低な野朗だ」
「……」
「なあ、俺ってさ、存在してもいいのかな」
「……」
「俺がいるせいで、周りにたくさん迷惑をかけて、傷付けて、苦しませて、死なせて……。これって全部、俺が招いたことだろ」
「……」
「なぁ、教えてくれよ」
「……」
「俺はどうすればいい?」
「……」
「……っ!答えろよダンt……」
俺がそう怒鳴ろうとした瞬間、ダンテは俺のことを抱きしめた。
突然の出来事に驚いて頭が混乱し、俺は身体が固まってしまった。
そんな俺の様子を感じつつ、ダンテは俺の身体を更に強く抱きしめ、話し始めた。
「ネロ、今まで色んなものを抱えて、辛かったんだな……」
「……」
「でも、もう苦しまなくていい。自分を責めなくていい」
「っ……」
「お前は一人じゃないんだ。あの嬢ちゃんだって、俺だっている。トリッシュやレディも」
「っぁ……」
「だから、一人で抱え込まなくていい。俺たちをもっと頼っていい」
「ぁ……ぁ……」
「ネロ、お前は大切な存在なんだ」
「あぁっ……ぅ……」
「お前は、生きてていい」
「うぅっ……ぁぁ……」
「みんなお前のことを……愛している」
ダンテの頬から流れる温かい雫が俺の首筋へと伝ったと同時に、俺は大声をあげて泣き出した。
ダンテの肩にしがみついて、その肩に顔を埋めながら、俺はひたすら泣いた。息が苦しくなるほど、手足が痺れるくらい、とにかく大声をあげて泣き続けた。
そんな俺の背中を、ダンテは優しく撫で続けてくれた。
ダンテの大きな手から伝わる温もりに、俺は忘れかけていた家族の温かさを思い出していた。
そうだ。俺にはこんなにも大切な人達がいるじゃないか。
ダンテと、ダンテとその仲間のトリッシュやレディも。
キリエ……誰よりも俺の側にいてくれる大切な人達が確かにいる。
俺は一人じゃない、一人じゃないんだ……
***
「……落ち着いたか?」
それからしばらくの間泣き続けていた俺だが、心も身体も徐々に落ち着いていき、荒くなった呼吸を整えたあとダンテの問いに静かに頷いた。
ダンテは俺を両脇から抱え、俺を持ち上げるようにその場から共に立ち上がった。
「ハハッ。涙でぐちゃぐちゃだが、吹っ切れたような顔してるぜ」
そう言うとダンテは、俺の頬に伝っている最後の一滴の涙を指で拭ってくれた。
「あぁ、おかげさまで。一生分泣いた気分だぜ。スッキリしたよ」
「それならよかった。あまり溜め込むなよ?俺はいつでも暇してるし、何かあったら気軽に電話でもよこしてくれ」
「あぁ……」
「さてと……あとは嬢ちゃんとのことだな」
「……」
「後悔しているんだろ。彼女に、優しく出来なかったこと」
ダンテの問いに、俺は目頭が熱くなったのを感じながら静かに頷いた。そんな俺に、ダンテは柔らかな表情を浮かべながら話し続けた。
「大丈夫さ、ネロ。今ならまだ間に合う」
「……」
「あの嬢ちゃんも、お前のことを信じて待っている。だから早く、彼女のもとへ……」
そう言うとダンテは、帰路に向かって俺の背中をトンと軽く押した。
俺はダンテの方に軽く振り向くと、静かに頷いた。そして、帰路の道をまっすぐ見つめたあと、ダンテに話しかけた。
「ダンテ、ありがとう」
「いや、別に構わないさ。お前の相手なんか、悪魔よりずっと楽なもんさ」
「ハハッ。なんだよそれ。あと……」
「?」
「キリエには、このこと内緒にしてくれよ。その……俺が泣いたこと……」
「あぁ、分かってるさ。ほら、早く向かいな。誰よりも大切な、愛しい彼女のもとへな」
ダンテの方に振り向かないまま俺は頷くと、その場から走り出した。
(キリエ、今行くから……)
どうか、お互い想い合う気持ちが少しでもあるうちに……
少しでも早く、彼女に会えますように……
*** Dante side
「さてと、ようやく姿を現したな」
ネロが泣き出したと同時に、黒いモヤとなって現れた一体の悪魔。
どうやら、そいつがネロの中に取り憑いていたようだった。
「人に取り憑いて、その人の苦しみを増大させ、悪の心を目覚めさせる。そんな奴は生かしてはおけないな」
俺は悪魔に銃口を向けた。
ネロの苦しみと共に、消え去れ。
「Jackpot!」
to be continued……