ピクスク様の『クリスマス UNIVERSE 同人誌 オールジャンル』に参加の2作目です。
Δドラヒナ…というより、Δ隊長(28歳)←Δヒナイチくん(16歳)の構図になります。
再会した年のクリスマス…この頃のΔ隊長は、ヒナイチくんの事を「大きくなったね、ヒナちゃん」と思っている頃なので、恋愛感情は低めです。
本編より、カズサ兄が優しめですね。
他のΔドラヒナのお話は、こちらから読めます→https://privatter.net/category/51192
@kw42431393
*捏造設定になります。
・Δ隊長は、父親のドラウスさんは人間、母親のミラさんが吸血鬼という設定です。ヒナイチくんより一回り年上。ルーマニア育ちの日系ハーフ。なので、独り言や鼻唄に突然ルーマニア語が混じったりする。生まれつき虚弱体質だが、ブーストを使えば短期戦の戦闘参加は可能で、本編よりは体力もある。幼い頃から「ダンピールとしての、突出した探知能力で市民を守る」という夢の為に突っ走ってきたので、子供時代の話や、普通の高校生をしているヒナイチくんと喋る時、寂しそうな顔になる癖があります。
・Δジョンは元々ミラさんの使い魔で「体の弱い息子をよろしく頼む」と言われ、Δ隊長を主人として尊敬し、行動を共にしている設定になっています。なので、Δジョンの方がΔ隊長よりちょっと年上です。この世界でも新横浜のアイドル。
・ΔヒナイチくんとΔ隊長の出会いは、彼女が幼い頃に下等吸血鬼に襲われていたところをΔ隊長が助けた、という事になっています。Δ隊長は幼い頃からの憧れの人で、常にキラキラした目で見上げています。元々和菓子党だったが、幼い頃に貰ったクッキーを食べてから、現在はクッキー党。バーの娘なので、他の世界線に比べて料理は上手で、コミュニケーション能力もそこそこ高い。
・Δカズサは、新横浜退治人ギルドマスターの息子で、ヒナイチくんの兄。赤い帽子とジャケットがトレードマークの、拳銃使い『レッドバレッド・カズサ』と名の売れたシンヨコの退治人です。趣味はソシャゲ、喰えない性格、と公式に準拠。両親が忙しかったので、実質、妹の父親代わり。完全に反対ではないが、妹の恋に関しては微妙に応援しづらいと感じており、冗談交じりに隊長をイジッたり、さりげなく、釘を刺したりしている。
『おい、ヒナイチ。サンタさんに頼むプレゼント、決めたか?』
『う~ん。』
10歳の頃だった。夏に伊那架町の山奥で、貴方に初めて出会った年のクリスマス。
決めたとか決められないとかは、なかった…土台、不可能な事だったから。
『…クッキーでいい。』
『今年は、いつもの饅頭じゃないのか?分かった、伝えておく。』
ドラルクおじさんの…という言葉は、飲み込んだ。
赴任地さえまだ決まっていなかった、吸血鬼対策課の新米隊員だったあの人。
もう、研修は終わっていたのかもしれないけれど…10歳の子供に、そんな事は分からない。
小さい頃から、バーを手伝ってお客さん達に可愛がられ、退治人達に紛れて鍛錬していた私は、聞き分けがよかった。だから、『おじさんは、どこにいるの?あいたいよ。』なんて、言わなかった。
代わりに、一人前の退治人になって、多くの市民を守れるぐらい強くなったなら…憧れの『ドラルクおじさん』に会える…そんな根拠のない固定観念に、希望を見出していたのだと思う。
『9時には、寝とけ。寝たフリする悪い子に、サンタさんは来ないからな。』
『わかってる。』
兄も、それ以上は何も言わなかった。
イブの夜、私は枕元に靴下を置いて、眠りについた。
小さい頃から、大人達から色々聞いていた私は、サンタの正体にもう気づいていた。
翌朝、落胆する事もなく、靴下に入っているクッキー缶を開ける。明らかに、あちこち歯抜けの個所があった。
『たべたな、にいさん…あれ?においが、にてる…でも、おじさんのクッキーよりおいしくない。』
それでも…兄なりに、気を使ってくれたのかもしれない。
クッキー缶には、ルーマニアの国旗が描かれていたのだから。
「サンタのお姉さん、ありがと~。」
「またね~。」
「あぁ、気をつけて帰るんだぞ。」
渡したお菓子を大事そうに抱えて、子供達がイルミネーションに彩られた大通りを駆けていく。
はしゃぎながら、家に帰っていく彼らに手を振って…その姿は、その時分の私を思い出させた。
「サンタのお姉さん…か。なんだか、くすぐったいな。」
ウィンドウに映った、自分を確認する。
白いファーが付いた赤い帽子に、赤いブーツ、赤いスカート…絵に描いたような『ミニスカサンタ』だ。
「お姉さん、か…少し前まで、私も貰う側だったんだよな。」
あれから、6年が経った。
『ドラルクおじさん』に憧れていた10歳の子供は高校生となり、卒業後に退治人の資格を取る事を視野に入れて、学生生活の傍ら、見習いをしている。
まだ、武器の使用は許されていないから、私の仕事は、駆除現場の片づけや市民の誘導、地域活動の手伝いがメインになる。
学生生活との両立は、大変じゃないかって?まあな、でも、楽しいぞ。
今だって、新横浜ハイボールで行われていたクリスマスイベントを、手伝っていたんだ。
やっと、大人に近づいた…そんな気がする。なんだか、くすぐったい気分だ。
「さてと…。」
箒と塵取りを使って、店の前を掃除する。
どうしても子供が多いから、零してしまったクッキーやポテトチップの滓が目立っている。
こういう事も、地域アイドルを兼ねた吸血鬼退治人の仕事だ。
さあ、最後の仕上げをしよう。
♪~Silent night~Holy night~♪
…と、ふいに店の中から、音楽が漏れて来た。
この曲は、きよしこの夜だ。
しっとりしたこのメロディーは、賑やかだったイベントの夜を締めくくるのに、相応しい。
「今年も、もうすぐ終わりか。色々あったな…。」
曲に併せて、私も口ずさみながら箒を使う。
本当に、色々あったんだ…。
「♪~All is calm,all is bright~♪」
高校生になって、兄やケンさん達に現場に連れて行って貰えるようになって…
「♪~Round you virgin mother and child~♪」
学校生活と退治人見習いの両立は大変だけど、楽しくて…
「♪~Holy infant, so tender and mild~♪」
そして、夢に一歩近づいた事が、嬉しくて…
「♪~Sleep in heaven plac…ん?」
そして、何より一番素敵な事は…って、あれ?
ここの歌詞、間違えてるような…
「♪~Sleep in heavenly peace~♪…惜しかったね、ヒナイチくん。」
品のある、綺麗に響くテノールに振り返る。
そう、何より…
「あ、こんばんは。隊長さん!」
「こんばんは、可愛いお嬢さん…もとい、可愛いサンタさん。」
「ヌフフ…。」
この街に、貴方が赴任してきて…何より、こうして毎日会える様になったって、事なんだ。
オマケ
「折角、来てくれたのにすまないな。イベント、もう終わってしまって。」
憧れの隊長さんの元に、駈け寄る。
今夜も肩にアルマジロのジョンを乗せて、冬用のコートに身を包んだ姿は…色白な肌に映えて、綺麗だった。
「思ったより、早く終わったのでね。頑張っている、君にこれを。」
そう言って、貴方は初めて会った時と変わらない、優しい笑顔を見せてくれた。
そして、懐からクリスマスツリーが描かれた、可愛い袋を差し出してくれる。
あの頃の私が、見たくて見たくて堪らなかった笑顔を。
あの頃の私が、欲しくて欲しくて堪らなかったクッキーを…最高のクリスマスプレゼントを。
「わぁ、クッキーだ!!」
「そう、可愛いサンタさんにプレゼント。今日は、クリスマスだもの。特に、気合を込めて作ったのだ。貰ってくれるよね?」
「勿論だ!いただ…」
いただきます…と言おうとして、口ごもる。
さっきまで、『あげる側』になっていたのを誇りに思っていたはずなのに…隊長さんの前に立つと、ついつい子供に戻ってしまうのは、現金過ぎる。
何より…
「う~ん。」
「ヌヌイヌヌン?」
「どうしたのかね?クッキーモンスターらしくないよ?」
私は、隊長さんに何も用意をしていないんだ。
恥ずかしくて言えないけれど、本当は、隠れてマフラーを編んでいたんだ。
だけど、私は不器用でな。ガタガタで、恥ずかしくって…だから。
「アハハ。急に来た私が悪いのだから、気にしないで。じゃあ…そうだ。さっきのを、もう1回歌ってくれる?」
「さっきのって…きよしこの夜、をか?」
あんまり、上手でもないけどな…そう思っていると、貴方はクスクス笑いながら、こう言ってくれた。
「日本では馴染みがないけど、祖国ではクリスマスに、キャロルを歌って家々を回るのだ。そして、歌ってくれた子達に、私達は焼いたクッキーをあげる…丁度、いいでしょ?」
さらに…これは、反則じゃないかな。
貴方は私の手を取って、そっと口づけを落としてから…こう締めたんだ。
「それに、君の声…とても透き通ってて、天使みたいだったよ。だから、もう一度聞きたいのだ。ちょっとした、プレゼント交換みたいでしょ?そういう事で…どうだろう?」