ぐるぐる巻いてあってもどうせ見えてる(リッパーニンフ賞)
@azisaitsumuri
会った相手が普段は付けていないゴーグルをしていたので、リッパーは首を傾げた。
「目ェ怪我したっつったろ。」
「ああ、そうでしたっけ?」
「ったく。」
首の後ろをがしがしと掻く小男からは、それだけで無く、見えないことへの不満も、感じられた。
「ソレ心配で会いに来たわけじゃねえことは分かりきってたけどさ。」
「ソレで見えるようになってるんですか?」
「ひとの話を聞けよ、って言う前におまえはほんと。」
リッパーの爪がゴーグルの透明な板を叩くのが、傭兵にはかつりと言う音と共にそれ越しに見えた。近ければ見える。
傭兵は、自分は先端恐怖症では無いが、無くともこれは恐怖だと思った。
「……いやこれはおれが自分で目を触らないようにとか。」
平時と違ってぼやけた遠方を気にして、つい、自分の目をこすってしまうのだ。
「なにそれ。猫か犬ですか、おまえは。」
リッパーが面白そうに、ゴーグルの表面を爪で抉って傷付けた。
「あ!おまえ!」
ぎぎ、と言う力強い不快音を追って爪痕が付いた。
「どうせ見えないでしょう?」
最低なのだ、こののっぽは。盲者に対して、見えないのになんのために目玉が付いてるんですかファッションですか、と平然と言って来るような男なのだ。どうせ見えないでしょう、だと。
リッパーが爪でなぞった溝から、傭兵の苛立ちが滲み出て立ち込めるようだった。
エリザベスカラーで苛立つ犬猫の気持ちは、傭兵にとってはすっかりリッパーへと対象を変えた。