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【交わさぬ思い】

全体公開 らぬすて 6 1036文字
2024-12-19 23:57:10

ゼタの思いの推測と解釈、13章と雪舞う空からのノスタルジアのネタバレあり
ゼタ目線

Posted by @vmon1202

【交わさぬ思い】

調査に行ったザイードの代わりに、僕がカシムの化粧を担当することになった。
自分の目線を合わせるために彼の顎を軽く持ち上げた時、ふと気づく。いつの間にか、見上げるだった僕が彼を見下ろしている。
この人は、初めて会った日からまったく変わらない。記憶を遡ると、ずっとこの姿に居たことで、僕たちの違いを改めて実感した。

長い時を生きるというのは、どれほどの孤独を抱えるものなのだろう?
カシムは一体どんな気持ちでこの永い時間を過ごしてきたのだろう?
それは、常に死と伴い僕には想像すらできないことだった。
成長とともに、自分の体の脆さを痛感する日々。時間がないことへの焦りが僕を駆り立てる一方で、不死のカシムを見て、時折羨ましいと感じる自分がいる。

「どうした?」
「何のこと?」

憂いを帯びた僕の目をじっと見つめながら、カシムが口を開く。平常心を保つつもりだったのに、その目から逃れることはできなかった。

「俺に隠す事が?」

この人が僕とアルを「宝物」だと言った。その大切にされている実感はある。けれど、アル以外の誰かに大事にされると、胸の奥が掻き乱され、鬱々とした気持ちになる。嫌いなわけではない。ただ、注目されることで心の奥に広がるもやもやした感情が、どうしても拭えない。
こんな矛盾な気持ちがあるからこそ、「自分はちゃんと生きている」と感じるなんて、皮肉だと思った。

……あなたに隠し事なんて、意味がないでしょう?」

本当は言いたくない。でも逆らうこともできず、かといって素直になることもできない。だから、せめて少しだけ抵抗させてほしい。

「なら、聞かせろ。あの万華鏡、お前の目にはどう映る?」

まるで心を読まれるような問い。
それは、前日にカシムの気まぐれで市場で買い取ったお土産のことだ。
理由のわからない質問に、戸惑いながらもぽつりと答える。

「最初は……眩しくて目がくらむ。でも、落ち着いて見ると、彩り豊かな図案が次々と変化していく。まるで……

まるで、あなたがくれた名前(もの)のように。眩しすぎて胸が苦しくなるほど幸せな感覚。
だけどその思いを飲み込んで、代わりに誤魔化すような言葉を口にした。

「アルみたいに、追いつかないです」

「可愛い奴め。」

カシムは意味のわからない反応を返す。それでも、僕が見透かされていることはわかっていた。だからこそ、眉間にシワを寄せ、黙ったまま化粧道具を収めた。

(終わり)


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