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意外にお目にかからない

全体公開 トワスト 1 1170文字
2024-12-22 19:20:06

第18回トワスト(遅刻参加)テーマ「悪知恵」参加作品です。制作時間は約45分です。

「全く。いい加減ソレイユに自力で宿題をやるように言ってくれ。お前が親だろう」

「私も言っているんだがねえ。今回は君に迷惑をかけていたのか。帰ったら厳しく言っておくよ」

 仕事が終わったら、珍しく友からメッセージアプリに連絡が入っていた。一体何があったのだろうと帰り道にジェフの家を訪ってみれば、これだ。

 ランフォードの娘、ソレイユは勉強が苦手である。長い生を持っているのだから、何度もやっているうちに覚えるだろうと気長に構えていたのだが、娘の勉強はいっこうに出来るようにならない。最近は親の小言は聞き流し、ランフォードの友である正やジェフにさっさと勉強を聞きに行ってしまう始末なのである。

「少しは自分で調べて、不明点を尋ねるならともかく、ソレイユのは一から十まで全部人頼みなんだぞ。俺様としては、この点いい加減に猛省を促したい」

 ジェフの言い分はいちいちもっともで、何も言い返せない。ランフォードは黙って温かい緑茶をすすった。

「わかった。わかったよジェフ。帰ったらしっかり言い聞かせておくから」

「本当か? お前は娘に甘いから、どうも信用ならんぞ」

「そこは信用してほしいな。私だってちゃんと言うよ? ソレイユも悪気があってやっているのではないから、この辺で許してやってくれないかね」

……まあ、悪気は無いんだろうな。お前の娘に、悪知恵の類は働かないだろう」

 ジェフの目元が、僅かに緩む。何だかんだ言いながら、この男はソレイユを昔から可愛がってくれているのだ。

「悪知恵とは無縁だと思うよ、ジェフ。私もサティナも、そんな風には育ててないからねえ」

 ……子どもの癖に悪知恵が、などということを会社でもよく耳にするが、思えばランフォードはそういう子どもを見たことがなかったりする。例えば、今の時代で出来た人間の友、荻原正のことなら、幼い時分からよく知っているが――正もそういう悪知恵とは無縁の子どもであった。

 最近、ジェフの店『清遊堂』の隣にある衣料品店『ミヤコ屋』の娘、朝恵と接する機会もあるが、朝恵もそういう悪知恵とはとんと縁が無さそうに思える。

「ねえ、ジェフ。――意外に悪知恵の働く子どもって、お目にかからないね」

「そうか、ラン? 俺様はそうでも無いと思うが」

「え、そうなのかね?」

「俺様、こう見えても子どもと接する機会は意外にあるんだぜ?」

 商店街のイベントに参加しているとな、とジェフは嘆息する。――なるほど、ジェフはそこでいろんな子どもを見てきているのか。この点、会社勤めのランフォードとはかなり違う。

 ここから、娘についての説教が再燃することはおそらく無いだろう。

 やっと少し落ち着いてきたランフォードは、緑茶に添えて出されていた季節の練り切りに手を伸ばした。


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