大好きなフォロワーさんと見に行ったクリスマスツリーがとてもきれいでした
@kurato0o
ド健全クリスマスデートォョ
高いビル街。青や白に点滅する大きなクリスマスツリー。その下で、少女はじっと、目をくりくりさせて、ぽつねんと立っている。
立ち続けて、小一時間、そうしている。
今日はクリスマス。毎年訪れるこの季節に、誰かとこんな綺麗な場所に来るのは初めてで、都会の喧騒には慣れているものの、見渡す限りのカップルに少女は元々大きな目を丸くして、彼らが横を楽しげに通り過ぎていくのを見守っている。中々見る機会のない光景に飽きることはない。体力があるおかげでしんどいという感情もない。ただ、皆が皆、誰かと仲良く歩いているというのに、自分はひとりぼっちで立ち尽くしているという状況に一抹の不安は過ぎる。
ここで待ってなさいと言った男が離れて一時間。そろそろ帰ってきても良い頃合いだとは思うのだが、見上げるような長身が人混みに紛れていたらすぐに気付くはずなのだ。それが見付けられないというのは、まだということなのだろう。
いつか彼からもらった、男物のマフラーはぶかぶかで、少女の顔の半分以上を隠してしまっている。温かい。なんだか守られているような、そんな感覚にもなる。
目線を上げると、大きな大きなクリスマスツリーがきらきらちかちか、薄い青や白に点滅している。クリスマスといえば赤と緑の印象だったが、青も可愛い。珍しいのだろうか。クリスマスにこうして都会に出る機会はそうなかったので、少女の目に映るものはすべて真新しいものに見える。辺りは和やかで華やかな音楽が流れていて、それに混じって明るい笑い声が響いている。楽しそうだ。
鼻の頭を桃色に染めた少女は知らず知らずのうちににっこりと微笑んでいる。帰ってこなかったらどうしようという気持ちよりも、今はこの光景がただ楽しかった。ツリーから零れ落ちるほどの光の粒が眩しくて、綺麗だった。
「ぼんやりしてるんじゃあないですよ」
不意に、頭をぽんと叩かれる。ぎょっとして見上げていたのをやめてそちらを振り返ると、そこには待ち侘びた人物が、何やら大きな荷物を持って、少し疲れた顔でこちらを見下ろしている。
「ウォロさん、いつも頭叩くのやめてください」
「叩いてないでしょう。手を乗せてるだけですよ。丁度良いところにある方が悪い」
いつものように訳の分からないことを宣った男は、一度少女の頭をぐりぐりと撫で繰り回した。ちょ!ボサボサになる!と言いつつ、じたばたする暇もなく手は離れていく。
「これ、プレゼント」
「へ」
「受け取りなさい。もう重い」
「ええっわぶ」
ぐっと巨大な荷物を押し付けられて、少女は息を詰まらせた。自分の全身ほどある大きさの、赤いラッピングが施されたそれは柔らかな手触りだった。
「開けなさい」
――…この人……。一時間も待たせておいて傍若無人が過ぎやしないだろうか?
少女はそんな風に考えながらも、爪先立ちで荷物の頭の部分の紐を解く。綺麗な、それ自体の手触りもふわふわしたリボンはするりと解けるとそのまま地面に落ちてしまった。持つのも精一杯だった荷物のラッピングも、同じようにするりと地面に吸い込まれるように落ちていく。
「わ……っ」
中から出てきたのは、大きな大きなヒメグマのぬいぐるみだった。
「ウォ……、ウォロさん……これ……!」
「欲しかったんでしょう?」
ぶかぶかのマフラーから必死に顔を覗かせながら、こくこくと何度も頷く少女に、男はうっすらと微笑んだ。若干疲労感が滲んでいるところを見ると、こんな日に買うのはやはり一筋縄ではいかなかったのだろう。
彼と歩いている時、ガラスの向こうに見えた、大きなヒメグマのぬいぐるみ。大きくてふわふわで、目はきゅるきゅると大きくて、片手を咥えた姿はとっても可愛かった。だけど欲しいというより触ってみたいというくらいの感情で、現実的に購入できる値段ではないだろうことはすぐに察しがついた。諦めるとかそういうつもりもなく、ただ、いいなあと思っていたのだが、自分が思っていたよりも視線は熱かったのかもしれない。
「いいんですか?こんな……こんなおっきいの……」
「いいもなにも。もうアナタのものですし」
男はそう言うと落ちた紐やラッピングを拾った。そのままぐしゃりと雑に畳んで上着のポケットにしまうあたり、性格が出ている。
「でもアナタが責任を持って持ち運びしてくださいね。ワタクシは手伝いませんからね」
諭すようにそう言う男が、もう一度少女の頭をぐしゃりと撫でる。
少女は隠し切れない嬉しさをふふっと声を漏らして笑って、抱くのもいっぱいいっぱいなヒメグマのぬいぐるみをしっかりと抱き締めたのだった。