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帰ってくるまで、待ってるから

全体公開 本編ドラヒナ(両片思い期) 4665文字
2024-12-28 16:46:32

両片思い期の本編ドラヒナで、トウモロコシご飯のお話です。微かに記憶に残る、ビチビチを添えて。
赤毛に緑の目は、魔女や吸血鬼と関連しているのは、有名な話だと思います。人間なのに、吸血鬼の様に『招かれないと入れない』彼女に、チャレンジしてみたり。
妹からの報告書を確認する、諸悪の根源カズサ本部長のモノローグを追加しました。

2024/06/25 に上げました。

Posted by @kw42431393

 「はぁ毎年の事だが。嫌な季節に、なってきたな。」
 「急に、湧いてきたな。昨日はデカい蚊で、今夜は吸血ナメクジの大量発生とは、な。」

 チラリと、公園の方に目を向ける。市民の避難誘導をしている、サギョウやモエギ達の姿を確認する。
 梅雨に入ったのだ、仕方あるまいそう言いたいが、汗で粘ついて気持ち悪い。思ったより、駆除も進まない。

 『そちらの監視に行くのが、遅くなりそうだ。すまないな。』
 『若造も、下水のスラミドロの駆除に呼ばれて、出て行ったよ。忙しないねえ。』
 任務に入る前に、電話でドラルクと交わした会話を思い出す。
 ああ、ついてないな。だって
 『オータムから、トウモロコシを貰ったんだよ。今、トウモロコシご飯を炊いている所さ。好きだったでしょ?』
 『トウモロコシご飯!?よし!早く終わらせて、向かうからな!』

 だから、いつも以上に気合はこもっていたんだけどはあ。
 時間を確認する。もうすぐ、11時が回る。
 グゥ~、とお腹が情けない音を立てた。
 事務所に寄る事もなかったから、元気の素、もとい『ドラルクのクッキー』を、今夜はまだ口にしていない。
 気を利かせたモエギが、ヴァミマで塩にぎりとお茶を買って来てくれたのだが全然、治まってくれそうにない。
 今夜は、事務所に行く余裕はないのかなこのままでは、食べ損ねてしまいそうだ。

 「夜ご飯、トウモロコシご飯なのに。」
 思わず漏れた独り言とうもろこしご飯か。
 昔もあったな。あったのかな?

 「副隊長!10時の方向だ!デカイのが、いるぞ!」
 半田の声に、現実に戻される。
 そうだ、とうもろこしご飯の心配をしている場合じゃないぞ。
 終わらせてから、12時までに事務所に行けばいいだけだ!
 「了解!半田、お前は後ろを頼むぞ!」
 両手に剣を携えて、10時の方向に跳躍する。
 その先にいるのは

 「吸血ムカデか!逃がしはせんぞ!あと、食べ物の恨みは、恐ろしいんだからな!」



 あぁ、やっぱりダメだったか。
 急いで向かったけれどもロナルド事務所は、『本日閉店』の札がぶら下がっていた。
 時計を確認する。
 とっくに、日付を超えていた。これでは、『監視任務』という大義名分も立たない。
 「う~ん。」
 『誰でもお気軽にお入り下さい』の看板と、手元にあるみっぴきお揃いで作った合鍵を前に、考え込む。
 家族同然の私達だけどやっぱり、な。いくらなんでも

 グゥ~

 お腹は、正直だ。
 ロナルドももう帰っているのかな、ドラルクとジョンはいるはずだ。
 トウモロコシご飯は、残っていないかもしれないけれども、クッキーぐらい残っていないかな。
 すっかり、ドラルクに餌付けされてしまった頭が、そんな事を考える。
 「うん今夜は、寮に帰ろう。途中でヴァミマに寄らなきゃ。」
 ほとんど、寮に帰ってないから、冷蔵庫の中は何もない。
 外食もすっかり減ったからいや、あいつの手料理を知ってから「食べた気がしない」時もザラだ。何より

 『ちょっと、遠慮しろよな。全く、うちのエンゲル係数、どんだけ上げる気だよ。』
 『細かい事は、気にするな。私だって、多少は出してるぞ。』
 『ヌーン。』
 『尻の穴の小さい事を、言わない。いいじゃないか。君だって、ヒナイチくんがいる方が楽しいだろう?』
 『あ~。ま、な。』

 あの風景のない、食事なんて考えられない。
 甘ったれてるな少し前まで、一人暮らししてたじゃないか。
 テレビと携帯だけをお供に、あるいは寮の食堂で、周りの会話を聞きながらの食事風景それが、普通だったのに。



 「おや、いるじゃないか。待ってたよ、ヒナイチくん。」
 「ヌヌッヌイ!」
 「ちん!?」

 突然、目の前の扉が開いて、飛び上がる。
 目の前のドラルクの腕には、カバンがぶら下がっていた。これから、どこかに出かけようとしていたのだろうか。
 どうしようさっきまでの、意地汚い自分が恥ずかしくなる。
 「いらっしゃい。大変だったね。さあ、お入り。」
 「ヌヌイヌヌン!ヌッヌ、ヌッヌ。」
 「あ、あぁちん。その。」
 断ろうと、口は動くのだが、意味を持った言葉は、出てこない。
 動揺している私を尻目に、ドラルクは私の手を引いて、事務所に招き入れる。
 「お腹空いたよね?先に、シャワー浴びておいで。その間に、用意しているよ。」
 着替えを取っておいでと、髪にいつもの口づけを落とされて。
 「う、うむ。分かった。こんな時間に、すまないな。」
 「こんな時間?ウフフ私にとっては、当たり前の時間だとも。」
 魅了にでもかかった様に、私は床下に降りていく。

 何だか、悩んでいた事の方が妙だと、言われている様でそっちの方が普通なのに。
 こんな時間に、お腹が空いて、入れなくて、すぐに帰ろうとしないで、迷っていたら、招かれてうん。
 人としてどうなんだろう。
 むしろ、吸血鬼に近くなってきた様な
 着替えを持って、梯子に向かう。
 すると、とても香ばしい、醤油とトウモロコシのいい匂いがしてきた。



 「おー、ヒナイチ。お疲れさん。」
 「あぁ、ロナルドも大変だったな。」
 床下から出た所で、事務所にやってきたロナルドと鉢合わせる。
 これから、彼はパソコンに向かうのだろうか。
 あれ?それは
 「どした?あ、これか?」
 私に話しかける、ロナルドの手元を見る。彼が食べているのは

 「焼きおにぎり?」
 「おうよ。夕食に出てた、トウモロコシご飯をな。ドラルクが、署のお前に差し入れようとして、ついでに半田にもって握ってたもんだ。けど、お前が帰ってきたから、今温め直してんだよ。マメな奴。」
 「す、すまんな。私の分、置いててくれたのか。」
 「たりめーだろ。どした?」

 『あ~!にいさん、トウモロコシごはんがない!』
 『うむ!俺が、全部食べた。約束を1つしか守れなかった罰っと。甘いな、妹よ。』
 『うえ~ん。せっかく、たのしみにかえってきたのに~。』
 『ところで、お前がさっき言っていた、ビチビチ痛ッ!!』
 『どうだ!これで、きょう、わるいやつを、2つもやっつけたぞ!』

 思い出した。昔、一人で山に遊びに行って、遠くに行きすぎて、一人で悪い吸血鬼をやっつけてトウモロコシご飯を食べ損ねたんだ。
 一人あれ?もう一人いた様ないや、ひとり?いっぴきビチビチした、こう



 「ヒナイチくん。どうしたの?」
 何故か、いつも聞いているのに懐かしい声に、振り返る。
 エプロンを着たあいつの手には、おたまが握られていた。
 よく嗅ぐと、香ばしい焼きおにぎりの香りに混ざって、味噌汁の匂いもする。
 ますます、お腹が空いてきて

 「あ、ありがとうな。私の分、取っててくれて。」
 何だかあの時の心残りを、取り戻した気分だ。
 実家以上に実家らしい、この場所で今晩も、一番楽しい時間を過ごせるとは思わなかったから。
 「何を言ってるの。連絡がなかったもの。夜が明けても、君が帰ってくるのを、待つに決まってるでしょ。」
 「ヌンヌン。」
 「待つも何も、署まで迎えに行こうとしてたろうが。お前は、こいつのお袋かよ。」
 「ば、バカ造!そういうのをバラすスナァ!!」
 「ヌエ~ン!」
 いつもの風景に苦笑しながら、私は着替えを持って、お風呂場に向かう。

 仕事中も、楽しみで楽しみで仕方がなかったトウモロコシご飯を脳裏に浮かべながら

 『こまったなぁよるごはん、とうもろこしごはんなのに。』
 『家族が心配しているとか、言えんのか。小僧。』

 そういえば、さっきから断片的に思い出される、ドラルクとよく似た声は、誰だろう?



 『引き続き励めよ、妹よ。』

 こうなるのは、決まっていたのかもしれんな。
 新横浜警察署から回されてきた、『吸血鬼ドラルクの監視報告書』もとい『イモ虫観察日誌』を確認する。
 初めに、妹から勘違いだらけの報告書が回ってきた時は、『そんな事もあるものか』と、思っただけだった。
 幼い頃に、森で会ったという自称『畏怖すべき吸血鬼』。妹に言わせれば、『変なビチビチ』。
 埼玉の古城でひっそりと暮らす、竜の血族の嫡孫である吸血鬼だと、若い頃の俺は気づいていた。

 『ところで、お前がさっき言っていた、ビチビチ痛ッ!!』

 妹を助けてくれた礼むしろ、妹が『大事な血族の後継ぎ』を助けたという事実をダシに誼を通じておこうと、当時の俺は考えた。
 今でこそ、人間と吸血鬼。相反する両種族は、共生の道を歩んでいる。
 吸血鬼ドラルクの祖父である、✕✕✕✕✕とヘルシングの友情によって。
 さらに、彼らの天敵である『吸血鬼殺し』として、生を受けた我が妹を噛ませる事が出来ればどうだろう。 
 あと6年もすれば、ヒナイチも『吸血鬼共が涎を垂らさずにはおれない程の、美味しそうな美少女』になるだろう。幸い、彼は従妹との縁談も破断になったと聞いている。その後、浮いた噂もない。
 再び、両種族の関係が険悪になった時の布石として、今の内に、ヒナイチを彼に懐かせておこう。
 そう考えた事もあったのだ。何故、過去形なのかだと。それはな。

 『どうだ!これで、きょう、わるいやつを、2つもやっつけたぞ!』

 俺にトウモロコシご飯を食べられた腹いせに、脛を蹴飛ばしたあどない妹を見て、とりあえず諦めたのだ。まあ、彼らと誼を通じるには、他にも手段はあろう。そう思ったのだ。そう思っていたのに

 『吸血鬼ドラルクの、脅威は計り知れない。監視任務に、自分を就かせてくれ!』

 当時の因縁をすっかり忘れた本人が、そんな申し出をしてこようとは。

 『吸血ナメクジの大量発生。駆除、市民の避難、全て問題なく終えた。日を股越えてから、吸血鬼ドラルクの監視任務に就く。トウモロコシご飯の焼きおにぎりと、味噌汁と、唐揚げを食べた。美味しい。勿論、クッキーも

 想像以上に、ヒナイチは彼らの世界に溶け込んでいる。
 家主の退治人ロナルドとの関係も、良好。実の兄妹以上に、兄妹らしい。
 吸血鬼ドラルクは、ヒナイチの事を『餌付けし甲斐のある、ハムスター』と公言して憚らない。
 「フフ、ハムスターか。」
 思わず、口角が上がる。

 『ヒナイチくんは、まだ戻らんかね。』
 
 抜き打ちで上がりこんだ時に見た、奴の顔を思い出す。保護者の仮面を被っていても、俺には分かる。
 妹に本性を知られて、逃げられたくないのだろうその下には、ドロリとした人ならざる者達が持つ、情念が滲んでいた。
 
 「ヒナイチが大人になるのを、待っているのか。結論を後回しにしているだけか。いつまで、こんなおままごとを続けるつもりなのだろうな。」
 苦笑して、報告書の最後の一文をなぞる。

 『遠慮するべきとは、分かっているが。やはり、事務所に帰ってきてよかった。ドラルクは、私に『夜が明けても、帰ってくるのを待ってる』と、言ってくれたんだ。』
 
 
 
 
 
 
 
 

 


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