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ォョ小噺勝負の行方

全体公開 ォョ関連 19 2169文字
2024-12-31 23:02:29

リハビリかきおさめォョ。
今年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。

Posted by @kurato0o

世の中では「愛してるゲーム」というものが流行っているらしい。
そのことを知ったのは調査の一環でカイに出会った時のことだ。村娘が何人か集まっているところにげんなりした表情を浮かべた彼女を見付けて手を振ると、彼女はショウを目掛けて一目散に駆け寄って、「ついていけない!」と涙目で訴えた。今の若い女の子たちは、意中の人と顔を突き合わせて、互いに「愛してる」と交互に言い合うのだ。表情を大きく変えてしまった方の負け。
「そそそんな遊びの何が愉しんだ……!?」
わなわなと震えるカイは本気で分からないといった様子だったが、ショウはそれを聞いてこっそり、いいなあと思っていた。
と、いうことで。
「愛してるゲームをしましょう!」
帰ってきたウォロに人差し指を立ててそう言った。
「はい……?今なんと?」
怪訝な顔をする男に、ショウはえへんと胸を張って、本日聞いたばかりの話をウォロにしてみせた。彼は苦虫を嚙み潰したような顔をしながら最後まで聞いて、
「それ何が楽しいんですか?」
カイとおんなじことを、表情を変えずに言い放った。
「ウォロさんまでそんなこと言う!こ、こういうのは……やってみないと楽しいかどうかなんかわかんなくないですか!?いいじゃないですか面白いかもしれないじゃないですか!やりましょうよ!ねえ、やりましょーよー!」
「わかったわかったわかった!分かったから振り回すな!」
ウォロの服の裾を両手で掴んで振り回すショウの頭を、今度はウォロががっしりと掴む。むうー!と唸ると、ぱっとすぐに離される。面倒臭そうにしながらもその場に座るウォロに、ショウは鼻歌混じりにぱっと座る。
「どっちから始めるんですか?」
「じゃああたしからで!」
元気よく、はつらつとした声で返事をしてみると、気圧されたのかウォロが片眉を上げる。出来るんですか?とでも言い出しそうな顔に、ショウは片手で制しながら、
「愛してます!」
大声で告げた。
………………
………………
無言の間が続く。
ウォロの表情はぴくりとも変わらない。
にっこりと笑ったまま、ショウはふむと胸を撫で下ろした。
よし、思ったより恥ずかしくない。
ひとり納得しつつ、またウォロを指さす。
「今度はウォロさんの番ですよ」
「愛してます」
「えっ……情緒ない……
「文句を言うな」
「あたっ」
でこぴんを喰らって、その場で仰け反る。
それはそうか。こんなことでウォロが動揺するなんて思っていない。別にそんな淡い期待を抱けるほど、ショウは楽観的ではなかった。
体勢を正して、また愛してると告げる。彼の表情は穏やかで、代わり映えはしない。
こんなありきたりで、誰にでもできるようなことがしてみたかった。
ショウが望んでいたのはこういう、なんでもないような時間。
ただ一緒にいて、他愛ないことだけで時間が過ぎていく、平和な時間。
難しいことやわだかまりはいらない。今こうしている時間はお互いが何者であるかなんてどうだっていい。ただ一緒にいて、笑い合っていたかった。
ショウの願いは叶った。思ったより融通の効く男だ。そんな能天気なことを考えられているのも少しの間だけだったということに、ショウはすぐに気が付いた。
「愛しています」
低い声がそう告げる。
これが戯れだということは、ショウが一番よく分かっている、はずだった。
………………
………………
「アナタが黙ってどうするんですか」
「すみません……つい……
思ったよりも恥ずかしい。
自分が言うのよりずっと恥ずかしい。
盲点だったと気付くのには遅すぎた。
ショウは真っ赤になった頬を両手で押さえて、唇を引き結ぶ。
こんなに恥ずかしいとは思っていなかった。
自分が言うのはそんなに、大したことないと思える。いつも心の中で思っていることを元気よく発すればいいだけだと思っていたし、その通りに出来ている。
けれど。
「愛しています」
「~~~~っ!」
普段そんなことを考えてすらいないだろう男から紡がれる「愛」というワードに、背筋に心地よい電流が走ってしまう。
こんなはずでは……
ショウはふるふると小刻みに震えながら、拳を握る。
そもそも、ウォロが快諾するとも思っていなかったのだ。
どうしよう。
もう負けたい。
ていうか負けている気がする、気持ちの面でも、外面でも、どちらでも。
ふっと音もなく笑うウォロが、美しいつり目がちな目を落として唇を薄く開く。
「愛して、います」
ゆっくり、慎重に紡がれる言葉に、ショウは耐え切れず半泣きになって立ち上がった。
「ま、負けです負けです負けです!もうあたしの負けでいいですっ!耐えられない……!」
「ぶっ」
美麗な顔立ちで、淡々とした表情のまま、ウォロは喉奥で笑いを殺した。
突然何を言い出すかと思えば、まるで子供のような要求。普段あれだけの人の為にと動ける人間が、今は自分の定型文のような言葉ひとつで青褪めたり、赤くなったりと大忙しに表情を変える少女が、面白くない訳がない。
「ふ、ふふ……。勝てない勝負はするもんじゃありませんね」
「わ、わらうなー!」
「ふふ……
その場で地団駄を踏む少女に、男はついに腹を抱えて声を漏らす。
勝負の行方はどちらと決めるほどのことでもなかった。


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