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ご馳走様とも一応は言う

全体公開 銀魂二次創作 4 38 2289文字
2025-01-04 17:00:08

近藤、土方、沖田が焼き鳥を食べに行く話

Posted by @bbbcde519

「ハツ、ささみ、砂肝、レバー、うずら、あと……
「おい総悟、とりあえずそのくらいにしとけ。ももとせせり二本ずつ、タレでお願いします」
「へーい。あ、俺全部塩で」
「俺はタレのねぎまと皮とつくねで、あとマヨってあります?」
「トシ、マヨは自分でなんとかしろ。とりあえず以上で」
 人の良さそうな大将は会釈をして、手早く串の準備にかかる。沖田たちが座っているのは焼き場のすぐ隣に配置されたテーブル席で、大将の鮮やかな手つきや、煙を上げて焼かれている焼き鳥が良く見える。旨そうな匂いを嗅いだ沖田は口元が緩むのを感じた。カウンター席が十数席、テーブル席が二つの店内はほぼ大入満員、酔っ払いで賑わっているが、その騒がしさも嫌いではない。おそらく連れの二人も同じだろう。喧騒は慣れっこだからだ。
 現に近藤は周りのやかましさをものともせず、日本酒が注がれた猪口を差し出して「んじゃお疲れ」と言った。沖田も、沖田の右隣にいる土方も、それに倣ってそれぞれの猪口を合わせた。日本酒を呷ると辛口のそれが喉を通っていく感触が快かった。突き出しの塩だれがかかったキャベツを音を立てて齧る。土方は自前のマヨを取り出してベベっとかけた。近藤は嬉しそうに「いい酒だなあ」と言っている。
「近藤さん、酒の味わかるんですかィ」
「大人舐めるんじゃありません、わかるに決まってんだろ」
 日本酒は水が要なんだよ水がと通ぶる近藤を見て沖田はそれ以上突っ込まずに酒をまた舐めた。沖田は近藤が純米大吟醸だろうが安酒だろうがちょっと酸っぱくなっているドブロクだろうが、なんでも美味い美味いと飲むことを知っている。近藤は仕事の付き合いで上等な店に行くことも多いし、すまいるでもバカみたいに高い酒を何本も空けているのに舌が肥えない。いつまでもそのまま、気前よく貰い物のいい酒を譲ってくれる近藤のままでいて欲しいと沖田は常々思っている。
「トシ、この店誰に教えてもらったんだ?」
「島田だよ」土方は二番隊の隊士の名前をあげて、「あいつはなかなかに呑兵衛だから詳しいぜ」と付け加えた。
「どうせこれン時聞いたんでしょ」
 煙草を吸う真似をしながら沖田が問う。そうだよと土方は首肯してちょっと変な顔をした。
「なんで分かるんだよ」
「あんたが島田さんと話す機会なんて限られてまさァ。土方さんが早耳なのはコセコセ煙草外交してしてっからでしょ」
 土方は耳が早い。山崎をはじめとする監察方に細かい話も報告させているだけでなく、喫煙所で隊士達に話しかけて噂話やら情報やらを仕入れるからだ。隊士の誰某の母が病気で最近休みのたびに見舞いに出かけていくという話から攘夷派の密偵であると突き止めた、という華々しい業績もある。だが大抵は四番隊のあいつが代々木の飲み屋の女の子にぞっこんでもう少しで付き合えそうだとか、甘党な隊士から聞いた最近流行りのカフェテリアとか何だかよく分からん噂話ばかりだ。煙草は人と人との距離を近くするらしいが沖田には良く分からない。普段渋面ばかりの鬼の副長が煙草を吸ってる時だけはちょっとばかり機嫌が良くて、くだらない話でも目元を緩ませて笑ってくれるから、平隊士も気が緩んでペラペラいろんなことを喋りたくなってしまうのだと思う。喫煙室で平時よりも親しげに隊士と話している土方を見かけるたびに、性根が曲がっていると自覚している己よりもこの男の方がよっぽど狡いと沖田は思う。
 ふと会話が途切れた隙を狙ったように大将から六本の串が乗った皿が差し出された。
「はいお待ちどお! まず半分、皮とつくねともも二本、こっちは塩のささみと砂肝、うずらですね」
 近藤と土方がそれぞれ一串ずつ、最後に沖田がささみを取り、かぶりつく。柔らかく焼かれたささみの淡白さに山葵の辛みが効いてとても旨い。
 近藤がしみじみと言った。
「熱くてうまいもんをすぐ食えるのは幸せだなあ」
 せっかちで熱いものは熱いうちに食いたい土方も同意した。
「焼き鳥はこの熱さがいいんだよな」
「土方さんマヨかけてる時点で冷めねえんですかィ」
「うるせえマヨがあって初めて完成するんだ」
 土方はつくねをまた一口齧り、「総悟、つくね旨いぞ」と言った。確かに軟骨が混じったつくねは美味そうであった。
「へえ。一口下せェよ」
「誰がやるか、次頼め」
 沖田は拍子抜けした。てっきり分けてくれると思っていたので期待した自分が馬鹿みたいに思える。自然と声が尖った。
「なんですかィ、ケチだなあ」
 近藤が笑いながら口を挟んだ。
「トシは昔から栗や甘い柿の木を見つけると総悟に教えたがるなあ」
 沖田はうずらを食べながら横に座る男の横顔をチラリと見た。少しばかり慌てたり照れたりすれば可愛げもあるのに平然としている。
 つまらねえなあと声に出しかけて、ここの勘定のことを思い出す。もうすぐ近藤の誕生日だから、それにかこつけてどうせ土方が出すだろう。
 それならと思い直し、沖田は感謝を述べておくことにした。
「ふうん、そりゃどうも。旨いもんの狩場教えてくれるなんて、土方さんて狼みてえですね」
 土方はうるせえよと渋い顔で言って日本酒を煽った。



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 旨いものを沖田くんに教えたがる土方さん(ただし分けてはやらない)という萌えでした。自分が教えたものを沖田くんが美味しそうに食べているところを見て別に顔には出さないけど満足してる土方さん、可愛いと思います。
 今年もこんな感じの真選組の話を書き溜めて、スパコミで本を出すのが目標です。どうぞよろしくお願いします。


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