第20回トワスト、テーマ「抱負」制作作品です。制作時間は約40分です。
@xxxyueyunxxx
祖父母の家に遊びに行った朝恵は、台所でまめまめしく働く祖母について回っていた。
「あらあら。朝恵はゆっくり遊んでいたらいいんだよ」
「わたし、おばあちゃんのおてつだいがしたいの。だめ?」
「そうだったの。なら、手伝ってもらおうかね」
「はーい! ありがとう、おばあちゃん!」
祖母は簡単な手伝いなら、朝恵にやらせてくれるのだ。味噌を冷蔵庫から出したり、野菜を鍋に入れたりといったことに、朝恵は楽しんで取り組んだ。
手伝いをしながら、祖母に尋ねてみる。
「ねえ、おばあちゃん。『だしのもとをつかわないおみそしる』って、どうやってつくるの?」
「それはお出汁によるねえ。煮干出汁もあるし、鰹節の出汁もあるよ。お水に出汁の素で味をつけるところを、あらかじめ出汁を取った出し汁を使う。それで出汁の素を使わないお味噌汁は出来るよ」
「そうなんだ。じゃあ、わたしはおだしのとりかたを本でしらべなきゃ」
朝恵は、夏に真雅のところではじめて料理をしたときのことを思い出した。真雅は、今度は味噌汁を作ってみようかと言っていたが、出汁の素は嫌いだから出汁から頼むと朝恵に頼んだのだ。
それで、出汁の素を使わないお味噌汁の使い方を知りたかったのだが、出汁の素を使う母はその方法はよく知らないと言っていて。それで朝恵は、祖母に尋ねてみたのである。
「朝恵は、またどうしてそんなことを知りたいんだい? 普段の生活では、出汁の素があれば事足りるだろうし、第一朝恵はお母さんに料理をさせてもらってないだろう?」
「あのね、おばあちゃん。おとなりのおにいちゃんが、だしのもとはきらいなの。こんどおにいちゃんが、おみそしるをつくらせてくれるんだけど、だしのもとをつかわないやつにしてくれって、おにいちゃんいってたから」
「おとなりのおにいちゃん? 商店街のお店のかい?」
「うん。こっとうひんやの『せいゆうどう』さんだよ。……わたし、おにいちゃんが」
「――朝恵、こんなところでおばあちゃんの邪魔をしていたの?」
「あ、おかあさん」
祖母と話し込んでいたら、そこに母がやってきた。
「すみません、お義母さん。朝恵が邪魔ばかりして」
「いいんだよ。それに、邪魔になんてなってないよ。朝恵は、とても熱心な良い子だからね」
「本当にすみません……朝恵、ご飯の時間まで向こうで遊んできなさい」
「……はい、おかあさん」
お料理のことを祖母に聞けるのは、ここまでだ。朝恵は素直に台所を出ることにした。
荷物を置いた部屋に入ると、小さなノートを出す。それは、日頃朝恵が知ったことを書き記すためのもの。
「だしのもとをつかわないおみそしるは、だしによってつくりかたがちがう、と……」
おばあちゃんは煮干しや鰹節の話をしていた。もしかしたら、他にも出汁になるものはあるのかも知れない。煮干しと鰹節、と書いた横にお料理の本で調べる、と更に書き込んだ。
出汁の素を使わないお味噌汁を作れるようになること。それが、朝恵の胸に秘めた小さな抱負だった。そのために何をすればいいのか、朝恵はいろいろと自分なりに調べているのだ。
初めてでは難しいかもしれないけど、出来れば真雅に美味しいと言って欲しい。何故なら、真雅は朝恵の――。
「いろいろ書いているんだね、朝恵」
「あ、おばあちゃん」
「あとで寝る前に、さっき話しかけてたお兄ちゃんのことも聞かせてね」
「――うん!」
「さあ、ご飯だよ。今日は唐揚げにしたからね」
朝恵はノートをしまい込むと、祖母に連れられて部屋を後にした。