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胸の中の小さな抱負

全体公開 トワスト 2 1521文字
2025-01-04 18:57:48

第20回トワスト、テーマ「抱負」制作作品です。制作時間は約40分です。

 祖父母の家に遊びに行った朝恵ともえは、台所でまめまめしく働く祖母について回っていた。

「あらあら。朝恵はゆっくり遊んでいたらいいんだよ」

「わたし、おばあちゃんのおてつだいがしたいの。だめ?」

「そうだったの。なら、手伝ってもらおうかね」

「はーい! ありがとう、おばあちゃん!」

 祖母は簡単な手伝いなら、朝恵にやらせてくれるのだ。味噌を冷蔵庫から出したり、野菜を鍋に入れたりといったことに、朝恵は楽しんで取り組んだ。

 手伝いをしながら、祖母に尋ねてみる。

「ねえ、おばあちゃん。『だしのもとをつかわないおみそしる』って、どうやってつくるの?」

「それはお出汁によるねえ。煮干出汁もあるし、鰹節の出汁もあるよ。お水に出汁の素で味をつけるところを、あらかじめ出汁を取った出し汁を使う。それで出汁の素を使わないお味噌汁は出来るよ」

「そうなんだ。じゃあ、わたしはおだしのとりかたを本でしらべなきゃ」

 朝恵は、夏に真雅のところではじめて料理をしたときのことを思い出した。真雅は、今度は味噌汁を作ってみようかと言っていたが、出汁の素は嫌いだから出汁から頼むと朝恵に頼んだのだ。

 それで、出汁の素を使わないお味噌汁の使い方を知りたかったのだが、出汁の素を使う母はその方法はよく知らないと言っていて。それで朝恵は、祖母に尋ねてみたのである。

「朝恵は、またどうしてそんなことを知りたいんだい? 普段の生活では、出汁の素があれば事足りるだろうし、第一朝恵はお母さんに料理をさせてもらってないだろう?」

「あのね、おばあちゃん。おとなりのおにいちゃんが、だしのもとはきらいなの。こんどおにいちゃんが、おみそしるをつくらせてくれるんだけど、だしのもとをつかわないやつにしてくれって、おにいちゃんいってたから」

「おとなりのおにいちゃん? 商店街のお店のかい?」

「うん。こっとうひんやの『せいゆうどう』さんだよ。……わたし、おにいちゃんが」

――朝恵、こんなところでおばあちゃんの邪魔をしていたの?」

「あ、おかあさん」

 祖母と話し込んでいたら、そこに母がやってきた。

「すみません、お義母さん。朝恵が邪魔ばかりして」

「いいんだよ。それに、邪魔になんてなってないよ。朝恵は、とても熱心な良い子だからね」

「本当にすみません……朝恵、ご飯の時間まで向こうで遊んできなさい」

……はい、おかあさん」

 お料理のことを祖母に聞けるのは、ここまでだ。朝恵は素直に台所を出ることにした。




 荷物を置いた部屋に入ると、小さなノートを出す。それは、日頃朝恵が知ったことを書き記すためのもの。

「だしのもとをつかわないおみそしるは、だしによってつくりかたがちがう、と……

 おばあちゃんは煮干しや鰹節の話をしていた。もしかしたら、他にも出汁になるものはあるのかも知れない。煮干しと鰹節、と書いた横にお料理の本で調べる、と更に書き込んだ。

 出汁の素を使わないお味噌汁を作れるようになること。それが、朝恵の胸に秘めた小さな抱負だった。そのために何をすればいいのか、朝恵はいろいろと自分なりに調べているのだ。

 初めてでは難しいかもしれないけど、出来れば真雅に美味しいと言って欲しい。何故なら、真雅は朝恵の――

「いろいろ書いているんだね、朝恵」

「あ、おばあちゃん」

「あとで寝る前に、さっき話しかけてたお兄ちゃんのことも聞かせてね」

――うん!」

「さあ、ご飯だよ。今日は唐揚げにしたからね」

 朝恵はノートをしまい込むと、祖母に連れられて部屋を後にした。


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