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鳥籠の中で願う、拗れた想い

全体公開 反転ドラヒナ 4 4503文字
2025-01-06 18:28:19

反転ドラヒナで、土用の丑の日ネタのお話です。
彼女への想いが、庇護欲から執着に移行したのを自覚した時期。ヒナイチくんは気づいておらず、ドラルクさんが拗れております。行動と脳内がちぐはぐなそんな文章を目指したら、読みづらくなってしまいました。
お嬢ルドくんと合流し、心身共に結ばれた反転ドラヒナが、冬の土用を迎えるシーンを追加しました。
2024/07/25 に上げました。

Posted by @kw42431393

 「ドラルク、今夜も監視に来たぞ。」
 「いらっしゃい、ヒナイチくん。」
 「ヌンヌンヌ。」

 日が暮れても、熱気が残る昨今の夏。 
 我々吸血鬼は日が暮れてからの活動となるが、それでも、年々過ごしにくくなってきたと感じている。
 昼間は昼間で会議や下見、夜は夜で吸血鬼事件のパトロールや退治に駆け回っているこの昼の子は、大丈夫なのだろうか。
 「さあ、おかけ。疲れただろう?」
 「そうでもない。貴様に心配される謂れはない、伊達に鍛えてないぞ。」
 私の引いた椅子に、無理に姿勢を正して座る、君を見下ろす。
 意地っ張りな君が、正直に言うはずがない。
 私が話しかけるまで、疲れた顔をしていたのだ私の手で、栄養管理しているのにも関わらず、だ。



 世間では、大暑だ。一年で、最も暑さが厳しい時期。
 真夏日どころか猛暑日も、珍しくなくなってきた。
 その時間帯は、私はとっくに冷房のきいた棺桶に入っていて、ピンとこないがニュースを眺めていると、熱中症警戒アラートで、この地域も真っ赤に染まっている。
 昼の子への興味なぞ、『退屈を紛らわしてくれる、遊び相手になれば儲けもの』でしかなかった時代だったら、それを見て何も感じなかったろう。

 「気にするとも。棺桶にいる私には、想像出来ない状況なのでね。たまには、日中休み給え。」
 「ヌー。」
 「監視には来い、というのか?都合のいい奴だ。私は、退屈しのぎの玩具ではないぞ。」
 玩具に見ていた時期もあったが今は、違うのだ。そうでなければ、気遣いの言葉さえかける訳がない。
 「アラートは出ているが、体に不調がない限り、皆、仕事を休んだりしないぞ。引き籠りをやめて、外に興味を持つのはいい事だとは思う。でも、ニュースを真に受けすぎだ。」
 確かにこの右目を潰されてから療養と称して、世間から離れていたのは事実だ。
 ジョンからは、引き籠っていた数十年間に、浮世離れしてしまったと苦笑いされている。
 それを差っ引いてもだ。現に、救急車に担ぎ込まれている者達もいるじゃないか。

 だから、可愛い君をここから出したくなくなる。
 この城自体を、君専用の大きな鳥駕籠にしても構わないそんな考えが、また頭をもたげる。
 意地を張って、いつも怒った様な顔をした、どこか寂し気な少女ヒナイチくんへの庇護欲が、執着に移行していた時期だったので、猶更だった。

 「まぁ、いい。ジョンと、これをお食べ。その間に、食事の用意をさせて貰おう。」
 「あ、土用餅か。そうだな、もう時期だものな。」

 ヌフフ。今日はクッキーじゃないヌけど、本当は和菓子が好きって言ってたヌものね。

 私が得意なのはクッキーだが、半分は日系の母の血を引いている。
 私の母は、家庭を大事にする人だ。
 料理は得意ではなかったが、よく父と並んでキッチンに立っていたものだ。
 幼い私もそこに立って、一緒に捏ねていたのを覚えている。今の自分からは考えもつかない、素直な時分の話だ。
 土用餅は暑気払いとして、この時期に食べられているものだ。栄養学的にも、甘党の君にも、よいと思う。

 「さあ、どうぞ。」
 「頂こう。」
 冷たい麦茶と置いてやると、喉が渇いていたのだろう。
 顎を上向けて、ゴクゴクと、小気味よい音を立てて
 「ぷはっホッとするな。つい、一気に飲んでしまった。」
 グラスから口を離して、君はため息をつく。
 体を冷やすからゆっくり飲め、とお小言の一つも言ってやろうと、思ったのだが

 「
 アンテナをハートマークにしながら、あんころ餅を口にする彼女から、目を離せない。
 麦茶を飲み込む時に露わになった、透き通る様に白くて細い首。
 私の片手でへし折れるだろう、華奢で美しいその下には
 「うんおいしいな。甘さも控え目で、上品で。」

 ヌン。ドラルク様が作ったお餅ヌもの。ヒナイチくんの口に、合わない訳がないヌ。




 彼女が私の元へ、監視に来る様になったのは、春も落ち着いた頃だった。
 あの頃のヒナイチくんは、寮の食堂かコンビニ弁当で食事を賄っていたらしい。彼女はフードファイター並みに食べる健啖家なので、激務をこなしながら自炊する事が、出来なかったのだ。
 栄養状態もよくなかったのだろう。こうして見ると、当時の肌は色艶も悪かったし、鍛えてはいたが、上腕や腰回り、足回りなど、肉体を動かすのに重要な部位の肉づきだって、貧弱だった。
 私が誘う剣試合でも、近頃、いい勝負が出来る様になってきた。
 この体は、私が作ったモノだだから、おそらく

 「どうした?ぼんやりして?」
 「何でもないよ。じゃあ、食事を持って来よう。丑の日だから、ウナギを捌いておいた。いいのが、手に入ったのでね精をつけて、体を壊さないように。」

 その下には、極上の処女の血が、流れているに違いない。
 あれから、数か月経った。朝食も弁当も私の手製だから、ほどんど、血液は入れ替わっているはずだ。
 師匠には苦い顔をされるが、私は、元々あまり血液の味に拘りはない。
 畏怖くないと言われるから、特1級の血液ボトルを常飲しているだけに過ぎない。
 戦場を駆け、殺した相手や捕虜の絶望した顔を見ながら飲む血液こそ、極上のものだと思って、生きてきたのだ。しかも、相手が強ければ強い程、手こずらせたなら手こずらせただけ旨いものだ。
 じゃあ、自分の手料理で仕上げた処女の血は

 「う~ん、気を遣うな。今日日、高いものだろう?」 

 斬り伏せて、這いつくばらせて絶望した彼女から手に入る、自分の手で育て上げた戦士の血はどんな味が、するのだろう?

 「君への餌付けも、私の趣味だからね。支払いは実家持ちだから、糸目はつけない。君が通う様になってから、懇意になった食料品店の店主にとって、私はかなり上客らしいのだ。たいていの物は、手に入れてくれる。」
 「ヌヌヌヌヌヌ!」
 「ジョンも言ってるが、そういう問題ではないだろう。屋根裏を私の仮眠室に改造したり、庭園を広げたり実家が金持ちだから、出来る事だぞ。」
 「実家から言わせれば、私がこうして趣味に勤しんでいる間は、反人間派の同胞に与して問題を起こす真似はしない。だから、遠慮せずに食べてくれ給え。土用卵のだし巻きと、シジミ汁に柴漬けも用意しておいた。」

 私の監視が行き届かない、昼の世界に帰る君が、倒れたりしないか心配だから
 明日もここに元気な姿を見せて欲しいから

 「だから、人の話をお前を心配している、お父上達の気持ちも考えろ、と言ってだから、話を聞け!」
 「ヌー。」
 どうも、ヒナイチくんの首を見てから、口にする事と考えている事がちぐはぐだ。
 このまま一緒にいたら、胸中に抑え込んでいる欲望を実行しかねない。
 まだ、何も知らない雛鳥にそれを悟られたら、怯えて逃げてしまうだろう。
 「楽しみに、待っておいで。」
 だから、苦言を呈する一人と一匹を残して、一方的に会話を切る。
 少し一人になって、頭を冷やさねばなるまい。
 キッチンから戻って来るまでに、胸中で渦巻いている『何か』を鎮めなければそう考えながら。
 「ドラルク、おい!!」

 ごめんヌよ、ヒナイチくん。

 諦めのため息を背中で聞きながら扉を閉める。

 「雛鳥かずっとこの城にいてくれたら、永遠に守ってやれるものを。」
 気づけば気づく程、その願いは濃く、深く固着していく。
 「夜の者にしてしまえば願わくば、彼女自身の意志でこちらに来たいと思わせる事が、出来るなら。」

 元々この城自体が、『当時、戦いに飽きた』私が実家に迷惑をかけない様に、『再び、戦場に出る』気にさせない様に、設えられた鳥籠だったのだ。
 そこに、つがうならこの娘だと初めて意識した、赤い小鳥を招き入れる事が出来たなら。
 常時、その姿を鑑賞する事が出来たならどんなに心安らかに過ごせるだろうか。



 「ただいま、ドラルク。いい匂いだな。今夜は、鰻か?」
 「フフ、おかえり。赤い小鳥が、香ばしい匂いに釣られて来てしまったらしい。」
 「ヌフフフ。」

 キッチンの扉が開いて、部屋着に着替えた君が顔を見せる。
 「笑うなんて、酷いぞ。あ、ジョンまでもう。」
 あの当時では、想像もつかない素直な笑顔で
 あれから、ロナルドくんが私達と合流し、私達にも紆余屈折あってお互い意地が原因で、拗れに拗れた関係も姿を変え

 「今日は、冬の土用だ。風邪を引かない様に、何か精のつくものをと思っていたのでね。お腹いっぱい食べておくれ。」
 「そうなのか?鰻って、夏に食べるものだと思っていたな。」
 
 本当の旬は、秋から冬ヌね。冬の土用は、「ひ」が付く食べ物と、赤い食べ物を食べるんだヌ。

 隠していた本音を打ち明け合った私達は、心身共に結ばれてこうして、共に暮らしている。
 人間達と我々の抗争が終わり、彼女の戦闘力が必要なくなった世界になったなら、私の血を受け入れて夜の世界に来るそういう契約を取り付けた上で。
 「そうだよ。だから、うな重ではなく『ひつまぶし』にしたのだ。ただの迷信だとは思うが、まぁ、こういうのは気の持ちようだから。」
 「なるほどなしかし、このお櫃は大きすぎないか?」
 「君『達』なら、このぐらいは必要だろう?むしろ、足りないかもしれないねえ?」
 「『達』?ロナルドも、ここに来ているのだな。食堂か?」
 「ロナ戦の最終チェックをしているよ。君も、行っておあげ。」
 せめて、配膳ぐらい手伝うぞそう言って、ジョンと共に、お櫃と薬味、出汁を乗せたお盆を手に取って、キッチンを出ていく。どうせ後で分かる事ではあるのだが、もう言ってしまおうか。
 だから、その背中に、私はもう一声かけた。少しでも早く、クルリとハートマークを描く、君のアンテナを見たいから。

 「デザートは、真っ赤なイチゴのムースにしたよ。イチゴ、大好きだろう?」
 「そうか。赤い食べ物も、だったな。勿論、期待しているぞ!」
 「フフ、期待しておくれ。今夜だけでなく、明日も、明後日も、いや永遠に。」
 
 彼女を閉じ込める鳥籠にしようと考えていたこの城は、今や、彼女が帰る家となっていた。
 たった、一言でよかったのだ。ジョンの次に大切にしていた、プライドを捨てて
 「君と共にいたい。君の心と使命が落ち着くまで、何十年でも待つから、考えて欲しい。この言葉を信じて欲しい。」
 たった、一言。そう言えば、よかったのだ。

 飛び立とうとする雛鳥を、押さえつける必要など、なかったのだ。
 扉を開けて待っていれば、元から私に想いがあったヒナイチくんは、この巣へと帰ってきてくれるはずだったのだから。
 
 


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