第21回トワスト(遅刻参加)テーマ「僕と君の○○論争」参加作品です。制作時間は約30分です。
@xxxyueyunxxx
ランフォードは、現代の家でジェフと酒を酌み交わしていた。
今日の酒は、白ワインだ。甘めで、軽めの味はランフォードの好みの味であった。サーモンのカルパッチョを肴に、良い酒を味わう時間は、格別だ。
「良い夜だねえ、ジェフ」
「ああ。静かで、月もよく見える」
庭からは虫の声も聞こえる。風情がある、と満足げにジェフは漏らした。
「やっぱりワインは白だね。やっぱりお酒にも、ほのかに甘みが無いと」
ランフォードが自らのグラスにワインを継ぎ足しながら笑うと、ジェフはグラスをテーブルの上に置いた。嘆息した彼の表情は、見事なまでに呆れ果てている。
「――何を言う、ラン? ワインと言えば、赤だろう。フルーティなだけではなく重く、渋みもある。香りも上々。あれぞワインだと俺様思うが」
「赤はその渋みが悪いじゃないか。ときに渋みがせっかくの味を台無しにしていると、私は思うがね」
「ラン。お前安物を飲んだんじゃないか? 確かに味のバランスの取れていない渋みは不要だ。だが、上物の赤なら、その渋みも味のひとつになっているぞ?」
「それは失礼というものだよ、ジェフ。日常飲むテーブルワインでも、そこまで悪いものは買っていないよ」
あまり安物のワインは口に合わないから、適度な値段のものからしかこの家の食卓には並べない。そうしてみても、赤よりも白だとランフォードは思うのだ。ここはたとえ相手がジェフでも譲れない。
「ジェフこそ、良い白ワインを飲んでいないのではないかね? 白はいいよ。軽い中にも鼻腔を抜けていく芳醇な香り、そして口いっぱいに広がる甘さ。あれぞワインだよ」
「ほう? 俺様を侮るなよ、ラン。さほどよくない酒を飲むのは、商店街の新年会と忘年会だけだ。他は俺様自ら吟味した良い酒しか、口にしていないぜ?」
ランフォードは、僅かに高いところにあるジェフの鋭いシトリンの瞳に視線をやった。ジェフは不敵に、鮮やかに笑んでいる。そのいつも秀麗な顔が雄弁に物語っていた。――ここは一歩も引かない、と。
そう返されても、ランフォードも退くつもりは微塵も無かった。柔和な顔に笑みを浮かべて、黒曜石の瞳で真っ直ぐジェフを見据える。
「――どうやら、相容れないようだね、ジェフ。でも私も退くつもりはないよ。ワインは、白こそが最上だ」
「その言葉、そっくりそのまま返すぜ、ラン。俺様、持論を撤回する気は全く無い。ワインは、赤こそが至極の味だな」
さあ、ここからどう論を展開しよう? 相手がたとえジェフでも、ランフォードは一歩も譲るつもりは無かった。恐らくジェフも同様の心持ちだろう。
丁々発止と些細なことで論を交わすふたりを、ランフォードの妻であるサティナが呆気にとられた様子で見ているのには、ふたりとも全く気付かなかったのであった。