@SS5433738989631
■キャラ名
Zr(ザラ)
■プロフィール
「現観測地点での時間座標に乱れの発生を確認。フェイズ2に移行する」
性別:男
とある魔人科学者によって作り上げられたホムンクルス。元よりホムンクルスは魔術的なアプローチで作られるものであり、製作者はそちらにも精通していたようである。
本来短命な存在であるホムンクルスだが、サイボーグ化により人間よりも長い寿命を得ている。
彼らの存在使命は『時間秩序の修正・編纂』。行き過ぎた文明レベル、遅れ過ぎた文明レベル、それらを等しく均衡へと修正しあらゆる世界の足並みをそろえさせる。
当該機体Zrはその『修正すべき時間秩序』を発見し実地調査を行う端末となっている。
此度は自身たちの主とは別種の『何か』が時間を超越した歴史介入を行ったとして歪を正すべく呼び声へ応えた。それが『何か』の戯れか、はたまた邪魔者を取り除くための選択かは、彼には分からない。
武器は紫電を纏った刀。これを用いた近接格闘が主な戦闘方法である。
当該機体は時間そのものに干渉する力はなく、あくまでその時代を観測し情報を伝達するオブザーバーである。
■能力内容
能力:『テルニールプロテクター』
元は製作者である魔人科学者の能力。あらゆる物質を強化、補強し時間遡行や経年劣化に対する完全な耐性を得る。物理強度の補強も為されるためこの力によって作られた鋼は半永久的に壊れることのないものとなる。
当該機体は本能力の一端を受け継ぎ、付近の物質を一時的に強化する力を習得。ただし生体反応のある有機物を強化はできないため、植物や自身の肉体を堅牢にすることはできない。
■出身時代
出身時代:人類歴2300年
■プロローグ
人類歴20xx年
絢爛と光る街の荘厳な景色を背に、1人の男が街灯もまばらな道を歩いていた。
手にしたカバンとくたびれたスーツが、彼自身がその荘厳な景色を形作っていた一員であることをありありと実感させる。
「あ~もうヤダヤダ…なんだって説明聞かないバカのせいで俺の時間使われなきゃいけないわけ…?資料使うってリマインドしたじゃんよ…」
ため息をつきながらも足取りは軽く、目的地へ直行する。
たどり着いたのは一軒の居酒屋であった。
ぬくもりのある光が中から垣間見え、食欲をそそる香りが店外にまで漂ってくる。空きっ腹にそんな追撃を喰らっては入らずにはいられないというもの。
「いらっしゃーい!」
威勢のいい掛け声が暖かな店内にこだまする。しかし飯時ということもあってか店内は人でいっぱいであった。
「すいやせんねえ、今おひとり様席は満席でございやして…相席でも構いやせんか?」
「大丈夫です、よろしくお願いします」
「ありがとうございやす!あい!一名様ご案内でーー!」
『ラッシャーセ―!!』とこれまた意気のいい声が店中に響く。
その熱気に少し当てられながらも彼…というか俺田蘭斗は案内された席に腰を掛けた。
先客は未成年と思わしき少年であった。つまみの胡瓜をかじってはいるものの、テーブルの上には焼き鳥の皿一つ見当たらない。
「相席失礼しますね」
「ああ。悪いね、こんなガキが一緒じゃア酒も進まないだろう」
突然砕けた口調な上にませた口ぶりをしてくるもんだからあっけにとられてしまった。
「…最近の子供は大人っぽくてかなわないね、安心してくれ。俺にとって酒は楽しいから飲むものじゃあないんだ」
駆け付け一杯で運ばれてきたビールを喉に通すと、苦味とアルコールの味でむせ返りそうになる。
「それは――そういうものなんだな、アンタには」
「そういうものさ。…君くらいの子供だと、健康に気をつけてと注意してくれるものだが、君はそういうことをしないんだね」
「アンタはそういうこと、求めてないみたいだからな」
ませているというわけではなく…彼自身が、本当に大人びているというべきなんだろう。
何一つの役割をこなすことができない自分より、よっぽど大人だ。
「お待たせしやした!焼き鳥皮の塩です!」
自己嫌悪に陥りかけた思考を、香ばしい鳥の油が現実へと引き戻す。
そうだ、俺はここに飯と酒をありつきにきたはずだ。勝手に目の前の人間と自分を比べる必要なんてない。
手を合わせて冷めないうちにと串に噛り付いた。こうして誰かと向き合って食事をするのは何年ぶりだろうか。
会社員の俺ではない、『俺』として誰かと食事の席を同じくすることなど久しくしていない。
「美味そうに食べるんだな」
「実際に美味いからな。君も食べるか?さっきから漬物しか食べていないが…」
「いや、好きなんだろう?俺にかまわず食べてくれ」
流石にお節介だっただろうか。まあそりゃ知らないオッサンからいきなり渡されても困るか。
スポーツ選手が着ていそうなぴったりとした黒いインナーから察するに、何かしらの食事制限でもしているのだろう。でも味の濃いものを食べたくなる時もある。
だからこうして一人で居酒屋に来ているのかもしれない。まあ彼がここにいる理由はさして重要ではない。
暫くいくつかのメニューを頼み、腹も膨れて眠気が襲ってきた。酒も廻ってきたようだし、そろそろ帰らなければならない。
「相席ありがとうね、俺はそろそろ帰るよ」
「帰り道気を付けてな。最近は物騒だから」
美味い物を食べて、おかげで少しはやる気がでた。これなら、また明日からも頑張れそうだ。
席を立ち、勘定を済ませて外に出ると雪がちらほらと降っていた。
昔は雪が降る日ははしゃいでいたこともあったけど今はそう思う余裕もなくなっていた。偶には雪を見て過ごすのも悪くないだろう。丁度明日は休日だ。
少しばかり上機嫌に帰路に着く。…誰かと食事の席を共にしたからだろうか、自分はこうも人の温もりとやらに飢えていたようだ。だから、だろうか。
先ほど入っていた店から盛大な爆発音が鳴り響いた。硝子の砕け散る音と人々の悲鳴、そして頭に直接響くようなノイズ音。
自然と振り返ってしまう。目の前には、奇怪な時計をあしらった蜘蛛のような怪物がいる。
だから、こうも弱みに付け込まれるのかもしれない。鉄の脚が持ち上げられている。その切っ先は――俺に向いている。
「どうあれ下っ端の俺は強い奴に淘汰される以外の道はない…ってことか」
不思議と諦めに近い感情がわいてきた。抵抗しようという気も起きず、鉄の脚が俺を踏みつぶす瞬間を待つ。
けれどその瞬間が訪れることは無く、俺の目の前で鉄の脚は切り刻まれた。
唖然とする俺の目の前には、さっきの少年が片手に紫電を纏った何かを手に立っている。
「時間干渉を確認。観測を一時中止し変質の中核救援を優先」
少年が振り返る。街灯に照らされた少年の両足はハーフパンツから覗くひざ下がまるで機械のような、明らかに生身の人間ではない何かで構成されていた。
「君は――さっきの」
「立てるか、立てるなら走れ。全力で逃げろ。今回の時間干渉は規模がでかい」
彼の言っていることは理解できないが、ここにても危険なことは身にしみてわかる。
俺はただ無言でうなずき、振り返ることなく走り出した。ほぼ同時に爆発音と、カサカサと金属同士がこすれ合うような音が夜の街にこだました。
背後を確認しながら、逃げた男の無事を祈る。祈る?何のために。当該機体の目的は時間秩序の維持、編纂であり、個人にはない。
「だとしても、だ。俺個人が気に食わない」
ガシガシと頭を掻き片手に握った得物を構える。
あの男が今追われているのは自分自身だ。未来の彼は精神を患い、自殺を考えた。しかしその勇気がなく、過去の自分を殺すことで未来の記録を消そうとした。
意味のないことだ。過去の自分が殺された時点でそれは自分ではない『ナニカ』だ。それをわかっているのかいないのか、どちらにせよ斯様な姿になっては戻れまい。
「その意匠は時の神の眷属か…マスター、アンタが俺たちを創ったのは正しかったよ。あいつらは、戯れに歴史を塗り替える」
過去の自分を殺すなんてこと、人間一人には余る所業。バックにデカいのがいるのは当然だ。自らを怪物に変貌させたのは協力者の趣味か、彼自身の趣味か。
まあ些細なコトだ。今やるべきは時間稼ぎ、あわよくばこいつを鎮圧し対象を保護できれば完璧だ。
「Zr、状況開始」
厄介なのはこのデカブツの足元を埋め尽くす人型の取り巻きであり、デカブツの方はあちらに進まない限りそこまで気にする必要はない。
大きさは俺と同程度、あくまで偵察機の当該機体に広範囲の殲滅は不得手だ。
「先ずは数を減らさなきゃな」
ようやく俺を察知したのか取り巻き立ちが群がってくる。こうしてみるとその動きは虫か何かのようだ。
デカブツは脚をやられて倒れているまま、動き出すまでは時間があるだろう。その間に彼の家へ向かおうとするこいつらをどうにかして処理しなければならない。
我先と俺に襲い掛かる1匹を切り飛ばす。火蓋を切ったように取り巻き立ちは俺へ最低限の連携を交えながら襲い掛かってきた。
「あと70秒…出来ることなら俺だけで終わるといいんだが」
こいつらだけならまあそこまで脅威ではないんだが…予想よりデカブツが動き始めるのが早い。もう一本の脚も落としておくべきか。
動き出すデカブツの脚が地面を離れる。俺はその脚を駆け上り、胴体部へ降り立った。
歯車の寄せ集めみたいな胴体の中にはいくつもの時計が埋め込まれている。
「せいッ!」
紫電を纏った刀がデカブツの胴と頭を切り裂いた。重苦しい音を立ててデカブツの頭が地に落ちる。
動きの止まったデカブツと違い、取り巻きどもはまだ彼の家へ向かおうとしている。
だがボスを失ってはただの烏合の衆だ。あとはおりて殲滅するだけ――
「あれ――」
たしかにデカブツの胴体に乗っていた俺の身体が、宙へ投げだされていた。
切り離した衝撃で放り出された…というわけではない。なにせデカブツが五体満足で俺の目の前にいる。
二匹いたというわけではない。奴の時間が巻き戻ったのだ。
振り上げられた鉄の脚が迫る。避けられるワケもなく、俺はデカブツに踏みつぶされた。
「ぐっ――?!」
鋭利に研ぎ澄まされた鉄の脚は生身の肉体を容易く貫きかねない。耐えられたのはひとえに耐衝撃ボディスーツのおかげだ。
それでも内部へのダメージは深刻であり、骨はおろか内臓もほとんどが潰れた。
蝶の標本のように磔られた俺に鉄の脚が襲い掛かる。俺の身体は膝下以外ほぼ生身の人間に近い。末路は決まっていた。
「ぇ――ぁ…」
先に頭をつぶさなかったのは慢心か、はたまた理性がないためか。俺は四肢を体から分離され腹に穴をあけられてもまだ生きている。
だがそれでも、戦闘不能であることは変わりない。やはりフェイズⅠでの対処は難しい。
「ああ――殺されたか」
家に逃げ込んだ彼は取り巻きに殺されたようだ。だが、彼が生きていることが最善ではあるものの…
必要な要素というわけではない。
「対象の死亡を確認…フェイズ2に移行を申請。観測データの送信を開始」
『データの受理を確認。当オーダーをフェイズ2に移行する。
修正開始。修正速度-30秒規定に設定。当該エリア全域にサンプル文明No.2567を適応』
一瞬で時代が修正されていく。そこにはもともと何もなかったかのように取り巻きは消えうせ、破壊された街の様相も元通りに『作り直される』。
正確に言えば俺が事前にサンプリングしたこの街で上書きしている。そしてその街には先ほどの彼はいない。というより、この時間の中で彼という存在は元から無いものとなった。
自分殺しは、世界に穴をあける行為だ。その穴に従ってすべてのものは落ちていく。
故に、その存在がもとよりないのであれば。穴など開くこともないのだ。同時にその世界はもう元の世界たりえない。滅びの運命から救うためには、世界を無くすのが手っ取り早い。
「時の神の眷属相手じゃ…力不足か…」
修復し始めた体はまだ痛みを訴えているが、仕事は残っている。修正すべき時間はまだある。
「この大規模な時間干渉は…少なくともまず観測しに行かないことには」
以前俺に干渉してきた『なにか』。ソイツのフィールドに行く以上他機体の助けは借りられないが、データ送信だけでも十分だ。
「願いを叶える者が邪ではないといいんだが」
そうであれば、俺に何かあったとしても事は穏便に進むはずだ。