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推し概念のかき氷

全体公開 Δドラヒナ 6 5713文字
2025-01-23 16:33:38

再会を果たしたばかりの頃、Δ隊長(28歳)×Δヒナイチくん(16歳)が、かき氷を食べるお話です。
両片思い期というよりは、ヒナイチくんは初恋の人と再会出来て少し押し気味。Δ隊長は、「昔助けた、ヤンチャなヒナちゃん。綺麗なお嬢さんになったね」で、ドラヒナというより、若干片思い気味です。
こっそり考えていた、駄菓子屋のおばちゃんのエピソードを追加しました。
皆さんにも、ここの「ここのおばちゃん、今もやってるんやね。私が物心ついた頃から、お店してはるよ。」な人は、いましたでしょうか?
2024/08/01 に上げました。

Posted by @kw42431393

 「ヒナちゃん、バイバイ。また、明日ね~。」
 「あぁ、またな。」

 今日も、楽しかったな。
 夏の昼下がりうだるような暑さだが、そんな事も気にならないほど、楽しかったんだ。
 学校は、夏休み。
 朝は、トレーニングや部活に勤しんで、友達とスナバでお昼を食べて、プールに寄って、今から家に帰る所だ。
 え?宿題はって?
 ボチボチ、やってるぞ?
 ほんとだぞ分からない所は、隊長さんがギルドに来た時、ついでに教えて貰っているんだから。
 今年は全部、百点満点のはずなんだ。

 『宿題かいいよ。明日は、ギルドに用事があるから、持っておいで。教えてあげる。』
 『はい!ありがとうございます!』
 『顔がにやけてるぞ、ヒナイチ。あ~、隊長さん。妹以外にも、おやつを頼む。この前のババロアは、美味かった。』
 『兄さんは、黙っててくれ!』

 新横浜警察署吸血鬼対策課ドラルク隊の、隊長さん。
 幼い頃、下等吸血鬼から私を助けてくれた、憧れの人。
 今年に入って、まさか、地元の警察署に赴任してくるなんて実家のギルドや通学後で、会う事が出来るなんて。
 だから、にやけたって、仕方ないじゃないか。
 美味しいおやつだけじゃなくて、あの人と一緒にいられるチャンスが、増えたんだから。



 「おばさん、こんにちは。また、2つ下さい。」
 「あぁ、こんにちは。ヒナちゃん、今日も暑いわねえ。何にする?」

 幼い頃から通ってる、馴染みの駄菓子屋さんに入る。
 友達と別れて、家に帰る道すがら結構、いい時間になっていたんだ。
 氷の文字の暖簾が、川風に揺れている。
 プール帰りの濡れた体に、この風が心地よい。
 「う~ん、イチゴは確定としてもう一つは、何にしようかな。」
 ここの駄菓子屋さんのかき氷は、地元の子供達にずっと愛されている、名物の様なものだ。
 兄が子供の頃も、通っていたと聞いている。

 「イチゴ、好きね。それにしてもウフフ。2つも食べてくれるのは嬉しいけれど、お腹を冷やしちゃ駄目よ?」
 「大丈夫だぞ。それに、今時、かき氷が1つ100円って、安いもの。氷も蜜も、たっぷりだし。」
 「値上げはね、したくないわ。おばちゃんは、み~んな子供の頃から知ってるもの。カズサくんなんて、5つぐらい食べてたわね。」

 シャッシャッと小気味よく削られて、カップに盛り上がっていくかき氷。
 幼い頃は、棚に顎を乗せてワクワクしながら、見ていたな。
 目の前で、鮮やかなイチゴシロップがかけられて

 「はい、どうぞ。もう一つは、何にする?」
 「そうだなぁう~ん。」
 壁に張られた、メニューを見る。
 この前は、メロンにしたから、今回は
 「ブルーハワイで、お願いします。」
 「いいわよ。珍しいわね。」
 クスクスと笑う、おばちゃんに苦笑いして私は2つのかき氷を持って、店を出た。

 「こういうの、推し概念っていうのかな。」

 真っ白な氷にかけられた、目が覚める様な青い蜜。
 今年、再会したあの人の制服と同じ色。
 きっと、世界で一番、青と白が似合う隊長さん。
 これから、宿題を見て貰う約束があるから、なんとなく、あの人の姿が思い浮かんだんだと思う。

 「さて、いつもの場所で食べよう。」
 夏の日差しの中を、かき氷を両手に持って、川べりに沿って歩く。
 地元民だから、知っている。
 この先に大きな木があって、そこは、とてもいい川風が吹くんだ。
 ここの駄菓子屋でかき氷を買うと、よく友達とその木陰で座って、食べながらたべったり、魚を捕ったりして遊んだものだ。

 「あれ?あそこにいるのは。」
 視線の先には、先客がいた。
 木に凭れている、細長い影。
 傍には、丸くて小さい影が、寄り添っている。

 「隊長さ~ん!」
 思わず、大きな声で呼びかけながら、私は一人と一匹に駆け寄った。



 ドラルク様、大丈夫ヌ?

 「アハハ大丈夫。ここの風に当たっていれば、少しはよくなるよ。」

 いやはや、毎年の事ながら情けないものだ。
 私も半分日系の血を引いているし、大学を卒業してから、ずっと日本で暮らしているから、湿度を伴う日本の暑さを知らない訳ではなかったけど自身の虚弱体質と相まって、体に堪えるものだ。
 「ギルドに向かう前に、ちょっと下見に来ただけなのにね。」
 今夜、ギルドに行く用事がある。
 来週、この川原で開催される花火大会について、打ち合わせを行う予定なのだ。
 地域アイドルを兼ねている退治人達は、イベント会場や、駐車場に、屋台の設置。
 私達吸血鬼対策課は、お客さん達の誘導や、畏怖欲からくるイタズラ目的の吸血鬼事件への対策。
 そして

 『ちょっと、宿題で分からない所があって隊長さん、教えてくれないか?』

 大学、警察学校と卒業してすぐの頃。
 一新米隊員ドラルクだった頃に、下等吸血鬼から助けた、ヤンチャなヒナちゃん。
 偶然にも、赴任してきたこの新横浜で、私達は再会を果たした。
 『つよいたいじにんになって、みんなをまもるんだ!』
 そう言っていた幼子は、着実に夢に向かってそして、素敵なレディに成長していた。
 警察官になって、よかった忙しさに本分を忘れかけていた私を、憧れの眼差しで見上げてくれる、ヒナイチくん。
 伊達に、飛び級で卒業した訳では、ないのだよ。
 宿題ぐらい、いくらでも見てあげようともその予定だったのに。



 ドラルク様、ヌンが、ポカリか何か買ってくるヌ。

 お願いしようかな。今日日、熱中症って笑えるものではないもの。
 「そうだね、ジョン。じゃあ。」

 「隊長さ~ん!ジョ~ン!」 
 元気な声に、振り返る。
 まさに、昼の子を体現した様な、華やかな少女がこちらに駆けてくるのが見えた。両手に、何かカップの様なものを持っている。
 「あぁ、ヒナイチくん。こんにちは。」
 「ヌンヌンヌ。」
 「はぁ、はぁこんにちは。どうしたんだ?こんな所で?」
 首を傾げる少女に、苦笑する。尊敬されている身としては、いつでもカッコいい所を見せたいよね。
 それに、今は夏休みだ。制服やギルドで会うバーテンの恰好ではなく、涼しそうで動きやすい、タンクトップにホットパンツを履いたその姿は新鮮で、とても眩しく見える。
 「アハハ来週の花火大会の会場をね。下見に来たんだけどこの暑さに、やられちゃって。ここで、涼んでいるところだとも。」
 「そうかここを選んだのは、正解だと思うぞ。涼しい川風が吹く。私達もいつもそうだ。これ!ジョンと食べてくれ。」
 そう言って、彼女はカップを一つ、こちらに差し出してくれた。
 イチゴ味のかき氷だ。そういえば、そうかもしれない。
 ショートケーキを差し入れた時、イチゴをフォークで挿して頬張る彼女は、とても幸せそうに見えた。
 イチゴが、好物なのかもしれない。

 「い、いいよ。2つ、持ってるじゃないか。友達と待ち合わせてたとか。」
 「いいんだ!2つとも、私が食べるつもりで買ったものだから熱中症の時に、かき氷を食べると、水分補給と体が冷えて、いいんだってな。ちょうどいいから、一緒に食べよう!」
 見上げると、どちらが原因なのか分からないクラクラする。君の眩しい笑顔があった。断れる訳がない。
 明日にでも、イチゴを使った冷たいスイーツを作って、お返ししようと思う。
 「ありがとう。じゃあ、早速。」
 「ヌリヌヌー。」
 ジョンと分けっこしながら、氷を口に運ぶ。喫茶店のと違って、素朴で、何故か懐かしい味がする。
 「ん、おいしっーー!」
 「ヌーッ!」
 「アハハ。二人共、面白い顔になってるぞ!」
 いやあ。レディの前で、益々、格好がつかなくてまだ、頭がキーンとするよ。
 効果は、抜群だった。熱を持って、火照っていた感覚がなくなっていく。
 そして、吹いてくる川風と、涼しげな風景を堪能する。
 彼女が「かき氷を買うと、皆ここで食べるんだぞ!」と、言ってた理由が分かる気がするよ。



 ヒナイチくん、舌が真っ青ヌよ!

 「そうか?ジョンこそ、真っ赤だぞ!」
 隣に、視線を戻す。そこには、ジョンとヒナイチくんが、舌を見せあって笑っていた。
 いや、何この可愛い生き物達は。激務に次ぐ激務に、この風景は癒し過ぎる。

 「あれ?ヒナイチくん。それ
 「何だ?」
 違和感に、彼女の手元を指差す。とっくに食べ終わった彼女は、底の蜜を啜ってる。
 「ブルーハワイ、好きなのかね?」
 てっきり、イチゴが好きだと思ってたのに。
 それとも、気を使って、オードソックスなのを譲ってくれたのだろうかだとしたら、申し訳ない。
 「いや、好きなのはイチゴだがまあ、これは。あれだ推し概念って、いうか。」
 頬を染めて、ヒナイチくんは最後の溶けた蜜を飲んでしまった。開いた口から見えた、青い色。

 推し概念か
 彼女と一回り離れているが、それが分からない程、おじさんじゃない。
 彼女の憧れてるアイドルか、スポーツ選手が、青い服、あるいはユニフォームを着ているのか
 なんだろう時折、下校中の彼女が、同級生とおぼしき男子学生と歩いている姿を見た時に感じるこの感覚。
 自分が嫌になるこのどす黒い感情は

 「ヌヌヌヌヌヌ?」
 「大丈夫か?隊長さん?」
 鈴を転がす様な、一人と一玉の声に、我に返る。
 そうだ、考えるのはよそう。この暑さで、頭が混乱しているんだこの子は、私の大事な妹みたいな子。
 そうでなければ

 「ウフ。隊長さんも、赤くなったな。」
 目の前のヒナイチくんが、満足そうに笑う。木漏れ日の様な翡翠の瞳は、私の口元を見ていた。
 もしかして、シロップが付いてるのか、と口元を拭ったが何もない。そういえば、ジョンと舌の話をしていた。
 私の舌もイチゴの色がついたと、言いたいのだろう。
 「かもね。本当にご馳走様、おかげでよくなったよ。」
 もう少し休んだら、私もギルドに向かわなければ

 「隊長さん。私、退治人になったら、兄の衣装を引き継ぐ予定なんだぞ。」
 「そうとても、よく似合うだろうね。」
 赤い帽子を被り、鮮やかなジャケットを閃かせて幼い頃の夢を叶えて希望に満ちた、可愛い退治人さん。
 きっと、皆が君を憧れの眼差しで見るのだろう。
 「赤はいつか、私のトレードカラーになるんだ。だから、その色を。」
 「赤色をえっ!?」
 その時、突然、向こう岸で大きなクラクションが鳴り響いた。
 だから、大事な所が聞こえなかった。
 「待って何て、言ったの?」
 「じゃあ、また後でな!」
 ここで、聞き逃してはいけない気がした。
 だから、軽やかに木陰から飛び出していく、少女を追いかけようとしただけど。
 「ヒナイチくん、まっうわっ!?」
 
 ドラルク様、もう少し休んだ方がいいヌ。

 まだ、足腰に力が入らなくて、追うことが出来なかった。
 そして、後でも意気地がなくて、聞く事も出来なかった。

 赤いシロップと青いシロップ
 何故、トレードカラーになる赤を、私に渡したの?
 私の赤く染まった舌を見て、何故、満足そうに笑っていたの?

 『だから、その色を。』

 後になって思えば、彼女が自分の想いを打ち明けようとした、精一杯の行動だったのかもしれないのに。
 
 



 「おばちゃ~ん、こんにちは。今年も楽しみにしてたよ。」
 「あらあら、ありがとうね。今年も食べに来てくれて、嬉しいわ。」

 今年も、楽しみの夏休みがやって来たわ。
 子供達だけでなく、私にとっても。
 勿論、冬だってお店はやっているし、寒がっている子供達に、たい焼きを焼いて出したりはするけれど

 「えっとね、きょうはレモン!」
 「おれはやっぱり、イチゴ!はつものだもんな!」
 「はいはい。ちょっと、待っててね。今、作るわよ~。」
 冷凍庫を開けて、とっておきの氷を出す。
 皆がやってくる夏休みに合わせて、選びに選んだ湧き水を汲んできて、自分の『能力』でゆっくりゆっくり凍らせた特製の氷を、機械に乗せる。
 有名な氷笑卿ほど強いの能力ではないけれど、だからこそ、純度の高い綺麗な氷が出来るのよ。
 ええ、そうよ。おばちゃんはね実は、人間から転化した吸血鬼なの。
 だから、この子達のお爺ちゃん、お婆ちゃんが小さかった頃の事も知ってるわ。
 夜の短い夏が苦手な吸血鬼は多いけれど、この氷化能力をフル活用して作ったかき氷を食べて貰えるこの季節が、一番大好き。
 そして
 
 『ああ、その店だ。シンヨコの夏休みは、このかき氷を食べる事から始まるんだぞ。』
 『ふ~ん、そうなん?さてと。俺、練乳たっぷりのバナナな!』

 ヌフフ、ロナルドくんらしいヌね~。

 『お~い、ドラ公。早く、早く。遅えぞ~!』
 『はぁ、はぁまったく、この五歳は。もう少し、ゆっくり歩いてくれ給え。』

 そして、おばちゃんが一番大好きな事はね。

 「おばさん、こんにちは!今年も来たぞ!!」
 「いらっしゃい、ヒナちゃん。ロナルドくんは、うちのかき氷初めてよね?隊長さんとヌーくんも、ゆっくりしていってね。」
 ここに通っていた子供達が大人になって、可愛い子供達や
 「はぁ、はぁこんにちは。吸血ヒルの発生場所の、下見をしていた帰りでしてふう。かき氷の暖簾が出ていたので、寄せて頂きました。」
 「へえ、綺麗な氷だなぁ。それに、すごくふわふわだ。」
 
 子供達や新たに出会った大切な人達を、ここに連れてきてくれる事なのよ。
 その人達に、そう言って貰える事なのよ。


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