ォョ小噺
@kurato0o
絡んだ小指だけが、証拠。
夜明けが近付いてきている。
耳に届くムックルの囀りに、ショウは微睡みの中はっきりと目を開いた。もう朝なのか。そう感じるのが無念さからくるものなのか、安堵からくるものなのか、ショウにはよくわからなかった。
「朝か……」
小さく呟いた低い声。隣に座っている男が、外へ目を向ける。白磁の瞳が自分を映していないことに、胸騒ぎがする。それでも歯を食いしばって耐えなければならない。そういう関係だった。
男が普段どこで何をしているのか、ショウは知らない。予想はつくが、いつからか満月の夜にだけ、偶然を装って邂逅を果たすかつての仇敵であり恩人と、夜通しくだらないことを語り合う。そんな、普通の夜。彼にしか話せないことは山ほどあって、眩しく赤い夕陽が沈んでから星がぼうっと浮かび上がって、全部全部覆い隠してしまって、それからまた眼窩を焼き尽くすような日の出を迎えるまでの少しの時間。ふたりは一緒にいられた。
立ち上がらなければ。そう思うと自然と腰が重くなるのを感じた。
一緒にいるのは苦痛だった。
傍にいられない日々を彷彿させる、近すぎる距離が辛い。そして瞬きの間に離れなければならないのが辛い。
不意に、手の甲が、男の手の甲に触れる。
熱い。
そう感じた。
言葉もなく、自分のものより何倍も大きな指が絡む。小指だけ触れる熱。
「……朝ですね」
そう囁いた、ショウの言葉に返答はない。
ただ日が昇るのを、小さくなって待っていた。
自分たちが陽射しを受けるまで、そうやって。
朝日に気付かれないように息を潜めて。