雨宿りでカフェデート?するイアアキssです。ほのぼの甘め。
ネタバレは特にありません。
@rikka_trpg801
小休止
「通り雨が来る」
出先から本部へ戻る途中、度々空を見上げていたイアンがアキラの手を握った。
「まじか」
そんなに遠くないからと、車で来なかったことが悔やまれる。現在位置から本部まで走れば十分ほどだが、それは信号などで足止めを食らわなければの話だ。
イアンの傘に世話になる前提で本部へ急ぐか、それとも――少し考えて、アキラはすぐ近くにあるコーヒーチェーン店を指さした。
「急ぎの仕事はないし、通り雨なら少し雨宿りして行こうぜ?」
空に浮かぶ白い雲に、徐々に暗い色の雲が混ざり始めている。強い雨になりそうだが、そんなに長く降り続きはしないとイアンの勘が告げていた。
傘はあるが、強い雨だと風や跳ね返りの関係で濡れるのを完全に防ぐことは難しい。
「ああ、そうしよう」
アキラとイアンが連れ立って店に入る。
その僅か数分後、ガラスの壁越しに激しい雨音が聞こえ始めた。
「いや~雨宿りにして正解だな。こりゃ傘だけじゃきつい」
突然の雨に走って目的地を目指す人もいれば、アキラたちと同じく雨宿りを選んで店に駆け込む人もいる。
濡れて寒そうな姿を横目に、自分がそうなるのを想像してアキラは思わず身震いした。コーヒーカップを両手で持って指先を温めつつ、湯気の立つ芳しい液体を啜る。
「あ~……やっぱ、店のコーヒーは美味いな」
「ああ」
しみじみと言うアキラにイアンが同意する。職場のコーヒーマシンで淹れたコーヒーは、とても金を取れるような味ではない。
火傷をしないようにゆっくりと味わいつつ、アキラはテーブルの上に置かれた期間限定フレーバーのポップに目を向けた。
チョコやストロベリー、ラムレーズン、シナモン、ジンジャーと様々なフレーバーが鮮やかな写真付きで紹介されている。目的が雨宿りだったので注文はオーソドックスなブレンドで済ませてしまったが、次の機会があれば冒険してみるのも一興かもしれない。
「イアンちゃんは、この中だとどれが気になる?」
アキラがポップの表をイアンの方に向けてやれば、眼鏡のレンズ越しにじっと見つめて小首を傾げた。
「寒いから冷たい物よりは温かい方が良い。そうだな……ジンジャーは身体が温まりそうだ」
「確かに、今の時期にフローズンは俺も遠慮したいな」
暖房の効いた店内でならありだろうが、積極的には選ばない。冬の寒さなど何のそのでフラペチーノを注文している若者は勿論いるが、飲み物のためにそこまで根性を見せる気にはなれなかった。
「アキラは、どれがいい?」
聞き返されて、アキラはポップを見ながら指をふらふらと彷徨わせる。
「コーヒーを飲みに来るんだし、あんまり甘そうなのもなぁ。うーん、おれもジンジャーか、冬っぽさでラムレーズンあたりか?」
残念ながらアルコールは入っていないらしいが、ラムの風味は身体を温めてくれそうだ。
「なら、今度来たときはジンジャーとラムレーズンを注文しよう。交換すればどちらも飲める」
口元に微かな笑みを浮かべ、イアンが二つのフレーバーを順番に指さして言った。魅力的な提案に、アキラも目元を和ませる。
「デートのお誘いか……しかも間接キスの予告付きだ」
「嫌か?」
窺うように小首を傾げるイアンに、アキラは笑って緩く首を振る。
「いいや、嬉しいね」
テーブルの下で、アキラの指先がそっとイアンの手に触れた。太腿の上で、緩く指を絡め合う。
人目があるのでそれ以上のことはしないが、互いの体温はコーヒーよりもずっと、身も心も温めてくれるような気がした。
二つのカップが空になる頃には、五月蠅い雨音は止んで空は明るさを取り戻していた。雨宿りの時間は終わりだ。
「さて、帰るか」
「そうだな」
店を出て、濡れた道を本部へ向かって歩き出す。
例のポップは冬の期間限定フレーバーだ。ぐずぐずしていると別の種類に変わってしまう。
二人が揃って来店する日は、そう遠くないことだろう。
(あとがき)
ただただ甘くて温かいお話が書きたくなる時があります。アンケートで選ばれたイアアキで書きましたが、他のCPでもその内書いてみたいですね。
飲み物をシェアという名の合法間接キスって良いですよね……同性だからこそ堂々とやれるいちゃつき方で好きです。イアアキはオフィスでも普通にやってそうですし、アキアカネ班の仲間たちはそれを生温かい目で見てそうですw