誇り奪われた後の、拗れた両思い期の反転ドラヒナで、反転版祭り囃子のお話です。
反転ドラルクさんも、人外みが強いので、怪異に対するチート能力があるんじゃないかな、と。
今回の怪異は、祟り神というか、ヒダルとミサキのイメージが混ざった感じで書いております。被害に遭った子供について、ニュースが何も言わないのは、『言ってはいけない』何か的な風習がある…そんな感じで見て頂ければ、と。痛々しい描写にご注意下さい。
彼女を助けた後、神社と怪異を焼き払いに行ったドラルクさんのシーンを追加しました。
2024/08/15 に上げました。
@kw42431393
『ヒナイチくん、お茶が入ったよ。そろそろ、降りておいで。』
下から、監視対象の声がする。私がとっくにここに来ている事を、察していたのだろう。
時計を見る。
いつもより半時間、屋根裏から出て来るのが、遅いだけじゃないか…そんなに、急かさなくても。
そう、言い返してやりたい。
しかし、そこの融通が利かないのが、『彼ら』らしいとも言える。
特に、ドラルクは、両親共に由緒正しい吸血鬼の血統を引いているだけに…典型的な吸血鬼の特徴が、そこかしこに、見て取れた。
「はぁ…今日は、あまり顔を見せたくないな。」
携帯の鏡アプリで、自分の顔を映す。
自分だと信じられない程にやつれた顔が、そこにあった。
「夏バテかな…あの神社から帰ってきてから、特に怠い。」
明日は、常夜神社で地元の夏祭りがある。
祭りともなれば、普通の一般人でも吸血鬼でも、羽目を外すものだろう。
この街に赴任してきて、県外出身者の私はまだ数か月。会場である地元の神社が、どういうものか…よく知らないのだ。
だから、パトロールついでに、下見に行ってきた訳だ。
「我ながら、読み辛いな。あとで、書き直そう。」
『PM6時。明日の下見を兼ねて、常夜神社を巡回する。吸血鬼の子供達に紛れて、同級生と思しき子供が一緒に遊んでいた。吸血鬼と遊んでいるのだから、時間は仕方ないとしても『せめて、人目のつく、明るい場所で遊ぶ様に』と、注意する。』
さっきまで書いていた報告書を、読み返す。
これが、自分の字だろうか…そう疑うぐらい、細くて弱弱しくて…ぐにゃぐにゃしていた。
『ね~、おねえさん。ここ、はじめて?』
子供達の中で、リーダーらしい子が、私を見上げてくる。
白髪で、白い浴衣を着た…前髪が覆いかぶさっていて、顔はよく見えない。
ボサボサ髪の隙間から、深紅の瞳がこちらを見上げている。
『あまり、来てないな。明日は、ここで祭りなのだろう?』
『うん、たのしみだね!』
『あぁ、楽しんでくれ。友達も、一緒だしな。』
『たのしいよ!おねえさんも、おいでよ。ともだちになるこも、いっぱいくるし…おいしいものも、いっぱいくるから…』
『ヒナイチくん、いるのだろう?』
『ドラルク様、急かしちゃ駄目ヌ。着替え中かもしれないヌしょ?』
扉を叩く音と、それを窘めるジョンの声で、我に返る。
ため息をついて、私は屋根裏を出る。
本当は、こんなコンディションで、会いたくない。
夜の者達の理性が衰える満月の夜に、私から誇りを奪い、その後も気分次第で蹂躙し、隙あらば夜の世界に引きずり込もうとする…かつて、心を許してもいいと思った事さえあった…吸血鬼に。
「吸血鬼ドラルク、遅くなったな。今夜も、監視に来たぞ。」
いつも通りの台詞と共に、屋根裏から下に飛び降りる。
いつも通り、私の好きなクッキーと紅茶が、テーブルに並べられている。いつもなら、飛びつきたいぐらい、私の胃袋を掴んで離さないクッキーだ。
なのに…何故だろう。
「さあ、おあがり…疲れただろう?」
監視対象が、座ったまま顎で席を指して、私に座る様に急かしてくる。
ヒナイチくん。さあ、どうぞヌ。
ジョンが椅子を引いて、私を招いてくれる…いつも通りの光景だ。
いつも…どおり?
違和感が、拭えない。
どうして、食べたい…という気に、ならないのだろう。
それに、どうして…
「君の好きなクッキーだろう?いつも通りの。」
どうして、お前は座ったままなのだろう。
『ふん、気障ったらしい奴だ。こういう事を、女性であれば、誰にだってするのだろうな。』
『失礼な。君だけだとも…私は君を対等な伴侶として、夜の世界に迎えたい。そうでなければ、指一本動かすものか。』
ドラルクは、いつも私を迎える時…『自らの手』で椅子を引いて、私を座らせてくれるのに。
「ヒナイチくん…。」
「…あぁ、頂こう。」
何故か、ダラダラ冷や汗が流れて来る。
誇りを奪われてから、常に警戒心はあるが…ここまで、緊張する事はあまりない。
でも、弱気な姿は見せたくない。
お腹が空いているのに、とてもクッキーを食べる気にはならないが…一つ、私は指で摘まんで口に運ぶ。
「…っぐ…うぅ。」
いつもと、同じ味がする。舌は、『美味しい』と認識している。
それなのに、飲み込もうとすると、押し返されるような圧迫感がある。
紅茶で、無理矢理流し込もうとするが…吐きそうで。
「はぁ…あ、ふっく。」
「ククク…アンテナが、萎れているよ?気に入らないかね?全然、減っていないじゃないか?」
煽る様な、陰湿な声色。
本当に…目の前にいるのは、ドラルクなのだろうか?
そして、私の膝に座っているジョンは、主の意地悪に対して…何故、何も言ってくれないのだろう?
「さぁ、食べ給え。残すなんて、君らしくない。」
「あ……!!す、すまない。うぅ…お、お手洗いに、行かせて…くれ。」
トイレに向かおうと、立ち上がる。
頭はお腹が空いて、食べたいと感じているのに、体が受け付けてくれない。
このままだと、吐きそうだ。
「…だ、め、だ。ジョン!」
「え……あ、痛ッ!?」
冷酷なドラルクの言葉が背後で聞こえたと同時に、私は無様に床に倒れていた。
「う、うぅ!!ジョ、ジョン…どうして?」
「ヌーン…。」
さっきまで、膝に乗っていた優しいマジロに、足を掴まれたのだ。
その光景が、信じられない。
いつも、主との仲を取り持ってくれていた優しいマジロに、裏切られた心地になる。
でも、考えてみれば当たり前だ。
ジョンは、ドラルクの使い魔で、180年前からずっと寄り添って、生きていたのだ。
何かあれば…主の肩を持つのに、決まっている。
彼を恨むのは、筋違いだ。
「さて…招かざる客には、お仕置きが必要だな?」
「まねか…何だって?」
コツコツ…と冷たい足音が、近づいてくる。心臓が、バクバクと音を立てる。
信じられなかった。
彼は、私から多くのモノを奪った張本人だが…私に対して、殺意を向けた事はない。俗にいう、『惚れた弱み』があったからだ。私はそれに気づいていて、彼に甘えていた…それなのに。
「私の気配を纏わせたクッキー…体内に入ってきて、苦しいだろう?さあ、出ていき給え!いつまで、彼女にしがみついているつもりかね!?」
「な、何を言って…。」
「ヒナイチくんもだ。また、変な所へ行ってきたね?懲りずに、妙な『モノ』までくっつけてきて…」
ギィィ…と義眼が、軋む様な音を立てる。
混じりけのない殺意を向けられて、蛇に睨まれた蛙の様に、縮こまる事しか出来なかった。
「『また』?『妙なモノ』?どういう事だ?何故、怒っているんだ!?教えて…っ、ひぐっ!?」
逃げなければ…そう思うのだが、体が言う事を聞いてくれない。
見上げてる内に、氷の様に冷たい手が、私の喉を掴む。そのまま、無造作にぶら下げられて…
「君に触れていいのは、私だけだと…何度も言っただろう?変わらない子だ。」
「がっ!!あぁ…!!ま、まっ…!!」
あぁ、お前も変わらないな…また、私の話を聞いてくれないのか…このまま、殺されてしまうのか…
「ゴホッ!!ゲホッ!!って…おねがい…」
どうせ殺されるなら、言わせてくれ。
私だって、あんなことさえなければ…本当の想いを、いつか告げるつもりだったのに。
「よしよし、いい子だ。出ておいで…こんなに美味しそうな獲物が、歩いていたのだ。ちょっかいを出したくなるのも、無理はない。今なら、罪を軽くしてやらんでもないが、な!?」
だめか。ミシミシ…と、首の骨が歪な音を立てる。
地面から離れた両足は、無様にバタバタと暴れるだけだ。
首を掴んだ彼の左手を、必死で引っ掻いたが、何も状況は変わらない。
「け、ケホッ!!ゲホッ!!ど、どら…。」
最後の力を振り絞って、視線を下に向ける。
霞んだ視界に映るのは…時折、私を怯えさせる能面の様に無表情な顔。歪に裂けた、残酷な口元。
「あぁ…やっぱり、おま…え…。」
絵に描いた様な吸血鬼とは、こういう顔を言うのだろう…朦朧としていく意識の中で、そんな事を考える。
違う世界にいる私達は、お互いの本音を伝え合う事も出来ないのか…諦めて、全てを手放そうとした時だった。
(マ、マッテ!ゴメンナサイ…タスケ…!ッーーー!!)
「…時間切れだ。子供の姿をしていたとて、容赦するつもりはない。」
ゴキッ!!
聞こえてきたのは…自分の口から飛び出した、聞いた事のない甲高い声と、骨が折れる嫌な音。
そして…
『さて…ジョン、ヒナイチくんを頼むよ。少し、でかけてくる。』
『ヌッヌヌッヌイ。』
何事もなかったかの様な、一人と一玉の穏やかな声。
背中に感じる、柔らかいソファの感触。
ふわりと漂う、お香の様な…体にかけられた、マントの匂い。
『フン。常夜神社か…人間共も愚かしい。こんなモノを後生大事に、祀っているからだ。もう二度とこんな事がない様に…依り代ごと、消してくれる。』
…意識を失う前の私が覚えているのは、これだけだった。
『ヒナイチくん、お茶が入ったよ。そろそろ、降りておいで。』
下から聞こえてくる、監視対象の声に飛び起きる。
時計を見る。
なんだ。いつもより、半時間遅いだけじゃないか…そんなに、急かさなくても。
いつの間にか、ベッドで寝込んでいたらしい。
確か、パトロールついでに、明日の夏祭り会場である、常夜神社の下見に行ってから…ここに、来たんだ。
報告書を書いていたら、途中で眠くなって…ベッドで、休んでいたんだっけ。
「う~ん、すごい寝汗を掻いてるな。」
タオルで寝汗を拭きながら、クローゼットから制服の替えを出す。
こんな事なら、着替えてから休むのだった。
『ヒナイチくん、いるのだろう?』
『ドラルク様、急かしちゃ駄目ヌ。着替え中かもしれないヌしょ?』
コンコン…と扉を叩く音と、ジョンが窘めてくれる声。
そうだ、レディの着替え中だぞ。
急かすなんて、紳士失格もいい所だ。
「吸血鬼ドラルク、遅くなったな。今夜も、監視に来たぞ。」
いつも通り、屋根裏から飛び降りる。やはり、少し眠っただけあって、体が軽いな。
それに…
「さあ、おあがり…疲れただろう?」
「疲れてない。このぐらい、いつもの事だ。」
いつも通り、ドラルクが引いてくれた椅子に、腰かける。
目の前には、いつも通りのクッキーと紅茶が、並べられている。
「君の好きなクッキーだろう?いつも通りの。」
「あぁ、頂こう。」
サクサクと、気持ちのいい音を立てながら、クッキーを口に頬張る。
淹れてくれた紅茶を飲んで、ホッと息が漏れる。
「フフフ…アンテナも、いつも通りだ。やはり、君はそうこなくては。」
餌付けをしているリスを見る、満足そうなドラルクの顔を見上げる。
いつも通りの光景だ…いつも通りの?
『シンヨコニュースです。明日開催予定だった、常夜神社での夏祭りですが…不審火により、社が全焼してしまった為、中止となりました。幸い、この火事による被害は社だけで、周辺には花火が散らばっていました。警察は火の不始末によるものとの見解で、調査を…』
テレビから流れてきたニュースに、クッキーを食べていた手を止める。
明日行われる夏祭りの会場で、退治人達だけでなく、我々吸対も、警備と巡回をする予定だった場所だ。
ここに来る前に、立ち寄った場所だ。
その時は、誰もいなかったはずだ…だれ…も?
子供…子供達を見た記憶が…ある?
「なぁ…ドラルク。ここ。」
「お茶のおかわりは、いかがかな?お嬢さん。」
「お嬢さんは、やめろ。…うん?」
妙に上機嫌なドラルクを、見上げる。
いつも、彼から漂うお香の様な香りに…鉄と焦げ臭い匂いが混ざっていたのは、気のせいだろうか。
「ま、まって!あのひとは、かえしてあげたじゃないか!やめて!やめてったら!!」
知った事か。私のモノに手を出した、身の程知らずな貴様らが悪い。
目の前に蹲る、白髪の子供を見下ろす。
普通の人間ならば、泣きじゃくったその稚い顔に、罪悪感を感じただろう。
ここにヒナイチくんがいたならば、『もう、許してやれ。可哀想だ。』と、私を止めるに違いない。
その時その時の情に流される…人間達の愚かな所だ、と思う。
彼らは、私よりずっと古い『人ならざる者達』なのだ。
「ああ!?か、かえして!!かえしてよ!!それは…。」
あぁ、知っているとも。これが、貴様らの本体だ。
必死に抱え込んだ包みを奪う。引き裂いた中から出て来たのは…この神社の『ご神体』。
それは、ボロボロの小さな人形の姿をしていた。
「フン、くだらん。なまじ畏怖してやるから、つけ上がるのだ。さて…これを。」
懐から、ライターを取り出す。
私の大切なお嬢さんから、精気を奪った罰だ。
見せつける様に、足先から火で炙る。ブスブスと、それは紙とは思えない異臭を放って…
「かえせ!!かえせ、かえせ…か˝え˝せえぇえ˝ーー!!」
「…ぐっ!!」
ガブッ!!ゴリゴリゴリ!!
ライターを持った左腕に、焼けつく様な痛みが走る。彼らが、私の腕に噛みついたのだ。
「…なるほど。ヒナイチくんも、あのまま取り殺されていれば、こうなっていた訳か。」
「ぐ、ギギギギ…ィぃィ!!」
必死に、頭を捻れさせながら肉を喰い千切ろうとするその顔は、とても愛らしいなどと言える代物ではなかった。そして、ブツブツと…その姿は、醜悪なモノに変わる。
子供の泣き顔、苦悶に歪んだ男性の顔、恨めし気な女性の顔、哀れみを乞う様な老人の顔…それらが、混ざり合った異形の姿へと。
私もよくは知らないが、昔からこの近辺で、子供の行方不明や、急病で倒れる者、挙句に衰弱死する者が後を絶たなかったのだという。
それ故に、地元の人々はその場所に神社を立て、畏怖と鎮魂の念を持って祀り上げ、供物を捧げ、抑え込もうとしたのだと聞いている…とはいえ、たまに彼らも羽目を外したくなるものだ。
今回の様に、何も知らない美味しそうな獲物が、うろついていたともなれば…
「フハハハハ!!どうした?私を支配して、人形を取り戻そうとしたのではなかったのかね?何百年も、人々から畏怖されてきた貴様らの力は、そんなものかね?」
「…ッ!!」
我々、吸血鬼同士の戦いは、代々受け継いできた血の濃さで決まる。
押しも押されぬ竜の血族の直系である私は、そして、母方からも濃い血を受け継ぐ私は…その点について絶大な自信を持っていた。なにより、神として祭り上げられてきたアマルガムに、血の濃さで負けても『ジョンとヒナイチくんにだけは、刃を向けない』自信があった。
だから、敢えて避けなかったのだ。
「ほらほら、人形はもうこれだけだ!その体だって、黒ずんできたんじゃないかね?」
「があ〝ああ…あぁ…。」
ブチブチと、肉の裂ける音がする。それでも、私はライターを持つ手を緩めたりはしない。この位、よくある事だ。
だから、絶望的な声を上げながら崩れていく『彼ら』に、最後の欠片を見せつけてやる。
焦げた最後の欠片をもみ消すと、左腕に噛みついていた、モノ達もただの一塊の塵となっていった。
「フン、他愛もない。さて…仕上げに、社も燃やしてしまうか。ご神体はなくなったとはいえ、人々の畏怖の念が、また『彼ら』を呼び込まないとも限らないからな。」
クラバットを裂いて簡単に止血をすると、私は最後の仕上げに取り掛かる。
イタズラ目的で侵入した、ガキ共の不始末に見せかけるつもりで購入した花火と煙草、缶ビールを無造作に投げ出す。それから、火を…
(う、うぅ…。ままぁ…。)
その時だった。背後にあった長持から、子供の声が聞こえたのは…この期に及んで、伏兵がいるとは思えないが。
バキッ!!
腰のレイピアに手をかけながら、足で蓋を蹴り飛ばす。いつでも斬りかかる準備をしながら、転がり出て来たモノを覗き込む。
「…なんだ。本物の昼の子か。ヒナイチくんの報告書にあった子供だな。」
おそらく、彼らに招かれて、精気を吸われた近所の子供なのだろう。
「いいか…放っておいても、どうせ衰弱して死ぬだろう。」
焼け死ぬか、衰弱死するかの違いだ…いつもの私なら、そのまま火を放っただろう。しかし…
『子供が、好きなのかね?』
『好き…うん、そうだな。何だ、その顔は?そんなに、意外か?失礼な奴だ。』
いつだったか、彼女とそんな会話をしたのが、脳裏を過った。
そもそも、ここは彼女の管轄内だ。人ならざる者達による死者が出るのは、彼女の勤務査定に関わる。
「よかろう。今回は、気まぐれだ。」
「うぅ…ん。」
蒼白な顔をした少年を肩に担ぐと、私は火を放った社を出る。
そして、ひとかためにしておいた大量の打ち上げ花火と爆竹に、念動力を使って盛大に火を付けた。
ヒューン…パアァーン!!
バチバチバチ!!
ドーン!パンパンパン!!
『おい!!火事だぞ!!』
『どこのバカだ!!花火なんて、しやがって!!』
『明日が祭りだって、忙しい時に!!クソったれが!!』
『早く!!119番通報しろ!!』
境内で祭りの準備をしていただろう男衆の声が、聞こえて来る。
これだけ派手にやれば、すぐに人が集まるし、類焼する前に消防も来る。救急車も呼んで貰えるだろう。
「じゃあな、小僧。ヒナイチくんに、感謝し給えよ。」
「うぅ…あれ?ここ…ぼく…。」
私が現場にいた所を、誰かに見られる訳にはいかない。
意識が朦朧としている子供を階段に投げ出すと、私は愛しの姫君が待つ居城へと飛びだった。