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残酷な捕食者と、歪な庇護者

全体公開 反転ドラヒナ 7491文字
2025-02-02 17:47:08

誇り奪われた後の、拗れた両思い期の反転ドラヒナで、反転版祭り囃子のお話です。
反転ドラルクさんも、人外みが強いので、怪異に対するチート能力があるんじゃないかな、と。
今回の怪異は、祟り神というか、ヒダルとミサキのイメージが混ざった感じで書いております。被害に遭った子供について、ニュースが何も言わないのは、『言ってはいけない』何か的な風習があるそんな感じで見て頂ければ、と。痛々しい描写にご注意下さい。
彼女を助けた後、神社と怪異を焼き払いに行ったドラルクさんのシーンを追加しました。
2024/08/15 に上げました。

Posted by @kw42431393

 『ヒナイチくん、お茶が入ったよ。そろそろ、降りておいで。』

 下から、監視対象の声がする。私がとっくにここに来ている事を、察していたのだろう。
 時計を見る。
 いつもより半時間、屋根裏から出て来るのが、遅いだけじゃないかそんなに、急かさなくても。
 そう、言い返してやりたい。
 しかし、そこの融通が利かないのが、『彼ら』らしいとも言える。
 特に、ドラルクは、両親共に由緒正しい吸血鬼の血統を引いているだけに典型的な吸血鬼の特徴が、そこかしこに、見て取れた。

 「はぁ今日は、あまり顔を見せたくないな。」
 携帯の鏡アプリで、自分の顔を映す。
 自分だと信じられない程にやつれた顔が、そこにあった。
 「夏バテかなあの神社から帰ってきてから、特に怠い。」

 明日は、常夜神社で地元の夏祭りがある。
 祭りともなれば、普通の一般人でも吸血鬼でも、羽目を外すものだろう。
 この街に赴任してきて、県外出身者の私はまだ数か月。会場である地元の神社が、どういうものかよく知らないのだ。
 だから、パトロールついでに、下見に行ってきた訳だ。
 「我ながら、読み辛いな。あとで、書き直そう。」

 『PM6時。明日の下見を兼ねて、常夜神社を巡回する。吸血鬼の子供達に紛れて、同級生と思しき子供が一緒に遊んでいた。吸血鬼と遊んでいるのだから、時間は仕方ないとしても『せめて、人目のつく、明るい場所で遊ぶ様に』と、注意する。』

 さっきまで書いていた報告書を、読み返す。
 これが、自分の字だろうかそう疑うぐらい、細くて弱弱しくてぐにゃぐにゃしていた。

 『ね~、おねえさん。ここ、はじめて?』
 子供達の中で、リーダーらしい子が、私を見上げてくる。
 白髪で、白い浴衣を着た前髪が覆いかぶさっていて、顔はよく見えない。
 ボサボサ髪の隙間から、深紅の瞳がこちらを見上げている。
 『あまり、来てないな。明日は、ここで祭りなのだろう?』
 『うん、たのしみだね!』
 『あぁ、楽しんでくれ。友達も、一緒だしな。』
 『たのしいよ!おねえさんも、おいでよ。ともだちになるこも、いっぱいくるしおいしいものも、いっぱいくるから



 『ヒナイチくん、いるのだろう?』
 『ドラルク様、急かしちゃ駄目ヌ。着替え中かもしれないヌしょ?』

 扉を叩く音と、それを窘めるジョンの声で、我に返る。
 ため息をついて、私は屋根裏を出る。
 本当は、こんなコンディションで、会いたくない。
 夜の者達の理性が衰える満月の夜に、私から誇りを奪い、その後も気分次第で蹂躙し、隙あらば夜の世界に引きずり込もうとするかつて、心を許してもいいと思った事さえあった吸血鬼に。

 「吸血鬼ドラルク、遅くなったな。今夜も、監視に来たぞ。」
 いつも通りの台詞と共に、屋根裏から下に飛び降りる。
 いつも通り、私の好きなクッキーと紅茶が、テーブルに並べられている。いつもなら、飛びつきたいぐらい、私の胃袋を掴んで離さないクッキーだ。
 なのに何故だろう。
 「さあ、おあがり疲れただろう?」
 監視対象が、座ったまま顎で席を指して、私に座る様に急かしてくる。

 ヒナイチくん。さあ、どうぞヌ。

 ジョンが椅子を引いて、私を招いてくれるいつも通りの光景だ。
 いつもどおり?
 違和感が、拭えない。
 どうして、食べたいという気に、ならないのだろう。
 それに、どうして
 「君の好きなクッキーだろう?いつも通りの。」
 どうして、お前は座ったままなのだろう。

 『ふん、気障ったらしい奴だ。こういう事を、女性であれば、誰にだってするのだろうな。』
 『失礼な。君だけだとも私は君を対等な伴侶として、夜の世界に迎えたい。そうでなければ、指一本動かすものか。』
 ドラルクは、いつも私を迎える時『自らの手』で椅子を引いて、私を座らせてくれるのに。

 「ヒナイチくん。」
 「あぁ、頂こう。」
 何故か、ダラダラ冷や汗が流れて来る。
 誇りを奪われてから、常に警戒心はあるがここまで、緊張する事はあまりない。
 でも、弱気な姿は見せたくない。
 お腹が空いているのに、とてもクッキーを食べる気にはならないが一つ、私は指で摘まんで口に運ぶ。
 「っぐうぅ。」
 いつもと、同じ味がする。舌は、『美味しい』と認識している。
 それなのに、飲み込もうとすると、押し返されるような圧迫感がある。
 紅茶で、無理矢理流し込もうとするが吐きそうで。
 「はぁあ、ふっく。」
 「クククアンテナが、萎れているよ?気に入らないかね?全然、減っていないじゃないか?」

 煽る様な、陰湿な声色。
 本当に目の前にいるのは、ドラルクなのだろうか?
 そして、私の膝に座っているジョンは、主の意地悪に対して何故、何も言ってくれないのだろう?
 「さぁ、食べ給え。残すなんて、君らしくない。」
 「あ……!!す、すまない。うぅお、お手洗いに、行かせてくれ。」
 トイレに向かおうと、立ち上がる。
 頭はお腹が空いて、食べたいと感じているのに、体が受け付けてくれない。
 このままだと、吐きそうだ。

 「だ、め、だ。ジョン!」
 「え……あ、痛ッ!?」
 冷酷なドラルクの言葉が背後で聞こえたと同時に、私は無様に床に倒れていた。
 「う、うぅ!!ジョ、ジョンどうして?」
 「ヌーン。」
 さっきまで、膝に乗っていた優しいマジロに、足を掴まれたのだ。
 その光景が、信じられない。
 いつも、主との仲を取り持ってくれていた優しいマジロに、裏切られた心地になる。
 でも、考えてみれば当たり前だ。
 ジョンは、ドラルクの使い魔で、180年前からずっと寄り添って、生きていたのだ。
 何かあれば主の肩を持つのに、決まっている。
 彼を恨むのは、筋違いだ。



 「さて招かざる客には、お仕置きが必要だな?」
 「まねか何だって?」
 コツコツと冷たい足音が、近づいてくる。心臓が、バクバクと音を立てる。

 信じられなかった。
 彼は、私から多くのモノを奪った張本人だが私に対して、殺意を向けた事はない。俗にいう、『惚れた弱み』があったからだ。私はそれに気づいていて、彼に甘えていたそれなのに。
 「私の気配を纏わせたクッキー体内に入ってきて、苦しいだろう?さあ、出ていき給え!いつまで、彼女にしがみついているつもりかね!?」
 「な、何を言って。」
 「ヒナイチくんもだ。また、変な所へ行ってきたね?懲りずに、妙な『モノ』までくっつけてきて
 ギィィと義眼が、軋む様な音を立てる。
 混じりけのない殺意を向けられて、蛇に睨まれた蛙の様に、縮こまる事しか出来なかった。
 「『また』?『妙なモノ』?どういう事だ?何故、怒っているんだ!?教えてっ、ひぐっ!?」
 逃げなければそう思うのだが、体が言う事を聞いてくれない。
 見上げてる内に、氷の様に冷たい手が、私の喉を掴む。そのまま、無造作にぶら下げられて

 「君に触れていいのは、私だけだと何度も言っただろう?変わらない子だ。」
 「がっ!!あぁ!!ま、まっ!!」
 あぁ、お前も変わらないなまた、私の話を聞いてくれないのかこのまま、殺されてしまうのか
 「ゴホッ!!ゲホッ!!っておねがい
 どうせ殺されるなら、言わせてくれ。
 私だって、あんなことさえなければ本当の想いを、いつか告げるつもりだったのに。

 「よしよし、いい子だ。出ておいでこんなに美味しそうな獲物が、歩いていたのだ。ちょっかいを出したくなるのも、無理はない。今なら、罪を軽くしてやらんでもないが、な!?」
 
 だめか。ミシミシと、首の骨が歪な音を立てる。
 地面から離れた両足は、無様にバタバタと暴れるだけだ。
 首を掴んだ彼の左手を、必死で引っ掻いたが、何も状況は変わらない。
 「け、ケホッ!!ゲホッ!!ど、どら。」

 最後の力を振り絞って、視線を下に向ける。
 霞んだ視界に映るのは時折、私を怯えさせる能面の様に無表情な顔。歪に裂けた、残酷な口元。
 「あぁやっぱり、おま。」
 絵に描いた様な吸血鬼とは、こういう顔を言うのだろう朦朧としていく意識の中で、そんな事を考える。
 違う世界にいる私達は、お互いの本音を伝え合う事も出来ないのか諦めて、全てを手放そうとした時だった。

 (マ、マッテ!ゴメンナサイタスケ!ッーーー!!)
 「時間切れだ。子供の姿をしていたとて、容赦するつもりはない。」

 ゴキッ!!

 聞こえてきたのは自分の口から飛び出した、聞いた事のない甲高い声と、骨が折れる嫌な音。
 そして

 『さてジョン、ヒナイチくんを頼むよ。少し、でかけてくる。』
 『ヌッヌヌッヌイ。』

 何事もなかったかの様な、一人と一玉の穏やかな声。
 背中に感じる、柔らかいソファの感触。
 ふわりと漂う、お香の様な体にかけられた、マントの匂い。

『フン。常夜神社か人間共も愚かしい。こんなモノを後生大事に、祀っているからだ。もう二度とこんな事がない様に依り代ごと、消してくれる。』

 意識を失う前の私が覚えているのは、これだけだった。



 『ヒナイチくん、お茶が入ったよ。そろそろ、降りておいで。』

 下から聞こえてくる、監視対象の声に飛び起きる。
 時計を見る。
 なんだ。いつもより、半時間遅いだけじゃないかそんなに、急かさなくても。
 いつの間にか、ベッドで寝込んでいたらしい。
 確か、パトロールついでに、明日の夏祭り会場である、常夜神社の下見に行ってからここに、来たんだ。
 報告書を書いていたら、途中で眠くなってベッドで、休んでいたんだっけ。
 「う~ん、すごい寝汗を掻いてるな。」
 タオルで寝汗を拭きながら、クローゼットから制服の替えを出す。
 こんな事なら、着替えてから休むのだった。

 『ヒナイチくん、いるのだろう?』
 『ドラルク様、急かしちゃ駄目ヌ。着替え中かもしれないヌしょ?』
 コンコンと扉を叩く音と、ジョンが窘めてくれる声。
 そうだ、レディの着替え中だぞ。
 急かすなんて、紳士失格もいい所だ。

 「吸血鬼ドラルク、遅くなったな。今夜も、監視に来たぞ。」
 いつも通り、屋根裏から飛び降りる。やはり、少し眠っただけあって、体が軽いな。
 それに
 「さあ、おあがり疲れただろう?」
 「疲れてない。このぐらい、いつもの事だ。」
 いつも通り、ドラルクが引いてくれた椅子に、腰かける。
 目の前には、いつも通りのクッキーと紅茶が、並べられている。

 「君の好きなクッキーだろう?いつも通りの。」
 「あぁ、頂こう。」
 サクサクと、気持ちのいい音を立てながら、クッキーを口に頬張る。
 淹れてくれた紅茶を飲んで、ホッと息が漏れる。
 「フフフアンテナも、いつも通りだ。やはり、君はそうこなくては。」
 餌付けをしているリスを見る、満足そうなドラルクの顔を見上げる。

 いつも通りの光景だいつも通りの?

 『シンヨコニュースです。明日開催予定だった、常夜神社での夏祭りですが不審火により、社が全焼してしまった為、中止となりました。幸い、この火事による被害は社だけで、周辺には花火が散らばっていました。警察は火の不始末によるものとの見解で、調査を

 テレビから流れてきたニュースに、クッキーを食べていた手を止める。
 明日行われる夏祭りの会場で、退治人達だけでなく、我々吸対も、警備と巡回をする予定だった場所だ。
 ここに来る前に、立ち寄った場所だ。
 その時は、誰もいなかったはずだだれも?
 子供子供達を見た記憶がある?

 「なぁドラルク。ここ。」
 「お茶のおかわりは、いかがかな?お嬢さん。」
 「お嬢さんは、やめろ。うん?」

 妙に上機嫌なドラルクを、見上げる。
 いつも、彼から漂うお香の様な香りに鉄と焦げ臭い匂いが混ざっていたのは、気のせいだろうか。
 



 「ま、まって!あのひとは、かえしてあげたじゃないか!やめて!やめてったら!!」
 知った事か。私のモノに手を出した、身の程知らずな貴様らが悪い。

 目の前に蹲る、白髪の子供を見下ろす。
 普通の人間ならば、泣きじゃくったその稚い顔に、罪悪感を感じただろう。
 ここにヒナイチくんがいたならば、『もう、許してやれ。可哀想だ。』と、私を止めるに違いない。
 その時その時の情に流される人間達の愚かな所だ、と思う。
 彼らは、私よりずっと古い『人ならざる者達』なのだ。
 「ああ!?か、かえして!!かえしてよ!!それは。」
 あぁ、知っているとも。これが、貴様らの本体だ。
 必死に抱え込んだ包みを奪う。引き裂いた中から出て来たのはこの神社の『ご神体』。
 それは、ボロボロの小さな人形の姿をしていた。
 「フン、くだらん。なまじ畏怖してやるから、つけ上がるのだ。さてこれを。」
 懐から、ライターを取り出す。
 私の大切なお嬢さんから、精気を奪った罰だ。
 見せつける様に、足先から火で炙る。ブスブスと、それは紙とは思えない異臭を放って
 「かえせ!!かえせ、かえせか˝え˝せえぇえ˝ーー!!」
 「ぐっ!!」
 
 ガブッ!!ゴリゴリゴリ!!
 
 ライターを持った左腕に、焼けつく様な痛みが走る。彼らが、私の腕に噛みついたのだ。
 「なるほど。ヒナイチくんも、あのまま取り殺されていれば、こうなっていた訳か。」
 「ぐ、ギギギギィぃィ!!」
 必死に、頭を捻れさせながら肉を喰い千切ろうとするその顔は、とても愛らしいなどと言える代物ではなかった。そして、ブツブツとその姿は、醜悪なモノに変わる。
 子供の泣き顔、苦悶に歪んだ男性の顔、恨めし気な女性の顔、哀れみを乞う様な老人の顔それらが、混ざり合った異形の姿へと。
 私もよくは知らないが、昔からこの近辺で、子供の行方不明や、急病で倒れる者、挙句に衰弱死する者が後を絶たなかったのだという。
 それ故に、地元の人々はその場所に神社を立て、畏怖と鎮魂の念を持って祀り上げ、供物を捧げ、抑え込もうとしたのだと聞いているとはいえ、たまに彼らも羽目を外したくなるものだ。
 今回の様に、何も知らない美味しそうな獲物が、うろついていたともなれば
 「フハハハハ!!どうした?私を支配して、人形を取り戻そうとしたのではなかったのかね?何百年も、人々から畏怖されてきた貴様らの力は、そんなものかね?」
 「ッ!!」
 我々、吸血鬼同士の戦いは、代々受け継いできた血の濃さで決まる。
 押しも押されぬ竜の血族の直系である私は、そして、母方からも濃い血を受け継ぐ私はその点について絶大な自信を持っていた。なにより、神として祭り上げられてきたアマルガムに、血の濃さで負けても『ジョンとヒナイチくんにだけは、刃を向けない』自信があった。
 だから、敢えて避けなかったのだ。

 「ほらほら、人形はもうこれだけだ!その体だって、黒ずんできたんじゃないかね?」
 「があ〝あああぁ。」
 ブチブチと、肉の裂ける音がする。それでも、私はライターを持つ手を緩めたりはしない。この位、よくある事だ。
 だから、絶望的な声を上げながら崩れていく『彼ら』に、最後の欠片を見せつけてやる。
 焦げた最後の欠片をもみ消すと、左腕に噛みついていた、モノ達もただの一塊の塵となっていった。

 「フン、他愛もない。さて仕上げに、社も燃やしてしまうか。ご神体はなくなったとはいえ、人々の畏怖の念が、また『彼ら』を呼び込まないとも限らないからな。」
 クラバットを裂いて簡単に止血をすると、私は最後の仕上げに取り掛かる。
 イタズラ目的で侵入した、ガキ共の不始末に見せかけるつもりで購入した花火と煙草、缶ビールを無造作に投げ出す。それから、火を

 (う、うぅ。ままぁ。)
 その時だった。背後にあった長持から、子供の声が聞こえたのはこの期に及んで、伏兵がいるとは思えないが。

 バキッ!!

 腰のレイピアに手をかけながら、足で蓋を蹴り飛ばす。いつでも斬りかかる準備をしながら、転がり出て来たモノを覗き込む。
 「なんだ。本物の昼の子か。ヒナイチくんの報告書にあった子供だな。」
 おそらく、彼らに招かれて、精気を吸われた近所の子供なのだろう。
 「いいか放っておいても、どうせ衰弱して死ぬだろう。」
 焼け死ぬか、衰弱死するかの違いだいつもの私なら、そのまま火を放っただろう。しかし

 『子供が、好きなのかね?』
 『好きうん、そうだな。何だ、その顔は?そんなに、意外か?失礼な奴だ。』
 
 いつだったか、彼女とそんな会話をしたのが、脳裏を過った。
 そもそも、ここは彼女の管轄内だ。人ならざる者達による死者が出るのは、彼女の勤務査定に関わる。
 「よかろう。今回は、気まぐれだ。」
 「うぅん。」
 蒼白な顔をした少年を肩に担ぐと、私は火を放った社を出る。
 そして、ひとかためにしておいた大量の打ち上げ花火と爆竹に、念動力を使って盛大に火を付けた。

 ヒューンパアァーン!!
 バチバチバチ!!
 ドーン!パンパンパン!!

 『おい!!火事だぞ!!』
 『どこのバカだ!!花火なんて、しやがって!!』
 『明日が祭りだって、忙しい時に!!クソったれが!!』
 『早く!!119番通報しろ!!』

 境内で祭りの準備をしていただろう男衆の声が、聞こえて来る。
 これだけ派手にやれば、すぐに人が集まるし、類焼する前に消防も来る。救急車も呼んで貰えるだろう。
 「じゃあな、小僧。ヒナイチくんに、感謝し給えよ。」
 「うぅあれ?ここぼく。」

 私が現場にいた所を、誰かに見られる訳にはいかない。
 意識が朦朧としている子供を階段に投げ出すと、私は愛しの姫君が待つ居城へと飛びだった。
 
 


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