X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

【サンプル】砕けた歯車、軋む夢

全体公開 TF 4870文字
2025-02-02 22:40:21

3/16 WAR OF THE PLANETにて発行予定。
A5サイズ 本文P22 200円くらい※会場価格

オラDの馴れ初め捏造や自己解釈等色々あります。
一応死ネタ回避の仲直り本。ハピエンです。
余裕があればその後のオプメガ小話無配が付く予定。
※無配は会場限定。イベント後無配だけWeb再録します多分。

 オライオン・パックスとD-16の友情は、傍から見れば随分と奇妙なものに見えただろう。今では二人並んでいることの方が自然になってしまっているが、初めの頃は周囲を驚かせたものだった。
 片や規則を軽視し自由気ままに奔放に過ごすオライオンに、規則を重視し生真面目に労働に従事するD-16。誰が見ても正反対のはずの二人は、まるで生まれた時に二つに分かたれた半身とでも言うように、常に互いに手を取り合って生きていた。二人が出会うより前には、彼らは一体どう一人で生きてきたのか想像もできない程に、彼らの違いはぴたりと嵌っていたのだ。


 始まりは、オライオンから。新しい配属先で割り振られたポッド型のリチャージスラブ。狭い空間に並べられ、詰め込まれたうちの一つ。仕切りも何もないが、唯一のプライベートと言ってもいい、所謂自分の部屋を片付けていた時だった。

 自らの正面に配属されたのはどんな機体なのだろう。嫌でも毎日顔を突き合わせなくてはいけなくなるのだから、できるだけ仲良くしたい。

 誰だってそう思うのは当然だろう。起きて早々、嫌いな奴の顔など見たくもないし、寝る前だって嫌いな顔を見ながら眠るのなんてまっぴらだ。不安と期待に振り返った途端、キュルリと音を立ててオプティックが見開かれる。
 塗装もされていない鈍色の機体は他の労働者と同じく薄汚れて、傷だらけ。群衆に紛れてしまえば、すぐに埋もれてしまいそうなほど凡庸な機体のはずなのに、何故だか目が離せなくて。横から見えた特徴的なオプティックに、胸が高鳴ったのを覚えている。
 時間を閉じ込めた琥珀のように輝く金色に、見かけない六角形のオプティック。見えたのは一瞬。その一瞬だけで、時が止まったような錯覚に陥った。
 なんて声を掛けようか。迷っていた時に彼がメガトロナスプライムのステッカーをスラブに貼っているところを見て、話の切っ掛けに丁度良いと、思わず声を掛けたのだ。
 振り返って笑ったその顔に、スパークが高鳴った。


 始まりは、利害の一致のようなものだった。危険すぎる労働に対して、生き残るための戦略。信頼できる相方を作り、生存率を上げる。そうやって徒党を組んで生き延びる労働者は少なくない。これも同じようなものなのだろう。
 そう、思っていたのだが。

 想像以上に、オライオン・パックスという相手は手がかかる。

 曰く保管庫に忍び込んだだとか。曰く理不尽なコグ有りに抗議しに行っただとか。スパークがいくつあっても足りないような愚行を重ねて、当然彼の階級章は空っぽのまま。
 ああ、コイツは放っておいたら簡単に死んでしまうな。と、察してしまえば放っておけるはずもない。オライオンの行動に、彼の純粋さと、彼なりの正義感を見出してしまっては尚のこと。その行動に助けられているのも事実なのだから。
 ならば自分は、彼が気兼ねなく自由に動けるように支えてやろう。そう考えるようになるのに、時間はかからなかった。
 規則を守らない奴なんて放っておけばいいのに。彼が笑っていられるように、酷い罰を受けないように、悪戯じみた悪行に手を貸して、自分まで規則を破るようになってしまっていた。
 さっさと見捨ててしまえばいいのに、彼に呼ばれる度に、その手を振り払えずに、つい手を伸ばしてしまう。



 傍から見れば、問題児はオライオンで、D-16が諫め役。その見方はある意味正しく、ある意味では全くの逆だった。
 それを知っているのはオライオンただ一人。気付いたのも、D-16と連むようになって暫くしてからだ。

「やばいやばいやばいやばいやばいっ!」
 狭い道を走り抜け、コグ無しの機体でしか通れないような隙間をくぐり抜けていく。それにしても、トランスフォームも碌にできないのにジェットを撒くなんて、無謀にも程がある。それも、相手が一機や二機ではなく十機を超えていたら無理なんてものじゃない。

 何が駄目だった? 
 鍵を盗みだしたことか? 
 それとも、その鍵で禁書区域に入ったこと? 
 中のデータをいくつか拝借していたことがバレた? 

 心当たりは多すぎて、通りに出た瞬間囲まれる絶望感に即座に踵を返して走り出すが、今日は中々諦めてくれない。いつも以上に殺気立っている様子の警備兵に、流石にやり過ぎたと心の中では悲鳴を上げながら、とにかく逃げる。
 街中を疾走するオライオンに、周囲はとっくに呆れた様子で、誰も助けてくれる気配はない。コグ有りはわざと足を引っ掻けて転ばせようとしてくるし、コグ無しは「頑張れよー」なんて、気安く声を掛けてくれるだけ。
 ついに追い詰められた、往来のど真ん中。完全に囲まれて、逃げ道は何処にもない。
「もう逃げられないぞ、オライオン・パックス!」
「あー、今日は名前覚えてくれてるのね、ありがとう。その、俺としてももう少し君たちと仲良くしたいんだけど、ほら、皆もう疲れただろ? それに保管庫からも大分遠くに来ちゃったしほら、そろそろ戻った方がいいんじゃないか?」
「お前を連れてな」
「いやいや、大丈夫。俺は一人で帰れるからお気遣いなく。……だめ?」
 笑って誤魔化そうにも、冗談で済むような雰囲気はまるでない。勘弁してくれ、と内心泣きそうな程に参っていたその時に。遠く見えた煙に、にわかに喧騒が広がっていく。

「火事だ! 皆逃げろ‼ 爆発するぞ‼」

 燃料に火がついたのだ。原石とは違い、精製されたエネルゴンはそう簡単に爆発することは無いが、それでも圧縮された高密度のエネルギーであることに違いはない。扱いを間違えれば簡単に爆発する。
 慌てふためく民衆に、警備隊も無視することはできずに即座にトランスフォームし現場へ急行する。その場に放置されたオライオンが、逃げるコグ有りの市民たちに潰されそうになった瞬間、腕を引かれて路地裏に連れ込まれた。


 ──(中略)──


 四百万年。
 彼らの友情に亀裂が入り、訣別を経て、それだけの年月を戦争に費やした。美しかったサイバトロン星は荒廃し、再び湧き出たエネルゴンも度重なる戦争についに枯渇し、クインテッサがこの惑星から手を引いて久しい。
 それでも、彼らが戦争を止めることは無かった。オートボットとディセプティコンの内戦は過激さを増し、遂には惑星の外にまでその被害を拡げている。
 外敵が消えて尚戦い続ける彼らのことを、他の種族は理解できないだろう。

 過去の全てを清算するべきだと破壊に執着するディセプティコンと。
 過去は赦し、振り返ることなく未来を見据えるべきだと進み続けるオートボット。

 過去しか見ない、過去を見ない。
 きっとそのどちらも大切で、一方を切り捨てるべきではないのだろうに。長年の戦争に、互いに思想が二極化されていることに気付きもしない。対極に位置する彼らには、手を取り合うという選択肢は既に用意されていなかった。
 最早意地の問題なのだ。ここで止まってしまえば、犠牲にしてしまった仲間を、スパークを捧げてくれた部下を、何よりも……自分自身を否定してしまう。

 お前の存在が認められない。
 お前を消さなければ、もう一歩も先には進めない。
 過去を振り切ることも、未来を見ることもできやしない。

 そう、認識してしまったから。
 エネルゴンは尽き果て、互いの軍も瓦解し、かつての栄華も忘れたアイアコン。彼らの終わりで、彼らの始まりのその場所で、数万年ぶりにオプティマス・プライムとメガトロンが対峙した。
 かつて炭鉱夫であった彼らが駆け抜けた街並みは、最早影も形も無くなっている。自由を謳い吹き抜けた風は無く、埋まったはずの胸の穴に、冷たい風が吹き荒ぶ。
「これが最後だ、オプティマス・プライム」
「そうだな。終わりにしよう、メガトロン」
 確かめるように、かつての彼を振り払うように、名前を呼んで。それ以上、言葉が交わされることはなかった。
 どちらが先かも分からない。同じ場所に足を付け、目と目が合った、その瞬間。互いに互いを認識すれば、不倶戴天。残されたエネルギーの全てを懸けて、互いの意地を張り通す。それだけは、四百万年前より変わらない。

 きっとこれが、最期になるのだろう。
 長年の戦争で摩耗したトランスフォームコグは既に碌に機能しちゃいない。故に拳を握って振りかぶる。
 互いに打ち付け合った拳は鈍い音と共にひしゃげて砕けた。飛び散る破片の中で、赤と青の視線が交錯する。 



 その光を見る度に、その目で見られる度に、スパークが軋むのだ。コグで埋められたはずの穴が痛むのだ。気に食わないと、叫び出したくなるほどに。その光を消すためだけに、ここまで来たのだと言ってもいい。

 残されたエネルギーで無理に形成されたエナジーアックスもエナジーメイスも、どちらも形は定まらず。明滅するままに打ち付け合えば、圧縮されたエネルギーが大音響と共に解放された。
 開戦を告げる轟音が、過去を引き裂く絶叫となって、アイアコンに響き渡る。
 粉塵を巻き上げ瓦礫を木っ端と変える衝撃の中でも、彼らは一瞬たりとも目を離さない。遮られる視界の中でも確かに互いを認識していた。残響が収まらぬうちに腕を振り抜いて、揃ってまともに喰らって互いに距離を取る。
 拳を握りしめる度に、砕けた部品が軋む音が響く。それでも構わず殴りつけた。装甲に拳を叩き込んだ瞬間、金属が裂け、露出した循環パイプからオイルが飛び散る。返す拳が頭部を掠め、視界が揺れる。
 それでも止まらない。砕けた拳をさらに振り上げ、鈍い音と共に装甲を抉る。腕が千切れかけても気にしない。壊れた機能も痛みも、知ったことかと叫んで殴って、傷つけ合う。感情のままに叫んだ雄叫びに、発声回路が逝かれてノイズが混じるが構わない。

 お前の存在が許し難い。
 お前の全てを消してしまいたい。
 かつての『彼』が、消えてしまうことが耐え難い。

 既に満身創痍すら超えている。動けるのが不思議な程の損傷で、知らぬ存ぜぬ関係ないと、吼えて、叫んで、己の存在全てを懸けて拳を奮う。一撃ずつに残った命の全てを込めて、スパークを削って殴り合う。
 トランスフォームも忘れて、ただただ愚直に真っ直ぐに。どうして動ける。何故立っていられる。そんな疑問すら浮かんでこない。どれだけ互いに傷だらけでも、スパークは変わらず輝いている。ここに居ると告げてくる。
 ならばやるべきことは一つだけ。それしかできない。それしか知らない。本能のままに、ただその光を消すためだけに。子供の喧嘩じみた殴り合いも、過ぎればそれは獣の喰らい合いにしかならない。
 それでも構わない。まだ死なない、まだ死ねない。相手が生きているうちはまだ死ねないのだ。
 彼を殺さないと、もう何処にも行けなくなってしまったから。四百万年前のあの日から、互いに手を放したあの日から、未だ一歩も動けてなどいないのだ。
 存在を確かめ合うように、彼我の境界線を確かめるように。殴り、殴られ、また殴る。

 装甲を砕く度に。ひしゃげていく金属音に。
 傷だらけの、泥にまみれたその姿に。


 ああ、どうして。どうして、『彼』の姿が重なるのだろう。
 コグも無く、小さく無力だった、ただの労働者だった頃の面影に、握った拳が震えてしまう。
 激しくぶつかり合う、ブレインを揺さぶる程の金属音の中にどうして、かつて拳を打ち付け合った、小さな音を聞いてしまうのだろう。

 振り払うように殴りつけても。声を張り上げ叫んでも。
 その音が、今も尚スパークの奥底で響いているような気がしてしまう。

──サンプルここまで──

Twitterにて部数アンケ行っております。
ご協力お願いします。

アンケ終了しました。
ご協力ありがとうございます。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.