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declare sweet war

全体公開 神無三十一受け 5 29 2560文字
2025-02-04 16:54:06

カルみと バレンタイン前の話
シナリオネタバレあり

 

 定時退社の帰り際、来月の予定が完成したから目を通してほしいと呼び止められて端末を受け取った神無は、自身の日程表の15日の土曜日に週休のマークがついていることに気がついた。

 「えっ」
 「不備ありました?」
 「あいや、不備ってわけじゃないけど……この日土曜日なのに週休もらっていいの?」

 他の部署における土曜休とは、家庭を持つ刑事たちが家族サービスのために申請を行う人気のあるものだ。
 ドロ課は独身の刑事ばかりだが、普段手の空いている時は他の部署に助っ人に出ることが多いため、独身の神無は専ら土曜休を取った刑事の穴埋めで働いていた。
 首を傾げる神無の言葉を聞いた上司の青木は、あぁ、と納得した様子で頷くとにっこりと微笑む。

 「たまたまその日は空いていたので、気にせず休んで大丈夫ですよ」
 「バレンタインの翌日なのに……?」
 「ご家庭持ちの方は当日のお休み希望が多かったので、翌日が空いたみたいですね」
 「そっかぁじゃあ遠慮なく貰っちゃおうかな」

 バレンタインデーの翌日の土曜日など特に激戦区なのではと考える神無だったが、どうやら当日に夫婦の時間を過ごしたいと申請する声が多かったらしい。
 納得して素直に休日を受け取ることにした神無は、改めて休暇や出勤日に不備がないことを伝えると挨拶を済ませて職場をあとにした。

 「久しぶりの土曜休みだ……

 庁舎から出た神無は、暗い空に白い息を吐きながらぼんやりと予定を考える。
 もともとバレンタインデー当日の14日には恋人である縞斑と仕事の後に会う約束をしていたが、翌日は仕事が入るだろうとチョコレートだけ渡して別れる予定だったのだ。
 しかし、翌日が休みとなれば、ふたりでチョコレートを食べて感想を話す時間くらいは取れるかもしれない。
 そう考えた神無は車に乗り込むと、自宅に向かう自動運転が起動したことを確かめてからサングラス型コンピュータを操作した。
 通話画面を表示して見慣れた恋人の名前に向けて発信を行えば、わずか数コールで応答が聞こえる。

 『ーーもしもし、神無ちゃん?』
 「あ、先輩?今話してもいい?」
 『いいよ。お仕事終わったところかな、お疲れ様』
 「ありがと!先輩もお疲れ!」

 聞こえる穏やかな縞斑の声から仕事が立て込んでいないことを察した神無は、明るい声で返事をして労いの言葉を贈った。
 スピーカー越しに通路を歩く音が聞こえること数秒、扉が閉まる音が聞こえて反響音が消える。
 おそらく神無の用事を仕事ではなく恋人からのプライベートな連絡だと正しく受け取った縞斑が、声が聞こえないように私室に移動したのだろう。そういった細かな気配りに縞斑の誠実さや愛情を感じて、神無は胸が温かくなる。

 「それで、どうしたの?」
 「あ、えっとさ14日の夜に約束してたでしょ?会ってチョコ渡すだけにしようって言ってたけど、次の日が週休になったからもう少しゆっくりできそうって報告しようと思って!」

 神無は休みだが、縞斑はきっとスパローのリーダーとしての仕事が山積みだろう。彼の負担にならない程度に少しでも一緒に居たいという素直な気持ちを伝えれば、それまで相槌を打っていた縞斑が沈黙した。
 電波が悪いのだろうかと心配する神無だが、微かに聞こえるタブレットを叩く爪音が通話は間違いなく繋がっていることを教えてくれる。

 「あ、あれ?だらだら先輩?」

 すでに翌日は予定が入っているのだろうか。黙ったままタブレットを叩く縞斑におそるおそる声を掛ければ、彼は小さなため息を吐いて口を開いた。

 「俺も次の日空けたから、外で会おうか」
 「へ?」

 どうやら縞斑は、今この瞬間にアサギリと連絡を取って15日に入っていた予定をずらしたらしい。
 行動の速さに神無が思わず素っ頓狂な声を上げれば、ふっと笑った縞斑が言葉を続ける。

 「朝まで一緒に居てくれる?」
 「……それって、が外泊ってこと?」
 「うん、その認識で合ってるよ」

 少し色気に欠けるが認識としては間違っていない言葉を丁寧に肯定して笑った縞斑は、それに、と呟いて声色を変えた。
 恋人である自分にしか聞かせない甘い声に、神無はぴくりと小さく肩を揺らす。

 「もし神無ちゃんの顔が今真っ赤なら、俺のお誘いの意味も正しく伝わってるかな」
 「っあ、あんたなに言ってんだ!?」

 朝まで一緒に居たいと言われて、ただ単にホテルで並んで眠るだけだと捉えるほど神無は純情に出来ていない。
 思わず神無が車内で大声を上げれば、自動運転車は神無の声を指事と勘違いしたのかつらつらと現在位置の説明を始めた。
 音声感度の高い機械を宥める神無の慌てた声を聞いて笑った縞斑は、手の中のタブレットから聞こえる相棒の小言を躱しながら口を開く。

 「手配は俺がしておくから、仕事が終わったら迎えに行くね」
 「う……うん、」
 「夕食のリクエストはある?」
 「…………たぶん味わかんない」
 「はは、正直だなぁ。適当に目星つけておくよ」

 これから恋人に抱かれると分かった状態で上質なものを食べても、きっと緊張した神無の舌はまともに機能してくれないだろう。
 素直にそう言う神無の震える声を聞いた縞斑は、楽しそうに笑うとそのままタブレットを操作して付近の飲食店に目を通す。
 スイーツの種類が豊富で、アンドロイドの従業員がいない個室。手慣れた様子で条件を絞り込んだ彼は、いくつかの候補を眺めてあとで吟味しようと画面を伏せた。

 「それじゃあ改めて、楽しみにしてるね」
 「うん、おやすみ」
 「おやすみ、神無ちゃん」

 挨拶を交わして通話が切れると同時に、車は自宅へと到着する。
 座席に体を預けて息を吐いた神無は、空調の保たれた車内にも関わらず火が出るような熱を覚えて思わず顔を覆った。

 「先輩とお泊まり?!」

 これまで何度か互いの家に泊まったことはあるが、外泊をしたことは一度もない。
 妙に緊張を覚えて震えてしまった神無は、当初の目的を思い出してはたと途方に暮れた声を上げた。

 「……チョコ、なに渡そうかなぁ

 


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