第25回トワスト、テーマ「ほろ苦いチョコレート」参加作品です。制作時間は約30分です。
@xxxyueyunxxx
たくさん立ち並ぶお店の間を、黒木麗――その正体は半永久的な生命を持つ異種族『魔族』であるソレイユは、今通う学校の学友とともに歩いていた。
今日は自分のことではなく、友達の付き合いで、チョコレートを見に来ている。――そう、友達はバレンタインにチョコレートを渡して告白するのだという、一大決心をしていたのだ。
「ねえみっちゃん、決められた?」
「うーん……あれか、これにしようと思うの。麗はどっちがいいと思う?」
あれかこれ、と指さされたチョコレートをソレイユは見る。――どちらもなかなか値が張るチョコレートだ。
「みっちゃんの気に入った方でいいんじゃない?」
「でも、もし張り込んで駄目だったら、どうしようって思っちゃって……」
みっちゃんが落ち込んでいる。ソレイユはその細い肩を叩いた。少し気の弱いみっちゃんを、勇気づけるように。
「大丈夫だって! それに万一のことがあったら、あたしが一緒に食べたげるから」
「ほんとに?」
「もっちろん! だから、気に入ったの、買っちゃいなよ」
「……うん!」
みっちゃんは顔を上げると、ひとつのチョコレートを選んで会計した。
――きっと大丈夫よ! みっちゃん、優しくていい子だもん!
根拠なくソレイユは、そう思った。
――だがバレンタインの日、放課後の教室でソレイユは泣きじゃくるみっちゃんを迎えることになる。
「みっちゃん……」
何も聞かなくなって、わかる。――玉砕したのだろう。ソレイユはとめどなく涙を流し続けるみっちゃんを、ただ抱きしめることしか出来なかった。――どうしてだろう。失敗したのはソレイユじゃないのに、ソレイユも頭を強く殴られたような衝撃を受けているのは。
「ねね、みっちゃん。食べちゃおう、それ」
そうだった。約束したんだった。万一のことがあったら、一緒に食べると。
「……え……」
「だーかーら! それ、食べちゃって悲しい気持ちも全部、吹き飛ばしちゃおうって!」
ソレイユは自分の席にみっちゃんを座らせる。そして受け取ってもらえなかったチョコレートを開封すると、さっと先に口に放り込んだ。
「麗……」
「あたし、約束したじゃん。万一のことがあったらみっちゃんと一緒に食べるって。だから、食べよ! で、食べ終わったら街に繰り出そうよ。とりあえずカラオケ行ってすっきりしよ!」
みっちゃんはまだ泣き続けていたが、それでもひとつ、頷いた。
ソレイユはもうひとつ、チョコレートを口に放り込む。何でみっちゃんみたいな良い子を振るのよ、と思いながら。
そのチョコレートの味は、とても甘くて、そしてほろ苦かった。