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距離近ない?

全体公開 みずいこ・単話 1619文字
2025-03-03 22:32:40

みずいこ付き合ってはいるけど他の人とも距離が近いからちょっとジェラってるしょーもな痴話喧嘩

Posted by @a_yuuzora

「なあ、お前と隠岐、距離近ない?」
神妙な顔をした生駒からそう言われて、水上は訝し気に眉を顰める。
「近い……? まあ、それなりに仲はええつもりですけど、普通でしょ」
「いやいや普通やないやろあれは、あんな、ちゅーしそうな距離」
「はぁ!? あ? あー……あれか」
ひとつ思い当たることがある。隠岐にだけ聞かせたい話を耳打ちしたことだ。いつもはそういうのはトリオン体の内部通信で話すのだが、そのときたまたま換装してなくて雑談のためだけに換装するのも面倒くさくて耳打ちという手段を使ったのだったか。
「別に、ただの内緒話っすよ」
「内緒話? 俺に話せんようなこと?」
「話せんってこともないですけど……そんな気になります? ほんまに取るに足らないくだらない内容ですよ?」
納得のいっていない顔でじっと睨まれ、水上は苦笑する。
「ほら、あいつ笑いのツボ浅いやないですか。俺個人としてはオモロいと思ってるけど普通に話したら7割スベるような内容でも、隠岐ならまあ間違いなくウケるんで隠岐にだけ話してるっていう、そんだけです。どうせ雑談するならスベるよりウケたいでしょ」
「まあ、その気持ちはわかるな」
「理解していただけて何よりです」
「ときどきいちゃついてるみたいなことしてんのも同じやつ?」
「いちゃついてはないやろ!! ダル絡みしてドツかれてるんがそう見えとるならイコさん眼科行った方がええですよ」
「スマン」
水上は、はあ、とひとつため息をついて苦言を呈する。
「大体ねえ、同いとしょっちゅうイチャイチャしとるイコさんに言われる筋合いなくないですか」
「イチャイチャ……? 俺お前以外とそんなことしとるつもりないけど」
「肩ポンほっぺツンとか、後ろから目隠ししてだーれだとか、冷たい飲みモン買ってきて首筋に当てて驚かせるとか、付き合いたてのカップルでもなかなかせんようなことをロビーで堂々やっておいて」
「えっ、ええ……いやいや、あれくらい誰だってやるやろ」
「やりませんねえ」
「水上がせんだけやなくて」
「イコさんたち以外がしてるの見たことないっす」
「嘘やん」
「そして俺がイコさんにされたこともないっす」
「それは確かに。え、してほしかったん?」
「羨ましくないって言ったら嘘になりますけど、当事者になりたい訳でもないっす」
「じゃあええやん」
「でも傍から見てて『距離近すぎひん?』とは何遍も思ってましたよ」
「それは……よぉないな。辞めたほうがええ?」
「あー……いや、なんかもうそういうもんだって諦めてるんで大丈夫です。イコさんにはイコさんなりのご友人との距離があるもんだとも納得してますんで」
「そか。そんで、隠岐とは何話しとったん」
「この流れで話戻ることあるぅ?」
「俺が友達と仲ええのとお前と隠岐が仲ええのは別の話やん? 特にそっちは一対一な訳やし」
生駒の言うことにも一理ある、と思ってしまい水上は頭を掻いた。
「あの、ほんまにしょーもない、くだらん話しかしてへんのですよ。イコさんにわざわざお聞かせすんのも憚られるっちゅーか」
「そこまで秘密せなあかんこと?」
「ちゃいます! もぉ〜……
基本さっぱりした性格の生駒がここまで拘るということは実際聞かせないと引き下がらないだろう。あのとき横着せずに内部通信で話しておけばよかった、と思えどももう遅い。
水上は観念して直近で一番隠岐にウケた話を披露した。つまり『電車で向かいに座ってたオッサンの鼻から尋常でない毛量の鼻毛が飛び出ていて、それが衝撃的すぎて一日中頭の片隅にオッサンの鼻毛がちらついていた』という話を。
隠岐がたっぷり三分引き笑いし続けていたこの話は、生駒にとっては見知らぬオッサンへの同情あるいは共感的羞恥に気がいって面白いとは思えなかったらしい。端的に言えば、スベった。
ほーら見たことか。スベるって分かって実際スベるのってダメージでかいねんぞ!


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