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惚気上戸|31×43

全体公開 Ever 8321文字
2025-03-05 00:27:09

12歳差人間AUアジクロ

Posted by @otohitoe_



アジラフェルに合わせて滅多なことがない限り飲酒を控えていたクロウリーが、この夜は見たことがないほどに酩酊した状態で帰ってきた。

「おかえり、迎えに行くって言ったのに」
「マンションの前まで送ってもらった。タクシーで。ついでに」

名前は忘れたし顔も覚えていないが、今夜の相手は付き合いの長い友人だったはずだ。二十一のときに働いていたガソリンスタンドでのアルバイト仲間。向こうのほうが二つ歳上で、今は奥さんの実家の建材店を継いでいると聞いた。そういう話なら覚えていられるのに、いつまで経っても名前が抜け落ちてしまうし姿も朧気なのは無意識のうちに関心を持たないようにしているからかもしれない。深く考えるとみっともなく嫉妬してしまいそうだから。
もたつきながらもなんとか靴を脱ぐのを見届けて、体を支えてやりながらリビングのソファまで導いてやる。

「ベルト抜くよ」
アジラフェル」
「ん?」
「なんだ」
「何が?」
「なにしてる」
「だから、ベルト抜くよって」
「なんで」
相当だな」

よく一人で部屋まで帰れたな、と思うほどの酔い具合だ。嫌がっているわけではないと見て、アジラフェルはクロウリーのベルトに手を掛けた。そのままフロントのボタンも外し、ふと湧いた悪戯心から押し倒すように横たえさせてみる。それでもやはり大人しくされるがままのクロウリーにふっと笑って、黙って見上げてくるだけの顔をそっと撫でてやった。

「こんなふうになるんだな」
「なにが
「頭上げられる?枕にして」
「んん」

クッションを頭の下に敷かせてからキッチンへ向かおうとすると、その手をクロウリーが緩く掴む。

「どこ行くんだ」
「水持ってくる」
「だめだここにいろ」
「ストロー要る?」
「行くなって言ってるだろ!」
「ブルーとグリーンとピンクどれがいい?」
ピンク?」
「待ってて」

掴まれた手を解いて体の上に置いてやりながらまっすぐ見つめて言うと、今度は得心したように静かに見つめ返して小さく「うん」と頷いた。
ここにいろと引き留められたことに少し気分を良くしながら、アジラフェルは手早に水を注いだグラスを持って戻った。そうでなくとも、正直なところ少し高揚している。こんなに長い間一緒に過ごしてきてまだ初めて見る一面があるなんて。それを引き出したのが自分ではないという点に関しては少し残念ではあるが。

「はい、飲んで」
「んん

ソファの前に腰を下ろしピンク色のストローを差し出す。クロウリーは体を半分起こして素直にそれを口に含み、喉を三度ほど鳴らしたあと解放した。具合が悪いということもなさそうでひとまずほっとする。

「一番好きだ」
「そうなの?」
「おまえ」

言いながら首を伸ばすクロウリーにもう一度ストローを差し出す。アジラフェルの手首をそっと握って水を吸い上げる姿は幼く見え、ますます新鮮だった。

「色の話かと思った」
「全部の話」

と息を吐いて顔を離し、クロウリーはアジラフェルの手首を握ったまま再びクッションに頭を預けた。

「全部の中で一番好き」
「ありがとう。それ今度素面のときにも聞かせて」
「おまえの
「うん」
「お食い初めの写真とか見たい

なんでお食い初め?
と疑問が浮かぶが、どこからそんなワードが浮かんだのかなどと酔っ払いに問うのは無意味だろう。もしかしたら飲んでいる最中にそういう話が出たのかもしれない。件の友人には子供が三人いたはずだああそう、女の子二人と男の子。上の二人の顔はすぐ浮かぶ。病院で会ったことがあるからだ。それでもやっぱりその友人本人の顔はやはりぼんやりとしたままだった。ここまでくると最早やきもちなどという可愛げのある話ではなく単に自分の性根が悪いという話になってきそうだ。
アジラフェルは一旦グラスをテーブルに置き、クロウリーの髪を後ろに掻き上げるようにして撫でてやることで気を取り直した。

「今度実家に行って見てこようか」
「仲悪いんじゃないのか?」
「あー、残ってないかもしれないね
「そういうことじゃんんなんでもない

クロウリーが気遣ってくれたのを察して、アジラフェルはそっと笑った。
写真が一枚も残っていなかったとしても全く何とも思わないが、クロウリーが見たいのであれば残念だし申し訳なくは思う。自分が知らない頃の姿を見てみたいという気持ちは痛いほどよくわかるから。

あ。いや、確かわたしのもの全部まとめた箱があった気がする。家を出るときに渡されてあれ中身なんだったかな
「箱?どんな?」
「普通の段ボールだったはず。まあ、あとで探してみるよ。捨ててなければまだあると思う」
「おれはなにも捨ててない」
「わかってるよ」

アジラフェルは髪を撫でながら微笑んでやった。
家との縁を切るにあたってまるで手切れ金のように生前贈与として貰い受けたこの部屋は、もうじき引き払うのが決まっている。研修が終わったのを区切りとしてもう少しお互いの仕事場に近くて広い部屋に引っ越すことにしたのだ。荷造りも少しずつ進めている最中で、家の中には既にいくつかの段ボール箱が並べ置かれている。今のところほとんどクロウリーに任せっきりになってしまっているが。

「あるとしたらわたしの部屋のクローゼットの中かな、たぶん。明日探してみよう」
「もし昔の写真があったら、待ち受けとかにしてもいいか?」
「携帯の?」
「プリントアウトして飾ったりもしたい」
「別に構わないけどいや、やっぱり一旦やってみたのを見て考えたいかも」
「かわいいだろな

アジラフェルをぼんやりと見つめながらひとりごとのように呟く、クロウリーのその愛おしげなまなざしに胸がぎゅうっとなる。幼い頃のアジラフェルを想像しているのだろうか。どんなふうだったかなんて自分でも憶えていない。あれでも社会で人並みに生きていた両親だから、子供の写真が一枚も無いということは考えにくい。持っていてもしょうがないからきっとこちらに寄越しているはずだが、お食い初めなんてごく身内向けのイベントの写真があるかどうか、そもそもしたのかどうかすらも怪しい。

クロウリーにはそういう写真があるのか尋ねかけたものの、なんとなく憚られてやめた。もちろん見てみたいが、あるのかどうかというたったひとつの問いに含まれる意味がクロウリーには多すぎる。
そんな勝手な懊悩など知る由もないへべれけのクロウリーは、髪を撫でていたアジラフェルの手を頬の下に敷いて甘えてみせている。クロウリーが甘えてくれればくれるほど、寧ろアジラフェルのほうが甘やかされているような心地になる。そしておそらくそれは間違ってはいないのだ。アジラフェルはふっと微笑んで、火照った目元を親指で撫でた。

「あんまり可愛くなかったらどうする?」
「なにが」
「なにってその、写真のわたしが」
「おまえが?」
「写真があったらの話だけど」
「おまえがかわいくないって?」

クロウリーは潤んだ目を丸くさせたかと思うと、くっくっと肩を震わせて笑い出した。

「ありえない

心から可笑しそうにしている様子にアジラフェルも満足した。絶対にそういう反応をすると思っていたし、何であれクロウリーが笑っているとアジラフェルもうれしい。
クロウリーはひとしきり笑うと、口元にはその名残りを留めたままゆったりと頭を上げ、身を乗り出すようにして顔を寄せてくる。

「な、キスしてほしい」
「酔っ払いに手は出さない」
「キスしてくれって言ってるだけだ。なにもセックスしろとまでは言ってないだろ。それだけじゃ済ませられないってことか?」
「そうじゃなくて」
「おれとおまえだぞ。なんの問題があるんだよ」
じゃあ、ちょっとだけ」

アジラフェルは顔を寄せ、触れるだけのキスをした。クロウリーにはかぷりと大きく唇を食べられはしたが。
その強いアルコールの香りにアジラフェルの眉間が小さく皺を作った。

「クロウリー、もう一回水飲んで」
「酒臭かったか?」
「かなり。これ飲んだら一回トイレ行こう」
「なんも出ない」
「行ったら出るから」
「んふっなんかおまえ、変態っぽい
「なんでもいいけど、明日きっとわたしに感謝すると思うよ」
「飲むから、もっかいしてくれ」

再び距離を詰めてくる顎を押さえ、唇の代わりにグラスのストローを差し出す。しぶしぶといった様子のクロウリーの喉がこくり、こくりと二度波打つと、もう一回してくれという交換条件ももう忘れてしまったらしくクロウリーは仰向けに寝転んだ。仕方なくその手の甲にキスしてやることで約束を守ったことにしておいた。

「アジラフェル
「うん」
「すきだ
「さっき返し忘れてたけど、わたしもきみのこと一番好きだよ。全部の中で一番」
「おれが死んだら食ってほしい
「ええ?」
「おまえに

口づけていた手が翻り、その人差し指がアジラフェルの下唇をついとなぞる。

「なあ、嫌になったらいつでもやめていいんだからな」
何を?」
「おまえ一人食わせてやってける甲斐性くらいおれにだってあるんだ
「どうしたの急に。仕事の話?」

思わず笑ってしまいながら聞き返す。何の話かと思って一瞬身構えた。

「気持ちだけもらっておく。ありがとう」
「この前保険のあれもおまえにしたし
「保険?」
「店だって、確かにボロいけどああ見えてそれなりに
「保険って言った?何の保険?」
「ほけん?」
「今きみが言った」
「店の話してた」
「わかった、明日聞く」

はぐらかしているわけではないらしい。アジラフェルはあとで『保険の話』と書いた付箋を冷蔵庫にでも貼っておいてやろうと決めた。

「だからああ、何言おうとしてたのか忘れた。おまえが邪魔するから」
「ごめん」
「許す」

許すと言いつつアジラフェルの頬を一度やんわり抓ったあと、クロウリーは深く息を吐いて天井を仰いだ。
アジラフェルはすかさずクッションの下に腕を差し込み、「こっち向いてて」と体を自分のほうに向けさせた。もちろんクロウリーにこちらを見ていてほしいからではなく、クロウリーが酔っ払いだからだ。

「寝る?」
「んんおまえは?」
「もう少し様子見てようかな。きみがそんなに酔ってるの珍しいから。初めて見たかも」
「そんなに面白いか?」
「いや、心配で。気分悪くなったりしてない?」
「全然」

と答えたクロウリーだったが、数瞬するときゅっと眉を寄せてアジラフェルを見据えた。

「おまえ、おれが吐くかもとでも思ってるのか?」
「吐きそう?」
「吐かない。そう思ってるくせに近すぎるって話をしてるんだ」

顔面を真正面から覆う大きな掌に思わず「う」と短く呻く。背筋を伸ばして身を引いてもなおクロウリーはまだ訝しげにしていた。

「別に平気だ。感染症でもなし」
「おれが間違ってるような言い方するな。医者ってそういうもんなのか?おれならいやだ。距離とっておく」
「それがいいと思う」
「おまえがちょっとアレなだけか
「あれって?」
「んふ

口の端を緩く持ち上げるだけで問いには答えないクロウリーに、アジラフェルはソファの縁に肘を乗せて開いた距離を再び詰める。

「クロウリー」
「ん?」
「あれって?」
「なにが?」
「わかるだろ」
「わからない、酔ってるから」
「はぐらかしてるつもりで言ってるんだろうけど、ほんとになんの話か忘れちゃってるだろ」

笑ってしまいながら額に口づけると、その隙を突いて顔をしっかり捕まえられて逆に唇を奪われた。少しも弱まらない酒気にこっそり閉口するものの、突っぱねられないのが我ながら情けないところだ。

「きみとキスするとこっちまで酔いそう」
「なんだそれ。口説き文句か?」
「言葉通りの意味だけど、もしかしてこういうのがきみの趣味だったりする?」
「いや」
「正直に言っていいよ。酔ってるから聞かなかったことにしてあげる」
「違う

譫言のように呟いて、クロウリーはアジラフェルの頬を手の甲ですりと撫でた。
きみにそのアルコールが無ければ、今とっても良いムードなのにな。
アジラフェルの眼差しに何かの期待を感じたのか、クロウリーはふと優しい声色で言う。

「酔ってるから、なんか口滑らせてやろうか」
「ふうん?」

良くないことだとは思いつつ当然興味は湧く。

「おれがおまえの一番かわいいと思ってるとこ教えてやる」
「うん」
「一番かわいいのはさ
「うん」
……んふ

真面目な顔でじっとアジラフェルを見つめたかと思えばその表情はあっさり和らぎ、クロウリーは一人で笑い始めた。
掌で鼻と口元を隠し、くふくふと可笑しそうに笑っている。

「だめだ全部かわいい」

口の上で指先が緩く絡み、高い鼻先が露わになる。
まあ、そんなことだろうと思った。アジラフェルは少しも表情を揺らがせず、楽しげに笑うクロウリーを黙って見下ろしていた。

「おまえのさ、ふわふわの髪とか、ふわふわのほっぺたとか、ふわふわの体とか、全部かわいい」
「今のところ触感しか出てないね」
「そんなことない。全体的な雰囲気も含めての
「それも酔ってないときにまた聞かせて」
「いつも言ってる」
「たしかに」
「それじゃあ、なんにも口を滑らせてないことになるな」
「それもたしかに。全部きみの言う通りだ。きみが言うことは全部正しい」
「なんか拗ねてんのか?」
「きみがかわいがってくれるのに、どうして拗ねることがある?」
「機嫌直せよなあ、おまえのためなら、おれにできることなんだってしてやるんだぞ。ほんとだ」
「ありがとう。水飲んでくれる?」
「そればっかりだな

後ろのテーブルから取ったグラスを口元に差し出すとクロウリーはやはり素直に咥えてくれる。この点だけはすごく助かる。

「酔っ払いの相手をするのはうんざり?」
「水を飲んでも酔いは醒めない。脱水を防ぎたいのと、二日酔いになりにくくしてるだけ」
「インテリっぽい」
「どちらかといえばそうなるかもね。本職だし」
「本職は子供のお医者さんだろ
「今夜のきみは鋭いな。たしかに酔っ払いを診ることはまずない」
「ふふな、アジラフェル」
「ん?」
「おれのこと見つけてくれてありがとな」
「クロウリー
「言ったことあったか?」

急にそんなことを言われると困る。
クロウリーの頭の中でどんな連鎖があってそれが出てきたのかはさっぱりわからないが、アジラフェルの正常な思考に対してあまりに突飛すぎる。何も言えないままのアジラフェルを、黄金色の瞳が優しく見つめ返していた。

「おまえが好きになってくれなきゃ、今もおれは向こうで一人寝してるんだろうな」
「そんなことないと思う。きみが放っておかれるなんてこと絶対にない。誰かがきっと
「そうかな」
「あ、待って、だめ、違う人のこと想像しないで」
「おまえが言い出したんだろ」

きみのせいで思考が追いついていないんだ、と抗議したいところだが、この甘やかな雰囲気を壊したくなくて口を噤む。
クロウリーはいつものような大人っぽい微笑みでアジラフェルの頬を撫でた。

「なもっかいキスしてくれよ」

と指先で顎を撫でられると、不思議な引力でそこに吸い寄せられてしまう。小ぶりで形の良い唇がかぷかぷと啄んでくる心地よさと相変わらずの酒気。酒気なら慣れる。でもクロウリーから貰うこんなふうなキスは、何度経験したって、たとえ酔っ払いの戯れだったってずっとうれしいままだ。
耳を擽るリップ音と共に端から端まで丁寧に食まれ、仕上げのように上唇の中央に優しく噛みつかれる。

「ふふおれとしかキスしたことないくち

クロウリーの親指と人差し指が、アジラフェルの下唇をふに、と摘む。

「きみだって、この先もうわたしとしかキスしない口だろ」
「この前した」

アジラフェルは一気に体温が下がるのを感じた。恐らく防衛反応だろうが頭はやけに冷静で、クロウリーを静かに見下ろしている視界は他人のもののようだった。

誰と?」
「いつも行ってるクリーニング屋、わかるだろ」

例に漏れず顔は朧気だが、しばらく前に還暦を迎えた夫婦がやっている店のはずだ。まったく警戒していなかったところから現れたダークホースに、襟元からゆっくりと冷や水を浴びせられている心地になる。

「あそこ裏が家になってて、小さいけど綺麗に芝植えてる庭があるだろ。柵で囲ってる」
そこまでは知らないけど。それで?」
「そこ覗くとさ小柄でスタイル良い、美人のボーダーコリーがいるんだよ」
ボーダーコリー?」
「うん」
「犬の種類の?」
「そう。ボーダーコリー。牧羊犬。めちゃくちゃ頭良くて、すげえ運動量ある犬」
………、」
「まだ若いんだが、なんかおれのこと好きみたいでさ

それまで少しも表情を変えないままだったクロウリーだが、アジラフェルが押し黙ってしまったのが可笑しかったのかとうとうにやりと微笑みを漏らした。

「それで、顔中キスされまくってきた。ごめんな、黙ってて」
クロウリー」
「まあ、人間以外はノーカンだよな?」
「けど、今みたいな言い方は全然よくない。ちょっと意地悪だ」
「怒ったのか?」
「少し」

嘘ではない。からかっているにしてもさすがにちょっと意地悪が過ぎると思った。ましてや今のような酩酊状態で説得力は無い。反して隙はあるにも程がある。ふわふわでふにゃふにゃで頭が痛くなるほどかわいい。じゃなくて。クロウリーのことは何より信じているし万が一にもそんなことは無いと思ってはいても、アジラフェルにとってはそれを仮定するだけでもつらいことくらいわかっているくせに。

「悪かったよ、ごめん」

それこそ犬にでもするように、クロウリーの両手が顔を撫でまわしてくる。声色からすると真面目に謝っているようではあった。

「ちょっとやきもち焼かせてみたくなったんだ。おまえはいつも聞き分けがいいから」
「やきもちくらい焼く。いつだって」
「おれがおまえ以外のやつの前でこんなでれでれしてると思うか?」
「今のきみを見てたらすぐには答えられなくなったかも」
「おまえだけだよ、ごめんってアジラフェル、なあ

頬に触れる手つきが変わり、指先が耳の後ろにひたと触れる。

「何したら許してくれる?」

明らかに誘っているような眼差しだった。アジラフェルは表情を崩さないよう、ゆっくりと一度瞬きをした。

「水飲んでトイレ」
「欲のないやつだな」

まるでアジラフェルの返答をわかっていたようなあっけらかんとした調子でクロウリーはぱっと両手を離した。
アジラフェルは再びソファに肘を乗せ、顔を傾けて目線を合わせる。

「酔っ払いに手は出さないって言っただろ」
「もう酔ってない」
「そろそろ一回トイレ行く?」
「そんなに見たいのか?」
「無理やり連れて行ってもいいんだよ。二日酔いにはなるのは嫌だろ?」
「おまえに介抱してもらうからいい」
「よくない」

クロウリーが離した手を、今度はアジラフェルがぎゅっと掴む。もちろん明日のクロウリーの体調が悪くたって喜んで介抱はするし、そんな憂き目を見るのを避けられるならでき得ること全てやってそれを助けてやりたい。が、何より一番の理由は極めて利己的な話だ。

「せっかくの休みなんだから構ってくれなきゃ困る」

友人と食事に行くのも美人の犬に好かれるのも構わない。けれど、見たこともないふにゃふにゃの状態で帰ってこられて、顔中舐めまわされたと聞かされて、対抗心にも似たやきもちを抱かずにいられるほどアジラフェルはまだ大人ではない。
せめて明日くらいは一日中構い倒してもらわなければ。

「アジラフェル

クロウリーは納得したように視線をゆっくりと上下させた。もう酔っていないというのは言い過ぎだと思うが、少しは意識が定まってきたらしい。アジラフェルはほっとしてクロウリーの体を起こそうと肩を抱いた。

「水飲んでトイレ行かせたがってるのってそういう
「違うったら」

頼むから早く酔いを醒ましてくれ。






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