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後悔先立たず

全体公開 804文字
2025-03-05 20:08:02

気温急落につきまた布団つむりにもどったししょに手こずってちょっとお疲れなmr先生、と、そんな先生にうっかり話を振ってしまったntm先生です

「森さん、今日はなんだか朝からお疲れですねえ」

 昼時。夏目が相席の許可をとりがてら話しかけると、湯呑みを口元に運んでいた森は視線だけで許可を出してから苦笑を浮かべた。

「なに、急に寒さが戻ったせいであの子がえらくぐずってな」
「あぁ……昨夜なんて一瞬雪が降りましたものねえ、彼女には辛い寒さでしたか」
「そのようだ。久々に布団の奥から睨まれてしまったよ。此処最近は暖かくてあの子もすんなり起きてくれたから、すっかり楽になったと思っていたのにな」

 そう言って森は漬物を頬張った。向かいに座った夏目もおかずを味わいつつ「大変でしたねえ」と相槌を打つ。なんだか話を振らない方が良かった気がしないでもないが、そこは後の祭りだと諦めることにした。

「一瞬、俺と布団とどちらが好きなのかと聞きそうになってしまった」

 やや遠い目をしながら森が言ったのに、夏目は思わず汁物でむせそうになった。そんな昨今のありふれた筋書きでも使われなさそうな台詞を、まさか森が言いかけるとは思いもしなかったからだ。

「そ、それは……森さんの方が好きだと言うのでは?」
「そうだと良いのだが、こと気温が低い時に限っては布団の方に靡きかねんからな……

 布団の方が好きだと言われたのを想像してしまったのか、凛々しい眉がふにゃふにゃと情けなく下がっていく。

「布団に負けるのはこう、考えただけでもなかなか心にくるものがある……
「いや考えただけでそんなに落ち込まなくても。ね、ほら、大丈夫ですからほら」

 慌てて夏目が慰めても広い肩はすぼめられたままだった。森は司書のことになるとすぐ思考が空回って、余計なことまで考えてしまう所がある。今もまさに思考のドツボに嵌りつつあるようだった。
 やっぱり話しかけない方がよかったかもしれないな、とほんの少しだけ思いつつ、夏目は食事をとりつつ必死になって森を宥めすかしたのだった。


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