ピクスク様のオールジャンルイベント『バレンタインデー&ホワイトデー2025』に参加しました。
拗れた両思い期の反転ドラヒナお話です。
以前助けた子供から貰ったリングキャンディを、嬉しそうに舐めるヒナイチくん。その笑顔は、自分が今まで見た事がないものだった。子供があげた駄菓子に負けた様に感じられて、不機嫌になった人外は、大人げない行動に出る。
後半は、二人が結ばれた時間軸。捏造設定の長男が出ます。ご注意下さい。
他の反転ドラヒナのお話は、ここから読めます→https://privatter.net/category/50931
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反転ドラヒナの捏造設定はこんな感じです。
反転ドラルク:
強大な力を持つ我が儘で中二病の人外。再生能力を持たず、両親に甘やかされてきた為、刹那的な性格。
自分の監視員であるヒナイチに執着し、理性が衰える満月の夜に無理矢理想いを遂げる。胃袋と快楽による刷り込みを行い、彼女を自分に溺れさせようとする事に余念がない。
反面、彼女が無事でいて、毎晩監視に来て欲しい一心で、隠れて敵性吸血鬼達を暗殺したり、自首する様に催眠術をかけて回るなど、良くも悪くも一途な所がある。
反転ヒナイチ:
吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長を勤める若きエリート。ドラルクの監視員で、意地っ張りなくっころさん。
幼少時に、父親が忙しく構って貰えなかった為、本当は甘えん坊で寂しがりや。自分を甘えさせてくれる監視対象に父親像を求めていたが、心身を傷つけられ、快楽堕ち一歩手前まで追い詰められている。
夜と昼…どちらかの世界を選ぶ様に選択を迫られており、ドラルクに対して、愛憎入り交じった複雑な感情に苦しんでいる。
反転ジョン:
ドラルクの使い魔。落ち着いたムキムキの大人マジロ。
ヒナイチが来てから、太ってしまい、筋トレをハードにしたら、筋肉で丸まれなくなってしまった。元競マの帝王。
主夫婦がヤンデレ同士なので、仲立ちする等、苦労人気質。ドラルクの盾として、自身も戦闘に参加する。
思ったより買い過ぎたヌね。ドラルク様。
「まぁ、問題なかろう。うちのお嬢さんなら、一瞬でお腹の中だ。」
ヒナイチくんが私の監視に来る様になって、すっかり馴染みになった食料品店。
元反人間派に属していた『危険度A』の吸血鬼という事で、当初は、周りから奇異な目で見られていたものだった。最近では、寧ろ、店主からは金払いのいい上客として、歓迎されている。畏怖欲という面では、甚だ遺憾ではある…が、まぁ、いいだろう。
今回行われる北海道フェアで、産地直送の食材を取り置きしておくと、わざわざ連絡が来たのだから。
「本音を言えば、竜になって現地まで飛んで行って、食材を見極めて買い付けたい所だが…ヒナイチくんが、監視に来る時間に戻るのは、不可能だからな。」
さすがにそこまでは…本当に、凝り性ヌね。
まぁ、そういう訳だ。あの子が少しぐらい休暇を取ってくれれば、息抜きも兼ねて、連れて行ってやれるものを。そして、彼女が興味を示した食材で、何でも作ってやれるのに…。
念動力で大量に浮かせた、買い物袋を見る。
新鮮な海産物はもとより、やはり、うちのお嬢さんといえばクッキーだ。
良質なバターに牛乳、卵は、欠かせない。吸い込む様に食べてしまうのに、材料を変えた事や、調味料を変えた事にも、すぐに気づいてくれる。作り甲斐があるというものだ。
なにより、今回も味見をしたジョンのお眼鏡に叶った、食材達だ。足を運んだ甲斐があったというものだとも。
それを口にした後、ハートマークを描くだろう彼女のアンテナを思い浮かべれば、鼻唄の一つも出ようというもの。
あれ?あそこにいるのは、ヒナイチくんだヌ?
ジョンの言葉に、我に返る。そして、指さす方に視線を移した。
「本当だ…そろそろ、パトロールも終わる頃だろう。このまま…。」
この後、彼女は私の城へ監視に行くのだ。だから、声をかけようとして…
『じゃあね。おねえさん、やくそくをわすれないでよ!』
『アハハ…わかった、わかった。ボクが忘れなかったらな。それより、気を付けて帰るんだぞ。』
思わず、表情が凍り付くのが分かった。同時に、周りの気温も…氷化能力のコントロールが、ブレたらしい。肩のジョンが身震いをし、向こうでヒナイチくんが、コートの前を掻き合わせていたのだから。
「なんだ、妙に冷えると思ったら。吸血鬼ドラルク、そこにいたのか。」
「買い出しだ。それより…。」
平静を装って、指を指す。君の左手で光っている、紫色の…
「フフッ、これか?この前助けた子に、リングキャンディを貰ったんだ。プロポーズだって…おませさんだな。」
そう言って、君は目を細めながら、それを舐める。
私から言わせれば、安っぽい、くだらない駄菓子を嬉しそうに…彼女のアンテナを確認する。左右に揺れてはいるが、その形は何も変わっていなかった。
「簡単に、約束するものではないだろう。昼の子だから忘れてしまうだろうが、我々だったらどうする?」
「何を、ムキになっているんだ?たかが、8歳の子供が言った事だぞ?」
こっそり、胸を撫で下ろす。これ以上勘づかれる前に、さっさと城に帰ってしまおう。
食事を作って、それを口にする彼女の満足そうな顔を見れば、このどす黒い感情は収まるはずだ。
「帰ろう…まだ、君の仕事は終わっていない。」
「ヌヌヌヌヌヌ?」
「貴様に言われるまでもない。あと、『帰る』んじゃない。お前の城に、『行く』んだ。」
それに、脳裏に引っかかって離れない。
あの子供に笑いかけた君の目は…今も、その子から貰ったというキャンディを見る、その顔は…
「…子供が、好きなのかね?」
「好き…うん、そうだな。何だ、その顔は?そんなに、意外か?失礼な奴だ。」
はにかむ様に笑ったその顔は、今まで見た事がないものだった。
彼女から誇りを奪った私が、それを向けて貰えないのは、仕方がない。
しかし、その優しい顔は、ジョンにさえした事がないものだった。それが、妙に私の心をざわつかせるのだ。
「好きなら、いくらでも協力するとも。明日からでも、私がVRCへ治療に通ってもいい。」
これは、本心だ。私自身、既成事実を盾にして、合法的に彼女を血族に迎え入れたいという目算がある。
何より…竜の血を引いた私と、神の祝福を受けた吸血鬼殺しの間に生まれて来るであろう、最強の狭間の子を見てみたい。
そして、鍛え上げて、その実力を試してみたい…当時の私は、そんな不純な動機も含めて、彼女に触れていたのだった。
「ば、バカを言え!!どうして、お前はそういう極端な…。」
「今更、何を。これだけ回数をこなしていて、成果を為さないのは…9割以上、長命種である私に原因がある。元々、ダンピールの出生率からして低かったのだ。今や、ダンピールも珍しくなくなったのは、人間達が愛した夜の者と子を成したいという願いから、研究に研究を重ねた結果によるもの。そうだろう?」
眦を釣り上げた君を見下ろす。日によって、『避妊して欲しい』と泣いて懇願した姿を思い出す。
ドラルク様。もう、そのぐらいにするヌ。皆、見てるヌよ。
あれは…私とは嫌だ、と言う意味だったのだろうか。他の男性となら、いいと…?
「だから、話を聞け!!お前とは嫌とか、そんな訳…っ!?」
「そんな訳…何だね?」
追撃すると、彼女は口を抑えてそっぽを向いてしまった。無意識に出た言葉だったのだろう。
『嫌ではない』という事が分かっただけでも、よしとするべきか。
「知らない!!もう、行くぞ。ジョンの言う通りだ。こんなの、往来でする話じゃない!!」
ヒナイチくん、落ち着いてヌ…って、ヌッ!?
足元のジョンを抱え上げると、スタスタとヒナイチくんは、逃げて行ってしまう。
行く先は、同じだ。だから、荷物を引き寄せて、私も彼女達の後を追った。
『好き…うん、そうだな。』
春の木漏れ日の様な…これは写真や絵画で見た知識だが、例えるなら、そんな柔らかで温かい笑顔。
あの笑顔をもう一度見たい、私だけに向けて欲しい…我々、人ならざる者達は、こういう面で融通がきかないものだ。一度、思いつめると叶えないと気が済まない。
では、どうすれば…もう一度、あの笑顔を見せてくれるのか。
あの小僧を探して、もう一度会わせる…?そういうものでは、ないだろう。
だいたい、私の許しもなく、彼女の手に触れたマセガキの顔なんて、見たくもない。
子供が好き…では、幼き者であれば、誰にでもあの顔を見せるのだろうか。
「…ヒナイチくん。」
「黙れ!!しばらく、話しかけないでくれ!」
「帰ったら、私の肖像画集を見るかね?子供の頃の。」
「…やっぱり。お前、大きな勘違いをしてないか?」
「ヌン…ヌヌン。」
どうも、違う気がする。子供時代の姿に変身して、見せてやってもいいが…違う気がする。
「うむ…どうしたものか。」
「バカバカしい…この飴、ジョンも舐めるか?」
「ヌリヌヌー。」
そう言って、君は左の薬指に嵌めた飴を、ジョンに差し出した。
小さな飴を一人と一玉で分け合う姿は、傍目には微笑ましいものだ…そして。
「…ヒナイチくん。私も、一口いいかね?」
あの微笑が、再びその顔に浮かんでいた。それが、何故だか妙に腹立たしくて…
「…構わないが、駄菓子だぞ。舌の肥えたお前に合うとは、思えないがな。」
たった2回しか会った事がないだろう…8つかそこらのガキに、負けた様に感じられて…
「まったく。一体、何を…!?」
「ヌヌヌヌヌヌ!!」
バリッ!!ゴリゴリゴリ!!
差し出した手を取って、舐めると見せかけて…キャンディを齧り取った。
その上で、見せつける様に噛み割ってみせる。
何故だか当時の私には、この存在が、どうにも許せなかったのである。
「ば、バカ!!バカ!折角、あの子がくれたのに!」
怒った彼女が殴り掛かってくるが、そのぐらい予想済みだ。だから、軽く躱して、羽交い絞めにする。
「フン、どんなものかと思ったら…ただのブドウ味の飴じゃないか。こんなのより、もっといいのを作ってあげる。」
「ふざけるな!!返せ、返せったら…ああっ!?」
ゴクリ…
そして、耳元でわざと音を立てて、飲み下した。そして、紫に染まった舌を、目の前に突き出してやる。
君の心を捉える『それ』も私のモノになった、その事実を突き付けてやりたくて…。
「ほ~ら、もう跡形もない。取り返したかったら、この腹を掻っ捌く事だ…ここで、やってみるかね?」
「そん、な…うぇ…ぐすっ。な、なんで?こんなちいさなもの…まで、おまえに…とられな…きゃいけな…ひっく。あのこが、おまえに…なにをしたって…ひっく、えぇえん。」
覗き込んだ彼女の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた…泣き声を上げる程、こんなものが大事なのだろうか。
ますますもって、理解出来ない。実際、別に美味しくもない。
そのアンテナだって、反応していないじゃないか。
今のは、ドラルク様が全部悪いヌ。ヒナイチくんが落ち着いたら、ちゃんと説明するヌ。謝るヌよ。いいヌね?
「謝るのは構わんが…どうにも、分からん。たかが、どこにでもある砂糖の塊じゃないか。2回会っただけの子供の事で、何故そこまで泣くのかね?」
ジョンが苦言を呈してくれたのに、当時の私は、1㎜も理解する事が出来なかった。
結局、その日の私が得たのは、見たかった顔とは程遠い…憎悪と絶望に満ちた泣き顔だけだった。
その後も、何かと理由をつけて、彼女にあの笑顔をさせようとした事もあったけれど…それは、何の意味もなさなかったものだ。
あれから、ロナルドくんが我々と合流し、私達にも紆余屈折があって…お互い意地を張って隠していた本音を明かし合い、本当に心身共に結ばれた今となっても…あの笑顔は、私に向けられる事はなかった。
何故なら、それは…
「おかあさま、これをうけとってください。おとうさまに、おしえてもらいながら、つくったんです。」
「ありがとう、竜輝。そうか。今日は、ホワイトデーだったな。」
あれから、22年の時が過ぎた。
今、目の前の君は、当時の私が欲しかった笑顔を、目の前で跪いている7歳の我が子に向けている。
幸せそうに眼を細めて、紫色のリングキャンディを薬指に嵌めて貰いながら…
キキッ!!
「およしなさいませ。お相手は、目に入れてもお痛くない、お可愛いご子息ではありませんか。」
「ヌンヌン…。」
背後に立っていた友人と、長年連れ添った使い魔に窘められて、目を伏せる。
平静を装っていたつもりだが、義眼が不機嫌な時に鳴らす音を立てたのだ。
「…女々しいお父様で、すまないね。」
「もう、おとうさまったら!ぼくは、おかあさまをひとりじめしたりませんよ。おなじくらい、たいせつなおとうさまですもの。だから、これを。」
そう言って、愛息子は、私の左手を取った。
幼子の小さな手には…さっき、ヒナイチくんに挿したのとお揃いの、竜鱗を象ったリングキャンディが握られていて…
「ありがとう…ますますもって、お父様は、自分が恥ずかしい。」
「アハハ。ドラルク、一本取られたな。私達には勿体ないほど…この子は、優しい子に育ってくれている。本当に、そう思う。」
我が子に嵌めて貰った指輪を舐めながら、こっそり、君の様子を確認する。
目の前で再び、君は『春の木漏れ日の様な』、柔らかな笑顔を浮かべていた。
「はぁ…つくづく。本当に、馬鹿げた事をしていたものだ。」
「さっきのご様子では、まだまだです事よ。もう少~し、かかりますわね。」
「…お説教なら、お手柔らかに頼む。」
「ヌフフフ。」
君が浮かべるこの笑顔は…白い羊膜を被った吸血鬼殺しとして生まれ、期待を背負って生きて来た少女が、心の奥に押し込めて来た…元から持っていた、優しい母性的な一面の顕れだったのだ。
どう躍起になったところで、既に異性として想いを向けられていた私が、貰えるはずのない代物だったのである。