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向けられる事は、永遠にない

全体公開 反転ドラヒナ 20 5685文字
2025-03-07 17:02:31

ピクスク様のオールジャンルイベント『バレンタインデー&ホワイトデー2025』に参加しました。
拗れた両思い期の反転ドラヒナお話です。
以前助けた子供から貰ったリングキャンディを、嬉しそうに舐めるヒナイチくん。その笑顔は、自分が今まで見た事がないものだった。子供があげた駄菓子に負けた様に感じられて、不機嫌になった人外は、大人げない行動に出る。
後半は、二人が結ばれた時間軸。捏造設定の長男が出ます。ご注意下さい。

他の反転ドラヒナのお話は、ここから読めます→https://privatter.net/category/50931

Posted by @kw42431393

反転ドラヒナの捏造設定はこんな感じです。
 
 反転ドラルク:
 強大な力を持つ我が儘で中二病の人外。再生能力を持たず、両親に甘やかされてきた為、刹那的な性格。
 自分の監視員であるヒナイチに執着し、理性が衰える満月の夜に無理矢理想いを遂げる。胃袋と快楽による刷り込みを行い、彼女を自分に溺れさせようとする事に余念がない。
 反面、彼女が無事でいて、毎晩監視に来て欲しい一心で、隠れて敵性吸血鬼達を暗殺したり、自首する様に催眠術をかけて回るなど、良くも悪くも一途な所がある。

 反転ヒナイチ:
 吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長を勤める若きエリート。ドラルクの監視員で、意地っ張りなくっころさん。
 幼少時に、父親が忙しく構って貰えなかった為、本当は甘えん坊で寂しがりや。自分を甘えさせてくれる監視対象に父親像を求めていたが、心身を傷つけられ、快楽堕ち一歩手前まで追い詰められている。
 夜と昼どちらかの世界を選ぶ様に選択を迫られており、ドラルクに対して、愛憎入り交じった複雑な感情に苦しんでいる。

 反転ジョン:
 ドラルクの使い魔。落ち着いたムキムキの大人マジロ。
 ヒナイチが来てから、太ってしまい、筋トレをハードにしたら、筋肉で丸まれなくなってしまった。元競マの帝王。
 主夫婦がヤンデレ同士なので、仲立ちする等、苦労人気質。ドラルクの盾として、自身も戦闘に参加する。



 思ったより買い過ぎたヌね。ドラルク様。

 「まぁ、問題なかろう。うちのお嬢さんなら、一瞬でお腹の中だ。」

 ヒナイチくんが私の監視に来る様になって、すっかり馴染みになった食料品店。
 元反人間派に属していた『危険度A』の吸血鬼という事で、当初は、周りから奇異な目で見られていたものだった。最近では、寧ろ、店主からは金払いのいい上客として、歓迎されている。畏怖欲という面では、甚だ遺憾ではあるが、まぁ、いいだろう。
 今回行われる北海道フェアで、産地直送の食材を取り置きしておくと、わざわざ連絡が来たのだから。
 「本音を言えば、竜になって現地まで飛んで行って、食材を見極めて買い付けたい所だがヒナイチくんが、監視に来る時間に戻るのは、不可能だからな。」

 さすがにそこまでは本当に、凝り性ヌね。

 まぁ、そういう訳だ。あの子が少しぐらい休暇を取ってくれれば、息抜きも兼ねて、連れて行ってやれるものを。そして、彼女が興味を示した食材で、何でも作ってやれるのに
 念動力で大量に浮かせた、買い物袋を見る。
 新鮮な海産物はもとより、やはり、うちのお嬢さんといえばクッキーだ。
 良質なバターに牛乳、卵は、欠かせない。吸い込む様に食べてしまうのに、材料を変えた事や、調味料を変えた事にも、すぐに気づいてくれる。作り甲斐があるというものだ。
なにより、今回も味見をしたジョンのお眼鏡に叶った、食材達だ。足を運んだ甲斐があったというものだとも。
 それを口にした後、ハートマークを描くだろう彼女のアンテナを思い浮かべれば、鼻唄の一つも出ようというもの。

 あれ?あそこにいるのは、ヒナイチくんだヌ?

 ジョンの言葉に、我に返る。そして、指さす方に視線を移した。
 「本当だそろそろ、パトロールも終わる頃だろう。このまま。」
 この後、彼女は私の城へ監視に行くのだ。だから、声をかけようとして

 『じゃあね。おねえさん、やくそくをわすれないでよ!』
 『アハハわかった、わかった。ボクが忘れなかったらな。それより、気を付けて帰るんだぞ。』
 
 思わず、表情が凍り付くのが分かった。同時に、周りの気温も氷化能力のコントロールが、ブレたらしい。肩のジョンが身震いをし、向こうでヒナイチくんが、コートの前を掻き合わせていたのだから。
 「なんだ、妙に冷えると思ったら。吸血鬼ドラルク、そこにいたのか。」
 「買い出しだ。それより。」
 平静を装って、指を指す。君の左手で光っている、紫色の



 「フフッ、これか?この前助けた子に、リングキャンディを貰ったんだ。プロポーズだっておませさんだな。」
 そう言って、君は目を細めながら、それを舐める。
 私から言わせれば、安っぽい、くだらない駄菓子を嬉しそうに彼女のアンテナを確認する。左右に揺れてはいるが、その形は何も変わっていなかった。
 「簡単に、約束するものではないだろう。昼の子だから忘れてしまうだろうが、我々だったらどうする?」
 「何を、ムキになっているんだ?たかが、8歳の子供が言った事だぞ?」
 こっそり、胸を撫で下ろす。これ以上勘づかれる前に、さっさと城に帰ってしまおう。
 食事を作って、それを口にする彼女の満足そうな顔を見れば、このどす黒い感情は収まるはずだ。
 「帰ろうまだ、君の仕事は終わっていない。」
 「ヌヌヌヌヌヌ?」
 「貴様に言われるまでもない。あと、『帰る』んじゃない。お前の城に、『行く』んだ。」

 それに、脳裏に引っかかって離れない。
 あの子供に笑いかけた君の目は今も、その子から貰ったというキャンディを見る、その顔は
 「子供が、好きなのかね?」
 「好きうん、そうだな。何だ、その顔は?そんなに、意外か?失礼な奴だ。」
 はにかむ様に笑ったその顔は、今まで見た事がないものだった。
 彼女から誇りを奪った私が、それを向けて貰えないのは、仕方がない。
 しかし、その優しい顔は、ジョンにさえした事がないものだった。それが、妙に私の心をざわつかせるのだ。

 「好きなら、いくらでも協力するとも。明日からでも、私がVRCへ治療に通ってもいい。」
 これは、本心だ。私自身、既成事実を盾にして、合法的に彼女を血族に迎え入れたいという目算がある。
 何より竜の血を引いた私と、神の祝福を受けた吸血鬼殺しの間に生まれて来るであろう、最強の狭間の子を見てみたい。
 そして、鍛え上げて、その実力を試してみたい当時の私は、そんな不純な動機も含めて、彼女に触れていたのだった。
 「ば、バカを言え!!どうして、お前はそういう極端な。」
 「今更、何を。これだけ回数をこなしていて、成果を為さないのは9割以上、長命種である私に原因がある。元々、ダンピールの出生率からして低かったのだ。今や、ダンピールも珍しくなくなったのは、人間達が愛した夜の者と子を成したいという願いから、研究に研究を重ねた結果によるもの。そうだろう?」
 眦を釣り上げた君を見下ろす。日によって、『避妊して欲しい』と泣いて懇願した姿を思い出す。

 ドラルク様。もう、そのぐらいにするヌ。皆、見てるヌよ。

 あれは私とは嫌だ、と言う意味だったのだろうか。他の男性となら、いいと
 「だから、話を聞け!!お前とは嫌とか、そんな訳っ!?」
 「そんな訳何だね?」
 追撃すると、彼女は口を抑えてそっぽを向いてしまった。無意識に出た言葉だったのだろう。
『嫌ではない』という事が分かっただけでも、よしとするべきか。
 「知らない!!もう、行くぞ。ジョンの言う通りだ。こんなの、往来でする話じゃない!!」

 ヒナイチくん、落ち着いてヌって、ヌッ!?

 足元のジョンを抱え上げると、スタスタとヒナイチくんは、逃げて行ってしまう。
 行く先は、同じだ。だから、荷物を引き寄せて、私も彼女達の後を追った。



『好きうん、そうだな。』
 
 春の木漏れ日の様なこれは写真や絵画で見た知識だが、例えるなら、そんな柔らかで温かい笑顔。
 あの笑顔をもう一度見たい、私だけに向けて欲しい我々、人ならざる者達は、こういう面で融通がきかないものだ。一度、思いつめると叶えないと気が済まない。
 では、どうすればもう一度、あの笑顔を見せてくれるのか。
 あの小僧を探して、もう一度会わせる?そういうものでは、ないだろう。
 だいたい、私の許しもなく、彼女の手に触れたマセガキの顔なんて、見たくもない。

 子供が好きでは、幼き者であれば、誰にでもあの顔を見せるのだろうか。
 「ヒナイチくん。」
 「黙れ!!しばらく、話しかけないでくれ!」
 「帰ったら、私の肖像画集を見るかね?子供の頃の。」
 「やっぱり。お前、大きな勘違いをしてないか?」
 「ヌンヌヌン。」
 どうも、違う気がする。子供時代の姿に変身して、見せてやってもいいが違う気がする。

 「うむどうしたものか。」
 「バカバカしいこの飴、ジョンも舐めるか?」
 「ヌリヌヌー。」
 そう言って、君は左の薬指に嵌めた飴を、ジョンに差し出した。
 小さな飴を一人と一玉で分け合う姿は、傍目には微笑ましいものだそして。
 「ヒナイチくん。私も、一口いいかね?」
 あの微笑が、再びその顔に浮かんでいた。それが、何故だか妙に腹立たしくて
 「構わないが、駄菓子だぞ。舌の肥えたお前に合うとは、思えないがな。」
 たった2回しか会った事がないだろう8つかそこらのガキに、負けた様に感じられて

 「まったく。一体、何を!?」
 「ヌヌヌヌヌヌ!!」

 



 バリッ!!ゴリゴリゴリ!!

 差し出した手を取って、舐めると見せかけてキャンディを齧り取った。
 その上で、見せつける様に噛み割ってみせる。
 何故だか当時の私には、この存在が、どうにも許せなかったのである。
 「ば、バカ!!バカ!折角、あの子がくれたのに!」
 怒った彼女が殴り掛かってくるが、そのぐらい予想済みだ。だから、軽く躱して、羽交い絞めにする。
 「フン、どんなものかと思ったらただのブドウ味の飴じゃないか。こんなのより、もっといいのを作ってあげる。」
 「ふざけるな!!返せ、返せったらああっ!?」
 
 ゴクリ

 そして、耳元でわざと音を立てて、飲み下した。そして、紫に染まった舌を、目の前に突き出してやる。
 君の心を捉える『それ』も私のモノになった、その事実を突き付けてやりたくて
 「ほ~ら、もう跡形もない。取り返したかったら、この腹を掻っ捌く事だここで、やってみるかね?」
 「そん、なうぇぐすっ。な、なんで?こんなちいさなものまで、おまえにとられなきゃいけなひっく。あのこが、おまえになにをしたってひっく、えぇえん。」
 覗き込んだ彼女の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた泣き声を上げる程、こんなものが大事なのだろうか。 
 ますますもって、理解出来ない。実際、別に美味しくもない。
 そのアンテナだって、反応していないじゃないか。

 今のは、ドラルク様が全部悪いヌ。ヒナイチくんが落ち着いたら、ちゃんと説明するヌ。謝るヌよ。いいヌね?

 「謝るのは構わんがどうにも、分からん。たかが、どこにでもある砂糖の塊じゃないか。2回会っただけの子供の事で、何故そこまで泣くのかね?」

 ジョンが苦言を呈してくれたのに、当時の私は、1㎜も理解する事が出来なかった。
 結局、その日の私が得たのは、見たかった顔とは程遠い憎悪と絶望に満ちた泣き顔だけだった。
 その後も、何かと理由をつけて、彼女にあの笑顔をさせようとした事もあったけれどそれは、何の意味もなさなかったものだ。
 あれから、ロナルドくんが我々と合流し、私達にも紆余屈折があってお互い意地を張って隠していた本音を明かし合い、本当に心身共に結ばれた今となってもあの笑顔は、私に向けられる事はなかった。

 何故なら、それは



 「おかあさま、これをうけとってください。おとうさまに、おしえてもらいながら、つくったんです。」
 「ありがとう、竜輝。そうか。今日は、ホワイトデーだったな。」
 
 あれから、22年の時が過ぎた。
 今、目の前の君は、当時の私が欲しかった笑顔を、目の前で跪いている7歳の我が子に向けている。
 幸せそうに眼を細めて、紫色のリングキャンディを薬指に嵌めて貰いながら

 キキッ!!

 「およしなさいませ。お相手は、目に入れてもお痛くない、お可愛いご子息ではありませんか。」
 「ヌンヌン。」
 背後に立っていた友人と、長年連れ添った使い魔に窘められて、目を伏せる。
 平静を装っていたつもりだが、義眼が不機嫌な時に鳴らす音を立てたのだ。
 「女々しいお父様で、すまないね。」
 「もう、おとうさまったら!ぼくは、おかあさまをひとりじめしたりませんよ。おなじくらい、たいせつなおとうさまですもの。だから、これを。」
 そう言って、愛息子は、私の左手を取った。

 幼子の小さな手にはさっき、ヒナイチくんに挿したのとお揃いの、竜鱗を象ったリングキャンディが握られていて
 
 「ありがとうますますもって、お父様は、自分が恥ずかしい。」
 「アハハ。ドラルク、一本取られたな。私達には勿体ないほどこの子は、優しい子に育ってくれている。本当に、そう思う。」
 我が子に嵌めて貰った指輪を舐めながら、こっそり、君の様子を確認する。
 目の前で再び、君は『春の木漏れ日の様な』、柔らかな笑顔を浮かべていた。
 
 「はぁつくづく。本当に、馬鹿げた事をしていたものだ。」
 「さっきのご様子では、まだまだです事よ。もう少~し、かかりますわね。」
 「お説教なら、お手柔らかに頼む。」
 「ヌフフフ。」
 君が浮かべるこの笑顔は白い羊膜を被った吸血鬼殺しとして生まれ、期待を背負って生きて来た少女が、心の奥に押し込めて来た元から持っていた、優しい母性的な一面の顕れだったのだ。
 どう躍起になったところで、既に異性として想いを向けられていた私が、貰えるはずのない代物だったのである。


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