☀さんにオムライスを作る🐸さんのss。ほのぼの。
ネタバレは特にありません。
@rikka_trpg801
まったりブランチ
「ふわぁ~」
大欠伸をしながら、アキラが宿舎の階段を下りてきた。本日は休みであり、日が高く上るまでたっぷりと惰眠を貪った後である。
流石に空腹を覚えてキッチンへ足を運ぶと、同じく今日が休みの帰代が乾かした食器類を片付けているところだった。皆が朝食で使ったものだろう。
「Good morning、変」
「アキラか。ああ、おはよう」
おはようという時間でもないが、他に適切な挨拶もない。一声交わし、アキラは帰代の後ろを通って冷蔵庫へ向かった。中身を覗くが、すぐに食べられる物といえばチーズやハム、生野菜くらいしか見当たらない。
「う~ん……」
サンドイッチにでもすればいいのだろうが、それすら面倒臭く感じて唸る。だが腹は減っているので、早いところ何か食べたい。
葛藤するアキラに気付いて、帰代が徐に声をかけた。
「……朝昼兼用になるだろうが、何か作るか?」
「いいのか!?」
ラッキーとばかりに目を輝かせるアキラに、帰代は小さく溜息を吐く。
「適当にキッチンを漁られるよりは、俺が作った方が後片付けも含めて手っ取り早い」
帰代の言い分に「確かに」と頷きつつ、アキラはいそいそとダイニングの椅子へ向かった。
「じゃあ、シェフの本日のブランチ、よろしく~」
笑顔でひらひらと手を振るアキラを横目に、帰代はエプロンを着けると料理の材料を取り出し始めた。
野菜室に余っていた玉ねぎとニンジン、半分だけ誰か――おそらく晩酌をするメンバーだろう――が使ったウインナーの袋、卵、牛乳、バター、ケチャップ、冷凍ご飯。これだけで、何を作るかは普段料理をしないアキラにも想像がつく。
「オムライスか? 大好物だぜ」
「ああ。好きだと言っていたが、普段は中々作れないからな」
仕上げが一人前ずつしかできないという調理の工程上、大所帯の宿舎の食事には向かない。
まずは冷凍ご飯をレンジで温める。食材を細かく刻み、玉ねぎとニンジンはご飯と入れ替わりに軽くレンジにかけておく。フライパンを温め、刻んだウインナーを炒める。フライパンにバターを追加し、レンジで火を通した玉ねぎとニンジンを加えてさっと炒め合わせたら、塩コショウとケチャップで味付けをする。そこにご飯を加えて、色が均等になるよう混ぜながら炒めれば、ケチャップライスの完成だ。
大き目の皿に出来上がったケチャップライスを盛り、形を整えておく。フライパンを洗って拭いてから火にかけ直し、熱している間に卵二個をボウルに割って塩ひとつまみと共によく溶き解す。牛乳を少し入れて濃度を調整したら、熱いフライパンにバターを投入する。
じゅわぁっという音と共に、バターの良い匂いが立ち込める。溶けたバターの色が変わる前に卵液を一気に流し込み、箸で手早くかき混ぜる。完全にスクランブルエッグになる前に火から下ろし、ささっと卵をフライパンの奥へ寄せる。トントンと手首を使って少しずつひっくり返し、仕上げはフライ返しも使って裏返して形を整え、最後に少しだけ火にかけて底面をくっつける。
艶やかな黄色いオムレツを先程のライスにそっと乗せ、帰代はダイニングテーブルへと運んだ。
「あれ? オムライスって卵で包むんじゃなかったか?」
「まあ、見てろ」
アキラの目の前で、帰代が包丁でオムレツの表面にすっと一筋切れ目を入れる。そのまま刃先で軽く開くようにしてやれば、ぺらりと花開いた卵がライスを包み込んだ。ふわとろの半熟卵がきらめく。
「Wow!」
サングラスの向こうでアキラの色違いの目が輝いた。帰代は成功したことに内心少しだけほっとしつつ、ケチャップのボトルとスプーンをテーブルに置く。
「召し上がれ。すぐにサラダも持ってきてやる」
「Thank you!」
キッチンへ戻る帰代に礼を言って、アキラはケチャップを手に取った。
そのままかけようとして、一瞬手を止める。少しだけ考えて、せっせとケチャップを持つ手を動かした。
帰代がキャベツとトマトで簡単なサラダを作って持って来る頃には、アキラのそれも完成していた。
「ほら、変。カエルだ」
オムライスの表面に、帰代がいつも着けているヘアゴムのようなデフォルメされたカエルの顔が描かれていた。
帰代はテーブルにサラダを置いてやりながら、少し呆れたように息を吐く。
「無駄に器用だな」
「カワイイだろ?」
「いいから、冷めないうちに食べなさい」
帰代が促せば、アキラは「はーい、いただきます」と返事をしてスプーンを手に取った。
オムライスの端を削って掬い取れば、黄色とオレンジの色鮮やかな断面が覗く。仄かに湯気の立つそれを口へと運べば、まず卵とバターの旨味が広がった。ケチャップの甘酸っぱさと適度な塩加減が舌を楽しませ、野菜とウインナーの食感がアクセントになる。しっかり噛み締めて堪能した後飲み込めば、ケチャップと卵、バターの香りが鼻を抜けていく。
ほぅっと一つ息を吐き、アキラはしみじみと言った。
「美味い」
「当然だ。まあ、お前が半熟卵に抵抗のないやつで良かったよ」
基本的に日本以外では卵はよく火を通して食べる食材だ。欧米諸国には生や半熟の卵に拒否反応を示す人間も多い。アキラはどうやら違ったようだ。
「日本の卵は安全だって、向こうでもそれなりに有名だからな」
「そうか。なら大丈夫だと思うが、下手に向こうで再現しようと思うなよ?」
「ああ、わかってる」
頷いて、アキラはせっせとオムライスを食べ進める。
帰代は会話を切り上げてキッチンへ戻ると、調理に使った物を洗って片付けた。そして、聖の強い希望で購入したコーヒーメーカーを動かす。
すっかり空になった皿を前に、アキラがこの宿舎で覚えた作法で手を合わせた。
「ごちそうさま。あぁ~美味かった……」
「お粗末さま」
帰代は皿を下げ、代わりに淹れたてのコーヒーを置いてやる。カップを手に取り、アキラは満足げな表情で帰代を見上げた。
「至れり尽くせりだな」
「たまの休みだからな」
そう返して、帰代は自分用に淹れたコーヒーを飲む。こだわりのある人間が選んだ豆なだけあって、味も香りもインスタントの比ではない。
ケチャップと卵の甘い匂いが、コーヒーの香ばしい匂いに上書きされていく。窓の外はのどかな日射しが降り注ぎ、通勤通学ラッシュも終わった今は静かだ。
アキラと帰代はコーヒーをお供に、その朝と昼の狭間の時間をゆっくりと過ごしたのだった。
(あとがき)
☀さんにオムライスを作ってあげる🐸さんでした。最近お料理する🐸さんばかり書いてる気がしますが、好きなので良いですよね? あとオムライスが好きな☀さん可愛すぎる。いっぱい食べて欲しい☺
ふわとろオムライス、自分でやると成功率は半々といったところです。オムレツ型にせず開いた状態でフライパンからスライドさせた方が確実。