各個人にクローズアップした裏話
加州清光《愛される側から愛する側へ》
山姥切長義《常に本質を問い、誠実さを祝福する》
山姥切国広《どうかお前の物語で》
伊達編が彼女を中心とした話なのに対し
加州清光と長義は次代を中心とした話です
①伊達組→ https://privatter.net/p/11441925
③→ https://privatter.net/p/11710391
@fu_re_re_ra
加州清光 身上調査書《愛される側から愛する側へ》
《外見年齢》
十代後半から二十歳過ぎ
少年といった印象を与えるので、現世で酒を買うと身分証チェックが入るので注意。主の身分証で購入のこと。
《体感年齢》
鶴丸国永はもちろん、最古参の燭台切光忠よりも圧倒的に歳下な自覚はある。一方、主に対しては、「生きた時代が違うだけで、対等」という感覚もある。主に対しては、どちらかというと年齢とは別の理由から。
《好きな酒》
・甘ったるくて可愛らしい酒が好き、のように振る舞って可愛こぶってるが、実際は度数の高い日本酒、それもコンビニで売ってるような安いワンカップを遠慮なくかっ喰らう方がずっと好き。おっさん臭くて可愛くないから言わない。
・主が用意してくれた郷の水の日本酒は、とても大切に味わって飲んだ。大事な味。
・主と生涯を通して様々な旅行先を巡ったが、その度に味わった地酒の味は、時折思い出して泣きたくなる味。
《主との交流》
・現世警護の際、主の化粧をしたり、爪紅を塗ったりするのがだいぶ楽しい。彼女も加州にメイクやネイルをされると嬉しそうだ。
・「ふへへ、かしゅーにね、髪乾かしてもらってるとね、幸せだなーって気持ちになるの。不思議だね」
と笑った自分の主が、大好きで大好きでたまらない。
《役職:本丸最強の剣であり、教育番長》
・初期刀として近侍と第一部隊の隊長を兼任していたが、後に近侍だけ鶴丸に譲ることになる。この決断は、主とよく話し合った、加州清光自身によるもの。
・現在は、特に最難関の戦場における第一部隊の隊長と教育番長を兼任している。
・最近になって、山姥切国広がついに加州清光に並び立てるほどの強さに至ったため、第一部隊の隊長を一時的に彼に譲って、教育番長として後進育成に集中する場面も増えた。
・しかし、それでもこの本丸最強の刀が加州清光である事実は変わりない。
《鶴丸国永について:呆れるほど面倒で手のかかる相棒》
・この本丸においては、加州清光が「あの馬鹿」と呼ぶ場合、鶴丸国永を指す。
・初期刀の加州清光と初鍛刀の鶴丸国永しか本丸に居なかった期間が長く、かなり長い間、主を挟んで、加州と鶴丸は冷戦状態にあった。
・今はもう、鶴丸が自分以上に、主の愛情無しに在れないことを理解しており、確執は解けている。むしろ、今までの冷たい無関心は何だったのかというぐらい、あっという間に主に傾倒していった鶴丸の溺れっぷりや、主と無理やり引き剥がされたことで自分よりも深刻に精神の均衡を崩した鶴丸を見て、いつもいつも頭を抱える羽目となる。
・つまり、初期刀である加州清光を誰よりも困らせて来たのは、いつもいつもいつもいつも!鶴丸国永だった。
《気風と柔軟性》
・「初鍛刀が非協力的な鶴丸国永であり、他に刀が居ない」という特殊な環境に長く居た関係上、主と加州清光には、頼れるのは互いだけ、という期間がそこそこ長く存在した。
・にも関わらず、刀が増えて以降、排他的になることなく、協力体制がきちんと敷かれた、風通しの良い本丸を成立させるに至ったのは、加州清光の初期刀としての適性がまさに出ている部分。
・彼でなければ、最良と思われるこの結果に自然と辿り着くのは難しかっただろうと思われる。
・そんな初期刀として実に頼もしい得難い資質を、鶴丸国永も深く認めている。
《愛情の不足について》
・鶴丸と二人きりだった期間が明け、刀が一気に増えた頃、加州清光は若干の精神不安定を呈した。自分より強い刀が、美しい刀が、可愛い刀が増えても、自分は愛し続けて貰えるだろうか、捨てないでもらえるだろうか、と。
・主は、そんな加州清光を抱きしめて、深く深く愛情を注ぎながら、彼の不安が消えるまで一晩中背中をさすり続けた。そんな主のおかげで立ち直った加州清光は、こうして修行へ向かった。
・彼女は恐らく、非常に愛情が不足して生きてきたと思われる。
・にも関わらず、加州清光を含む刀たち皆に愛情を深く深く注いだ。そんな彼女を見て、どうしてあんなに強く優しく愛を注げるんだろう、と加州は茫然とするような思いだった。
《次代、愛される側から愛する側へ》
・彼女が教えてくれた無償の愛し方は、加州清光を通して次代に注がれることとなる。
・一度途絶えたはずの物語を紡いでいってくれる。そんな奇跡のような存在を見つけたことは、加州清光にとってこの上ない救いだった。
・鶴丸にとって彼女がずっと鶴の子であったように、加州にとって次代はずっと小さな子供だった。
・心から愛を注いでくれた彼女のこと。小さな子供として主を愛した鶴丸のこと。その両方の気持ちを、加州清光は次代の頃に身に沁みて理解することになる。それを語り合える相手は、もういないけれど。
・時折、安いワンカップを一杯持って、桜の木の下で、独りとつとつと語る。今はもう居ない彼女と、この声が届かない土の下の大馬鹿へ。咲かない桜の下で、届くはずのない言葉を。ぽつり、ぽつり、静かな雨のように。
山姥切長義 身上調査書《常に本質を問い、誠実さを祝福する》
《外見年齢》
二十代中旬から後半。少年の印象が少し透ける国広と並ぶと、少し年上の印象を受ける。
《体感年齢》
・南北朝時代に打たれた名刀であり、刀剣との間柄ではそれに準じる年齢自負を持つ。一方、人間に対しては基本的に超常の存在であり、人間の年齢と自分の年代を並列で語ることはない。
・サーバー長という友を持ったことは、長義の人生の中でも例外中の例外にあたる。普段なら人間に対しては、愚かな子供に言って聞かせるのに近いような振る舞いを見せる長義が、友のことは年齢相応かつ対等な若者として接する。つまり、長義の中で人間相手の年齢というのは、自分が持つ敬意に比例するようだ。
・同様に、彼女に対しては、長義の中で彼女の立ち位置が大きく変わった「展示会の際の年齢=まだ若い女性」という肌感覚を、老いた晩年まで一貫して貫いていたようである。すっかりおばあちゃんになっても若い女性のように扱われるので、彼女はいつもくすぐったそうにしていた。彼にとって彼女は、「変わらないでいて欲しいもの」だったのだ。
《好きな酒》
・全てにおいて最高級品質のものを嗜む。特にワインは甘さ辛さを問わず最上級品しか認めない。自分に相応しいのはそういったものだろう、という自負があるため。
・だが、本当のところは。友と飲む場末のおでん屋の安酒を、雑にかっ喰らいながら笑ってへべれけに酔う、そんな時間以上に得難いものはないと思っている。どんな高い酒を用意されても、あの日のあの味に勝てない。
《対刀剣男士と対人間》
・人間に対する接し方と、刀剣男士に対する接し方には、明確な違いがある。
・刀剣男士は対等、あるいは上下関係が当たり前に存在するという概念の中、人間に対してはあくまで『神と人間』という助力の関係性に落とし込まれた接し方だ。
《長船の祖との関係性》
・長船の祖に対しては、所属を問わず目上の感覚があるらしく、本人なりにいささか礼節を心がけている様子。概ねの相手を「きみ」「お前」と呼ぶ彼が、燭台切に関しては「あなた」と呼ぶあたりに関係性が透けて見える。
《好む人間の傾向:選び抜かれた愛》
・長義自身が非常に頭の良い人物なので、打てば響く会話ができて、なおかつ気兼ねなく遠慮なく話せる相手、というのは非常に貴重だ。
・一見するとそうは見えない飛び抜けた聡明さと、目を見張る善良性を両立して併せ持つ存在を気に入る傾向にある。ただ併せ持つだけではダメで、天賦の頭脳を、善き目的に向けて惜しみなく注ぐ、そんな人物が好きなのだろう。なおかつ、付喪神に対する潜在的な強い敬意が必要で、サーバー長および彼女は、まさしくそれに当てはまる人物だ。
・要するに、ただ賢いだけではダメで、その知性をどう使うかが、厳しく問われる。彼が真に価値を置くのは、本質的な賢さと誠実さなのだ。
・逆に、いかにも頭の悪い女性は実のところ嫌いである。散々色目を使われてきているので。鼻も効くのでキツイ化粧とキツイ香水も嫌い。不快なものは不快である。
・彼の中で、敬意と愛は密接に結びついている。敬意を持つべき相手には愛が伴うというのは、彼にとって自然なことだ。
・だからこそ、認めた相手に対しては、全力で愛情を注ぎ、対等に接する。
・つまり、彼の愛は、決して誰にでも与えられるわけではなく、「彼が心から認めた者だけが得ることを許される、特別なもの」だ。
《主無き極個体》
・実のところ、彼はいわゆる極個体である。
・政府によって、本来なら修行中に判明するはずの事実を「逸話付与」によって強制的に記憶に流し込まれた結果、擬似的に極相当の変化を呈することとなった、いわば「主無き極個体」である。
・このため、一時的に怪異切りの力が使えなくなった経緯があるが、政府の目測を超えて再び力が使えるようになったため、初個体であるかのように偽装したまま、それを政府に伏せて活動している。
・山姥切国広に対して、あまり『偽物呼び』をしない長義だったのは、個人差だけでなく、実は極個体であることも大きく関与している。
《友の死後》
・友の死後、男性がとにかく死にやすい彼の家系が絶えないように、きっちり見守り続けた。赤ん坊が生まれてくると、必ず足を運び、病魔を払い、悪縁を断ち、善き者たれよと言祝ぎ、見守った。
・鬼見の才が全く無い人物だった彼と同じように、子孫も一切鬼見の才が無かったため、長義が見に行っても目が合うことはほとんどなかったが、ごく稀に目が合う赤子のことは、幸福に生きてくれると良い、と願っていた。その子らも、ほとんどが物心付く前に長義が見えなくなってしまったが。
《彼女を見送った後》
・彼女の場合は血縁者が居なかったため、彼女の願いである本丸と次代に、ごくさりげなく、気付かれない程度、力を貸し続けた。
・特に次代は政治的な部分で非常に敵の多い人物だったので、あくまで「気まぐれ」と言い逃れられる範囲の中で、さりげなく情報が行くようにしたり、少しだけ警備を強化したり、そういった形で密やかに力を貸した。
《彼女の約束、舞台裏の献身》
・そもそも、彼女との約束が『自分の本丸の刀たちが、自分と同じくらい次代を愛せたら、一度でいいから力を貸してあげてほしい』だったので、長義は『彼らは、次代を彼女と同じくらい愛しているか』を判定するため、自然と目を配る必要性があった。彼らとの確執は決定的だったが故に、自分は表に立たず、他の山姥切長義の力も借りながら、慎重に彼らの動向を見守った。
・政治的な部分は長義のまさに専門分野であり、理想を言えば、彼ら本丸は、長義の力を借りることができれば百人力だっただろうが、確執は深刻だったため、長義側に手助けする意志があったにも関わらず、手を結ぶには至らなかった。
・故に、少しだけ、少しだけ。気付かれない程度、慎重に見守りながら、細く力を貸した。それはあくまで「判定が終わる前に死なれては盟約を果たせなくなって俺が困る」「自分が盟約を遂行するにあたって、必要な最低限の関わりを持ち続けただけだ」という建前の中で行われた。そこに長義の情と限界が存在する。
《次代と長義、交わらなかった未来》
・次代が初めて長義を目にしたのは、過去視の中だった。年老いた彼女を優しい目で見守る長義の姿と、それを聞いて泣き崩れた国広の件は、ずっと次代の中で忘れられない出来事だった。
・やがて、自ら政治の場に立つようになると、その中で長義を遠目に目撃することになる。数ある山姥切長義の中、ああ、あの刀だ、と確信するも、国広と誰にも言わないと約束したので口にすることはなかった。
・次代は、先見を通して、長義が自分に力を貸してくれていることに気付いていた節がある。先見という『来なかった未来』の中、自分が死ぬ場面に長義が駆け付けたことが何度もあったからだ。
・来なかった未来の中、次代が死ぬ間際、血みどろの視界の中、長義が駆け付け、美しい顔を歪め、間に合わなかったことを悔いる姿。それを次代は幾度も目撃し、何度も違う未来を選んだ。長義が駆け付けるのは大概、どうしようもない袋小路に誘い込まれて全滅が避け難くなった時であり、長義の登場はほぼ自分の死と同義だったからだ。
・つまり長年、次代にとって長義は、死の警鐘を鳴らす夜鳴鶯、出会ってはならない死神でもあった。これは次代が生き残るための大きなヒントになった。
・そのことを、長義は知らない。長義が間に合わなかった絶望的な未来は、ついぞ来なかったからだ。
《再び繋がる縁》
・次代の先見によって、『三代目の任命の件を、政府の誰に託せばいいか』という問題の最適解として、長義が選ばれた。故に、彼女を本丸へエスコートする栄誉を手にすることができた。これは長義にとって、本当に心から喜ばしく名誉なことだった。この記憶は長義にとって、彼が一世紀近く密かに続けてきた献身が最高の形で報われた出来事だ。
身上調査書 山姥切国広《どうかお前の物語で》
《外見年齢》
十代後半から二十歳前後。少年の印象が少し透けるので、現世で酒を頼む時は注意。
《体感年齢》
・新刀の祖と言われた刀工堀川国広によって1590年に打たれたため、西暦2200年代において600〜700歳である。
・本科を含め古刀たちと接する機会が多いため、自覚的な年齢は若造の類と考えている。
・また、初期刀としても選ばれる個体であることが影響してか、主人の歳に主観的な年齢が引っ張られることが多く、主が若ければ主に準じた歩調で歳を重ねる感覚を持つ。主とは対等、ないし、主に少年のように扱われれば、主より少し年下の感覚すら持つことがある。
《好きな酒》
華やかな味わいの大吟醸が好き。辛口の酒を塩辛など渋めのつまみで呑むのが好き。
だが、本質的には『どんな気持ちで誰と飲むか』に大きく左右され、どんな安酒でも大事な相手と飲めれば十分。そういう本質的なところは、不思議と本科と似通う。
足利に共に行ってから、主が足利の地酒をたびたび取り寄せてくれるので、それを幸福な気持ちで飲んでいる。自分の所縁を大切に想ってくれる主を持って、オレは果報者だな。
《爆発的な成長》
・この本丸では、修行までの期間が著しく短い傾向にあるため、初の姿でいる期間が非常に短い。極めた刀だけが、現世で単騎で主を守る資格を得られる形式を取っているからだ。国広も例に漏れず、主のそばに控えたいという思いから、顕現から非常に短期間で修行に出ている。強く、強く、もっと強く。あいつのために。
・足利で山姥切国広と本作長義の同時展示に近侍として同行してから、さらに一心不乱に鍛錬に打ち込むようになり、爆発的に成長。顕現順からは異例なほどの強さを得た。現在、初期刀加州清光に次ぐ強さを誇り、加州に代わって第一部隊隊長で皆を率いる機会も増えた。
・寝る間も惜んだ自己鍛錬に加えて、監査として定期的に来訪する本科による容赦の無い特訓も大きく寄与している。
・全ては、主の『本作長義が与えた感動からきっと山姥切国広は生まれた』『感動を与えた存在が美しくないはずがない。感動から生まれた存在が美しくないはずがない。だから長義せんせーとまんばちゃんの刀は、それぞれ違って美しいんだ』のあまりにまばゆい言の葉に報いるため。
・彼女から不意打ちで与えられた物語は、国広の心を途方もなく揺さぶった。写しであることを誇りにすら思えるような美しい物語をくれた彼女の、物語そのものでありたいという強い願いが、彼を強く強く奮い立たせている。
・この国広は、あいつの物語になりたい、あいつに佩刀されたい(そばにいたい)という願望が非常に強く、あいつが望む未来を斬り開くための最たる刀になりたいと強く強く望んでいる。それが鍛錬の強いモチベーションとなっている。なお、打刀は一般に佩くのではなく差すものだが、この場合は『佩刀されたい』で合っている。というのは、主自身が誰かを斬るためではなく、紐で結んで自分と繋いで飾って自慢して側に置いてほしい、という意味だからだ。
・なお、国広の爆発的な成長に影響された刀は多いが、実は水面下では加州清光を非常に強く刺激した。何せ、加州が大切にしている『物語』は、ありし日に鶴丸に惨敗を喫した加州を抱きしめた彼女の『かしゅーは、世界で一番強い、わたしの刀。そうだよね』という言葉であり、負けるわけにはいかないからだ。こうして刺激し合う加州清光と山姥切国広を先陣に、この本丸は強く強く鍛え上げられていくこととなる。
《生活エリア》
・この本丸は、彼女の代では他本丸との演練が禁止されていたため、他の刀と打ち合う機会が著しく少なく、そのため国広は常に手合わせ相手に飢えている状態だった。経験豊富な本科による特訓は、もっともっともっと強くならならなければと国広を奮い立たせる一因となっている。
・普段は基本的に、粟田口たちの居室が並んだ、コの字形のエリアの中庭を鍛錬場代わりに早朝から刃を振るっていることが多い。ここにいると粟田口短刀たちが夜中に部屋を出た時にちょうど目が合うので、コの字形の渡り廊下を短刀が歩いている最中ずっと国広が「手合わせに付き合ってくれないか」「少しでもいい」と延々と話し掛けてくるので、粟田口の間で「妖怪・辻手合わせ男」というあだ名が広まった。
・初の姿の頃は、多くのひと目につく場所で行う鍛錬に引け目があったが、現在は一切気にしなくなった。むしろ、いつも同じ時間に同じ場所で鍛錬しているため、急な欠員が出た時に長谷部や加州、燭台切にすぐさま声をかけてもらえて出陣や打ち稽古や遠征機会が増えるという利点もある。
・なお、堀川派は全員同じ部屋で川の字で寝ている。三人とも朝が早く、誰よりも早くもりもりと朝餉を食べ次第、山伏が山へ修行に向かい、国広は鍛錬に向かい、堀川は清掃や洗濯や和泉守の世話に回る。山伏の山籠りには時折同伴することもある。
《主への心酔度と健全さ》
・断トツでやばい執着をしている鶴丸を除けば、国広は本丸で五指に入るほど彼女に心酔している一振りで、傾倒具合は初期刀に次ぎ最古参に匹敵するほど。
・にも関わらず、しなやかな健全さを保っている点が、国広の目を見張るところ。この点は加州にも共通する。この場合の健全とは、刀剣用語における、擦り切れたり自分を消耗することがないという意味。初期刀は、どれほど主に傾倒しても、健全さを保つことができる傾向にある。なお、その逆が鶴丸。彼は、明らかに自分を擦り減らしながら彼女を愛している。己を焼き尽くす破滅的な焔が鶴丸なら、国広の愛情は水を得た向日葵のように青空へ伸びていく。
・強く、強く、もっと強く。あいつのために。ただそれだけを突き詰めた国広の在り方は、刀剣男士として一種の理想形に近い。
《交友関係》
・三日月が時折茶に誘ってくるので、休憩がてら少し付き合うこともある。
・悠久を生きる三日月と、刹那を生きる国広。この本丸の三日月は、国広の強さへのひたむきな姿勢を、まぶしく思っているようだ。
・なお、この構図は、『古刀である鶴丸』が『加州清光の健全さを眩しく思っている』のと共通している。それを、三日月も鶴丸も互いに自覚しており、三日月は大らかに、鶴丸は苦笑して、互いの姿に己を見ている。一方、山姥切と加州自身には、その共通の符号に自覚が無いようだ。
・また、同じ日に顕現された三振りである和泉守とは、堀川を挟んで、実はそこそこ仲が良い。相棒である堀川が、相棒に並ぶほど国広を集中的に支えている件について、和泉守が嫉妬することなく非常におおらかに構えているためだ。
「国広ぉ? ああ、最近付きっきりみてえだな。それがどうかしたか?」
「ん? 別に構やしねえのに、律儀に言いにきたぜ? 見てえもんがあるんだとよ。やりてーことがあんなら、やりてーようにやりゃあいいさ。嬢ちゃんも悪いようにゃしねーだろ」
「いいツラしてるぜ、国広も山姥切のやつもよ。おかげでオレぁのんびり昼行燈だ。まったく、楽させてもらってらぁ」
《彼女と本科〜国広が守れなかったもの〜》
・大切な主と、彼女の教育係を務めた本科。この二人の関係性は春のように穏やかで優しく、それを見つめている時間が何より好きだったことを、二人を失ってから気付いた。
・主の死後、この本丸は鶴丸国永封印によって長義と決定的な溝ができた。大事な仲間が、本科を憎み、恨んだこと、あの時間が偽りだと断じられたことは、彼女が愛した物語を仲間に否定されること。それは途方もない哀しみと苦痛で国広を縛った。次代が肯定してくれた事実だけを胸に抱いて、国広は一世紀余りもこの苦痛と孤独に戦い続けた。
・輪廻した彼女を本科がエスコートして連れてきた日、国広は泣き崩れ、それ以来、自分が見ているのは都合の良い夢なのではないか、自分の願望が見せた幻なのではないかという思いに囚われ、かなり長い間、精神を立て直すことができなかった。その段になってようやく、本丸の仲間たちは国広が黙って抱え込んでいた苦痛の決壊を目の当たりにすることとなり、仲間を一人で孤独に苦しめてしまったことを悔いることとなる。長義を恨んだ筆頭が加州清光だったこともあり、この時期に国広の精神的な変調に、一番後悔したのも加州だった。
《夢のような続きを、お前と》
「その、覚えている記憶はまだらだと聞いたが、」
「あっ、そうなの! 聞いて聞いてまんばちゃん、わたしね、あんなに苦労して勉強したことぜんっぜんまるっきり覚えてなかったの!」
輪廻した彼女に、憶えていることと憶えていないことがあるのは自然なことだ。むしろ彼女の場合、記憶が漂白されずに継承されすぎているぐらいだった。
その弊害も心配だったが、やはり憶えていてくれているだろうかという不安も大きかった。
あいつが与えてくれた物語は、オレの全てだったから。
「医学書見ても全然意味分かんなかったし、みかちゃんと将棋したら惨敗だったよ!? 前は接戦できてたって聞いて、嘘でしょ!? ってなった。人生二周目だからってそう都合良くはいかないねぇ」
主は少し早口で明るく話した。いつも必ずゆっくりこちらに耳を傾けてから話し始めたかつてとは少し違う。
「でも、一番大事な『みんなが大好き』ってことはちゃんと憶えてるし」
だが、あの頃とまったく同じ笑い方で、にぱっと花のようにあいつは笑った。
「ほんとに大事なことは、まんばちゃんやみんながちゃーんと憶えててくれてるもんね!」
だから、忘れちゃったことは教えてね。
何も心配なさそうに、そう笑ったあいつの言葉に、息を呑んだ。
オレは、たまらず泣き崩れた。
あいつはびっくりした顔で「まんばちゃん、まんばちゃん、どうしたの? なにかやなこと言った?」と慌ててオレの背をさすったが、オレは首を横に振った。
「ちが、ちがうんだ、あるじ」
困らせていると分かっているのに、ぼろぼろと涙が落ちるのを止められなかった。あふれてくるものを止められない。
「そう、だな。憶えている。オレが、ぜんぶ、憶えているから」
お前がどれだけオレに勇気をくれたか
どれほど救いを与えてくれたか
何度も抱きしめて笑ってくれたか
周囲に絶え間なくあたたかさを与えていたか
本科と笑い合う時間を大切にしていたか
それが、その全部が
どれほどオレの目には美しくまばゆかったか
憶えていて良かった。忘れてしまわなくて良かった。
どんなに喪失が苦しく辛くとも、大切な記憶を押し込めて手放してしまわなくて、良かった、本当に。
何も心配することなんて無かった。
記憶の有無はもう関係ない。
あいつはオレの物語で、オレはあいつの物語だった。
だから、オレが鮮やかに憶えている全てこそが、あいつが憶えていることそのものだった。
あいつは、オレが憶えている記憶こそが
あいつにとって大事な記憶なのだと言ってくれた。
「大丈夫、だ、あるじ。オレが、オレが大切に憶えている。お前の物語を、お前がくれた全部を」
オレは、あいつの手を固く握り締めて、懇願するように願った。
「だから、もう一度。オレをお前の物語でいさせてくれ」
お前と春の思い出を辿りながら
夏の陽射しの向こうまで共に歩こう