ピクスク様のオールジャンルイベント『バレンタインデー&ホワイトデー2025』に参加致しました。
本編ドラヒナ成立後で、無自覚時代の本編ロナサンのお話です。
つき合って最初のホワイトデー、惚気ながらヒナイチくんにケーキを作っている相棒を見ながら、同居人達の出会いからつらつらと考えるロナルドくん…という感じ。
ロナルドくんが、サンズちゃんへのお返しに作っているのは、バナナ飴です。バナナ味の飴には、『結婚話があるかも?』という意味があるそうですね。
@kw42431393
「コケの一念…って奴か?」
「失敬な。出会った時から、私にはこうなると分かっていたのだよ。」
「嘘こけ。うなじと処女の血しか、見てなかったろうが。」
「ヌー…。」
上機嫌でキッチンに立つ、相棒を見る。
断末魔の読経にしか聞こえねえ鼻唄に、一発かましてやろうかとも思うが…一応、我慢する。
今、ドラ公がデコレートしているケーキに、塵が混じったら悪いだろ?
今日は、ホワイトデー。
実の妹以上に気の置けない妹みてえな奴が、これから食べるケーキなんだから。
「あとは、これを…っと。」
そう言って、ドラルクはリアルに作った、紫の飴細工をケーキに乗せた。
「やれやれ、つき合って最初の年…とはいえ。なんというか。」
「ヌンヌン。」
こういう所は、こいつも吸血鬼なんだなって思う。
「そりゃあ、そうだとも。ヒナイチくんにも、これと同じ物を身に着けて貰うんだからね。」
そう言って、ドラルクは満足そうに、出来上がったケーキに目を落とす。
目の覚める様な白い生クリームに映えて、菱形の飴が艶々と、存在を主張していた。
クソ雑魚吸血鬼を引き取る事になって、間もなくの頃だった。
高等吸血鬼と天敵である退治人がタッグを組むなんて、あまりあるこっちゃねえ。
一応、危険の有無について、吸血鬼対策課からクッキーモンスター…もとい、ヒナイチが派遣されてきたんだ。
あん時は、ひたすらビビったよな。『処女の血が吸いた~い』なんて、吐かしている最中にやってきた、よりによって可愛い子(俺の好みじゃないけど)。営業停止になるんじゃないかと、ビビったもんだ。
『これは、美しいお嬢さん。私に、何かご用かな?』
お嬢さん扱いされて、手にキスされて、ときめいて…漫画みたいな事があるもんだ。
今のヒナイチに言わせると、そこが『ハツコイ』とやらの始まりだと。
え?それも、計算づくだと?言ってろ、クソが。
ケーキが梱包されたのを見計らって、グーパンしてやる。
「そっからも、マメにお袋してたよな。そこを、コケの一念って言ってんだよ。」
5歳だの、クソニブチンだの言われている俺だけど…まぁ、同居している男同士だかんな。
お菓子を差し出したり、ぬいぐるみを縫ったり、髪を結ったり…いそいそと、世話を焼いてたよな。
それによ。俺とヒナイチが並んで歩いていると、周りにはつき合っている様に見えるらしくってさ、そん時のこいつの顔つきときたら…ジョンと呆れたものだった。見え見えにも、程がある。
「うちは、伴侶に尽くす家系なんだよ。君も、やってみたらどうだね?なんなら、女性に対する礼儀をゴリラに、ていね~いに教えてあげようじゃないか。このドラドラちゃんが…って、ブエッ!!」
「ヌー!!」
「ああ、そうかよ。相手がいればな、…っと!」
習慣で決めた飛び蹴りで、ドヤついていた砂おじさんが、塵になる。
先を越されたのは悔しいが…ありゃ、相手にも脈がないと不審者認定されて、通報されるのがオチだ。
誰にでも出来るもんじゃねえの。
「相手がいれば…ねえ。まったく、このクソニブチンが…おっと、ロナルドくん。そろそろ、いいんじゃないかね。そのバナナ飴。」
「ん、そっか?え~と、じゃあ。これに入れて…。」
目の前のバットに並べておいた、串に刺さった飴を手に取って…ドラルクが用意してくれた赤いラメ入りの袋に、詰めていく。
ジョンの味見はパスしたし、バナナは美味しいから、問題ないはず。仕事の合間とかに、食べてくれっかな。
『ろ、ろろロナルドしゃん!いつもお疲れ様です!こ、これを、受け取って下さい!!』
先月、オータムで行われたバレンタインイベントで、貴女が渡してくれたチョコレート。
明らかに手作りって分かる、ハートの形をしたチョコレート…ちょっと濃かったけど、甘くて美味しかったよな。んで、食べる前にフクマさんから『オータムのチョコは、このお水と一緒に食べなければいけませんよ?』って、謎の小瓶を渡されたんだっけ。そういえば、あれってなんだったんだろうな。
「ヌーン…。」
「ん~、フフフフ。ま、まぁ、過ぎた事だし?オータムで奇行なんて、いつもの事だとも。それより…ロナルドくんも、一歩踏み出してみたらどうかね?」
「ん?何がだよ?」
「料理のセンスなさ過ぎルドくんが、自分の手で何か返したいなんて…何か、こう…ねえ?」
「あの時、何も持ってなくてよ。それに、カメ谷も言ってたぜ。俺の一番いい所をちゃんと見てるって…いい人だよな。」
いつも、キラキラした目で俺を見上げてくれる、小さな猫みたいな人。
『大丈夫ですよ、もう少しです!』
ここに来た時、そう言ってくれるのが、嬉しくて有難くて…既製品で返すのは、なんだかな…そう思ったんだ。
「バナナ飴って言うから、私もジョンも、ちょ~っと期待したんだけどね。」
「ヌ~…。」
妙に引っかかる言い方をしながら、ドラルクが洒落た紙袋を渡してくる。
期待ってなんだろうな、時々、こいつも分からない事を言いやがる。
「サンキュー。ラッピングって、こんなのでいいのかな。」
「ゴリラにしては、上出来だとも。じゃあ、サンズ女史によろしく。」
時計を見る。いつの間にか、結構いい時間になってたらしい。
以前、ヒナイチが作ってたイチゴ飴を見ていたから、これなら俺でも出来るかな~って、思ったんだけどな。焦がしたり、ザラザラになったり、思いつきでチョコレート混ぜて怒られたりしてよ…結構、時間が喰っちまった。
サンズさんがオータムにいる間に、渡さないと…。
「じゃあ、行ってくる。留守番、頼むわ。」
今回に限って、何故か、ドラルクが用意してくれたジャケットに袖を通す。
別にデートでもなんでもないのに、コーディネートを買って出た理由が分からない。一応確認したが、セロリが仕込まれている訳でもない。
「これ。これから、レディに会うのに裾に皺が寄っているぞ。君、ちゃんとしていればイケメンなんだから。」
「なんか、今日はうるせーな。お前はヒナイチだけじゃなく、俺のお袋かよ。ったく。」
まぁ、こいつの世話好きは、今に始まった事じゃないし…いっか。
「はいはい、いってらっしゃい…これは、なかなか気づくまでかかりそうだ。」
思ったより、遅くなっちまったな。
俺は、同居人達のため息を背後に聞きながら…急いで事務所を後にした。