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気づくまでは、まだ遠い

全体公開 ドラヒナ以外のお話 5 2710文字
2025-03-12 17:26:02

ピクスク様のオールジャンルイベント『バレンタインデー&ホワイトデー2025』に参加致しました。
本編ドラヒナ成立後で、無自覚時代の本編ロナサンのお話です。
つき合って最初のホワイトデー、惚気ながらヒナイチくんにケーキを作っている相棒を見ながら、同居人達の出会いからつらつらと考えるロナルドくんという感じ。
ロナルドくんが、サンズちゃんへのお返しに作っているのは、バナナ飴です。バナナ味の飴には、『結婚話があるかも?』という意味があるそうですね。

Posted by @kw42431393

 「コケの一念って奴か?」
 「失敬な。出会った時から、私にはこうなると分かっていたのだよ。」
 「嘘こけ。うなじと処女の血しか、見てなかったろうが。」
 「ヌー。」
 上機嫌でキッチンに立つ、相棒を見る。
 断末魔の読経にしか聞こえねえ鼻唄に、一発かましてやろうかとも思うが一応、我慢する。
 今、ドラ公がデコレートしているケーキに、塵が混じったら悪いだろ?

 今日は、ホワイトデー。
 実の妹以上に気の置けない妹みてえな奴が、これから食べるケーキなんだから。
 「あとは、これをっと。」
 そう言って、ドラルクはリアルに作った、紫の飴細工をケーキに乗せた。
 「やれやれ、つき合って最初の年とはいえ。なんというか。」
 「ヌンヌン。」
 こういう所は、こいつも吸血鬼なんだなって思う。
 「そりゃあ、そうだとも。ヒナイチくんにも、これと同じ物を身に着けて貰うんだからね。」

 そう言って、ドラルクは満足そうに、出来上がったケーキに目を落とす。
 目の覚める様な白い生クリームに映えて、菱形の飴が艶々と、存在を主張していた。

 



 クソ雑魚吸血鬼を引き取る事になって、間もなくの頃だった。
 高等吸血鬼と天敵である退治人がタッグを組むなんて、あまりあるこっちゃねえ。
 一応、危険の有無について、吸血鬼対策課からクッキーモンスターもとい、ヒナイチが派遣されてきたんだ。
 あん時は、ひたすらビビったよな。『処女の血が吸いた~い』なんて、吐かしている最中にやってきた、よりによって可愛い子(俺の好みじゃないけど)。営業停止になるんじゃないかと、ビビったもんだ。

『これは、美しいお嬢さん。私に、何かご用かな?』

 お嬢さん扱いされて、手にキスされて、ときめいて漫画みたいな事があるもんだ。
 今のヒナイチに言わせると、そこが『ハツコイ』とやらの始まりだと。
 え?それも、計算づくだと?言ってろ、クソが。
 ケーキが梱包されたのを見計らって、グーパンしてやる。
「そっからも、マメにお袋してたよな。そこを、コケの一念って言ってんだよ。」

 5歳だの、クソニブチンだの言われている俺だけどまぁ、同居している男同士だかんな。
 お菓子を差し出したり、ぬいぐるみを縫ったり、髪を結ったりいそいそと、世話を焼いてたよな。
 それによ。俺とヒナイチが並んで歩いていると、周りにはつき合っている様に見えるらしくってさ、そん時のこいつの顔つきときたらジョンと呆れたものだった。見え見えにも、程がある。
 「うちは、伴侶に尽くす家系なんだよ。君も、やってみたらどうだね?なんなら、女性に対する礼儀をゴリラに、ていね~いに教えてあげようじゃないか。このドラドラちゃんがって、ブエッ!!」
 「ヌー!!」
 「ああ、そうかよ。相手がいればな、っと!」
 習慣で決めた飛び蹴りで、ドヤついていた砂おじさんが、塵になる。
 先を越されたのは悔しいがありゃ、相手にも脈がないと不審者認定されて、通報されるのがオチだ。
 誰にでも出来るもんじゃねえの。

 「相手がいればねえ。まったく、このクソニブチンがおっと、ロナルドくん。そろそろ、いいんじゃないかね。そのバナナ飴。」
 「ん、そっか?え~と、じゃあ。これに入れて。」
 目の前のバットに並べておいた、串に刺さった飴を手に取ってドラルクが用意してくれた赤いラメ入りの袋に、詰めていく。
 ジョンの味見はパスしたし、バナナは美味しいから、問題ないはず。仕事の合間とかに、食べてくれっかな。



 『ろ、ろろロナルドしゃん!いつもお疲れ様です!こ、これを、受け取って下さい!!』

 先月、オータムで行われたバレンタインイベントで、貴女が渡してくれたチョコレート。
 明らかに手作りって分かる、ハートの形をしたチョコレートちょっと濃かったけど、甘くて美味しかったよな。んで、食べる前にフクマさんから『オータムのチョコは、このお水と一緒に食べなければいけませんよ?』って、謎の小瓶を渡されたんだっけ。そういえば、あれってなんだったんだろうな。

 「ヌーン。」
 「ん~、フフフフ。ま、まぁ、過ぎた事だし?オータムで奇行なんて、いつもの事だとも。それよりロナルドくんも、一歩踏み出してみたらどうかね?」
 「ん?何がだよ?」
 「料理のセンスなさ過ぎルドくんが、自分の手で何か返したいなんて何か、こうねえ?」
 「あの時、何も持ってなくてよ。それに、カメ谷も言ってたぜ。俺の一番いい所をちゃんと見てるっていい人だよな。」

 いつも、キラキラした目で俺を見上げてくれる、小さな猫みたいな人。
 『大丈夫ですよ、もう少しです!』
 ここに来た時、そう言ってくれるのが、嬉しくて有難くて既製品で返すのは、なんだかなそう思ったんだ。

 「バナナ飴って言うから、私もジョンも、ちょ~っと期待したんだけどね。」
 「ヌ~。」
 妙に引っかかる言い方をしながら、ドラルクが洒落た紙袋を渡してくる。
 期待ってなんだろうな、時々、こいつも分からない事を言いやがる。
 「サンキュー。ラッピングって、こんなのでいいのかな。」
 「ゴリラにしては、上出来だとも。じゃあ、サンズ女史によろしく。」
 時計を見る。いつの間にか、結構いい時間になってたらしい。
 以前、ヒナイチが作ってたイチゴ飴を見ていたから、これなら俺でも出来るかな~って、思ったんだけどな。焦がしたり、ザラザラになったり、思いつきでチョコレート混ぜて怒られたりしてよ結構、時間が喰っちまった。
 サンズさんがオータムにいる間に、渡さないと
 「じゃあ、行ってくる。留守番、頼むわ。」

 今回に限って、何故か、ドラルクが用意してくれたジャケットに袖を通す。
 別にデートでもなんでもないのに、コーディネートを買って出た理由が分からない。一応確認したが、セロリが仕込まれている訳でもない。
 「これ。これから、レディに会うのに裾に皺が寄っているぞ。君、ちゃんとしていればイケメンなんだから。」
 「なんか、今日はうるせーな。お前はヒナイチだけじゃなく、俺のお袋かよ。ったく。」
 まぁ、こいつの世話好きは、今に始まった事じゃないしいっか。

 「はいはい、いってらっしゃいこれは、なかなか気づくまでかかりそうだ。」
 思ったより、遅くなっちまったな。
 俺は、同居人達のため息を背後に聞きながら急いで事務所を後にした。

 
 
 


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