カルみと
シナリオネタバレあり(カフトまで)
@popo_trpg_ss
「どう?趣味見つかりそう?」
とある日の帰り道、隣からずいと自分を見上げる神無三十一に視線を向けた縞斑狩魔は、唐突な話題に思わずはてと首を傾げた。
「んー……なんの話?」
「へ?!あのとき話したじゃん!先輩の趣味一緒に見つけようって!!」
「…………あー……そういえばそんな話したなぁ」
目を丸く見開いた神無がぎゃんと抗議をする一方、縞斑はというと記憶を振り返ってようやく辿り着いた朧げな会話の内容に呑気な納得の声を上げる。
二人が手錠で繋がれるという不思議な騒動の中で、縞斑が趣味を持たないことを知った神無は、一緒に趣味を見つけようと意気込んでいた。
「忘れてたのかよっ!」
「あ、だから最近色んなところに誘ってたのか。てっきり友達がいなくて寂しいのかと」
「先輩にだけは言われたくない程度には友達いますうぅ!!」
てっきりその場限りの慰めだと考えていた縞斑だが、言われてみれば最近の神無はやたらと外出に自分を誘っていた。
水族館や動物園、美術館に博物館、ときにはディーノやアサギリに声を掛けてバーベキューや山登りに行ったり、川や海に足を運んだこともある。
思えばあれらは全て、神無が考えた『縞斑の趣味探しの旅』だったのかもしれない。
意図が伝わっていなかったどころか友達がいないと勘違いされ、唇を尖らせて怒っていた神無はやがて呆れたようにため息を吐いてやれやれと首を横に振った。
「せっかく色々連れてったのにさぁ……」
「だって神無ちゃんの方が俺より楽しんでたじゃない。この前の猫カフェなんか猫吸いしようとしてそのまま顔引っ掻か」
「もぉおおお!!その話はいいから!!なんであんた俺のかっこ悪いとこばっか覚えてるんだ!?」
しばらく鼻の頭に絆創膏を貼ったわんぱく小僧になってしまった神無は、当時の恥ずかしさを思い出して地団駄を踏む。
そんな神無のことをけらけらと笑った縞斑は、不貞腐れて膨らんだ彼の頬を指で突いて遊び始めた。
揶揄われていることが面白くない神無はぱっとその手から逃れると、改めてと言った様子で咳払いをして視線を合わせる。
「で?楽しかったことないの?趣味になりそうだなって思ったこと!」
改めて思い出して考えてみろと言う神無は、彼なりにずっと縞斑のことを気に掛けていたのだろう。
ぱっと消えてしまいそうな今の縞斑に、少しでもこの世への未練を見つけて繋ぎ止めたいのかもしれない。
神無なりの不安と気遣いを受け止めた縞斑は、真面目に答えようとこの数ヶ月間の記憶を振り返って考えを巡らせた。
「……うーん、どれも楽しかったけど…」
「けど?」
「一番楽しいのは、こうして神無ちゃんと趣味を探す時間だったかな」
どの記憶を振り返っても、出掛けた先で嬉しそうにはしゃぐ神無の姿や笑顔だけは鮮明に思い出せる。
「神無ちゃんがいたから楽しかったんだと思う
水族館のイルカショーで水を被って笑う姿も、美術館や博物館の作品を興味津々に魅入る横顔も、海に足を浸して自分を誘う手のひらも。
次はどこに誘われるのだろうかといつの間にか楽しみに思っていた自分に気がついた縞斑が素直に気持ちを伝えれば、隣の神無はぽかんと口を開けた。
「だから、ありがとうね」
「お…おお、お…俺に甘えるなよっ!!それじゃ先輩の趣味って言わないし!!」
我に帰った神無は顔を真っ赤にすると、縞斑の視線を振り切ってずんずんと先を歩き出す。
かなり直球に伝えたつもりだったが、思いには気が付かなかっただろうか。
「神無ちゃ、」
そう考えた縞斑が諦めて隣に並ぼうと足を早めればふと、神無の耳が林檎のように赤く染まっていることに気づく。
きっとこちらには見せてくれない顔も、同じ色に染まっているのだろう。
ぱちくりと目を瞬いた縞斑は小さく笑って足を早めると、神無の顔を見ないようにして隣に並んだ。
「次はどこに連れてってくれるの?」
「パンケーキ食べ放題!」
「それはほんとに君の趣味じゃない?」
「俺と行くのが趣味なら、俺の行きたい場所にした方が一石二鳥だろ!!」
未だ神無の機嫌は直らないらしく、ぷくりと頬を膨らませた彼は照れ隠しの混ざる小言をぶつぶつと呟いた。
「ったく……毎回調べるの結構大変だったんだからな!」
「はいはい、ありがとね」
「はいは一回!」
「はーい」
歩く地面にふたりの影が伸びていく。
何気なく縞斑は、手を持ち上げてふたりの影を繋いだ。
ひとつに重なった影法師に胸の奥底から湧き上がる幸せを噛み締めた縞斑は、これからも続く趣味探しという趣味を思って笑みを浮かべるのだった。
終