ピクスク様のオールジャンルイベント『バレンタインデー&ホワイトデー2025』に参加致しました。
3作目はΔロナルドくん視点のホワイトデーのお話になります。本編がドラヒナ成立後のロナサンだったので、こちらも同じ感じで。
途中から、30年後の時間軸になります。
この世界だと、将来的に、ロナルドくんが皆を見送る形になるので、ドラヒナ夫妻の子孫達に、相棒直伝の美味しいお菓子を振る舞う、ロナルドおじさんになっててもいいんじゃないかな…そういうイメージがあって、料理をするロナルドくんを書きました。
捏造した、ドラヒナ夫妻の娘が出ます。ご注意下さい。設定は、以下の通り。
雛乃: 30年後の時間軸で、19歳。見た目は、黒髪、金瞳のヒナイチくん。吸血鬼対策課に勤める、優秀な兄がいる。父親の愛情をベタベタに受けており、「ママより強い男性でないと、パパは許しません」と言われて、呆れている。
@kw42431393
*捏造設定になります。
・Δ隊長は、父親のドラウスさんは人間、母親のミラさんが吸血鬼という設定です。ヒナイチくんより一回り年上。ルーマニア育ちの日系ハーフ。なので、独り言や鼻唄に突然ルーマニア語が混じったりする。生まれつき虚弱体質だが、ブーストを使えば短期戦の戦闘参加は可能で、本編よりは体力もある。ロナルドくんがあどないので、言動が父親じみてきた。
・Δジョンは元々ミラさんの使い魔で「体の弱い息子をよろしく頼む」と言われ、Δ隊長を主人として尊敬し、行動を共にしている設定になっています。なので、Δジョンの方がΔ隊長よりちょっと年上です。この世界でも新横浜のアイドル。
・ΔヒナイチくんとΔ隊長の出会いは、彼女が幼い頃に下等吸血鬼に襲われていたところをΔ隊長が助けた、という事になっています。Δ隊長は幼い頃からの憧れの人で、常にキラキラした目で見上げています。元々和菓子党だったが、幼い頃に貰ったクッキーを食べてから、現在はクッキー党。バーの娘なので、他の世界線に比べて料理は上手で、コミュニケーション能力もそこそこ高い。
・Δロナルドくんは、大侵攻で最も退治人・吸対連合を悩ませた、不死身で怪力、変身能力、飛行能力を持ったチート吸血鬼。無邪気なお子様で、吸血鬼らしくないのが悩み。一人にしていて、うっかり署を破壊されたら大変なので、Δ隊長は、備品という立場のΔロナルドくんを、毎日家に連れて帰ってます。みっぴきが揃っている時間が、一番幸せ。
・Δみっぴきの溜まり場は、署の隊長室か隊長のお家です。
『さてと…あれ?』
『ヌーヌヌヌ?』
『ハンドミキサーが、壊れてる。まあ、いいか。』
そう言って、キッチンにいるドラルクは、ボウルの中の卵白を、泡立て器でかき混ぜだした。
ヒョロガリのあいつは、力仕事をさせてるとすぐへばるんだ。こういうのは、疲れねえのかな?
『なあ、俺がやろっか?』
ボウルを覗き込みながら、声をかける。
カウンターごしに見える、メレンゲを作っているその姿が、すごく楽しそうだったから。
『…これは、だめ。他のなら、いいよ。』
『ヌー…。』
ジト目で俺を見るドラ公は、こういう時、頑固親父みたいな仕草をする。そっか、今作ってるのは…
『明日のホワイトデーに、ヒナイチくんに渡すマカロン用だから。彼女には、私の手で作ったものをあげたいもの。』
分かんねえな。折角、手伝ってやろうと思ったのによ。マカロンは、マカロンじゃねえか。
そうブー垂れてると、頭をグシャグシャと掻き回された。
そして、目の前に別のボウルを、いくつか置かれる。中身は、クリーム状のバター、卵、計量済みの砂糖と小麦粉だ。
いつも見ているから、知ってる。隊長室で、皆で食べてる、バタークッキーの材料だ。
『ありがとう。代わりに、ジョンとこれを混ぜておいておくれ。練るんじゃないぞ?サックリと、空気を含ませる様に。』
困った様に笑いながら、言い聞かせる様に…そういう時のドラルクの顔は、何故だか、ほとんど記憶にないはずの親父を彷彿させた。なんだか、言い返しづらくって…。
『お、おう…。』
『ヌフフ…』
なんだよ、年だって10歳ぐらいしか変わんねえくせに。子供扱いすんなよな。
『フフッ、君にも分かるさ。大切な人には、とびきり素敵な笑顔をさせたいものだ。自分の…自分だけの手で。』
「どうだ?そのカップケーキ。」
ヌン!バッチリヌよ。上手になったヌね。
味見をしたジョンが、親指を立てて笑ってくれる。そっか、ジョンが言うんなら間違いねえな。
「もうちょっと、耳の部分が綺麗に出来たらな。」
これを渡したい相手が、猫みたいな人なんだ。彼女からの連想で焼いた、猫型のカップケーキ。
ちょっと、耳が丸い気がすんな。
「これこれ、そんなに触ると耳が取れてしまうよ。安心し給え。ちゃんと、猫に見えているとも。」
背後から聞こえた声に、振り返る。
署から呼び出しがかかったドラルクが、マントを羽織っている所だった。そうしながら、ずれた眼鏡の位置を直している。
眼鏡か…老眼になって、読書やゲームをする時に不便になったって、ぼやいてたっけ。人間ってのは、不思議なもんだよな。
「お、白髪見っけ。」
「やめんか!頭皮ごともげるわ、全く。こういう所は、いつまで経っても5歳なんだから。」
「その内、禿げたりすんのかな。」
「喧しい!白髪の人間は、禿げないのだよ。」
…たった30年の間に、変わっちまうんだもんな。
「いい匂いだな…カップケーキだ。クッキーは?」
「よー、雛乃。お菓子の匂いに釣られて、来たな。ヒナイチそっくりだぜ。」
「仕方ないだろう。ロナルド兄さんのお返し、期待してたんだ。」
30年も経ったんだよな…目の前の少女を見て、つくづく実感する。
ドラルクとヒナイチの娘である雛乃は、30年前のヒナイチそのままの姿で…違うのは、髪が見事な濡れ羽色で、ドラルクそっくりの金色の瞳をしているぐらいだ。
そして、その金色の瞳が、ウキウキと俺を見上げている。
ほんと、こういう所まで、母ちゃんそっくりだな。
「用意してるぜ、2代目クッキーモンスター。父ちゃんのほど、美味くないけどな…って。早っ!!」
「これ!雛乃、お行儀が悪い。ちゃんと、座って食べなさい。」
「ヌー…。」
こういう姿も、母親のヒナイチそっくりだ。
『おいしい、おいしい。』と、頬を膨らませてクッキーを食べる、妹みたいに面倒を見てきた少女の笑顔を見ていると…確かな満足感が沸いてくる。
俺達吸血鬼は、かつて、人間を油断させる手段として、料理の腕を磨いた者達が多かった。
共生の時代となっても、趣味として、畏怖欲から、そうする同胞は多いんだけど…
『フフッ、君にも分かるさ。大切な人には、とびきり素敵な笑顔をさせたいものだ。自分の…自分だけの手で。』
あの時、お前はそう言ったよな。そして、今なら分かるぜ。
遅ればせながら、俺にもそうさせたい相手が出来たから。
「やれやれ、娘がすまないね。ところで、ロナルドくんも、渡しに行かなくていいのかね?」
そう言って、ドラルクは俺が持っているカップケーキを指差す。
カップケーキの意味合いは、あの時お前が作っていた、マカロンと同じ意味…貴女は特別な人。
一番大切なお前達とは、なんか違う感じなんだけど…特別で、大切にしたい相手が出来たから。
「えへへっ!じゃあ、忙しい所を悪ぃけど…オータムに行ってくるわ。」
「ああ、サンズ女史によろしく。」
「ヌッヌヌッヌイ!」
窓を開けて、蝙蝠の羽を生やすと…俺は、夜空に飛び出す。
行き先は、東京都千代田区…これを食べてキラキラと目を輝かせるサンズさんを、早く見たくて仕方がねえんだ。