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【愛しいあなたへ】

全体公開 らぬすて 6 938文字
2025-03-17 23:55:18

ゼタ視点、サルースとの小話

Posted by @vmon1202

【愛しいあなたへ】

「サルース、借りていた本を読み終えました。返します。」
「そこに置いておけ。」

小教室で、サルースは僕に目も向けずに返事をした。
僕は言葉通り、本を机の上に置く。
そして、ふと目に留まった。
机の上には、そっくりな二つの人形が並んでいた。
この部屋には不釣り合いなものだと感じ、思わず口を開く。

「あなたも人形遊びをするんですか?」
「マニに頼まれたものだ。最後の調整をしている。」

そういえば、マニは街の人から依頼を受け、品物を作って生計を立てていると聞いたことがある。

「可愛らしい依頼ですね。」
……いや、今回は違う。」

サルースの言葉を聞きながら、そっと瞼を閉じた。
マニが受けた依頼——それは、亡くした子どものために、子守唄を歌う双子の人形を作ること。
その人形は、棺に納められ、子どもと共に眠るのだという。

「ゼタ、大丈夫か?」

黙り込んだ僕を見つめ、サルースが憂うように尋ねた。
僕は、胸の奥に広がる感覚を確かめる。
——これは、僕に似合うものだな。
皮肉めいた思いに、口の端がわずかに上がる。
子どもを授からなかった夫婦が、せめて最期の眠りには、寄り添う存在を望んだ。
二つで一つの、双子の人形。
歌を紡ぐことで、寂しさを和らげるもの。
まるで、僕とアルのようだ。

……奇妙な巡り合わせですね。」

ポツリと呟くと、サルースの表情が曇る。

「ゼタ、お前は生きている。」
……ええ、そうですね。」

分かっている。僕は今、ここにいる。
それでも——あの人形たちと自分を重ねてしまったのは、否定しようのない事実だった。

……それでも、その子たちが眠る場所は、きっと穏やかでしょう。」

亡くした子を想う夫婦の気持ち。
深い悲しみと、それでも溢れるほどの愛情。
その人形は、きっと、亡くした子のために歌い続けるのだろう。
まるで、僕が今もアルを想い続けているように。

……ゼタ。」

サルースが不安げに僕を見つめる。
僕は彼に、微笑んでみせた。

「大丈夫ですよ。僕はちゃんと、ここにいますから。」

たとえ過去と重なるものを見つけたとしても——
僕は今、この場所で、生きているのだから。
今、は。

(終わり)


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