第30回トワスト、テーマ「あなたのためだけの」作品です。制作時間は約30分。ランフォードとジェフの話です。
@xxxyueyunxxx
こうしてキッチンに立つ時間は、存外気分の良いものだ。
やかんに水を入れ、コンロにかける。湯が沸くまでの時間に、ポットとカップ、そしてソーサーを用意して。
――分かっている。お前は紅茶が良いんだろう?
今日はどの茶葉にしよう。やはり苦みは少なめで、香り高いものが良いだろう。お前は昔から、苦みが苦手だからな。
湯が沸いたので、紅茶を出し始める。その間に、カップを温めるのも忘れない。
茶葉は出し過ぎても渋みが出てしまう。そうなっては、どんなに良い茶葉を使っても、台無しだ。
程よく甘く、香り高く。そして、茶葉自身の持つ仄かな苦みを。――よし、頃合だな。
温まったカップに、紅茶を注ぐ。カップの釉薬の白で、色の出具合も確認する。今日も完璧だ。
お前はこれでも渋いと言うかもしれないから、紅茶を薄めるための湯の準備も忘れない。
――俺様としたことが、お茶請けを忘れていたな。
この紅茶には、あのケーキが合う。丁度今日は焼いていたところだ。今日はお前が遊びに来るのが分かっていたから、いつもよりほんの少し、使う砂糖の量を増やして。
ケーキも添えたら、準備万端だ。
このカップには漆塗りの盆は合わない。このトレイで運ぶとしよう。
全て整えたトレイを両の手に持って、慎重に階段を下りていった。お前の待っている、部屋へと続く。
いつものように、お前は穏やかに笑っている。その澄んだ黒曜石の瞳で、俺様を見つめて。
ケーキと紅茶を前に並べてやったら、子どものようにお前ははしゃいだ。――このくらいでそんなに喜々とされると、毎度のことだが、なんとなくむず痒いものを感じるな。
フォークを手にしたお前が、ケーキを口に運ぶ。そして紅茶を一口、口に含む。
――この瞬間だけは、柄にもないがいつも気分が引き締まる。心拍数が上がってきて、微かに手も震えている。今日の味は、お前の口に合ったか? そう尋ねたくなるのを、ぐっとこらえる。
「今日も美味しいね、ジェフ。君の出してくれるものは、いつも最高だよ」
お前はふわりと顔を綻ばせた。その顔を見て、どっと身体から力が抜ける。
――これは、お前のためだけのもの。
今日もじっくりと、味わってくれ。