お花見するカルみとのssです。ほのぼの甘々。
ネタバレは特にありません。
@rikka_trpg801
花に団子の君を愛で
「だらだら先輩! こっちこっち!」
駆け足で数歩先を行き、笑顔で振り返る神無に縞斑は軽く肩を竦める。
「はいはい。そんなに急がなくても、木は走って逃げたりしないよ」
「木は逃げないけど、時間は減るだろ?」
返ってきた言葉に「それはそう」と頷きながら、歩幅の違いに任せて前を行く神無との距離を縮めた。
傍に行くにつれ縞斑を見上げる形になる神無の目は、わくわくと輝いている。手に持った紙袋を揺らしながら、軽快な歩調で目的地へと向かうその姿に、縞斑の口元は自然と笑みの形になった。
日は先程沈み、春の宵が少しずつ深まり始めている。等間隔の街灯に照らされた小道を辿った先にあったのは、更に先へと続く道の途中に設けられた休憩スペースだった。
こぢんまりとした芝生エリアに、木製の小さなテーブルとそれを挟むようにベンチが二つ。そして、そのすぐ傍には一本の桜の木があった。
テーブルの上まで広がった枝には、今が盛りとばかりに咲き誇る淡い色合いの花。それを見上げてほぅっと息を吐く縞斑の手を引き、神無は向かいのベンチに座らせた。
「な、穴場だろ?」
「確かに。他に人もいないし、二人でお花見するには丁度良い感じだね」
この時期、桜の名所はどこもかしこも大勢の花見客で賑わっている。祭りめいた雰囲気自体は悪くないが、神無と縞斑が恋人の時間を過ごすには人目が多過ぎるし、少々五月蠅くもあった。
しかし、ここなら一本だけではあるが桜の花を楽しめる上に、二人きりだ。
夜色の空には白い半月が浮かんでいる。青みを帯びた黒を背景に咲いた満開の桜は、夜風がそよと吹く度に一枚、二枚と花弁を散らした。
縞斑がひらひらと舞い散る花を視線で追っている間に、神無は手に持っていた紙袋を開けていそいそと準備をする。中に入っていた竹皮の包みと保温ボトルのお茶を木のテーブルに並べ、そっと包みを開いた。
「やっぱり、花見と言えばこれだよな!」
竹皮を皿替わりに並んでいたのは、串に刺さった団子だった。何本もあるそれはすべて味が違うらしく、神無の手がどれにしようかとばかりに彷徨う。
「う~ん、まずは定番か?」
そんな独り言と共に神無が手に取ったのは、団子と言えば思い浮かべるであろう三色のものだった。他は四個ずつ刺さっている中、それだけが大きめの三個になっている。
「ほら、先輩も好きなの選んで」
「じゃあ、遠慮なく」
縞斑は特に迷うことも無くみたらし団子を手に取る。香ばしそうな焼き目のついた団子に、茶色いとろみのある餡が絡んでいて美味しそうだ。
互いにもう片方の手にお茶のボトルを持って、それをグラスのように軽くぶつける。
「乾杯」
「乾杯! まあ、お茶だけどな?」
小首を傾げて見せる神無にくすりと笑い、縞斑は保温ボトルのお陰でまだ湯気の立つお茶を啜った。春とはいえ、夜はまだ肌寒い。夜風に冷えた身体に、香ばしく仄かに甘いほうじ茶が染み渡る。
「あ~染みるね」
「先輩、おっさんくさい」
微妙なお年頃の恋人に対し酷い言葉を投げつけた神無を張り付けた笑顔で見やれば、縞斑の顔など見ておらず団子を頬張りうっとりとした顔をしていた。
「もちもち~うま~」
ほっぺに手を当て紫の目をキラキラさせる神無に、縞斑も毒気を抜かれて苦笑する。
「神無ちゃんは花より団子だね」
「違うって! 団子も桜も好きだけど、両方合わさると大好きになるだけ」
暗に子供っぽいと言われたことを察し、神無が口の中の団子を呑み込んでから反論する。それを聞きながら、縞斑もみたらし団子を一つ口に入れた。
もちもちとした食感が歯を楽しませ、甘じょっぱいみたらしの味が口いっぱいに広がる。しばらく後味を堪能してからほうじ茶で口の中を洗えば、心地よい余韻が残った。
「うん、美味しい。流石神無ちゃんイチオシの団子屋さん」
「だろ!? 団子といえばここなんだよ」
言いながら神無は次の団子を手に取っている。今度はヨモギと粒餡だ。
今度は餡子のしっかりとした甘さに笑顔を咲かせる神無を、縞斑は頬杖をついて見つめる。見ているこちらまで幸せな気分になる笑顔は、咲き誇る桜にも負けていない――などと、恋人の欲目でそんなことを考える自分に小さく笑った。
みたらし団子をもう一つ口に入れ、夜風が散らした花びらを目で追う。その一枚が神無の金の髪の隙間にするりと滑り込んだのが見え、縞斑はお茶のボトルを置いて手を伸ばした。
「ん?」
何事かと目を瞬かせる神無に、そっと摘まんだ花びらを見せる。
「これだよ」
「えっ、付いてた? 取ってくれてサンキュー」
「どういたしまして」
摘まんだ花びらをふぅっと吹いて夜風に返し、縞斑は花びらを見ようと近づいていた神無の頬に軽く手を添えた。
「ん……っ」
口づけた瞬間、至近距離で紫の目が見開かれるのを見て翡翠の目が薄く笑みの形を描く。
数秒の後にそっと顔を離せば、神無の顔は真っ赤になっていた。
「ちょっ、なっ、先輩、ここ外……!」
「周りにだ~れもいないのは確認済みだよ」
こんな可愛らしい恋人の顔を他の人間に見せるつもりなど縞斑には無い。
神無は真っ赤なまま「でも」とか「やっぱ、恥ずかしい」とかぼそぼそ言っている。その頭を宥めるようにぽんぽんと軽く叩きつつ、縞斑は櫻を見上げた。
白にほんの一滴だけ紅を混ぜ込んだ淡い花々は、春の美しさを体現している。日本人の本能なのか、咲き誇る花を見れば心がざわめく。
それでも、と縞斑は視線をようやく赤みの引き始めた頬を押さえている神無へと向けた。
「可愛いね」
二人きりの時に見せる恋人の姿の方が、より心を騒がせ幸せにしてくれる。
追撃にまた赤くなった顔で見上げてくる神無に、縞斑は満足げに微笑むのだった。
(あとがき)
二人きりでお花見するカルみと🌸 花より団子ではなく、花も団子も恋人も存分に楽しむ二人なのでした☺
別の日に他のメンバーともわいわいお花見して欲しい。そっちはそっちできっと楽しいしみんな可愛い。酔っぱらってだら先にうざ絡みする🎃さんを見て「うわぁ~」って顔するアサギリたちとか見てみたいw