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嘘が嘘じゃなくなる瞬間

全体公開 あたなるパラクラ 3 12 2581文字
2025-04-01 06:09:27

エイプリルフールなイアアキssです。ほのぼの?
ネタバレは特にありません。

嘘が嘘じゃなくなる瞬間

 始業時間ぴったりにオフィスに入って来たアキラは、アキアカネ班のメンバーが揃っているのを確認して笑顔で口を開いた。

「俺、結婚するんだ!」

 その場にいた全員が、一斉に目を見開く。
 何度か瞬きをし、真っ先に声を上げたのは笑顔のノアだった。
「ノアタイムズがこんな大スクープを逃していたとは、不覚だな。おめでとう、アキラ。式の様子は来年の一面に載せさせてもらっても?」
「もちろんオーケーだ。格好良く頼むぜ?」
 ウインクを飛ばすアキラに、呆然としていたルディがはっとする。一度渋面になった後、口元にどこか皮肉気な笑みを浮かべた。
「お幸せに。ウエディングケーキにナイフでなく鼻を突き刺さないように気を付けてくださいね?」
 アキラは「ハハハ、手厳しいにゃ~」と眉尻を下げている。そんなやり取りを聞いていたコリーがぽんっと手を打って、悪戯っぽく笑った。
「結婚式にはメモリアル動画が付き物だよね? アルティメットでスペシャルなオペレーションで作ってあげるよ」
「ん? ああ、なるほど! じゃあ、頼むわ」
 一瞬首を捻ったアキラだったが、すぐにピンときたらしく笑顔で頷く。
 そこでようやく「ああっ、そういうことか!」と気付いたタイラーがアキラの背を叩いた。鍛え上げられた筋肉を纏った一撃に、「痛っ!?」と声が上がる。
「まったく、驚いたぜ。ちなみに、出会いはいつで式の予定は?」
「加減しろっての……あ~今朝運命的に出会って、式はこの後すぐ?」
 その言葉に「わお、急展開」「もうちょっと考えたらどうですか?」「パンを咥えた子と曲がり角でぶつかりでもした?」「詰めが甘いな」など好き勝手な感想が飛び交う。
 音圧に押されて後退ったアキラは、一人黙りこくっていたイアンの方へ避難した。
「うるさいにゃ~別に良いだろう? イアンちゃんもそう思うよな?」
 つんつんと脇腹を突いたそのアキラの手を、イアンの手が徐にがしりと捕まえた。
「おわっ!? どうした、イアン?」
 少し痛いくらいの力で握られ、アキラが驚きながらイアンの顔を覗き込む。いつもと同じ感情の読みにくい表情を浮かべている顔はしかし、どこか蒼褪めているようにも見えた。
 具合でも悪いのかと、アキラが慌てて「大丈夫か?」と尋ねるのに被せるように、イアンが口を開く。
「アキラ、その結婚待ってくれ」
 イアンがもう片方の手も重ね、両手で包み込むようにアキラの手を握る。
「お、おお……ん? え~っと、イアンちゃん? これは――――
 困惑するアキラの前に、手を離さないままイアンが跪く。
 眼鏡の向こうからイアンの澄んだ双眸が、アキラを真っ直ぐに見上げていた。その真剣な眼差しに、アキラは思わず続く言葉を呑み込んでしまう。
「結婚が決まった今、言うのは卑怯かもしれない。それでも、チャンスが欲しい」
 その場にいる誰もが、止めるべきか否か迷った。そして、迷っている間にイアンは続きを口にする。

「アキラ、好きだ。その結婚相手ではなく、俺との将来を考えて欲しい」

 堂々たる告白に、アキラの顔が一瞬で赤くなった。
 目を泳がせながら「う、あ、えぇ~」としどろもどろになるアキラを、イアンは一途に見つめて返事を待っている。泳ぐアキラの視線の先の仲間たちは、助けを求められても困るとばかりに揃って首を振った。
 どうやら自力で対応するしかないと、アキラは視線をイアンへと戻す。相変わらず、一点の曇りもない眼差しがそこにあった。
 なおも腹をくくり切れないアキラは、一縷の望みをかけてそのフレーズを口にする。

「は、ハッピーエイプリルフール……?」

 イアンは、動かない。
 じっと見上げてくるその視線を、アキラは正面から受け止め続けた。周囲では仲間たちも固唾を飲んで成り行きを見守っている。
 数秒が永遠にも感じられた沈黙の後、イアンがゆっくりと一度瞬きをした。その目が緩々と見開かれるにつれ、蒼褪めていた頬が今度は赤く染まっていく。アキラの手を握る両手が、僅かに緩んだ。
……今日は、四月一日だったか?」
 その確認の言葉が逃げ道を塞いでしまったことに、イアンは気付いていない。益々顔を赤くしたアキラが、小さくこくりと頷いた。
「つまり、結婚するというのは……?」
……嘘に決まってるだろ? そんな相手がいたら、とっくにお前らに紹介済みだ」
 まさか騙される人間が出るとは想定していなかったのだ。そして、嘘を信じた結果渾身のプロポーズをかまされるなんてことも、当然想定外である。
「イアンちゃん、今ならさっきの俺と同じ台詞で、ギリ何とかなるかもよ?」
 先程の告白が本気かどうかくらい、全員が察している。その上で、エイプリルフールにかこつけて一旦無かったことにというのも、難しいことだが不可能ではない。
 しかし、イアンはアキラのその提案に小さく首を横に振る。
「俺は、先程の言葉もこの想いも、決して嘘にはしたくない」
 再び強く手を握られ、アキラは天を仰ぎたくなった。しかし、実際はずっとイアンと見つめ合ったままだ。
……とりあえず、結婚とかは置いといて――まずは、お付き合いからで」
「アキラ……!」
 真っ赤なアキラが消え入りそうな声で返した言葉に、頬を染めたイアンが目を輝かせる。
 オフィスの真ん中で繰り広げられた告白劇の一部始終を目撃した仲間たちが、何とも言えない視線を二人に注いだ。
 ひっそりと目線を交わし合い、結局一番アキラと付き合いが長く口の達者なノアが代表して声をかける。
「あー……お幸せに。式を挙げるなら、できるだけ早めに知らせてくれよ?」
 アキラとイアンの顔が、火を噴かんばかりに赤くなったのは言うまでもない。


(あとがき)
 ハッピーエイプリルフール! 今年はイアアキにしました。これぞ嘘から出た実。アキラさんにはしっかりと責任を取っていただきましょう☺
 ちなみに他のメンバーはちゃんと嘘だとわかってます。ノアは来年のネタにする宣言して、ルディくんはピノキオに例えて当て擦り、コリーくんはUltimateSpecialOperationでUSOと日本語知識を披露、タイラーはカレンダーを見て気付きました。


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