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燻る独占欲①

全体公開 年逆Dom/Sub 神奈備所属if 1 3209文字
2025-04-04 09:59:10

久しぶりの年逆Dom/Subの神奈備所属if。
今回は巻チヒに嫉妬する座村さんになります。
こちらは前半で、後半は🔞になる予定です。

Posted by @kr0mm333

 出勤してきた座村が執務室のドアを開けると、そこには見知らぬ三人がいた。自分達と同じくらいに大柄な男、細身の女、子ども。皆若く、この組み合わせだけ見れば親子にも見えるのだが、雰囲気が親子のソレではない。
「座村か」
「ああ。おはようございます」
 中に入って千鉱の隣に移動する。机に置いた予定表を見ると、柴と薊は外での任務だと書かれていた。戻るのは早くて夜、遅いと数日後になるはずだ。
 三人はチラリと座村の方を見ると、また千鉱の方を向く。退室するように言われないのであれば座村が聞いても問題ないはずなので、デスクで書類仕事を始めるフリをして聞き耳を立てた。
「繋がりのある連中は本人も知らない内に術を掛けられてやがった。奴等に関する情報を口にしようとすると、みんな水風船みたいに破裂しちまったよ」
「四年間、何の情報も漏らさずに潜めていたのはこれが原因だろうなあ」
「別の方向からまた探ってみるつもりですが、もう少し時間がかかるかと」
 調査班か何かなのだろうか、三人の報告を聞いて千鉱はなるほど……と考え込む素振りを見せる。千紘の仕事は護衛である自分達に共有されるわけだが、話を聞いている限りこの情報から繋がるような任務はない。ただ四年間という言葉が出たので、自分達が護衛に就く前から追っている相手であることは想像できた。
「わかった。引き続き調査を頼む」
 そう締めくくると三人は声を揃えて御意と返すのを聞いて、時代劇かよと悪態を吐きそうになる。
「なあに。他ならぬアンタの頼みだしな」
 年齢の割にやたらと態度の大きな子どもに苛立つ。だがそれ以上に、この三人が千鉱に対して妙に馴れ馴れしいのが気に食わなかった。
 意識が四人の会話の方に集中しているせいで書類を見るも目が滑る。自分達は本業は千鉱の護衛だが、同時に部下でもある。なのに共有されていない情報があるってぇのはどういうことだ、と胸中で吐き捨てた。
「しっかし、ちょっと見ない間に随分顔色も良くなったなあ」
「こら、執務室だぞ」
 そんなやりとりが聞こえて勢いよく顔を上げると、大男が千鉱の顎を持って上を向かせている。当の千鉱は呆れながら注意しているが本気で嫌がっていない様子に、アンタは俺のだろ! と座村は大声で叫んで大男を切り付けたくなった。そんな子供じみたことをするわけにはいかないのでまた書類に集中しようとするが、手元の書類は既にシワだらけでもう一度発行してもらわなければならないほどだ。
 対する千鉱はされるがままで、眉尻を下げて態とらしく視線を逸らす。
「その節は……迷惑をかけた」
 呟く声にはいつもよりどこか弱々しく、何か後ろめたいことがありそうな気がしている。
「前にも言ったろ。主の世話も俺達の仕事のひとつ。健康管理だってその内だよ」
「それにしては過保護すぎだがな」
「あれでもまだ足りないくらいです」
 女の言葉に男二人が同意すると、千鉱はか細い声で勘弁してくれ……と呟いた。
 一人蚊帳の外に置かれた座村は苛立ちが募ってくるのを感じる。千鉱は座村のSubで、共有を許したのは柴と薊だけ。
 自分の知らない話をしているというのも理由のひとつだが、時々こちらに意識を向けながら自分の様子を伺っていることが気に食わない。
 その人は俺のだぞ、と吐き捨てたくなるのを抑えながら座村はぐしゃぐしゃになった書類を新しく発行してもらうために席を立った。総務課で聞かされる小言が嫌でいつもなら人当たりのいい薊に行かせるのだが、あの室内にいることを思えば今日は自分で行った方がマシだと思う。
 部屋から出て少し進むと、さっきまで感じていた苛立ちは異様なほどすんなりと収まった。
 それほどまでに彼らを見ていることがストレスになっていたらしい。もしかするとあの中の誰か、もしくは全員がDomであの苛立ちは本能からくるものだったのかもしれない。
「後で聞いてみないとな」
 呟きは誰の耳にも入ることなく床に落ちる。もし総務課から戻った際にまだ三人がいたならどうやって追い払ってやろうかと考えながら、座村は早足でエレベーターホールに向かった。



 座村が出て行ったあとの執務室。四人は気配が遠のいたのを確認してからまた向き合った。
「ま、ギリギリ合格ってとこだな」
 子供、郎が面白がるように笑うと隣に立っていた女、炭が本当にギリギリだけど、と念を押すように呟くのが聞こえる。
「この程度のストレスに耐えられないようならアンタの護衛を辞めさせるよう進言してたところだ」
「だなあ。だいぶ我慢してたが苛立ちを隠せてなかった。ありゃ、いざという時にやらかすかもしれないしな」
 大男、杢がもう一度ドアの方を振り返ると千鉱はまあまあと彼を宥めた。
「でも彼、あなたのDomなんでしょう?」
 続けて投げかけられた問いに面食らってしまう。座村、柴、薊、三人の護衛達が千鉱のDomであることを公言したことはない。護衛なので四六時中一緒なのは当然であるし、他の職員達にも知られてはいないはずだ。
 だが彼らは忍、諜報活動や工作を主な任務にしているのだから知られているのも当然かもしれない。
「まあ、な」
 アンタのDom、と言われたのが照れ臭くて口元を手で覆い隠してしまう。その仕草に三人は驚いたが、千鉱の精神状態が自分達と共にいた頃よりも格段によくなっているのがわかって顔を見合わせた。
 彼らは六平家が襲撃にあって以降、少しの間だが千鉱の護衛としてそばにいた。兄を殺され、妖刀を奪われて様々な感情でぐちゃぐちゃになった千鉱を見てきただけに、言葉とは裏腹に今の様子に安堵しているのが伺える。
「持ちかけたのは俺達だけど、この後は大丈夫か?」
 思い出したように杢が問うと千鉱はううんと唸った。
 Domは自分のSubに手を出されるのを本能的に嫌う。いくら訓練されていようとも、本能を完全に押さえつけるようなことなど不可能に近い。三人はわざと座村の神経を逆撫でしていたし、それに気づいていてもいなくても戻ってきた座村はあからさまに不機嫌な様子を見せるに違いない。
 三人が退室していた場合は詰問されるくらいで済むだろうが、終業後に千鉱の家に直行するか、もしくは宿直室へ連れ込まれる可能性もある。
「まあ、何とかなるだろう。普段から俺の犬を自称するくらいだしな」
 千鉱の護衛である三人が千鉱の飼い犬を自称しているのは有名な話だった。そして、千鉱に手を出すと完膚なきまでに相手を叩きのめすことから狂犬と呼ばれているのも。
「その飼い犬に手を噛まれないように祈ってるよ」
 相手に食ってかかっていても千鉱が止めれば従順に止めるという場面を何度か見たことがある。だが先ほどの様子なら、このあとは少し面倒なことになるかもしれない。
 炭がそろそろと声をかけると郎がわかったと頷く。
「悪い。もう少し話してたいところだが、そろそろ行くよ」
「正式な任務でも無いのに無理を頼んでいるのはこちらのほうだ。また礼はいずれ」
「なら、今度久しぶりにアンタの護衛を一日させてもらおうかな」
「いいですね。それでお願いします」
「炭がこんなに乗り気なのは珍しいな……ま、俺も賛成。頼むよチヒロさん」
「通るか分からないが申請してみるよ」
 三人は神奈備御庭番忍衆。簡単に貸し出してもらえるとは思わないが、希望されたのならやるだけやってみようとは思う。ついでに情報収集の打ち合わせをするのもいいかもしれない。
「座村が戻ったらコーヒーでも淹れるか」
 きっと機嫌を損ねているはずなので、柴や薊と顔を合わせる前にフォローしておかねば。
 そんな風に考えながら書類仕事を再開して数分後、従順だと思っていた飼い犬が狂犬となって噛みついてくるとは夢にも思わなかったのである。


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