@nbnbno_mimi
ワンクッション♥
ケモ耳ケモしっぽ年齢操作あり♥
ハルとマサキ、ユウとマサキがイチャイチャするだけの話です♥
チュピチュピと鳥の鳴く声が聞こえる天気の良い昼下がり、俺は板張りの廊下をとてててと走っていきぴっちり閉じられていた障子戸を開けた。
「ハル様! そろそろふとんを取り込……うわー!」
戸を開けた先で畳にべったりと倒れ込んだハルを目の当たりにして思わず叫ぶと、モゾモゾとハルが仰向けになった。
「……ハル様って呼ばないで」
「あっ、そうだった! すまない、ハル」
「はあ……眠い……」
それだけ言って満足したのか、またくたりと畳の上で寝ようとするハルに、俺はハッとして駆け寄った。
構わず目を閉じるハルを何とか起こすため、袂を掴んで身体を揺さぶる。
「ハル! 起きないとおふとんが入れられないぞ!」
「もう……畳で……いい……」
「まったく! ……おふとんなしじゃ一緒にお昼寝しないぞ」
「!」
ぽそっと呟いた言葉を聞き逃さず、ハルはむくりと起き上がった。
「……布団入れる」
「よし! じゃあ先に行っ……わああ!」
言質はとれたと部屋を出て行こうとしたが、ひょいと身体を持ち上げられて足が空回った。ハルは子どもの俺よりずっと大きいから、持ち上げられると何もできなくなってしまう。しばらくもちゃもちゃもがいていたが、諦めてぶらんと脱力した。ハルは呑気にあくびなどしている。
「ふあ……そんなに急がなくてもいいでしょ。一緒に行こう」
「わ、わかった! わかったから下ろしてくれ!」
「ダメ」
「ぐぬぬ〜」
楽しそうなハルの頭からは、俺とは違ってふさふさした綺麗な耳が生えていて、ハルが笑うたびにぴこぴこ揺れていた。
ハルはとっても高貴な生まれで、これだってとっても高貴なお耳だ。一緒に住んでいるユウも毛の色だけが違うよく似た耳を生やしていて、二人はいつかもっともっと立派なふさふさのお狐様になる。俺は小さい頃(今よりもずっと小さかった頃)にこの家に拾ってもらった人間の子どもで、ずっとお世話してもらってきた。俺もいつか大きくなって、立派にお狐様にお仕えする従者になりたい。そしてみんなに恩返しするのだ!
「何一人でぶつぶつ言ってるの」
「はっ! 声に出てたか?」
「まあね。さ、布団を取り込みに行こう」
「わ、下ろし……下ろしてくれー!」
ハルは軽々と俺を担ぎ上げて庭に降りた。落ちないようにハルの背中にしがみついていると、着物の隙間から出たもふもふのしっぽが機嫌よく揺れているのが見える。ハルは高貴なお狐様なのに、昔から俺をからかって遊ぶのが好きだ。
ふとんを干してある物干し竿の前に着き、ようやく下ろしてもらえると思いきや、ハルは何とふとんも俺もまとめて担ぎ上げた。
「わっ、うわー!」
「あれ、なんか巻き込んじゃったかな」
「わ、わざとのくせに! ハルー!」
「何か言ってるけどこのまま運んじゃおう」
「ぬわー!」
ホカホカに干されたふとんに包まれたまま運ばれていく気配がして、障子戸が開いて閉まる音がした。
落っこちるかと思って衝撃に備えたが、思いのほかそっと置かれた感覚がして、ふとんをかき分けて頭を出すとハルが真顔でこちらを見つめていた。
「ハル! びっくりしたぞ!」
「ごめん、怒った?」
「怒ってはないけど、俺だってふとんを運ぶのを手伝いたかった」
「ふーん、でもマサキは小っちゃいから無理じゃない」
「何っ! 無理じゃないぞ! 今ふとんを敷いてみせるからな」
ふとんを取り込むのも敷くのも、今ならもう一人でもできる。手慣れた作業なのでちゃっちゃかふとんを敷いて整えてみせると、ハルはすぐには寝転ぼうとせず試すような口ぶりで言った。
「すごいね。このまま昼寝も手伝ってくれるよね?」
「もちろんだぞ!」
「じゃあ、マサキは今から俺の枕ね」
「ま、枕……?」
「ほら、枕になって」
「ぬ……」
俺は最近字が読めるようになったし名前が書けるようになった。でも枕になる方法はわからない。うんうんと考えた挙句、俺はふとんの上の白い枕の隣に膝を抱えてうずくまった。
「ハル! 枕だ!」
「……っふふ……」
堪えきれずに溢れたような笑い声がしたかと思うと、脇に手を入れてひょいと抱き上げられた。そのままふとんに横たえられ、ぎゅうと背後から抱きしめられる。
「そっちじゃなくて、こっち」
「これでいいのか?」
「そう。抱き枕ないから、マサキが代わりね」
「わかった、まかせろ!」
「うん、じゃあ一緒に寝よ」
日光であたたまった掛けふとんを上からかけられると、この世とは思えないほど気持ちよくて、しかもすぐそばにハルもいて、これ以上ないくらい幸せだ。ハルの穏やかな呼吸が伝わってきて、なんだか安心できる。よく考えたらこれではいつものお昼寝の手伝いと変わらないような気もするが、ハルがいいならこれでいいのだろう。
「…………」
俺も何の不満もないが、まだ日も高い真っ昼間だから眠くもない。ハルの昼寝の邪魔にならないようにじっとしてぱちぱちと瞬きをしていると、身体に回された腕がもぞもぞ動いていることに気付いた。
「ハル……? 眠れないのか?」
「うーん……」
答えをあいまいに濁したまま、ハルの手はいつしか着物の合わせから忍びこんで素肌を撫でてきた。
「こらっ、ハル……」
「しーっ、抱き枕はじっとしてて」
「むむ……」
そう言われると言い返せず、ハルの大きな手のひらが心音を確かめるように胸元を撫でて、次に呼吸を確かめるように首筋に移動してくる。
「っ……」
頑張ってじっとしていると、小動物を可愛がるような手つきで顎下をさわさわ撫でられて、なんだかどきどきする。ぎゅっと目を閉じると、今度は耳元に違和感があって、ハルが俺の耳たぶの形を確認するみたいに唇でやわやわ食んでいるとわかった。
「んん……」
「マサキの耳はつるつるで可愛いね、このまま食べられそう」
「食べ……!? うう、ちょっとだけなら……いや、でも……」
「ちょっとなら食べてもいいの? じゃあ、いただきまーす」
「わあっ!」
耳の軟骨に湿った吐息と歯が当たる感触がして、慌てて声をあげる。
「や、やっぱりダメだっ!」
食べられたら痛いかも……というのももちろんだが、高貴なお狐さまは食べるものも高貴でないといけない。俺を食べたハルがもし立派なおとなのお狐さまになれなかったらどうしようと焦る俺に対して、ハルは呑気なものだ。
「ふっ、冗談だよ。マサキは素直だね」
「何っ! また俺をからかったな!」
「うん。そうだ、俺に仕返ししていいよ。何する?」
「え? えーと、えーと……」
ハルの腕の中でくるっと身体を翻してハルの方を向くが、実際言われてみると何をしたらいいかわからない。それでもハルは何も言わずじっと待ってくれている。
「そうだな……じゃあ……く、くらえ!」
俺はバッと手を広げ、ハルの身体をこちょこちょとくすぐった。俺がこうされたらひとたまりもないが、ハルはまるで動じた気配もなく、瞬きをして俺を見下ろしている。
「き、効かない……!」
「ふふっ……」
「効いた! くすぐったかったか?」
「うん。すっごくくすぐったかった。俺もやり返しちゃお」
「えっ! 俺が仕返ししたのに……わはっ、あはは! あはっ! やめてくれえ!」
逃げる間もなくこちょこちょと脇の下やらお腹やらをくすぐられて、ふとんを蹴っ飛ばして転げながら笑う。笑いすぎて涙目になりながらひいひい言っていると、突然ガラリと障子戸が開いた。
「たのもー。ねえハルに、い……」
戸を開けた先には、ハルよりちょっと茶色っぽい毛の耳をひょっこり生やしたユウが立っていた。ユウはふとんの中でもみくちゃになっている俺とハルを見下ろし、何やら訳知り顔でははーんと頷いた。
「こんな昼間からいかがわしいことしてたんだ」
「イカがワシ?」
「してないし……」
「??」
難しい言葉はまだわからない。俺がひっくり返ったままぱちくりと瞬きをしていると、ユウが近付いてきて俺の顔を覗き込んだ。
「わー、ほっぺた真っ赤だよ? 何してたの?」
「くすぐり合いっこだ!」
「いいなー俺も参加していい?」
「いいぞ!」
「ちょっと……」
ハルが不満げな声を漏らしたので、表情を伺おうとユウから目を逸らしたが、その隙にサッとユウの手が裾の下から侵入してきた。
こちょこちょというより、さわさわと撫でるように内腿をくすぐられて、変な声が勝手に口から飛び出してくる。
「うひゃっ! あはっ、あははは! ひゃああ! くすぐったい!」
「マサキはくすぐったがりだなー。ほら頑張って、がまん、がまん」
「うひっ、うう……んふ、んふふふっ、だめだっ! あははっ!」
言われた通りに笑うのをがまんしようとしたが、足が勝手にぴくぴくして、声が跳ねるのを抑えられない。身体が反射的に逃げようとして、ハルにぶつかってしまった。
「わっ、す、すまない!」
「別にいいけど、ユウはやりすぎ」
「えー? ハル兄だってこういうことがしたかったんでしょ?」
ようやくユウの魔の手が離れていって、俺は笑いすぎてはあはあ息をしながらふとんに背中を預けた。散々遊んでいるうちに着衣がはだけてしまったが、はしゃいで熱を持った身体にはむしろちょうどいい具合だ。
ユウの少しつめたい手がぴと、と俺の頬に触れて、心地よくて目を細めると、ユウも目を合わせてにっこり笑ってくれた。
(あっ……)
ユウのしたいことが何となく察しがついて、俺はぎゅっと目をつむって唇を引き結んだ。すっとまぶた越しの視界がかげってどきどきしていると……
「ちょっと、何してるの」
「むむ!?」
ハルに身体を引き寄せられて、口を手で覆われた。ユウが拍子抜けした様子で声をあげる。
「え? マサキの口にちゅーしようとしただけだけど」
「マサキにはまだ早い」
「もう何度もしてるよねー?」
「は?」
「むむ、むぐむぐ!」
「ほら、マサキもそうだって」
「いや……ダメでしょ。ってか、嘘だよね。本当に……?」
「むー!」
「苦しそうだよ?」
「あっ……ごめん」
「ぷは! く、苦しくないぞ! びっくりしただけだ!」
ようやくハルは口を覆う手を離してくれたが、代わりにふさふさのしっぽがくるっと身体に巻きついてきた。
「んん?」
「うわー、完全に自分のモノだと思ってない?」
「そんなことより……マサキ、さっきユウが言ってたこと本当なの?」
「ん? 本当だぞ!」
腰に巻き付いたハルのしっぽを控えめに撫でながらそう答えると、ぼわわと急にしっぽの毛が逆立った。
「わっ、ハル、怒ってるのか……?」
「あはは、ハル兄はー自分もマサキとちゅーしたくて拗ねてるだけだよ。ちゅーってしてあげたらきっと機嫌も治るよ?」
「えっ……」
「ユウもうそれ以上喋んないで」
「目、こわー!」
目の前のユウは楽しそうだし、こっそり振り返ってハルの表情が見たくてもしっぽに邪魔されてできない。でも、何となく悪い空気になっているのはわかった。
「ふたりとも、ケンカしないでくれ! ちゅ、ちゅーじゃなくても……俺にできることなら、何でも応えるぞ!」
「え、ほんと? じゃあ……んぶ!」
喜色を示したユウの顔に鈍い音を立てて枕が投げつけられた。目をまん丸にして驚いていると、投げつけた犯人であるハルが不機嫌そうにため息をついた。
「やっと静かになった……」
「ハル……」
「マサキに怒ってるわけじゃないから、そんな顔しないで」
「そうなのか? ハルは……」
「…………」
「えと……やっぱり何でもない!」
「俺もマサキと……ちゅー、したいよ」
聞こうか迷って飲み込んだ問いに対する答えを告げられて、俺は驚いて声を上げた。
「えっ! 俺、また声に出てたか?」
「声には出てないけど、顔に出てる。まあでも……」
「そっそれなら! ハルともちゅーしたいぞ!」
照れて頬が熱くなるのを堪えて、俺は思い切って本心を口にした。前にユウにちゅーしてもらった時は、びっくりもしたが、それよりもずっとどきどきして幸せな気持ちになった。ハルが嫌でないなら、ハルとも同じようにしてみたい!
緊張しながらハルの反応を待つが、それより先に枕のダメージから回復したユウがからかうように言った。
「だってよ、ハル兄♥ よかったじゃん……って、あれ? ハル兄?」
固まったままのハルの肩をユウがちょんとつつくと、ハルはなんとそのままふとんにどたーんと倒れてしまった。
「は、ハルーっ!?」
「ダメだ、気絶しちゃってるよ」
「何っ! 大丈夫なのか!?」
「んー多分、嬉しすぎてびっくりしちゃっただけだね。ちょっと寝かせとけば大丈夫! ちょうどいいから、このままお昼寝でもしよっか?」
「そうなのか? じゃあ、ユウも一緒にお昼寝するか?」
「うん。自分の布団持ってこよーっと」
「俺もお手伝いするぞ!」
「ありがとー!」
ユウのついでに俺も自分のふとんを運んできて、部屋に3組のふとんを敷いてみんなでお昼寝することにした。ハルの部屋は決して狭くないが、さすがに3組ともなると畳がふとんでみちみちになってしまった。自分のふとんに横になったユウが不満げに言う。
「マサキは俺のふとんで寝たらいいのにー」
「ダメだ! 起きた時に俺がどっちかのふとんで寝てたら、またケンカになる気がするぞ!」
「うーん、ぐうの音も出ない……悔しいからふとんで圧迫しちゃおー。えいえい」
「わー! せまい!」
ユウとひとしきりふとんの領土争いをした後、俺は二人のふとんの間のすきまで挟まれるみたいにして横になった。さっきまであれだけ賑やかにしていたユウはすぐに大口を開けて眠り始めて、俺も遊び疲れたせいかだんだんまぶたが重くなってきた。
変な時間に昼寝をするから、もしかしたら何か夢を見るかもしれない。例えば、ハルもユウも俺もみんな人間で、俺は二人を助けられるような立派な大人で、きちんとした制服でお仕えしている夢だとか……
そんなことを考えているうち、俺もすっかり眠りに落ちていた。気持ちのいい昼下がり、狐たちのねぐらは穏やかな寝息で満ちていた。
〈終わり〉