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持ちつ持たれつ、似たもの同士

全体公開 神無三十一受け 12 19 2029文字
2025-04-07 16:53:31

カルみと 血液型の話
学会より
シナリオネタバレあり

 

 ふと、意識が浮上する。
 ぼやける視界を瞬きで晴らそうとしていた神無だが、水の膜が張っているかのように辺りが見えない。

 「……あれ?」
 「神無!!」

 ぽつりと疑問の声をあげれば、駆け寄った誰かが自分の手を取った。
 心配そうに顔を覗き込むその輪郭と声に、神無はようやく彼が自分の相棒であることを知る。

 「でぃー……の?」
 「よかった……目を覚ましてよかったです、」

 上手く回らない舌で名前を呼べば、安堵のため息を吐いた彼がそっと手のひらに頬擦りをした。
 その手の感触も鈍いことから、おそらく自分の体に麻酔が掛けられているのだろうと神無は朧げな頭で思う。
 というのも、意識を失う直前の記憶に神無はひとつ自分がこんな状態に陥る心当たりがあったのだ。

 「……おれ、うたれた……?」
 「そうです。覚えていますか」
 「なんとなく……

 ドロ課とスパローの共同捜査の最中、神無は暴走した戦闘アンドロイドと交戦して負傷した。
 相手の放った弾丸を避けきれないと悟って、せめて心臓からその弾道が逸れるように体を精一杯動かしたところで記憶は途切れている。
 あのあと自分は気を失って、病院に運ばれて治療を受けたらしい。清潔なベッドの上で辺りを見回していれば、カーテンが開いて青木とレミが顔を出す。
  
 「神無さん、よかった……
 「まだ無理はなさらないでくださいね。一時は危ない状態だったのですから」
 「え……そうなの?」
 「はい。神無さんの血液型はかなり珍しいですから、輸血が足りなくて……

 撃たれた神無は血を流しすぎたことにより、一時は命の危険に晒されたらしい。
 彼の血液型は日本では特に珍しく、ドロ課や同行した捜査一課、病院内を探しても提供者がほとんど見つからなかったのだと言う。
 ならばどうして自分は生きているのだろうか。そう神無が首を傾げていると、再び病室に誰かが立ち入る音がしてゆっくりとカーテンが開いた。

 「おはよ、神無ちゃん」

 ひょこりと誰かが顔を覗き込む。
 相棒とは真反対の黒が目立つその人影は、本来ならこういった病院などの機関には立ち入ることができないはずの人物だった。

 「だ……らだら、せんぱい……?」
 「うん。傷の具合はどう?」
 「おれは……へいきだけど、」
 「……縞斑さんが、神無さんに血液を提供してくださったんですよ」

 青木の言葉に、神無はぱちりと瞬きをして息を呑む。
 縞斑の血液型はO型だったはずだ。本来なら万全を期して同じ血液型でのみ行われる輸血だが、万能供血者とも呼ばれるO型の血液を使うことになったのだろう。
 麻酔と怪我によって重たい腕を持ち上げれば、縞斑はその場に腰を折って距離を縮める。そっと触れた頬はいつもより冷たく、顔色が悪いような気がした。

 「せんぱいこそ……へいき……?」
 「俺は平気だよ」
 「でも……ごめん、ぐあい……わるそう」
 「ちょっと貧血なだけ。俺のは寝てればそのうち治るから、今は自分の心配をしなさい」

 今重傷なのは君の方でしょ、と苦笑いを浮かべる彼を見上げた神無は、こくりと小さく頷くと目を閉じる。
 眠りを促すようにそっと頭を撫でる手のひらは変わらず優しくて、今は謝って縞斑を困らせてしまうよりも、少しでも早く回復して元気な姿を見せなければと思い直した。

 そうして穏やかな寝息を立て始めた神無を見届けると、縞斑はそっと安堵のため息を吐いて体を起こす。

 「ほんとうに……無事でよかった」

 途端、ぐらりと大きく視界が歪んで体勢を崩した縞斑の体は背後に傾いた。
 仲間たちが息を呑む中、彼のそばに控えていたアサギリが咄嗟に倒れ掛けたその体を支える。

 「はは……ナイスキャッチ、アサギリちゃん」
 「…………あなたもいい加減、ご自分の心配をなさってください」

 神無は気がついていなかったが、抱えた縞斑の体には至る所に包帯が巻かれていた。
 本来なら輸血を行う余裕などないほど負傷していた縞斑だったが、彼は神無の状態を知って血液の提供を押し倒したのだ。
 一歩間違えれば今度は縞斑が目を覚まさない事態に陥るような危険な状態だったが、それでも縞斑は神無に自身が渡せる限りの血液を注いだのである。
 結果として神無は一命を取り留め、縞斑もどうにか持ち堪えることができたものの、今回ばかりは肝が冷えたとアサギリは目を伏せた。

 「約束通り、きっちり休んでもらいます」
 「もちろん……約束だからね。俺の分も心配してくれてありがとう」

 神無が目を覚ますまで見届けたら必ず休むと約束をした縞斑は、相棒に身を任せてぐったりと目を閉じた。
 似たもの同士の強がりなのだから、全く手が掛かる。そう深いため息を吐いたアサギリは彼を抱え直すと、医者たちが待ち構えている治療室へ足を向けるのだった。




 


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