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君は追い風

全体公開 その他色々二次創作 1 2698文字
2025-04-12 08:50:21

映画『アマチュア』観に行ったらものすごく好きなところがあったので衝動のまま感想代わりに書いた二次創作です

Posted by @syuu_29

誰もが決まった手順を守ればいいように家電はよくできている。
エスプレッソマシンで濃厚なエスプレッソを作り、蒸気のたつほど熱々のミルクフォームを注ぐ。ラテアートはなくても手渡した妻がマグカップに慌てて口をつけ、ほっと息をするのを見るには十分だった。
ゆっくりと出かける僕と違って大抵は迎えの車に慌てて乗り込み、空港へ向かわなければならない彼女のほうは、いつも慌ただしく出かける支度をしている。
出張のたび、一緒に行こうと誘ってくれる彼女に仕事があるからと断りを入れるのはお決まりのルーティンになっていた。彼女は最後まで諦めず、僕はいつもまた次があるさと断った。挑戦せず、漠然と次があると甘え続けた。だから彼女が庭木の水やりやゴミ出しの日なんかの指示を確認して頷き、送り出す。彼女のいない家は急に静かになって寂しいが、たかだか数日だけだ。慣れるまでもない。それに携帯電話がある。声が聞きたければ電話をすればいい。地球上どこにいたって平気だ。繋がっていられる。僕は二人で手入れしたこの家で、彼女が帰るのを待つだけでいい。
そういう日々だった。
――今は、自分のためにコーヒーを淹れる。彼女のためにそうしたように今だって僕は豆を測り、エスプレッソマシンを働かせている。
一度は墓前に持っていって、墓前で彼女の撮った町の写真を眺めながらタンブラーを舐めるようにして飲んだこともある。庭のハーブと花を摘み、束ねたブーケはあの日花瓶に生けられた組み合わせを真似ていった。いまは見本がなくても同じような花束を作れるようになった。
一緒に行こうと誘ってくれた出張先で、彼女はつれない夫のためにいくつも写真を撮って帰ってきてくれた。
カフェのテーブル、そこから見える町並み、空港のラウンジやホテルの内装だってよく撮っていた。人の気配がいつも感じられる写真だ。写真はただでさえその場の空気を閉じ込める。天候なんかは重要なファクターで、日差しの強さや角度なんかで時間もわかるし、映りこむ建物や路面の様子で建築様式や土地柄だって見えてくる。様々なものに地域性がある。彼女の説明にあれこれと質問をしたり、彼女が即興のクイズを出すのが好きだった。正解するたび「出かけないくせに」と彼女が微笑みながらキスをしてくれるのが好きだった。
彼女の話を聞くのが好きだった。ソファに腰掛け、自分の腕の中で、背中を預けてもたれかかってくる彼女の温もりを感じ、シャンプーの残り香を感じながら彼女のうなじに鼻先を寄せるのが好きだった。くすぐったがる彼女にキスをして、話の途中だと叱られるのが好きだった。
遠い日々だ。彼女はもういない。
それこそパソコンを眺めている自分から眼鏡を取り上げ、「寝なくちゃ」と現実に立ち戻らせてくれることもない。
ただ、時々彼女は現れる。たぶん罪悪感とか、そういうものの作用なんだろう。ムーアを騙して街を出たあの日から、僕は知らない街で、見たことのない妻を見る。
映像であれほど彼女が撃ち殺されるのを見たのに。それこそ情報が欲しくて何度も何度も何度も何度も繰り返しあの瞬間を見た。それでも彼女は現れる。ふとした弾み、緊張しているときや、逆にそれが途切れたときに僕は彼女を見る。
似た背格好を見間違えるということもあったが、それこそ彼女がいたならどうしただろうかという想像が、そうした錯覚を生むんだろう。
でも、遭遇の多くは誰もいない部屋の中だ。彼女は時折現れては、僕を労る。まるでそこにいるみたいで、鏡の中で目が合ったと思うのに振り返ると消えてしまう。
もちろん幻だとはわかっている。自分の頭が生み出した幻。心の安全装置。それこそ初めて見たのは復讐のための旅の途中だった。
だから、すべてが終わった今は、ほとんど彼女は見えなくなってしまった。
おんぼろ飛行機を修理するのも終わり、一人で空を飛ぶようになってからはますます減った。
少しばかり型落ちの一人乗り飛行機のメンテナンスは簡単でシンプルで、手順も少ない。 計器だって最小限で、情報を得ようとしても深くは得られない。家電よりは複雑になるが、天候を調べて準備を重ねれば手順通りにすればいい。車の運転より複雑だが、さほどの違いはない。
フライトジャケットを羽織り、サングラスをポケットから取り出す。どれもこれも一つずつ彼女が贈ってくれたプレゼントだ。最後の方位磁石だけはあの日、漁港で無くしてしまったが、メッセージは網膜に焼き付いている。
エンジンのスイッチを入れ、離陸のための滑走をはじめる。
「行ってらっしゃい」と言う彼女の声が聞こえた。プロペラの音で掻き消され、現実なら聞こえるはずもない。こんなのは、いつか聞いた声の記憶だ。録音でもしていればよかったのに、そんなものは一つもないから、いつかはこの声も思い出せなくなるのかもしれない。
飛び立てばそれが現実に起きてしまうような気がして怖かった。誰もいない家に戻ってきて、彼女の不在を味わうことを想像すると身がすくんだ。
それでもハンドルから手を離し、強張る指先に血流を促すように何度か握って閉じてを繰り返す。それから、唇に指先を添えた。これから飛び立つ空に、ガラス越しにその指先を向けて挨拶をする。
いつも車を送り出して家の前に佇む僕に向けて、彼女がバックミラー越しにしていたらしい挨拶をなぞって。
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アマチュア、素晴らしく刺さった。
うろ覚えで書くのはしかしいましか書けないものもあるだろうと思い。書いた。
俺は幸福な日々の喪失と幻覚と暮らす人を見るのが好きだから いや最悪自己紹介すぎるけど……
オープニングの見送るチャーリーがじゃれつくからサラが車内からカメラで写真を撮るところ、すーーーっごくすき。一眼レフ?!とびっくりしたけど仕事道具じゃなくて趣味かなと思った。サラは何の仕事なんだろう。出張は多いのかな?どこかに行くたびにチャーリーを誘ってたのかな。彼を連れ出したくて、彼に共有したくて、彼にあちこちの写真をみせていたりとかしたんじゃないかな、みたいな。最初は彼女写真家とかともおもったけとそれらしい根拠を感じられないので写真は趣味とする。なんだろうインテリアとか花とかハーブとかそういうもののコーディネーターとかみたいなことも思ったけどそもそもその職業を自分がよく知らない。根拠はあの家の様子とかなんだけど根拠が薄いかも。あと私はあの花瓶の花や墓前に手向けた花のことをぼんやりとしか思い出せない。家の周りはすすき?あれなんていう植物?
物を知らないから無限に知りたいことがあるよ。


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