@xxxyueyunxxx
ランフォードは時々、変わったことを口にする。
「ねえジェフ。今日も青春だねえ」
「……おい、それは何の冗談だ、ラン? 俺様達の年齢は、青春を謳歌するような歳とは、かけ離れているだろう」
ランフォードとジェフの正体は、この世界と並行して存在する世界『魔界』に生を受けし半永久的な生命を持つ異種族『魔族』である。そして魔族にも若いとされる年齢は存在するが、ふたりの年齢はその年齢よりもだいぶ上だ。
「ソレイユの年齢ならまだしても、俺様達の年齢で青春とは、だいぶ滑稽だぞ」
ランフォードの娘、ソレイユの年齢は人間と比べると桁が違うが、魔族としてはまだまだ彼女は若いのだ。それこそ、青春を謳歌していてもおかしくはないくらい。
「うーん、私たちが青春はそんなに滑稽かね」
「当たり前だろう。俺様もランも、もうそんなに若くないだろう」
「でもね、ジェフ。私は夢や希望に満ち、活力に溢れ、この世の春を謳歌するのに、年齢は関係ないと思うんだよ」
ランフォードは一口温かい緑茶を口に含むと、穏やかな眼差しをジェフの方へと向けてくる。そのいつも相手をほっとさせる、それこそ春の日差しのような黒曜石の瞳は、今日もやはりにあたたかに思えた。
「確かに私たちは、だいぶ歳を重ねたね。――でも私には夢があり、希望もある。活力だってまだまだ衰えていないつもりだよ。それなら別に、今も青春だと思っても悪くはないのではないかね?」
「……その理屈だと、夢や希望を持つ限りずっと、青春になるぞ」
「ずっと青春。それでいいのだと私は思うんだよ。いつだって、自分が青春だと思った時が、青春で。――どうだね?」
それは、ジェフには全く思いもよらなかった考えであった。いつだって青春、か。――それならば、夢や希望をまた持とうと思えたときから、また青春時代をはじめても、良いのだろうか……?
「――お前には、毎度ながら驚かされるな……」
「そうかね? 別にそんなに妙なことは言っていないと思うけど」
「いや、十二分にお前は変わっているさ」
変わっている。だが、それは全然、悪くない。
「そうなのかなあ。――まあ、別にいいかな。ねえ、ジェフ。時間があったら今から青春を味わいに行こうよ」
「――青春を味わう? 時間ならあるが、何をするんだ」
「そうだねえ。まずはアイスクリームでも食べに行こうよ。そのあとはカラオケかな」
「お前はこの世界の高校生か。アイスクリームはともかく、カラオケは却下する」
「たまにはいいじゃないか、カラオケも。君は歌がとても上手なんだから。久しぶりに君の歌を私は聴きたいんだよ」
「勝手に言ってろ。俺様はあの空間があまり得意ではないんだ」
子どものようにごねはじめるランフォードを前に、ジェフは口の端を上げる。結局今回も俺様は折れてしまうのだろうな――でもそのことは、いつも不思議と不快では無かったのである。
ランフォードは時々、変わったことを口にする。
それは、遥か昔からそうだ。
だがその口に出してくる考えは、自分の中には全く無いものばかりで。
――そんな彼と共に在る限り、もしかしたらいつだって青春なのかも知れない。