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【遅刻キャラ】雷上ミナリ

全体公開 6634文字
2025-04-19 20:56:30

本当にごめんなさい、時間に間に合いませんでした。

「奪うよりも渡すほうがずっと難しい。だから、あたしがやるんだ」

■名前
雷上ミナリ(ライジョウ・――

■ 年齢
16歳

■ 性別
女性

■ 外見
明るい茶色のショートカット、赤みがかった瞳。
首元に黒いラインの入った紺碧の導電マフラーを常に巻いている。
首から下は絶縁素材で出来た深緑のインナーを着込み、煤汚れた灰色のジャケットを羽織る。腰元にはマルチポーチと工事用ゴーグルを装着している。
足元は履き潰して底面が削れた黒の安全靴だが、その足取りは軽く鉄くずを次々と踏み越える。
総じて無骨で実用重視。だが、稲光を宿す紅眼は色褪せた鉄骨の街に一際輝くものの一つ。それが雷上ミナリ。

■ 性格
カッとなりやすく、言葉が荒っぽい。端的に言うなら喧嘩っ早い。
また、喜怒哀楽がはっきりしており、良くいえば内面は優しいタイプ。情に脆く、武器にならない涙を見せることもしばしば。
理不尽や不公平に敏感であり、藪でも蛇でも首を突っ込む癖がある。
長所は判断力と行動力。そして、有事に冷静な判断を下せる決断力を武器としている。

■ 元の世界での立ち位置
永久電源モノリスを中心に構成された万雷機械都市モノリス・ホールにおける第三区埋没電地ボルトライン・スリーに住んでいる。
彼女の起こす稲光は第三区埋没電地ボルトライン・スリーにとっての花火である。一見すると“喧嘩屋”な彼女は、人々の心に“灯りを渡す者”でもあるのだ。

■ 願い
彼女が抱く願いは「世界征服」である。

■ 生活背景
下層の第三区埋没電地ボルトライン・スリーにひとりで暮らしている。
部屋は簡素なバラック。手回し充電式の懐中電灯が頼りの生活。
上電層から漏電した廃棄構造体や旧変電施設を遊び場・活動圏にしている。

■ 能力名
雷充の律動サージ・リズム

■ 能力内容
任意の電子機器の充電を最大まで貯めることができる。条件は手が触れていること。
使用上限の目安は一日三回。それ以降は他所から電気を貰い、ミナリ自身が充電する必要がある。
電圧・電流経路の調整はミナリの制御下にあるが、不器用なため稚拙な調整しかできない。
また、ミナリ曰く、手そのものから電気を飛ばすことはできない。あくまでもできることは充電である。
得意な戦闘スタイルは帯電した状態での格闘戦。身につけている導電マフラーを用いた近距離戦特化型。




 極寒の土地に一つ、雲海に望む塔があった。名は万雷機械都市モノリス・ホール――天を貫く機械仕掛けの塔。
 ここは縦割り社会だ。
 環境と治安は負の比例で低下する――ここは、第三区埋没電地ボルトライン・スリー。腐食した鉄骨と錆びた配管がむき出しになった迷路のような区画。蒸気と油と汗の匂いが混ざり合い、いつもどこかで悲鳴のような金属音を奏でている。

「スイ様は良いよなぁ、俺達と違って"世界"から零れ落ちねぇんだからよ」
「掬い上げられた上に後生大事に抱えられてるまであるからな。ある種の夢希望幻だって、俺は思うね」
「まあ確かに経歴から考えたら奇跡みたいな御人だよな」

 場末の居酒屋にごちるのは、ひと仕事終えた男たちの酒気を帯びた声ら、そこは古びた電飾看板と小さな暖簾が目印の居酒屋だ。

「お前もそう思うだろ、ミナリ?」

 酒場、屋台、鍛冶場、リサイクルショップ。彼らは粗末な機材で今を奏で、塗料を擦り合わせて壁に絵を描き、擦り切れた食材で料理を作る。
 壊れかけの都市の片隅で、半機半人らは人間らしい息をしている。

「ぁあ?」

――ジョッキを握りしめ、顔面を机に突っ伏していた少女も同じだ。
 明るい茶色のショートカット、赤みがかった瞳。
 雷上ライジョウミナリは、その店のカウンターに座っていた。

「なんであたしに振ってくんのさ」
「だって、お前スイ様と顔見知りなんだろ?」
「ガキの時だけだよ」
「それも与太話にしちゃあ恐れ多すぎる。だが、娯楽は多いに越したこたァねぇ」
「ウソかホントかなんて、どっちでもいいのさ俺達ゃよ」

 ガッハッハッ!! ガタガタガタ!!
 男集の声が響く。照明の代わりに天井からぶら下がる、発電虫で灯るランタンがゆらゆらと揺れる。
 ミナリは開いた天井から出る夜風が自分の酔いを吸い取り、否応なしに醒めていくのを感じていた。
 眼の前にある食べ残していた揚げ豆腐から立ちのぼる湯気は空へ昇り、それをぼんやりと眺めていた。吸い寄せられるように輝きを捉えた。

 「……スイ」

 名前に、ミナリは少し唇を噛んだ。

――北斗ホクトスイ。十年ほど前に同じ孤児院で育った知り合い。同じ学年のはずなのに誕生日が早いという理由だけで、いつも姉のように振る舞っていた友達。泣き虫なミナリを笑って背負っていた親友だった。

 でも、今のスイは万人から天才と称えられる英雄。

 一方、自分は、未だにこの下層で日銭を稼ぐだけのちんけな仕事をして、本来生活をする為の金で飯を啜る毎日。
 誰に必要とされるでもなく、誰かを守るアテもない。


◆◆◆


『ミナリ、たいしって知ってる?』
『たいし? がきだいしょうの?』
『ううん、男の子はね、たいしをいだくんだって! すごいね!』
『うん?』
『わたしたちもいだこうよ! たいし! おっきな、ゆめ!』


◆◆◆


(結局、あたしには“大志”なんてものは……

 いや、あった。あったはずだった。だけど、小娘一人が抱えられるものなんてたかが知れていて。
 子どものころ、ふたりで手を重ねて誓った、言葉も意味もよく分からなかった“異国の言葉”。誓ったのは、大きな夢を抱いて叶えること。スイはそれを現実にした。世界平和を実現させた。自分は――その背中を追えなかった。

『ねえミナリ、もしもすごくすごく強くなれたなら、誰を守りたい?』

 黒色の空を見上げて息を吐き、ただただ首が疲れてきた頃。幼い日のスイの声が、急に胸の奥から甦る。あの時、あたしは何も答えられなかった。ただ黙って、握った小さな手の温度にしがみついていた。
 ああ、アイツはそんな震えに気付けるような奴じゃない――スイは満足げに笑って「わたしはね、全部守りたい。ミナリも、この町も、空も、ぜんぶ」そういって、強く握り返した。

……そんなの、今でも、答えられないよ)

 言葉にならない重さが、喉元につかえて出ていかない。今でもあの問いかけが、ずっと胸の奥で引っかかっている。重力に負けて、今日もまた肺に帰っていく。

――はずだった。
 ふと、店の天井が軋む音がした。遠くで爆ぜて生まれた稲光の振動が、老朽化した骨組みを震わせる。
 ギシギシと上げた鳴き声さえ消し去る音、光――――存在が、あたしの視界に閃を描く。

――眩い、蒼白の光。

 彗星のように尾を引き、ひとつの光が闇を切り裂いて彼方へ飛んでいく。光の粒子を纏いながら《モノリス・ホール》への直通軌道エレベーターまで飛翔するそれを、ミナリが見間違えるはずもない。

 「スイ」

 呼吸は細く、鼓動は早く、身体よりも脳よりも心が動く。
 ミナリの中で電気信号シナプスが弾ける。理屈じゃないことだけが、脈打つ心臓だけが、混乱と高揚感をはっきりと自覚させてくれる。
 ミナリはカウンター席を離れ、飛行機雲のような軌跡に、この奇跡に引き寄せられるかのように。

 ――それは憧れだった。
 ――これは嫉妬だった。
 ――あれは憧憬だった。
 ――そして、決して交わらないはずの道を、もう一度交差させる衝動だった。

 あの頃から自分は何者にもなれずのままだ。
 ただ姉のフリをするスイの背を見て、夢を見て、手を伸ばすことすらしてこなかった。
 だけど今、この下層の片隅からでも、あの星へと通じる道が確かに吹いている。

……待ってよ、スイ」

 呟くと同時、ミナリはポケットの内側から細長い筒状の充電セルを一本抜き出した。片手でキャップを捻り開けると、薄い霧のような蒸気が溢れ出す。
 足元に装着した小型のブースター・ギア。その機構へセルを差し込んだ瞬間、起動音が彼女の足元から低く唸る。
――――地面を蹴り、ミナリの身体は弾かれるように宙へ跳ね上がった。


 彗星のように、優雅に空を滑るわけじゃない。夜空に尾を引く電光ではない。
 天賦の才能と数多の努力、夢を抱く執念を幸運に変えるのが稀人スイならば、ミナリはあくまでこの街の子――鉄と油にまみれた第三区埋没電地ボルトライン・スリーの生き残りだ。

「はあっ……! らあッ!!」

 ブースターの推進に合わせて、無骨な鉄筋の梁を蹴り、錆びた外壁に手をかけ、むき出しの配管に脚をかけて、ひたすらに上を目指す。都市構造の隙間を縫うように、強引に、息を荒げて、滑りながら、ぶつかりながら、それでも止まらずに。
 火花が散る。足場のひとつが崩れ、膝を打ちつける。だが構わない。もう一度セルを打ち込む。片道切符は切り終えた。終着駅だけでいい。そう、思った。



 やがて《モノリス・ホール》の基部が見えてきた。
 塔の影に沿うように、露出したメンテナンスデッキを駆け上がり、最後の跳躍で広場の縁を超えた。捉えた。視界に、追い求めていたものを。
 銀の髪をなびかせ、背に推進ユニットを纏った少女――スイ。彼女は静かに《モノリス・ホール》行きのエレベーターを待っていた。

 「……っは、はっ……

 ミナリは息を切らしながら、足を止める。手には擦り傷、膝には油汚れ。対照的に、スイは傷一つない戦闘服を纏い、無駄のない動きで光を纏っている。
 それでも、ミナリは立っていた。同じ足元に。同じ空気を吸って。
 スイがゆっくりと振り返る。光を背に受けたその瞳は、昔と同じ色をしていた。

……ミナリ?」

 風が吹く。降り立った軌道エレベーターからの光が二人を照らし、影が交錯する。
 この瞬間、彼女たちはようやく再び――同じ高さに立った。

……おまたせ、スイ」

 誰に聞かせるでもなく、ミナリは呟いた。声には、微かな決意と、積もり積もった時間の重さが滲んでいた。
 “遠い異国の言葉”──大志。その意味を、抱える物の大きさを、ミナリはずっと考えていた。

「世界平和だったっけ?」


『挑め。さすれば願いを叶えよう』


「あたしはさ、その逆にした」


この先、DANGEROSU!!


「"世界征服"。それがあたしの"大志"。今から抱える、クソでっかい夢の話」


――命の保証なし!!



 闇が光で割れた。
 呼応するように共振するモノリスの蒼光を背に、スイが突き出した拳が風圧ごとミナリの身体を薙ぐ。辛うじて後方に跳んで受け流すも、重力の歪みに似た衝撃が肺を揺らす。

「わかった、私とミナリは敵同士になるんだね」

 追撃。スイは間髪入れず、鋼の脚で空を蹴る。
 宙に描かれる軌道は完璧で、まるで機械が演算しているかのように。
 スイの魔人能力――電戦乙女ヴァルキュリアは、常に必然を導き出す。

「数年ぶりの出会いだってのに、挨拶よりも手が出るのかよ。お姉ちゃん!」
「敵対宣言したのは貴女の方! 可愛げすら残さないんだから!」

 自負のあった白兵で遅れたミナリは舌を打ち、爆裂的にブースターを噴かした。
 スイの接近を間一髪で躱し、反転。腰に仕込んでいた円形の光源を投げつける。

「喰らえ!」

 数拍後、白い閃光が視界を灼く。網膜保護を搭載していなければ、一時的に目を閉じるしかない閃きだ。
 しかし、スイの動きに乱れは生じない。

「ずっと前から対策済みだよ、ミナリ」
(チッ、マジで“守りの天使”かっての!)

 返す刀でミナリは手首の装置を起動、反射用の小型ドローンを周囲にばら撒く。
 塔の外壁に鏡を設置し、それを反射角にレーザーを曲げる。予測不能な角度から、複数の熱線でスイを狙い撃つ。
 スイは滑るように一歩後退し、背面の推進機を広げる。導線の終着点は一つ。故に回避。
 保険の追尾弾を手甲のナイフが閃き切り裂く。

(やっぱりあたしの装備じゃ効いてない。けど、効かせる!)

「ミナリの強さは、戦闘技術じゃない。正面からじゃ勝てない」
「うん、知ってるよ」

「「だから」」

「“勝利条件”ごと変えてやる」
「"敗北必死"まで追い込むよ」

 ──あたしの能力。触れた物体の充電を最大値にする。
 一度きりなら、それはただの瞬間強化。けれど、再度使ったら? その出力はどれだけ蓄えがあろうと制御領域を越える
 ミナリは地を蹴る。肉薄。スイのガードをすり抜け、肩口に手を伸ばす。が、スイは先に動いた。

……ごめん、ここで終わらせる」

 衝撃が走る。スイの拳が腹に食い込み、ミナリの身体が吹き飛ぶ。柱に激突、血が口から滲む。

「終わらねぇんだよ、まだ」

 微笑む。喉奥に鉄の味。
 左手には、落としもの。

――スイの予備エネルギーセル。

 それは既にミナリの能力で《最大充電》されていた。
 そしてミナリはもう一度、その上に手を重ねる。

「“二回目”ってのは、な。壊れちゃうんだよ、たいてい」

 セルが脈動する。
 異常な高出力を示す警告音が周囲に響く。

 「スイ。あんたの弱点、教えたげる」

 《モノリス》は完全なエネルギー制御下にあり、スイの武装はすべてそれに連動している。
 故に、もしその中枢に“暴走エネルギー”をぶつけたらどうなる?

 ミナリは最後の一手を構える。ポケットから引き抜いたのは、改造スタンガン。
 出力値を無理やり底上げした、旧型兵器。普通なら自爆覚悟の代物。

「“大志”ってのはね、ルール破ってでも手に入れたいもんなんだよ!!」

 飛び込む。スイの瞳が見開かれる。
 命中。スタンガンの電撃がスイの防御フィールドを突破、過充電状態のセルがバックラッシュを起こす。
 制御回路に干渉、モノリスとのリンクが一瞬切断される。

「──ッ!」

 背部ユニットが暴走し、荷重だけが齎され、スイは膝を付いた。

……はぁ、はぁ……っ。勝った、でしょ……?」

 ミナリはゆっくりと立ち上がり、静かに言う。
 スイは逆に座り込み、苦笑した。

……うん。負けたよ。私の負け」

 戦いは終わった。
 そして、現れるのは蒼白の光に縁取られた、どこにも通じていない空の門。
 そこには何の説明も、鍵もない。ただ、ミナリの眼前にぽつりと顕現した。

 スイが問いかける。

 「……ミナリ。その“大志”を抱いて、どうやってそれを開くの?」

 スイは抱えたまま動けなくなった。問いは重いはずだった。
 でも、ミナリの返答はもっと重くて、もっと軽やかだった。

 「決まってるでしょ?」

 ミナリは笑う。
 喉を叩くような、快活で、そして青臭い笑いだった。

 「蹴っ飛ばすのよ!」

 振りかぶって、全力のキック。
 扉はきしみ、鈍い音を立てて、押し開かれる。

 「奪うことより、与えることのほうが難しいんだから。だから――あたしは全部、手放さない!」

 風が吹く。二人の間を、光が通り抜ける。

……いってらっしゃい」

 視界が白から戻ったとき、ミナリと扉は消えていた。


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