🐸さんに美味しくお酒を飲んでほしいss第一弾、🐍くんと宅飲み編。🐍🐸と書いてますが別にCPじゃないです。
シナリオバレは無いですが、継続刑事VODKAを視聴後に書いてます。
@rikka_trpg801
美味しく飲もう(🐍🐸)
大きく重い紙袋を片手に、帰代はどうしたものかと溜息を吐いた。
中身はビールの詰め合わせだ。熨斗のプリントされた紙を巻かれたそれは、本来は伊角宛のお中元で届いたものである。
しかしながら、立場が立場な所為でその手のお中元が大量に届く伊角が流石に消費しきれないからと、たまたま今日出勤していた帰代他数名にお裾分けという名の押し付けを行ったのだ。
帰代はビールが特別好きというわけではないのであまり嬉しくないが、他の同僚が引き取ることになった大きなクッキー缶や燻製肉の詰め合わせよりはマシだろう。あれは賞味期限との戦いになるに違いない。ちなみに、誰がどれを持ち帰るかはくじ引きで決めた。
箱のままでも、冷蔵庫に入れても場所を取るだろう缶ビールたちの重みを腕に感じ、帰代の眉間に皺が寄る。しばらく出張任務の予定もないし、地道に消費するしかないかと考えていた帰代に向かって、どこかのんびりとした声がかけられた。
「あ、帰代くんだ」
「ジャノメか」
廊下の向こうから少しだけ小走りに駆け寄ってきたジャノメが、ほわりと笑顔を見せる。
「帰代くんも、今から帰るところ?」
「ああ。お前もか?」
「うん。僕、今日報告書を書いてたんだけど、いつもより早く書き終わったんだ。タイピングが速くなってきたのかもしれない」
一緒に歩きながら話す嬉しそうなジャノメの笑顔に、顔をモニターに寄せて一所懸命に雨垂れタイピングをする姿が重なった。作成する書類の内容は問題ないのに、その速度はタイピングスタイルの所為で悲しい程に遅いのだ。
それが改善されたのなら喜ばしいと、帰代も眉間の皺を解いて軽く笑う。
「なんだ、タイピング講習にでも行き始めたのか?」
「えっと、講習とかは時間が無いから行けないけど、インターネットの回転寿司のゲームで練習してるんだ」
えっへんと胸を張るジャノメに、帰代は思わず躓きそうになったのを寸でのところで堪えた。まさかの寿○打である。十代ならともかく、とっくに社会人として勤めている二十八歳が真剣に寿司○でタイピング練習している姿を想像すると、情けないやら切ないやら。
しかし、それでもジャノメが己の不得意分野を克服しようと自分なりに努力し、その成果が僅かでも得られているのは事実だ。
「――――そうか、頑張ってるんだな」
「うん、僕頑張ってるよ」
帰代に努力を認められ、ジャノメは嬉しそうに頷く。その顔を見ながら、ふと思いついて手にした紙袋を持ち上げて見せる。
「帰代くん、それ何?」
「ビールの詰め合わせだ。伊角さんから貰ったんだが、一人で飲み切るのは時間がかかる。家に飲みに来ないか?」
「えっ、いいの?」
ジャノメは決して酒に強くないが、ビールの一、二本なら泥酔まではいかないはずだ。それに、帰代の家で飲む分には酔って眠ってしまっても問題ない。翌朝帰代が起こして身支度をさせ、間違いなく遅刻しないよう送り出すからだ。
「ああ。美味いつまみも作ってやる」
「やったー、嬉しいな。あっ、じゃあご馳走になる代わりに、それ僕が持つよ」
そう言って紙袋に手を伸ばしたジャノメの手を、帰代はさっと避ける。
「重たいから俺が持つ」
「でも……」
「帰る途中でつまみの材料を買うから、お前はそっちを持て」
警察にしては筋力の無いジャノメに重い紙袋を持たせると、よろけたり落としたりしかねない。中身が炭酸なので下手をすると道端で大惨事なんてことも考えられる。
代わりに買い出しの荷物持ちを申し付ければ、しゅんとしていたジャノメに笑顔が戻った。
「わかった。全部僕が持つから、帰代くんいっぱい買っても大丈夫だよ」
「いや、二人分だからそんなに沢山買わないが?」
張り切るジャノメに小さく溜息を吐いた帰代は、近所のスーパーで何が特売だったかを思い出しつつ、今夜の献立を考えるのだった。
綺麗に拭き上げられたテーブルにいくつもの料理が並ぶ。
特製味噌マヨネーズで食べる野菜スティック、タコのカルパッチョ、明太子入り出汁巻き玉子、そして揚げたての唐揚げ――二人で食べるには少し多いかもしれないが、唐揚げは残れば明日の弁当になる算段だ。
プルタブを開ける爽快な音が響く。帰宅後すぐに冷蔵庫に入れて置いたビールは、調理している間にいい具合に冷えていた。グラスに注げば、金色の酒と白い泡が煌めく。
「それじゃ、お疲れ様」
「帰代くんもお疲れ様」
軽くグラスを触れ合わせれば、キンと涼しい音が響いた。
喉の奥へと流し込めば、冷たい炭酸が心地よく食道を滑り落ちていく。苦みや酸味、甘味が入り混じった複雑な後味が舌に残り、アルコールの混じった息が鼻から抜けていった。
「美味いな」
流石贈答用なだけあって、スーパーで安売りしているものよりも美味しく感じられた。改めて缶のラベルを見ていた帰代の耳に、「うん、とってもおいひいよ」という声が届く。
そちらを見れば、唐揚げを口いっぱいに頬張ったジャノメが目を輝かせていた。食べながら喋るのは行儀が悪いと思いつつも、まあここは家なのだしと見逃すことにする。
「どうだ、コンビニの唐揚げ弁当より遥かに美味いだろう?」
「うん! カリカリなのにパサパサしてなくて、噛んだらじゅわ~ってなって、すごく美味しい」
「そうだろう。ま、俺が作ったんだから当然だな」
ジャノメの絶賛に気を良くしつつ、カルパッチョを口に入れて味わい、ビールで流し込む。夏のタコはやはり旬なだけあって味が濃く歯応えもあり、そしてビールによく合った。
唐揚げの次は玉子を口に入れたジャノメが、蕩けるように目を閉じて頬を押さえる。
「この出汁巻き玉子もすごく美味しい……玉子がフワフワで、明太子がプチプチしてる」
居酒屋の定番メニューなので、当然ビールとの相性もばっちりだ。表面も綺麗な黄色に焼き上がっており、それこそ店に出しても恥ずかしくない逸品である。
もぐもぐと口を動かすジャノメの頬は、すでに赤くなり始めている。アルコールが回り始めたのだろう。
帰代も一缶目を空け、冷蔵庫から次のビールを取り出す。自分のグラスを満たしてから、残りの半分を空になっていたジャノメのグラスに注いでやった。
まだまだほろ酔いにも至っていないが、気分はいい。旬の良い食材を安く買えたし、それで作った料理は納得の出来栄えで、しかも目の前で食べて褒めちぎってくれる相手がいる。酒の肴には十分すぎた。
ビールを挟みつつ唐揚げと玉子を往復するジャノメの幸せそうな顔を見て、作った甲斐を噛み締めつつ野菜スティックをジャノメの方へ押しやる。
「野菜もちゃんと食べなさい」
「ふぁーい」
酔っ払いらしい舌足らずの返事を聞きながら、帰代は手にしたグラスを煽る。
ふぅっと口から零れたのは、いつもの苦々しい溜息ではなく、アルコール混じりの満足げな吐息だった。
(あとがき)
継続刑事VODKAを見て、🐸さんに美味しくお酒を飲んでほしくなりました。というわけで第一弾は🐍くんと二人で宅飲み✨ 🐸さんとしては、やはり安心して飲酒できるのは自身のテリトリーである自宅だと思うんですよね。で、そこに招くとなれば🐍くん一択でしょう!という。
私も🐸さんの手料理を肴に飲みたい~でも🐍くんよりお酒弱い自信がある。悲しい。私の分まで美味しく飲んでおくれ……