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美味しく飲もう(刑事探索者)

全体公開 刑事探索者 7 3340文字
2025-04-29 10:19:59

🐸さんに美味しくお酒を飲んで欲しいss第三弾、刑事探索者で飲み会です。ちゃんと十人いるはず。
ネタバレは特にありません。

美味しく飲もう(刑事探索者)

「それでは事件解決を祝しまして――乾杯!」
『かんぱーい!』
 最年長ということで乾杯の音頭を任された廉士がグラスを掲げれば、他の九人の声が重なった。あちらこちらからグラスのぶつかる涼しい音が上がる。
 今回もまた超常現象絡みの事件を捜査するため、国も時間も超えて集められた十人の刑事たち。珍しく怪我人も精神的な療養が必要なメンバーを出さずに見事事件を解決し、明日には解散して各々の場所へ帰る予定となっている。
 そこで、今夜は皆で打ち上げをしようということになったのだ。安心して酔えるようにと、場所は宿舎のリビングで、酒類は数人で買い出しに行った。料理は帰代が指揮を執り、心得のある者総出で仕上げた豪華なものとなっている。
「フライドチキンうまっ!? マジで本場より美味いかも」
 骨付きのチキンにかぶりついて色違いの目を丸くしているアキラに、帰代はすました顔で――実際には得意げな色が滲んでいるが――頷いた。
「美味くて当然だ。スパイスの調合には気を使ったし、二度揚げしてるから食感も良いはずだ」
 メインの揚げ物はチキンの他にもタラ、フライドポテト、オニオンリングなどが山盛りになっている。しかし、成人男性が十人も集まればほとんど残ることはないだろう。
 サーモンのタルタルをクラッカーに乗せて味わっている帰代の脇腹を、つんつんと誰かが突いた。見れば、すでに頬を赤くした神無が満面の笑みを浮かべている。
「帰代先輩、お疲れ~! 料理めっちゃ美味しい! デザートも楽しみなんだけど、いつ出てくるの?」
「デザートは食事がもう少しはけてから――って、神無お前飲んで大丈夫なのか?」
 酒に弱いのであまり飲ませてくれるなと、未来にいる神無の相棒アンドロイドやあのいけ好かない男から言われていたのだ。慌てて目を向ければ、手にしたグラスには桃色の液体が入っている。
「うん、飲んでる! 甘くて美味しい~」
「誰だ!? 神無に飲ませた奴!」
 テーブルの向こうから「俺俺~」と鈴風が手を挙げた。
「でもそれ、ほろ○いの桃味だぜ? しかもまだ一缶空けてないし」
……
 低アルコール飲料の代表格だ。甘くて飲みやすく、度数も低い。それをグラス一杯ほどでここまで出来上がるとは、やはり神無はかなり酒に弱いようだ。
「今夜は飲むぞ~!」
 ご機嫌な神無に溜息を吐き、帰代は鈴風たちに少し声を押さえて告げる。
「二杯目からはジュースにすり替えておけ。急性アルコール中毒を起こしても、あいつは普通の病院には運べない」
「あ~、うん、わかった」
 そんなことになったら流石に可哀想すぎると、面白がっていた面々も大人しく頷いた。
 眉間の皺を揉み解す帰代の肩を、聖が労いの意を込めてぽんと叩く。
「まあ、ちょっと酔い潰れたくらいだったら、この心さんが責任もって診てあげるから安心して」
「お前ら、無様に酔い潰れたらこいつに何されるか分からないから、ちゃんと自制するように」
 数人がさっと尻を庇いながら「はい」と真面目な返事をする。笑顔のままのメンバーもいるが、何だか聖から離れたところにいる気がした。
「ちょっと、酷くない?」
「普段の行いだな。自業自得だ」
 肩に乗っていた手をぺいっと払い落とし、帰代は料理の補充のためにキッチンへ向かった。ついでに神無お待ちかねのデザートも運んでおこうとしたところで、並べていた皿をさっと糸冬が持ち上げた。いつの間にかついて来ていたらしい。
「お手伝いします」
……ああ」
 手伝いは素直にありがたいが、演技であることがもろわかりの丁寧な態度と笑顔の新人を、帰代はあまり得意としていない。
「本当に料理が上手ですね。糸冬はここまで色々作れないので尊敬します」
「まあ、レシピを増やすのは意識しないと難しいからな。いくら自炊でも、同じ物ばかりで偏っていたら外食と変わらないから気を付けろ」
「はい、そうします」
 糸冬は飲んではいるようだが、それこそ量をセーブしているようでほろ酔い程度だ。あまり酔うと仮面が剥がれるのだろう。いけ好かない仮面を引っぺがしてやりたいとも思うが、アルハラになるだろうと止めておく。
 リビングへ戻れば、神無が歓声を上げてデザートに飛びついた。他のメンバーはまだおかずの方をメインに箸を伸ばしている。
「変、鮭はどれだ?」
 突然的中にぐいぐいと袖を引っ張られ危うく体勢を崩しそうになった帰代だが、寸でのところで踏み止まる。
「危ないでしょーが!」
「おにぎりの中身がわからん」
 大皿に盛られたおにぎりの群れ――先程持ってきた物だ――を指さす的中に、帰代は溜息を吐きながら説明する。
「四角い海苔の巻いてある三角のおにぎりが鮭入りだ。他に海苔無しは梅干しで、俵型海苔付きが明太子、ゴマ付きがツナマヨ」
「わかった」
 目的のおにぎりを手に取り、的中はもりもりと食べ始める。どうやら口に合ったらしく、周囲に花が飛んで見える気がした。
 ちなみに、満場一致で的中には酒を飲ませないことに決まっている。もしも酔って暴れられたら、誰にも止められない。幸いなことに、本人はジュースや茶で満足しているようだ。
 そんな風に時折キッチンと往復しつつ過ごしていれば、テーブルの上の皿も粗方空になってきた。そろそろお開きにして片付けの頃合いだろう。
 立ち上がった帰代の肩が、背後からぽんぽんと叩かれる。
「げろげろ~、こっちで二次会しよう?」
 広大に言われて振り返ってみれば、テーブルの端に聖やアキラが固まって座っていた。卓上には酒類と、つまみとして乾き物がいくつか並んでいる。
「帰代さん、あまりゆっくり飲めてなかったみたいですから。こっちの片づけは僕たちでやっておくんで、のんびりしてきてください」
 はんなりと酔って頬を染めた巻に背を押される。キッチンの流しではゴム手袋をした廉士が眼鏡を光らせてサムズアップしているので、任せても問題はなさそうだ。
……そうだな。なら、そっちは頼んだ」
「はい、任されました」
 ひらひらと巻に手を振られて腰を下ろせば、すかさずアキラが氷の入ったグラスを帰代の前に置いた。聖が慣れた手つきで琥珀色の酒を注ぐ。
 そのグラスを持ち上げれば、広大を含めた三人から代わる代わるグラスをぶつけられた。
「あらためてお疲れさん」
「料理番長は大変だね~」
 帰代はちびちびとウイスキーを味わいつつ、「半分は好きでやってることだからな」と返す。
「変ちゃん、ちなみにもう半分は?」
「下手に当番制にして、不味い飯を食いたくない。あと食中毒なんぞ起こしたら目も当てらない」
「あー、ごもっとも」
 何人かの顔を思い浮かべ、各自頷く。特にアキラや広大は自分たちも決して料理ができる方ではない自覚があった。
「良い年した大人が自分の食事の面倒も見られないのはどうかと思うぞ?」
「げろげろなのに藪から蛇が出てきちゃった」
「まあ、よくないとは思ってるんだが、中々……
 苦笑する二人を横目に、帰代はグラスを傾ける。アルコールで身体の芯がぽかぽかと温かくなってくると、唇から満足げな息が零れた。
 普段飲むときは仕事の一環か、もしくは一人でということがほとんどだ。こうした大勢の気の置けないメンバーで飲むのは、それこそ学生の時以来かもしれない。
 適当な会話と共に杯を重ねながら、いつの間にか帰代の口元は笑みの形を作っていた。それに気づいた聖が、目を細めて微笑む。
「楽しそうで何より」
「何だ、急に?」
 聖は「こういうお酒は美味しいなって思っただけ」と言って、訝しむ帰代のグラスに追加の酒を注ぐのだった。


(あとがき)
 🐸さんに美味しくお酒を飲んで欲しいss第三弾、刑事探索者たちで飲み会編です。前半はオカンモードなのでほとんど飲んでませんが、アダルト組の二次会で美味しく飲めたことでしょう。
 一応、🐸さんお酒ネタで書きたいと思ってた組み合わせは一通り書けたので満足✨ 他にもこんな組み合わせも面白そう!というのがあれば、ぜひマロで教えてくださいませ~


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